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トキメキとピンチの通勤ラッシュ(2)

 乗り換えるため地下鉄の改札を抜け、会社に1番近い出口のある乗り場に向かってホームを歩いていた。

 そして、俺の目の前には超タイプの彼女が歩いていた。どうやら彼女も同じ地下鉄に乗るようだ。


 決して彼女をつけている訳ではない。たまたま一緒の地下鉄であっただけで、彼女はもう少し先の乗り場で地下鉄に乗り込む可能性だってある。


 あまりにも一緒なのでストーカーに疑われる可能性もあるとビクビクしながらも、自分に言い聞かせていた。


 すると、目の前にいた彼女は、ある乗り場の長蛇の2列のうちの1つに仲間入りした。

 そう、その乗り場は、俺がいつも地下鉄を待つ乗り場であった。


 どんだけついてんだよ!と心の中の自分がガッツポーズをするの反面、ストーカーと疑われる可能性がさらにアップした。


 これはまずい。


 俺は、少し彼女と距離を取るために、2列のうち、彼女のいない列に仲間入りをした。


 ホームに地下鉄が到着すると、大勢の人が車内へと乗り込んでいった。

 人の波に押しつぶされそうになりながら俺も車内に乗り込む。


 ドアが閉まり辺りを確認すると、左斜め前の方に彼女はいた。彼女と俺の間には、人が2人挟まれている。


 これなら疑われる事はないなと確信する。

 

 そして、俺は、彼女を姿に再び視線を向ける。

 しかし、ジーッと見つめるのは気持ち悪く思われそうなので、チラチラと見ていた。

 それでも充分気持ち悪いのは自分でも理解しているのだが、自制しきれないでいた。

 それぐらい彼女は美しく、俺の人生の中でナンバー1美女と言っても過言ではなかった。正直、俺の中で直球ど真ん中ストレートなほどタイプな女性であった。


 彼女にトキメキながら、満員の地下鉄は会社の最寄りの駅に到着した。

 俺は降りようとドアの方に足を進めようとした。


 その時だった。


「どこ触ってんの!痴漢!!」


 前方から女性の大きな叫び声が聞こえた。


 声の方向に目をやると、そこにいたのは美しい彼女だった。

 そして、なぜかこの時に俺は彼女と目が合っていた。


 ん?何だろう?嫌な予感がする……。


 俺は、彼女から視線を逸らし、再びドアに足を進めた。

 

 しかし、すぐさま彼女に行く手を阻まれる。


「あんた触ったでしょ!」


 彼女は眉間にしわを寄せ冷たい目で俺を見ながら、俺に怒鳴りつけた。


 俺の予想は見事に的中してしまった。


「いやいや、触ってませんよ!つり革、両手で持ってましたし。それにあなたと僕の間には2人いましたから……」


 ありもしない疑いをかけられた俺は、額にほんのり冷汗をかきながら弁明した。


 しかし、彼女は一切表情を変えずに

「いや、触った。とにかく、降りなさい!」

  と語気を強く俺に言い放つ。


「いや、絶対降りない!」


 どこかのテレビの情報で、降りたら痴漢を認めた事になると言っていたのを思い出し、俺は、ハッキリとした口調で彼女に言い放った。

 実際、彼女の美しさに魅かれて、チラチラと見てはいたが、痴漢なんて一切していない。


「絶対許さない!無理矢理にでも降ろすから」


 彼女は俺の腕を掴もうと手を伸ばしてきた。


 相手は女の子だ。たとえ掴まれて引っ張られたとしても動じる事はないだろうと俺は余裕をかましていた。


 だが、この余裕はすぐに打ち砕かれたのであった。


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