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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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預言

●登場人物

・ココロ…始まりの存在と出会いANTIQUEのリーダーとなった公爵令嬢。

・吉田大地…土の能力者。幼馴染を助ける為自ら異世界の戦いに身を投じた地球の少年。

・シルバー…鋼の能力者。ココロに忠誠を誓う公軍元大隊長。

・キイタ…火の能力者。自国の危機を救うため仲間になった大国の第二王女。

・ガイ…雷の能力者。ココロとキイタの恩に報いようと共に戦う公軍隊士。

・アクー…水の能力者。失われた記憶を取り戻すため運命を受け入れ仲間になった少年。

フェズヴェティノス

シキ

・ハナ…フェズヴェティノスの長であるオヤシロサマの孫娘にして次期首領。メガネをかけた元気っ娘の姿をしているがその正体は狸に似た妖怪。

・ヒカル…クール&ビューティーが信条のお姉さまキャラ。フェズヴェティノスの一員である事は間違いがないようだがその正体は未だ不明。

・タマ…色白で可愛らしい妹キャラを演じるフェズヴェティノス。その正体はどうやら化け猫のようである。

オオグチ

・ラプス…フェズヴェティノス一の実力とうたわれる戦闘集団オオグチの一族の首領。ガイとアクーのコンビにより敗北し仲間のほとんどを失ってしまった。

オウオソ

・モリガノ…オオグチに次ぐ実力集団である戦闘民族オウオソの民を率いる首領。見た目は日本に伝承される烏天狗にそっくり。戦闘を好む残酷な性格ながら部下を思いやる心を持ち、仲間から絶大の信頼を受けている。

・テン…モリガノの懐刀と呼ばれる知恵の者。一族の中のエリート集団であるオウオソ十一騎の筆頭に数えられる実力者ながらおっとりとした話し口調で優し気な雰囲気を持つ。

・ハクザサ…オウオソ十一騎の一人。ただ一人真っ白な羽を持つオウオソで、剣の使い手。石をも切り裂くその技量から、仲間内ではイシキリの異名で呼ばれている。

・ゲンシキ…オウオソ十一騎の一人。怪力無双にして無二の先頭好き。短気で怒りっぽいが戦いにおいては常に先陣を切る切り込み隊長としてモリガノの信頼を得ている。

・ジンナイ…オウオソ十一騎の一人。物静かで冷静な判断力を持ち合わせる実力者。若手のリーダー格でもある。

・アカツキ…オウオソ十一騎の一人。シルバーに倒されたコクヤの兄。他の仲間に比べ小柄で茶味がかった色の羽を持つ。口数は少なく感情に乏しい孤高の剣士。

・ウンリュウ…オウオソ十一騎の一人。巨大な体から繰り出す怪力技が得意。

・コウガ…オウオソ十一騎の一人。身軽で動きが早い。

・ミドリマル…オウオソ十一騎の最年少。コウガに匹敵する素早い動きで攻撃する。

・サトリ…オウオソ十一騎の最年長。好々爺然とした穏やかな口調で話す老齢の戦士。

・コクヤ…オウオソ十一騎の一人。アカツキの弟であり兄に劣らぬ剣の名手であるが、先の戦いにおいてシルバーと一騎打ちの果てに倒された。


・ガウビ…フェズヴェティノスの作戦参謀。肉体を駆使して戦う事よりも知恵を活かす戦法を好むが戦闘能力もかなりのもの。正体は九本の尾を持つ狐の妖怪。

・クウダン…巨大な体を持ち預言をもたらすフェズヴェティノス。正体は今のところ不明。


ヤック村の人々

・導師…オヤシロサマ信仰に圧されわずかしかいなくなってしまったイータンダティルの伝道師。

・ブラド…村の若者。オヤシロサマ信仰の筆頭を走る改革者。

・アンス…ブラドの仲間で宿屋の娘。



●前回までのあらすじ

 ハナに言いくるめられ黙り込んでしまったイータンダティルの信者達に代わり舞台の上に乱入したのはココロとキイタであった。唖然あぜんとする人々を余所よそにココロはハナに向かいオヤシロサマへの不審をぶつける。

 ところがハナはココロとキイタの美しい姿に我を忘れ二人を舞台中央に引き出すと無理やり一緒に踊り始めた。幼い頃より舞踊を仕込まれていた大国の王女であるキイタの思わぬ実力に会場は一気にヒートアップする。

 そんな彼女達のステージに水を差したのはフェズヴェティノスの作戦参謀であるガウビであった。彼はオヤシロサマの預言は下されたと宣言し、勝手に儀式を進めてしまう。部下の行動に腹を立てながらもココロをシキに誘うハナや、本当に踊る事が大好きなのだとしか思えないヒカルやタマの姿にココロは、彼女達もまた村人を扇動せんどうするために利用されているただの人間なのではないかと思い始めていた。







 イーダスタの森の中、鋭い爪を持つたくましい手が地に一本の剣を突き立てた。そこには小さな土饅頭どまんじゅうが作られている。

 剣を突き立てたオウオソは、静かに一歩身を退いた。彼の背後には盛り上がった土饅頭どまんじゅうを中心に半円を作るように多数のオウオソがいた。

 ある者は立ち尽くし、ある者は高い木の枝に乗り、めいめい々にその様子を無言で見つめていた。

「コクヤは、帰ったか…」

 静かな声でつぶやいたのはモリガノの懐刀ふところがたなである知恵者のオウオソ、テンであった。

「ジンナイ、お前がついていながらどう言う事だ!」

「面目ない」

「まあそう言ってやるなゲンシキ。それだけ、ANTIQUEが強かったと言う事だろう」

 ゲンシキと呼ばれた体の大きなオウオソの言葉にジンナイが顔を伏せると、すぐに別のオウオソがそれをかばった。老齢ろうれいの彼は名をサトリと言った。

「アカツキ…済まない。コクヤを助ける事ができなかった」

 白いオウオソであるハクザサが、地面に剣を突き立てたオウオソの背に向かってびた。アカツキと呼ばれた他の仲間に比べ茶色がかった毛を持つ細身のオウオソは、振り向きもせず静かに答えた。

「気にするなイシキリ。これが弟の運命だったのだ。コクヤも今頃は、虚無の世界で己の未熟を恥じている事だろう」

 どうやらシルバーの倒したオウオソ十一騎の一人コクヤは、このアカツキの弟であったらしい。弟を倒されたにも関わらず自分達を責める事もないアカツキの言葉に、彼を救えなかった上、まんまとANTIQUEの能力者達を取り逃がしたジンナイ、ハクザサ、ウンリュウ、コウガ、ミドリマルの五人はそろって顔を伏せた。

「コクヤをやったのは、鋼のANTIQUEの能力者だった」

 ウンリュウが静かにアカツキに言った。

「そうか」

 アカツキは短くそう答えるだけであった。

「しかしやれやれ、フェズヴェティノスの中でもその者ありとうたわれたオウオソ十一騎が、これで十騎になっちまったぞい」

 サトリが頭をきながら言う。ジンナイは、円から外れ自分達に背を向けているモリガノの近くに歩み寄った。そのかたわらについていた数名のオウオソが身を退く。

「大将…、申し訳ない。ANTIQUEの能力者を森から出すなと言う命令には、応えられなかった…。コウガとミドリマルが奴らを追おうとしたのを止めたのは俺だ…。俺達五人で深追いをしても、奴らを倒せるとは思えなかった」

 ジンナイはそれとなく仲間をかばい、自分に罪がある事を伝えようとしているのがわかった。コウガとミドリマルが慌てて口を挟もうとするのをサトリが手で制した。

 周囲にいたオウオソ達が緊張した顔つきでモリガノの次の言葉を待った。しかしモリガノはジンナイを振り向きもせず、遠く森の出口に目を向けていた。

「大将…」

「そろそろのようだ」

 更に何かを口にしようとしたジンナイの言葉を遮るようにモリガノがようやく口を開いた。

「は?」

 何がそろそろなのか意味がわからないジンナイがき返すと、モリガノは振り向いた。

「コクヤはお前達の到着を待たずANTIQUEに闘いを挑み、敗れた。それはアカツキの言う通り、コクヤの腕が奴らよりおとっていたからに過ぎない」

「……」

 何とも言えず、ジンナイは押し黙った。

「そしてお前達もまた、ANTIQUEにはかなわなかったと言う事だ」

 モリガノの冷静な言葉にジンナイは悔しそうに歯を食いしばり、うつむいた。

「礼を言うぞジンナイ」

 予想もしていなかったモリガノの言葉に、ジンナイは驚いて顔を上げた。それは周りにいるオウオソ達も同様であった。

「お前達五人がかりで足止めすらできなかった相手だ、そのまま追っていれば被害はコクヤ一人の犠牲では済まなかったはず。我らを待とうとしたお前の判断は正しかった」

「大将…」

「お前達だけに任せたのは俺だ。そして、ANTIQUEのねぐらが空になっているのを見て、更に森の奥まで捜しに向かったのも俺の判断だ。そうだったな、テン?」

「え?ああ、はて、どうでしたか…」

 突然振られたテンは慌てつつも何とか答え、頭を下げた。

「俺の判断が誤っていなければ、もっと早くお前達と合流できたかもしれないのだ。びるべきは俺の方だろう」

「そんな事は…」

「そんな事はないか?そうだな、これは全て運命だ。これよりは、残された我々とANTIQUEとの本当の闘いが始まる。これでわかったな、奴らは強い。一つの油断で我らが敗れる程に」

 弟の墓から離れたアカツキがジンナイのそばに歩み寄る。

「大将の言う通り、勝負はこれからだ」

「そうだな」

 後ろの方からゲンシキが大きな声を出す。

「油断をしない俺達の本当の恐ろしさを奴らに思い知らせてやろうぜ。なあ、大将?」

 モリガノはゲンシキの顔を見ながら言った。

「当たり前だ。そして最後に必ず我らは勝つ」

 モリガノの顔を見ていたオウオソ達が一同にうなずく。木の上に控えていたオウオソ達はその場に立ち上がり、羽音も高く背中の翼を広げた。

 仲間を失った部下達の士気が目に見えて上がっていくのをたのもし気に見ていたモリガノが言った。

「しかし、今日のところは別の仕事がある。俺達にとっては下らぬ仕事だが、現状ではやむを得ぬ事だ。そろそろクウダンの予言が始まる。みんな段取りはわかっているな?」

 モリガノは部下達の顔を見回した。

「まあうっぷん晴らしにせいぜい派手に飛び回り、ガウビに協力してやるとしよう。行くぞ!」

 モリガノの声にオウオソの集団は大きな雄叫おたけびで答えた。



 一方、ヤック村の儀式会場ではついに舞台上に現れたクウダンの口から、今まさにオヤシロサマの予言が語られようとしていた。大地の周りにいた数人の村人が、突然地にひざを折ってしゃがみ込んだ。

 突然の事に一瞬取り乱しかけた大地とシルバーであったが、次の瞬間、場内に響くクウダンの声に顔をステージに戻した。

「この村を栄えさせる数多あまたの人々を迎え入れよ。広く世に伝える人々をこばむ事なく、世界とつながって行け」

 旅人を歓迎しろ、と言ういつもと同じ言葉だ。特段新鮮味のない話に何人かの村人は顔を上げた。

 会場の後ろの方にいたガイは、突然しゃがみ込んだ観衆の中に立ち尽くす大地とシルバーの姿を見つけた。

「あ、あんな所にいやがんの」

 そうつぶやいたガイは、そこここにしゃがんでいる人々をけながら二人の姿を目指して前進を始めた。その瞬間、場内に人々のどよめきが響き渡った。ガイは何事かとステージに目を向ける。

 舞台の上ではオヤシロサマの言葉の伝達者であるクウダンが椅子から立ち上がっていた。オヤシロサマがこの村に来て以来、クウダンが立ち上がるのはこれが初めての事であった。

 初めて立ち上がったクウダンに村人達は驚きの声を上げたが、今日初めて言葉卸ことばおろしの儀を見る能力者達には、何故村人がこんなにも驚いているかわからなかった。ただ、立ち上がったクウダンのその余りの巨体に、彼らもやはり驚いた。

「でかい…」

 大地とシルバーのそばに行こうと動き出したガイも、そうつぶやくと思わず足を止めてしまった。未だ会場の後ろにいるガイから見ても、ステージ上に立ち上がったクウダンの体は大きかった。

 と、立ち上がったクウダンは突如とつじょ苦し気に腰を折った。その引き締まった口元からやはり苦し気なうめき声がれる。会場にいる大地やシルバー、ガイも、舞台の上にいるココロとキイタも何事かと黙ってクウダンを見つめている。

 やがて荒い息と共に、重々しいクウダンの声が聞こえてくる。

「不吉…不吉…。呪われし旅人…村に不幸を招くまわしき侵入者…」

 クウダンのつぶやきのような声が切れ切れに響く。その、深く低い声に不安を覚えた村人達があちこちで立ち上がり始める。

 これは、あの時と同じだ。その場にいる全ての村人達はそう考えていた。

 そう、クウダンの口から伝えられたただ一度きりの呪われた予言。五人の狩人の死が宣告された時の声と、今クウダンがらす声はよく似ていたのだ。

「羽…空…」

 再び始まったクウダンのつぶやきに会場入り口に止められた馬車の中の人影も、身を乗り出すように動く。

 と、突然クウダンは真っ直ぐに背を伸ばすと、大きく両手を広げろうろう々と語るように話し出した。

「天空を黒き風が舞い、悪魔の羽がおおいい尽くす時、おおいなる厄災やくさいを引き連れた呪われし旅人が現れる。弱き者よ、神に愛されし全ての人々よ、手を取り合いこれを排除はいじょすべし。神のすそが汚される事のないよう、排除はいじょすべし!邪悪に満ちた青き髪の悪魔、金色こんじきの髪を持つ悪魔を決して入れてはならぬ、とどめてはならぬ。果たされぬ後、世は永遠の闇にとらわれ、終わらぬ呪いが彼らを滅ぼすであろう…」

 観衆は目を見開き、微動びどうだにせずクウダンの言葉を聞いていた。彼等の頭の中では今聞いた言葉が渦を巻き、その意味するところをとらえようと必死に考えがめぐらされていたはずである。

「答えよ!」

 しばしの静寂せいじゃくの後、クウダンが一層いっそう大きな声で叫んだ。

「神のため!永遠の平和のため!その身を投げ出す勇気はあるか!?黒き翼の羽音が響く時!愛する者を守るため、神の土地を守るため、それは闘いの始まりを告げる狼煙のろしとなるのだ!」

 こう声を張り上げて予言が伝えられた事は過去に一度もなかった。初めて見る怒りに満ちたクウダンの姿に、観衆は恐怖に凍りついた。しかし、動けぬままに意味を知ろうとするその頭の中に、言葉は満ちあふれた。

「青き髪の、悪魔…」

 村の若者がポツリとつぶやいた。

金色こんじきの髪を持つ、悪魔…」

 他の村人が同じようにつぶやく。その隣でも、更にその隣からもつぶやきはれ、やがて会場中を包むざわめきへとふくらんでいく。

 舞台の上からココロとキイタが不安げな顔でそんな観衆達を見下ろしていた。

金色こんじきの…」

 一人の村人がつぶやいた時、彼の目に自らが口にしたのと全く同じものが飛び込んできた。豊かにれる、夜明けの太陽のように美しく輝く、金色こんじきの…。

「あ…」

「あ?」

 村人が、おびえた声を出しながら自分を指さしている事に気が付いたガイは、何事かとき返した。そうしている間に、次々と伝染するように周囲の村人達が顔色を失いながら自分から身を退いていく。

「な、何だ何だ?」

金色こんじきの髪…」

金色こんじきの髪…」

 先程まで十年来の友のように肩を組み、シキの歌を一緒に聴いていた村人達が後ずさっていく。

「おい、何だよ?」

「金色の髪を持つ、悪魔!」

 突然一人の村娘が叫んだ。

「あぁ?」

 娘の声に、ガイから遠ざかろうとする村人達の動きが早まり始めた。その時、更に別の村人が甲高かんだかい声を発した。

「ひっ!」

「ああ!」

 短い悲鳴はいたる所で起きていた。呆然ぼうぜんと目を見開いた村人達は恐怖に固まった顔で空を見上げている。つられてガイも上を見上げた。その空から、夜の闇にまぎれて無数の何かが降りそそいでくる。

 止めどなく降り続くその黒い何かは会場中に広がっていた。大地もシルバーも空を見上げた。

「これは…」

 降ってきたものの正体に気が付いた大地がつぶやいた瞬間。他の誰かが大声で叫んだ。

「は、羽だ!」

「黒き悪魔の羽!」

 その時、漆黒しっこくの闇にいろどられたはるか上空から巨大な翼が起こす大きな羽音が響き渡った。

「悪魔の羽音だ!」

「闘いの狼煙のろしだ!」

「アンス…」

「え?」

 ブラドのつぶやきに隣にいた若い娘が聞き返す。周囲にいた若い仲間達も何事かと彼の顔を見た。

「き、今日、うちに旅人が来た…。アンスの宿を、紹介したんだ…」

「それがどうした?」

 仲間の声に、ブラドは色をなくした顔を上げてつぶやいた。

「旅人の一人は…、真っ青な色の髪をしていた…」

「何だって!?」

 驚く仲間には目もくれず、ブラドは人込みをかき分けステージに向かってけ出した。ブラドに突き飛ばされた人達の悲鳴が響く。

 舞台の下に辿たどり着いたブラドは、その上に立つココロに向かい大声で叫んだ。

「君!」

 その声にココロばかりでなく、キイタもハナも彼を見た。

「ブラド!?」

 ココロが驚いた声を上げるが、呼ばれたブラドは一方的に言葉を続けた。

「君のガイドはどこだ?君達がやとったガイドだ!あの、青い髪の!」

 ブラドの必死の叫びにキイタはハッとした。青き髪の悪魔、金色こんじきの髪を持つ悪魔…。それは正にアクーとガイの事に他ならない。

 同時にココロがその事に気が付いた時、会場にいた大地とシルバーも同様にクウダンの言葉の意味を理解した。アクーとガイはフェズヴェティノス、オオグチの一族と激しい戦闘を繰り広げている。

 あの時倒せず取り逃がした数匹のオオグチがその戦闘の事を仲間に伝えていたとしたら…、彼らにとって、確実に印象に残っているANTIQUEの能力者はアクーとガイであるに違いない。

「まずい…」

 大地はつい口に出してつぶやいた。

「大地…」

 シルバーも不安げな声で言うと大地の顔を見た。



 同じ頃、壁の向こうから迫りくる殺気に弓を構えたアクーもまた、耳だけで今の予言を聞いていた。賢いアクーは当然その意味を理解し、その裏にひそむフェズヴェティノスの陰謀いんぼうも見抜いていた。

(僕達をあぶり出そうと言う作戦か)

 目の前の殺気は相変わらず消えない。それどころかますます々強く、近くへ迫っていた。その時、会場中にココロの声が響き渡った。

だまされないで!」

 ざわめいていた会場が静まり返る。

「ココロちゃん…?」

 突然大声で叫びだしたココロにハナが驚いた声を出す。ココロはそれを無視して会場に向け声を発した。

「こんな予言、意味がない!自分達に都合の悪いものを、あなた達を利用して排除はいじょしようとしているだけよ!聞いちゃダメ!」

「ココロ様…」

 大胆なココロの行動に、シルバーがその名をつぶやく。

「その通りだ!」

 続いて叫んだのはイータンダティルの導師だった。

「皆、あやつられている!不安をあおる事で行動させようとする予言などに耳を貸してはならん!」

「オヤシロサマは己が利益のために言葉を降ろしたりはなされない!」

 抵抗ていこうの叫びに対し、頭上から言い返したのはガウビであった。ココロはその声に相手をにらみつけるように上を見上げる。虚空こくうからは、相変わらず無数の黒い羽が降りそそいでいた。

 壁の上に立つガウビは、クウダンの予言を否定しようとするココロを見下ろしたまま、役者のようによく通る声で話し続けた。

「オヤシロサマは我ら愛する弱き人間のために奇跡の言葉をお おろしになる!今、村は危機にひんしている!オヤシロサマはそれをお救いになろうとしておられるのだ!」

「そんな証拠がどこにあるの!今の言葉が真実その通りだと、どうして信じられると言うの!」

「ココロ!」

 ガウビに挑みかかるように叫ぶココロを心配したキイタがその腕に手をかける。

「証拠?」

 言われたガウビはニヤリと不敵な笑いを浮かべると、表情に余裕を浮かべ始めた。もったいぶった態度でゆっくりと話し始める。

「目に見える証拠が必要か?ならばお見せしよう。オヤシロサマはこの村を囲む森が危険に満ちているとお教えくださった。それはなぜか?数日前、村の青年達が川を流れ下るあるものを見つけた…。森から流れてくる川に乗り、彼らの元に流れ着いたそれを見れば、オヤシロサマの言葉が如何いかに正しかったかおわかりいただけるでしょう」



 ガウビの声を聞いていたアクーは、ガウビの言っている流れ着いたものを見てみたいと思った。しかし目の前に迫る殺気に、視線を外す事ができなかった。

「そこにいるのは誰だ!?」

 ついに相手を薄い壁にへだてられたすぐ目の前に感じた時、アクーはそこにいるであろう謎の相手に向かって声を掛けた。

 薄暗い壁の向こうから、ゆっくりと巨大な影が浮きあがってきた。鋭い爪、嫌な臭いを発する口、燃えるような赤い目を光らせ現れたのは、オオグチ一族の長、ラプスであった。






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