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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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守るべきもの

●登場人物

・ココロ…十四歳の公国令嬢。自然の精霊であるANTIQUEに選ばれた十人の仲間を探し出し、現世うつつよを手にしようと企む魔族に戦いを挑む。

・吉田大地…ココロの元に集った二番目の能力者。土のANTIQUEに選ばれた十七歳の地球人。

・シルバー…最初にココロの前に現れた能力者。鋼のANTIQUEに選ばれた剣の使い手。

・キイタ…三番目の仲間として現れた能力者。火のANTIQUEに選ばれた十三歳の王国王女。

・ガイ…四番目の能力者。雷のANTIQUEに選ばれた二十四歳の軍人。

・アクー…五人目の仲間となった能力者。水のANTIQUEに選ばれた体の小さな少年。



●前回までのあらすじ

 朝、ガイの元へ集まった仲間達は、徹夜でガイの看護をしたポーラーが既にこの地を旅立た後である事を知り愕然とする。しかし、ポーラーはこの三か月を共に過ごしたアクーへ、一振りのナイフと、一通の手紙を残していた。

 出会った頃からアクーが欲しがっていたそのナイフは、守護の白刃と呼ばれるクナスジア国軍の標準装備品。ポーラーはクナスジアの軍人であったのだ。

 神の使いとして全世界の平和を守る事を誓い国王から授かる白刃のナイフを、ポーラーはアクーへと残して行ったのだった。

 そのナイフと共に置かれていた手紙に書かれていかのはたった一つの言葉、「ダン アクエーイット」。それはクナスジアの言葉で、「託す」を意味していた。

 自分を信じナイフと共にこの世界を守る大いなる意志を託したポーラーの想いを知ったアクーは、生まれて初めて心の底から泣いたのだった。







「おら、大地!馬に積め!」

 ガイが乱暴な動作で大地に大きな荷物を投げて寄越よこす。日はすでに頂点に達していた。

 夜明け前に旅立ったポーラーの想いを胸に、アクーが完全にANTIQUE一員となる決意をすると、彼らは長居は無用とばかりに数日を過ごしたこのねぐらから旅立つ準備を始めた。

「いちいち命令すんじゃねーよ偉そうに」

「あんだと?」

「何でもねーよ!」

「ガイ、体はもう大丈夫なの?」

 誰よりも張り切って体を動かすガイに、キイタが心配そうな声でたずねる。

「ああ?全然っすよ!言ったっしょ、俺は頑丈がんじょうにできてるんだって」

 ポーラーの手厚てあつい看病と、ウナジュウの光をびたガイの体は信じられない回復を見せていた。しかし、元気に振り向くそのほほにはオオグチの一族に付けられた爪痕つめあとが生々しく何本も走っていた。

 ただでさえ大きな体に不気味ぶきみな鉄の腕を付けたガイの姿は、オオグチとの闘いで受けた幾十いくじゅうもの傷のせいでますます々恐ろしい容姿ようし変貌へんぼうしていた。

「アクーは大丈夫?」

 荷物をまとめながらココロがかたわらのアクーにく。アクーは肩当を付けて狩人かりゅうどの姿になると、後ろ腰にさやに収まったままの守護の白刃しらはを付けたベルトをきつく巻き付けた。

「うん、問題ない」

 きっぱりとした口調で言ったアクーは床に置かれたゆぎを拾い上げ、それを右腰にぶら下げた。

「どっこいしょっと」

 庭に出て馬の背中にくらと荷物をせた大地は、ふと青くんだ秋空を見上げると、ふん、と一つ鼻を鳴らし仲間の待つ場所へ小走りにけ戻った。見れば、大方準備の整った面々が各々荷物を肩に立ち上がっていた。

「アクー、荷物は最低限におさえろ」

 シルバーがアクーに指示を出している。

「ここともお別れだね」

 ココロが改まった声を出す。わずかに三日を過ごしただけでありながら、何とも去りがたさびしい思いを感じた。

「さて、この後の行程こうていですが」

 ココロやアクーの未練みれんを断ち切るようにシルバーが声を出す。

「いち早く森を抜け、このままイーダスタ共和国中心部を目指します。その後は北上し次の国、パスキトラに入りそこから海へ出ます」

「おお!いよいよ西側諸国ともおさらばですな」

 ガイがわくわくしたような声を出す。

「ヤック村は、通る?」

 大地が何気なにげなく聞いた言葉にアクーがピクリと反応した。

かすめる程度だ。村を南に見ながら北回りで迂回うかいする形になるな」

 シルバーがふところから出した地図を見ながら答える。

「そっか…」

 アクーが何となくさみし気にうつむいた。そんな様子ようすを見たシルバーは地図をしまいながらアクーに話し掛けた。

「アクー、それに大地もココロ様も、キイタ様も聞いてください」

「なぁに?」

 ココロとキイタが一歩づつ歩み寄り、四人でシルバーを囲むような形となった。シルバーは自分を見上げるアクーの目を見つめて続けた。

「いいかいアクー。今言った通り私達はこれから真っ直ぐにパスキトラ国を目指す」

「うん…」

 シルバーが何を言いたいのかつかめないまま、アクーは歯切れの悪い返事をした。

「ポーラーは…、オヤシロサマのペテンをあばきたいと言っていた。君も、彼のその望みが気になるだろう」

 そう言われたアクーはふっと目を地面に落とした。

「だが、オヤシロサマとイータンダティルとの宗教戦争に、我らANTIQUEが関わる事は一切いっさいない。わかるか?」

 大地はそっと背を向けると、ポリポリと頭をいた。シルバーは厳しい眼差しでアクーを見つめ続けた。アクーの真っ青な瞳も再びシルバーのその目を見返している。

「私達は世界を守る」

 シルバーがつぶやくように言った。

「その為にはアクー、君の力が必要だ。私達と共に来てくれるのなら…、いや、何があっても来てもら(もら)わなくては困るのだが、その為の覚悟をして欲しいのだ。今後も同じような事はきっと起こる」

 大地にはシルバーが何を伝えようとしているのかが手に取る様にわかった。アクーにもこの話の行きつく先が徐々に見えてきていた。

「もし、もしも私達が去ったその後に、この国の民が自分達の意志でイータンダティルではなくオヤシロサマを選んだとしても、私達はそれに口を出す権利も時間もない」

「ちょっとシルバー、何で今そんな事…」

「必要だからだよ」

 言いかけたココロの言葉に大地がきつめな声を出して遮った。

「アクーに理解してもらう為に必要だから、今シルバーは話しているんだ」

 アクーはシルバーから目をらし、自分のつま先を見つめた。

「イータンダティルの神々は永久に忘れられ、新たな信仰がそれにとって代わる。神は死に、国は亡ぶ…。例えそうなったとしても僕はそんな彼らを置いて旅に出るんだ。世界を救う旅に」

「そうだ。私達は一刻も早く次の仲間を求めクナスジアを目指さなくてはならない。できるか?」

 シルバーがきびしく問い詰めるようにく。しばらく続いた沈黙に大地は肩越かたごしに振り返り、アクーの表情を盗み見た。

 アクーは無言のままそっと右手を腰に回すと、そこに付けられた守護の白刃しらはに手を触れた。その口からフッと笑いがれる。

「僕はたくされた…何を?少なくともポーラーは僕に、イーダスタの国をたくした訳じゃない。僕にこのナイフと一緒にもっと大きなものをたくしたんだと思う」

「アクー…」

 言いかけたシルバーの顔を、アクーは真正面から見据みすえた。その口元には小さな笑みが浮いていた。

「はっきり言って自信はないよ。僕はこの国しか知らないからね。本当にここ以外、何も知らないんだ。僕にとっては、生まれ故郷に等しいこの国が、今大きな転換期てんかんきにある…。何ができなくてもその行く末を見届けたいと言う思いはある。それでもきっとポーラーは言うんだろうね、それを振り捨てて旅人になれと。君達と、一緒に行けと…」

「アクー…」

 今度はキイタがささやいた。アクーは笑顔のままキイタの顔を見る。

「もうポーラーに僕は必要がないんだ。僕にとってポーラーが必要なくなったように。ポーラーは行くべき道を行き自分の戦いをする。僕もそろそろ、自分の道を行く頃だ」

「アクー」

 ココロがその小さな肩に手を掛ける。

「この戦いが終わるまでは、仲間でいてくれるんでしょう?」

「戦いが終わっても私達は仲間よ!」

 ココロが言った瞬間、シルバーが強い力でアクーの肩をつかんだ。

「その通りだ。私達は生涯しょうがいの仲間だ」

 大地はスンっと鼻を鳴らすと、隣に立つガイに小さく、しかし愉快気ゆかいげな声でつぶやいた。

「六人目」

「あ?」

「さて、そこでですよ皆さん!」

 ガイの反応を無視して振り向いた大地があげた声に、全員が動きを止め彼の顔を見る。みんなの耳目じもくを集めた所で、大地がいつもの冷静な声で話し始めた。

「出発を前に今一度整理したいんだけどね」

「何だお前はまた面倒めんどうくせえ事を…」

 ガイが苛立いらだった声を出すのを大地はました顔で受け流す。

「まーあまあ。ちょっと前にポーラーが言っていた言葉がどうにも気になってね」

「え?」

「ポーラーの言葉?」

「うん。彼がロキと言う狩人かりゅうどが殺されるのを目撃した時の話」

 この中でガイだけがその話を聞いていなかった。

「あの時は話の内容が衝撃的過ぎて気づかなかったんだけど、後で考えたらちょっと変だなって思っちゃったんだよね」

「変?何が?」

 大地の言葉に仲間達はお互いの顔を見合わす。それを代表するようにアクーがき返した。

「あの時ポーラーはこう言ったんだ。そいつらが次は死体をどこへさらすか相談している声も聞いた、って」

「確かに言っていたな。しかし、それが?」

 シルバーもポーラーの言葉を思い出しながらたずねた。

何故なぜフェズヴェティノスは狩人の死体をさらさなくちゃならなかったんだろう?」

「え?」

「それは…、死体が見つからないと予言が当たったかどうか…、あれ?」

 答えようとしたココロが自分の言葉に妙な矛盾むじゅんを感じて黙り込んだ。

「おかしいよね?予言が当たったかどうかを知りたいのはヤック村の村人達と、その予言をしたオヤシロサマのはずだ。フェズヴェティノスには関係のない話しだろ?」

「………」

「………」

 大地の指摘に、全員が言葉を失った。それを打ち破るようにガイが大きな声を出した。

「ああ、だからもう面倒めんどうくせえなあ!取り合えずバーっと行って、ガーっとやっちまえばいいんだよ!」

「何をガーっとやるの?」

「何をって、そりゃ、お前…」

 大地の冷静な答えにガイの気負いは尻すぼみに小さくなっていった。

「ちょ、待ってガイ、うるさい」

 突然アクーが言い出した。

「何をぅ!?」

「大地」

 アクーの青い瞳が正面に立つ大地の目を見つめた。

「慌てる事はない、大切な事だ。一つ一つ整理してみよう」

 大地がそう言うと、一瞬驚いたような顔を見せたアクーはその瞳を左右に泳がせながら必死に考えた。黙り込んだアクーの顔を仲間達はじっと見つめたまま、再びその口が開くのを待った。

「今、ヤック村は古い信仰しんこうを捨てようとしている…」

 地面に目を落としたままアクーがつぶやく。

「そうだね、国民はそのアイデンティティ自体を捨て去ろうとしている」

 大地の言葉にアクーはもう一度顔を上げる。二人の少年はお互いの顔を見つめ合ったまま推理すいりを進めた。

「それは、国を作ったと言う基盤きばんになる重要な思想しそうだ」

「その信仰は失われつつある」

「それ自体が目的なのだとしたら」

「絶対の信頼を得る事が最低条件だ」

「…オヤシロサマ…」

「そう、新たな信仰しんこうの出現だ」

「信じる心をうばい取り、過去を否定する。新たな信じる思いは人々を先導するだろう」

 大地は微笑ほほえんだまま静かにうなずいた。

「ど、どう言う事だ?」

 大地とアクーのやり取りにまったくついて行けないガイが便秘べんぴでも起こしたような声でいた。アクーは静かに大地から目をらすと、ガイにこたえるように話し始めた。

「オヤシロサマにその死を預言された狩人かりゅうどの死体が見つからなければその真相しんそう曖昧あいまいなままだ」

「だから?」

 ガイがますますいらついた声を出す。釈然しゃくぜんとしない何かを感じ取った他の仲間達は皆黙っている。

「それを明確にさせる為には動かぬ証拠が必要だ。それこそがまんま狩人かりゅうどの死体だとしたら…」

 話しながらも考え続けていたアクーがポツリと言った。

「どうしたの?アクー」

 そこから先を言おうとしないアクーにココロが呼びかける。アクーは顔を上げみんなの顔を見た。

「今、大地と話していて感じたんだけど。フェズヴェティノスはなぜ狩人かりゅうどを付けねらうんだと思う?」

「あいつらは見境みさかいなく人をおそうのよ」

 ココロが嫌悪感けんおかんき出しにして答えた。悪夢の中で、まさしく奴らは無差別むさべつに人と見ればおそい掛かり、引き裂いていた。

「でも見境みさかいなく、じゃない。あいつらは間違いなくしつこい程 狩人かりゅうどだけをねらっていた」

 アクーの言葉に全員が一瞬言葉を失った。

「それは、ほら、ポーラーも言っていたけど、あれじゃない?一度 ねらった獲物えものがさないぞ的な?」

執念深しゅうねんぶかい野生動物の習性しゅうせいとか?」

 ココロの答えにキイタも補足ほそくする。二人の言葉を聞いたアクーは素直にうなずいたものの、今一つに落ちない様子ようすだ。

「うん…、そうかもしれない。だけど…、何だか僕にはフェズヴェティノスの奴らが、まるでオヤシロサマの預言を実現させる為に行動しているような、そんな風に思えたんだ」

「え?じ、じゃあ何?オヤシロサマとあのフェズヴェティノスがグルになってるって事?」

「それな」

 ココロが意外そうに言うと、すぐに大地が我が意を得たりと言った具合に指を鳴らした。

「何だ?どれがそれなんだ?大地」

 聞いてくるガイの顔を見ながら大地が答える。

「うん例えばなんだけど、今ココロが言った事を一つの仮説として考えてみたらさ」

「私が言った事って?オヤシロサマとフェズヴェティノスがグルって事?」

「そう。仮にそう考えれば、もっと話しは簡単にならないかな?いい?俺達はオヤシロサマには不思議な能力がある、って言う前提ぜんていで今まで考えてきたじゃない?」

 じゃない?と投げかける大地に即答そくとうできる者はいなかった。アクーだけがうなずきながらそれに答える。

「そうだね。オヤシロサマには不思議な力があって、五人の狩人かりゅうどの死を預言したのだと」

「その不思議な力があって、って言う前提ぜんたいを全部なくして、オヤシロサマはとんだペテン師野郎だと考えてみたらどうなる?オヤシロサマは狩人かりゅうどの死を預言しただけで、フェズヴェティノスの出現を預言した訳じゃない」

「村人はまだフェズヴェティノスの存在を知らない。森に入った狩人かりゅうど達は正体不明の何かしらの力によって惨殺ざんさつされたのだと考えている」

「これが、がけから落ちたとか、病気になったとか、そう言う事で預言が当たったのならオヤシロサマの能力を信じる事はできる」

「でも、そうじゃない」

「うん」

 大地とアクーは他の仲間を置いたまま考えをぶつけ合った。二人の早すぎる思考しこうに他の誰も口をはさすき見出みいだせずにいた。

「これが…」

 ついに結論、とばかりに大地が真剣な声を出す。

あらかじめ仕組まれた預言であったとしら…」

あらかじめ?」

 シルバーが怪訝けげんな顔でき返すが、答えたのはアクーだった。

「つまり始めに預言ありきって事。まずオヤシロサマの預言があって、その後でフェズヴェティノスがその預言が現実になるように行動すれば…」

「だけど」

 大地とアクーのやり取りにようやくキイタが口をはさんだ。二人は同時にキイタの顔を見た。

「だけど天候とか、作物のできとか、そう言う事はよく当たるってポーラーが言っていたわ」

「野生動物は…」

 キイタのもっともな疑問に大地が答える。

「天候の変化や大規模な地震を予測する事ができるって聞く。食料を得たり、危険を回避かいひする為に一種の予知能力を身に着けているって」

「奴らは獣の習性を持っている。その程度の預言はできたんだ。人間がとっくに失ってしまった自然と共存する為の能力を身に着けていたんだよ」

 アクーが確信的かくしんてきに言い切った。

「その獣習性じゅうしゅうせいに人間のような知性を組み合わせれば、天候の事位はそれっぽく言えたんだよ!だけど人の生き死にに関わるような事までは予知できない。そこでフェズヴェティノスを実行部隊に仕立てて、あたかも預言が当たったかのように見せていたんだ!」

 アクーは何かにかれたように話し続けた。

「待って、待って!それでもまだ疑問は残るわ!」

 一気に結論に辿たどり着こうとするアクーをキイタがもう一度押しとどめた。

「じゃあ、じゃあ何でフェズヴェティノスはオヤシロサマに協力するの?三種の魔族として圧倒的な闇の力を手に入れた彼らが、一預言者の言いなりになって特定の人間の命を狙うなんて、それで彼らに一体どんな利益があると言うの?」

「それは…」

 キイタの反論にアクーが言葉を詰まらせた。しかし何の事はない、と言う調子ですぐに大地が答えた。

「それは簡単、オヤシロサマもフェズヴェティノスなんだよ」

 大地の答えにキイタは勿論もちろん、アクーまでもが驚いた顔を見せた。

「ヤック村は観光に力を入れているんだろう?しかもその目玉はオヤシロサマの言葉卸ことばおろしの儀式だ。信仰者しんこうしゃが増えれば、いずれ国をも動かす大きな力になる。そうなった時もしオヤシロサマが三種の魔族の一種であったなら…」

 大地は一度言葉を切り、勿体もったいぶった言い回しで続けた。

「この国は魔族の意のままだ」

「そいつぁまずい!だったらそのペテンのオヤシロサマも一緒にぶっ殺しちまえば…」

「待て、待て馬鹿者!黙れ!」

 短絡的たんらくてき豪快ごうかいな声を上げかけたガイを、シルバーがきびしく制した。

「バカって…」

 ガイの抗議こうぎを無視したシルバーが大地とアクーを見ながら言う。

「大地、お前の言う事はわかる。確かに今二人が言った通りだとすれは辻褄つじつまは合う。しかしこれはあくまでも仮定の話だ」

「そうだね、証拠は何もない」

 大地がしれっとした声で言い返す。

「ならばこれ以上の討論とうろんは無用だ」

「じゃあ、どうする?」

 そう言われたシルバーは戸惑とまどったような顔でアクーを見た。決意を込めた青い目が自分を見返してくる。その目の力に押されたようにシルバーは今度はココロを見た。しかしココロは何も言わず、シルバーの判断を待った。

「いずれにせよ、フェズヴェティノスの殲滅せんめつは私達の目的でもある訳です。そう、ですよね?」

 ココロが無言のまま力強くうなずくと、シルバーは一つ息をつき、みんなに向き直って言った。

「前言を撤回てっかいする。ヤック村に向かい、オヤシロサマとフェズヴェティノスの関係について調査しよう」

 シルバーの言葉にアクーの顔が晴れ晴れと輝いた。

「ただし!ただし、調査の結果その疑いがないとわかれば、その時は…」

「わかっている。一国民の選択に、僕らANTIQUEの能力者が関わる事はない。即時クナスジアを目指して出発する、そうでしょう?」

 アクーに次のセリフをうばわれたシルバーは半端はんぱうなずいた。

「よ~し、そうと決まりゃ出掛けようぜ!いざ、ヤック村!考えてから動く奴とはどうもしょうが合わねえ!」

 そんな捨て台詞ぜりふを残してガイはすごい勢いで荷物を担ぎ直すと、馬に向かって歩き始めた。

「まったく、つくづくあれと相性がいいって言うのがに落ちない!」

 ガイの向かった先を見つめながらアクーが不快気ふかいげな声を聞いた大地が派手にき出した。そんな大地を見つめアクーも笑った。

「大地」

 ガイに続いて他の仲間達もそれぞれ出発の為に動き始めた。荷物を手にした大地に向かい、アクーが改まった声で彼の名を呼んだ。

「ん?」

 顔を上げると、アクーが嬉しそうなみを浮かべて自分を見返していた。

「ありがとう」

 そう言われた大地も同じように微笑ほほえんでうなずくと、アクーに向かって力強く言った。

「行こう!」

















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