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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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大地復活

●前回までのあらすじ

 テリアンドス帝国とイーダスタ共和国。その国境付近で繰り広げられた戦闘で負傷した大地がようやく目を醒ました。今日まで共に旅を続けて来たココロ、シルバー、キイタ、ガイの四人はそれに歓喜した。

 一方キイタからポーラーの本心を聞かされたアクーはその真意を問うべく話そうとするが余りにも寂しそうなポーラーの表情に全てを聞き出す事ができなかった。

 自分が意識を失った後の話しをココロやガイから聞かされた大地はクロムの攻撃の前に倒れる以前に抱いた疑問をシルバーにぶつける。それはエクスヒャニクを倒す為に融合したテテメコとデュールの能力ちからの事だった。それをシルバーは「相乗効果」と呼んだ。

 ANTIQUEの能力を組み合わせる事で生まれる新たな力…。その可能性に能力者達は今後の戦いに一筋の光明を見出すのだった。







「腹減った―、はーらーが減ったなー、腹減った~」

 大地は毛布の上でゴロゴロしながら今の気分を妙な節回ふしまわしで言葉にしていた。大地が目覚めてから二日が経過していた。

「うるさいなぁ、今昼を食べたばかりじゃないか」

 アクーが眉間みけんしわを寄せて言い返す。

「昼?あれが昼?あんなの食べた内に入らないよー」

 大地が言うとアクーは大きなため息をついた。

「いいかい大地?君は絶食明ぜっしょくあけなんだよ。いきなり気の済むまで食べたりしたら、けてもいい絶対に腹痛を起こす」

「わかった、わかったよ、もう」

 大地はつまらなそうにねた声を出すと、わざとらしくため息をつき天井を見上げた。

「たーいーくーつー、あ~たいくつだぁー、たいくつだ」

 食べ物はもらえそうもないと知った大地は、今度は動けない事の不満を歌にして披露ひろうし始めた。

「仕方ないだろう怪我人けがにんなんだから!今君はエネルギー切れで、きっと骨も弱っている。せめて今日一日は絶対に安静あんせいだ!」

「じゃあエネルギーをくれぇ」

「くどい!一気に接種せっしゅすれば内臓がいかれる。わかってよ、ゆっくり元にもどすしかないんだ」

「あー、つまんない。あーあ、つまんないな~」

 大地は再び寝ころんだまま体を左右にらしてぼやき続けた。

「あ、そうだ」

 突然大地は何かを思いついたように言うと勢いよく起き上がった。

「トイレ、トイレに行きたい」

 それが動きたい大地の言い訳だと察したアクーはため息をつきつつ言った。

「わかった。その代わり終わったらまたおとなしく寝るんだよ?」

「了解!」

 大地は答えるといそいそと立ち上がり外へ出た。軽い足取りで自分の横をすり抜けて行く大地の背中を見ながらアクーが再びため息をつく。

「まったく、おとなしかったのは目が覚めた時だけだな」

 不良患者ふりょうかんじゃなげくアクーのそんなつぶやきに、キイタがクスリと笑い声をらす。

「あんなに元気なんだ、もう飯を食わせてやったらどうだ?」

 大地の出て行った方を見ながらガイが言う。

駄目だめだよ」

 アクーがすぐに却下きゃっかするがガイも食い下がった。

「アクーが心配するのもわかるけどよ、大地だってANTIQUEの能力者だ。回復力は並みの人間とは違うぜ?」

「冗談じゃないよ。怪我けがの回復が早いのは認めるけど、いくら能力者だからって肉体自体が変化している訳じゃない。ANTIQUEがついているから大丈夫だなんて過信すると普通に死ぬんだからね?」

「わかったわかったよ」

「大体、大地は君みたいな筋肉ばかじゃないんだから。今まで特別な訓練を積んできた訳でもないんだし、元気そうに見えてまだ内臓は弱っているはずなんだ」

「とてもそうは見えないけどね」

 ガイを説得するアクーの説明にココロが口をはさむ。

「そりゃぁ…」

 アクーは急に自信なさげにトーンを下げると、もう一度大地が出て行った方を見ながら言った。

「今の大地を見る限り、僕も自信はないけど…」

 その言葉に、キイタが今度は遠慮えんりょなく大きな笑い声を立てた。



「いや~、やっぱ外はいいなぁ」

 大地は数日振りに肌に感じる太陽の熱を体いっぱいに受けながら大きく体を伸ばした。午後になっていた。秋の色を見せる太陽はすでに頂点を越して西にかたむいている。

 用を足したらすぐにもどれと言うアクーの指示に返事はしたものの、久しぶりに自らの足で地に立った大地は素直にそれに従う気はなかった。

 しばらくその場にたたずみ森を渡る風を顔に受けながら心底満足げな顔の大地は、ふと周囲に目を走らせた。

 大分離れたやや開けた場所で、シルバーが剣を振るっているのが見える。自分自身、大きな怪我けがを負ったにも関わらず、彼はすでに戦闘の準備を始めている。それが大地の抜けた穴をめようとするシルバーの覚悟の表れのように見え、むしろ大地の闘志に火をつけていた。

 大地に負担をかけさせまいと奮起ふんきするシルバーの姿に、わずかでも戦力になろうと言う決意を大地は固めていた。そのために一日でも、一時間でも早く元の体にもどり、戦線に復帰しなくては。そう考えた途端とたん、大地の右腕が薄黄色の光を放ち始めた。

「テテメコ…」

 足元の小石が浮き上がる。浮き上がった石が胸の高さに挙げた大地の右腕に集まり始めた。このままその腕を包み込み、守ってよし、殴ってよしの強固なプロテクターを形成するのがいつもの大地の戦闘スタイルだ。

 しかし、自分の周りを浮遊ふゆうする石の群れを見つめていた大地は、ふと思いつきで近づいてくる石の集団をけるように右腕を回してみた。

 大地が右腕を動かすと、それを追いかけるように石もまた浮かんだまま移動した。それを見た大地が、今度はその腕を腰の辺りに引くと、やはり石達はそれについてきた。

 大地は体ごと回ってみる、その動きに合わせ数十個の石が大地の体の周りを取り囲む。しかも大地が腕を振るうたびに新たな石が浮き上がり、同じようにまとわりついてくる。

 くるくると大地が回るごとに、まるで磁石じしゃくに引き寄せられた鉄片てっぺんのように石が浮き上がってくる。小さなつぶてを引き連れてダンスをおどっているようだ。

(イメージして)

 突然大地の頭の中にテテメコの声が響いた。

「イメージ?」

 体の動きを止めないまま大地がき返す。

(僕の力であやつれない石はない。大地の望む通りに、石も、土も、岩も、砂も全てが応える)

 それを聞いた大地は、突然動きを止めると、勢いよく右手を体の前へ突き出した。その瞬間、今まで大地の動きに合わせて浮かんでいた大小の石達が一気に集まり、大地の目の前で静止した。

 丸い形に隙間すきまなく集まった石達は、まるで大地を守る強固なたてのようだった。その形のまま石は地に落ちることなく空中にとどまっていた。

 自分の能力ちからあやつっているにも関わらず、目の前で起きている現象に大地はおどろいて目を見開いた。おどろきながらも大地は、そのまま右手を体に引き付けるように引いた。

 シールドを形成けいせいしていた石の集団が、ふるふると震えながらその動きに合わせて大地に近づいてくる。大地が右腕を高くに突き上げると、新たな石を巻き込みながら大地の頭上に石の柱を形作った。

 手を高く上げたままキョロキョロと周囲を見回した大地は、先にえる大木を見つけると、それに向かって素早すばやく右腕を振り下ろした。

 大地の上に集まっていた石が、すさまじい勢いで大木めがけて飛んでいく。まるで機関銃きかんじゅう一斉掃射いっせいそうしゃのように、かたい石くれ達がねらい通り大木のみきたたいた。

 木のみきに当たり派手はでに周囲に散らばっていく小石の弾丸に混じって撃たれた木の破片はへんが飛び散った。

 全ての石が地に落ちると、大地はたった今自分が起こした現象の威力いりょくに驚いて自分の右手を見つめた。まだ薄く光をまとった手は、何の変哲もない十七歳の少年のものだった。

「今のが君の能力?」

 突然背後から掛けられた声に大地が振り向くと、そこには弓を持ったアクーとガイが立っていた。大地は戸惑とまどったような笑いを顔に浮かべながら答えた。

「そうみたい…。俺も初めてやってみたんだけど…。まるでガトリングだ」

「大地、すげぇなお前…」

 いつから見ていたのか、ガイも唖然あぜんとしたような声で言った。

怪我けがが治ったらパワーアップしたんじゃないか?」

「確かにすごい威力いりょくだ」

 ガイのつぶやきにアクーも素直に賛意さんいを示した。

「敵を倒せないまでも、足止め位は十分にできそうだね。しかも弓矢と違って一度にたくさんの敵を相手にできる。僕の弓は矢がきればそれまでだけど、石なら無限になくなる事もない」

 片手に持った体に似合わぬ大きな弓を持ち上げながらアクーが言う。

「ANTIQUEの能力…、一体どこまで強くなれるんだろうか?」

 アクーとガイに口々に賞賛しょうさんされながらも、突然 会得えとくした能力に大地はうすら寒い思いすら感じた。

「出掛けるの?」

 自分の力に呆然ぼうぜんとしていた大地が思い出したように二人に話し掛ける。改めて見れば、アクーはすっかり狩人かりゅうど様相ようそう身支度みじたくを済ませていた。

「うん、少し周囲を見回って来る」

「え?晩飯を獲りに行くんじゃねえの?」

 ガイが意外そうな声で言う。

「俺ぁまた狩りに行くんだとばかり思ってついて来たんだが」

「この間は何とかジュラモンスターを追い払ったけど、あれで奴らがあきらめるとも思えないし」

「なんだ、そうなのか」

 少し残念そうな声を出すガイに顔を向けてアクーが言う。

「ガイ、むしろ今夜のおかずは任せていいかな?」

「お、そうか?よーし、任せろ!今日こそ俺もすげぇのをってきてやる!」

「その前に…」

 意気込いきごんで答えたガイに、アクーの冷静な声がかぶさる。アクーは言うと同時に大地の襟首えりくびつかんで引っ張った。

「イタタ、何?」

 突然乱暴なあつかいを受けた大地の抗議こうぎを無視してアクーはガイに言った。

「この聞き分けのない患者を布団ふとんに押し込んできて」

「お、おう」

 大地の両肩を受け止めたガイが慌てて答える。

「それじゃ」

 アクーが二人に背を向けると、大地がその背中に向かって声を掛けた。

「アクー」

「ん?」

 行きかけたアクーが大地を振り返る。

「君が時々言うジュラモンスターって、何?あの、フェ、フェイズ…」

「フェズヴェティノス」

 ガイがそっと耳打ちをする。

「そう、それの事?」

 聞かれたアクーはニヤッと笑うと大地から離れながら背中で答えた。

「ジュラって言うのはこの辺りで相手をさげすんだ言い回しなんだ。どうでもいい存在、特に注目すべき何もない相手…。つまり、雑魚ざこって事だよ」

 言うとアクーは地をり、一瞬にして巨大な木を渡りながら空を飛ぶように森の中に消えて行った。

「優しくて、強くて、かしこいけど…。口悪いよね、アクーって」

 ガイに両肩を支えられながら、アクーの消えたこずえの先を見つめつつ大地がポツリとつぶやくとガイが派手はでに吹き出した。

「そうだろ?そう思うよな?とは言えあいつの言う事はいちいちまっとうだ。それがまた腹が立つ時もあるんだがな。とにかく間違った事は言わない奴だ。だから言う事聞いて、お前はもう少し横になってろ」

「うん」

「俺は獲物えものって来る」

「気を付けてね」

「期待してろよ~」

 そう言うとガイはいさんで森の中にけて行った。その背中を見送った大地はふっと笑いがこみ上げてくるのを感じた。

 ガイ、シルバー、キイタ、そしてココロ…。自分が寝ている間にもう一人、アクーが増えていた。殺伐さつばつとした戦いの中に身を投じたはずであったが、大地はもう一度この仲間達と元気に会話できる事に幸せを感じていた。

 特にガイの存在は貴重だ。戦闘力としてだけではなく、その明るく悩まない性格はどんな苦境に立った時でも場を和ませてくれる。

 しかし、そんなたのもしいガイがこの後に絶望的な危機におちいる事になるとは、この時の大地には予想すらできなかった。



 大地がもどると、どこへ行っていたものかポーラーが床に座って矢じりの手入れをしていた。ポーラーは入ってきた大地を見るとニッコリと微笑ほほえんだ。

「すっかり元気になったみたいだね?」

 優しい声で大地に話し掛けける。

「ああ、うん。お蔭様かげさまですっかり元気!」

 そう言って大地は力んだ顔つきで両手を上げ、力こぶを作る仕草して見せた。ポーラーは笑顔のまま何度もうなずいた。

「でも、寝てなきゃ駄目だめってアクーに言われたでしょ?はい」

 キイタがこっちへ来いとばかりに地面にかれた毛布をたたく。

「わかってるよ、子供じゃないんだから」

 大地はしぶしぶ々と言った様子ようす布団ふとんに入る。

「ガイとアクーは?」

 大地が横になると、ココロが聞いた。

「ガイは狩りに出かけた。アクーはパトロールだって」

「パトロール?」

「フェ、え~、フェズベテノス?ティノス?またあれが来るかもしれないからって」

「ふーん」

 大地達がそんな会話をしていると、コトリと音を立ててポーラーが手にしていた矢じりを床に置いた。三人が見ると、彼はとても困ったような顔で三人を交互に見た。

「どうしたの?ポーラー」

 キイタがたずねる。

「あ~~~」

 ポーラーは何かを言いたそうにポリポリと頭をいていたが、ふいに顔を上げると話し出した。

「ちょっと、話しが…」

「話し?」

「うん…」

「アクーがいては都合つごうの悪い話なの?」

 ココロの疑問にポーラーは顔を上げると、歯切れ悪く答えた。

「いや、必ずしもそうではないんだが…」

「シルバーもいた方がいい?」

 今度は大地がく。

「そう、かな?どっちでもいいんだが…」

「じゃあ、私呼んでくる」

 そう言うとココロは素早すばやく立ち上がり明るい表へ走って出て行った。突然何事かと目を見交わす大地とキイタの前で、ポーラーは気まずそうに目を泳がせていた。

「お待たせ」

 無言で待っていると、程なくしてココロがシルバーを連れて戻ってきた。

「どうしたポーラー?私達に話しがあるとか?」

 剣を立てかけながら言ったシルバーが、どっかりと話しの輪の中に腰を下ろす。全員を目の前にしてもポーラーはなかなか決心がつかない素振そぶりでしばらくもじもじとしていたが、自分の顔を見つめて続きを待っている四人を見るとうなずき、意を決したように話し始めた。

「よし、じゃあ聞いてくれるか?」

勿論もちろん、俺らでよければ」

 布団ふとんの上に胡坐あぐらをかいた大地が答えると、ポーラーは一つため息をつき、それから顔を上げて話し始めた。

「俺が、旅人だと言う事は前にも話したな?」

 話し始めたポーラーの言葉に、ココロとキイタが無言でうなずく。その様子ようすを見たポーラーはそれに勇気をもらったように続けた。それは、ポーラーがこの森へ入った時の話しだった。















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