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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
63/440

別れ

●登場人物

・アリオス…元公軍隊士。ANTIQUEの存在を知る数少ない人間。ココロを助ける為ンダライへの亡命を決意する。

・ロズベル…境界第二警備小宮付き第二警備隊の隊長。第三警備隊の隊長だったシルバーとは同僚だった。

・ウルカ…アスビティ公国公軍大臣であるケシミの三女でありデューカ守備隊第三分隊長。アリオスに頼まれ父親の周囲からアテイルの存在を調査する。

・ブルー…特別行動騎馬隊、第二警備隊と常にシルバーの部下として働いた男。シルバーが全公軍隊士の中で最も信頼する男。

・パッキオ…アリオスの部下。ガイが去った後のチームではアリオスを補佐する副リーダーとなっている。

・ハリス…アリオスの部下の中では最年少。荒くれ者のメンバーの中では比較的冷静で頭脳派。

・コスナー…チームの中堅。若手のよき兄貴分。腕力と先読みの能力に優れている。山岳地帯の出身。

・エミオン…アリオスの部下。チーム一の俊足で火薬の扱いが得意。

・マルコ…アリオスの部下。ハリスに次いで若年のメンバーだが剣の腕は上位。

・ユーリ…アリオスの部下。コスナーと同郷でロープ術に長けている。



●前回までのあらすじ

アリオスは重症を負ったブルーが休む部屋でロズベルから公国内でのアテイルの活動について報告を受けた。そこへデスターの遺品を敬納する式典を終えたパッキオ達が合流する。その中にはウルカの姿もあった。アリオスはロズベル、ウルカ、ブルーに向けANTIQUEの能力者達とンダライの代行執政官であるポルト・ガスから聞いた話しを打ち明ける。余りの衝撃にその話しを信じきれないウルカを説得したのはブルーであった。納得したウルカは公軍大臣である父親の周囲を調査した結果をアリオス達に報告した。ロズベル、アリオスそしてウルカの話しを総合した彼らはアテイルの不気味な企みについて推理を展開する。










「ここまでだな」

 ぼそりとアリオスがつぶやく。部屋にいた全員が顔を上げた。誰もが何が「ここまで」なのかと聞きたそうな顔をしていた。

「想像のいきを出られないのであれば、これ以上考え続ける事にさして意味はない。それでもとにかく、このアスビティの中で何かしらの動きが見られるのは確かだ」

 これには全員が納得なっとくしてうなずいた。

侯爵閣下こうしゃくかっかの言葉を伝える」

 部屋にいる全員に向かって、アリオスが唐突に言い出した。

侯爵閣下こうしゃくかっかは、ブルー殿が命がけで守り抜いた姫の書状をお読みになり全てを承知しょうちされている。承知しょうちした上でなお動けずにいるのだ。姫は今はまだ動かず国内に入り込んでいる敵をあぶり出すよう手紙の中でおっしゃっておられた様子ようすだ」

「さすがは姫だ。全てお見通しと言う訳か」

 ロズベルがつぶやく。

「問題は、それを知った我々の今後だ」

「俺は…」

 一番に口を開いたのはロズベルだった。

「明日、第二小宮へ戻る。一緒に来た連中もな」

「第二小宮の復興ふっこう作業だな?」

「ああ」

「だったらロズベル、頼みがある」

「え?」

 アリオスの言葉にロズベルがきょとんとしたような顔を向ける。

「ウルカ殿の話からすでに敵の手が回っている事はわかった…。第二小宮の復興ふっこうに参加するならば頼む、どんなものでもいい、奴らがそこにいたと言う証拠しょうこを見つけてほしい」

 アリオスがそう言うとロズベルはベッドから立ち上がり力強くけ負った。

「任せておけ、何が何でも奴らの尻尾しっぽつかんでやる!」

 アリオスはそんなロズベルを見つめうなずいた。

「アリオス、そう言うお前は?」

「俺は…」

 後ろからパッキオにたずねられたアリオスは彼の方を向き答えようとした。しかし、その後を続ける事ができなかった。

 するとパッキオがそれを見越みこして代わりに答えた。

「やはり、さっき侯爵こうしゃくに言った通りンダライへ?」

 アリオスは小さくうなずきながら言った。

「ああ、俺はンダライへ行く」

「ンダライへ?なぜ?」

 ウルカがおどろいた声を上げる。

「ンダライのポルト・ガス代行執政官殿は、ココロ姫と同じくANTIQUEの戦士として旅をされているキイタ第二王女を援護えんごする為戦う覚悟を固めておられる。私は彼の元へ行き、いつでも決起けっきできるよう準備を進める」

「だったら!」

 突然マルコが声を上げた。

「俺も連れて行ってくれ!」

「マルコ…だがお前、せっかく国に帰って来たんじゃないか」

「今のこの国に、俺の居場所はない…」

 両親と姉夫婦の暮らす家で気まずい思いをした事がマルコにそう言わせていた。

「しかし…」

 なおも言うアリオスにマルコは今までに見せた事のない決意のこもった顔で言い返した。

「約束したろ?何があっても、どこにいても俺達はあの人達の為に戦える時が来たらいつでも立ち上がるんだって。だったら俺だってその日にそなえておきたい。なぁ頼むよアリオス、一緒にンダライに連れて行ってくれよ」

 アリオスはしばらくマルコの顔を黙って見つめていたが、やがて小さく息を吐くと言った。

「わかった、一緒に行こう」

「ありがとう」

 マルコは心底ホッとしたように笑うと、嬉しそうに言った。

「俺は、どうしたらいい?」

 パッキオがアリオスに聞く。アリオスはマルコからパッキオへ視線を移した。

「俺はもうお前の上官ではなくなる。自分で決めろ」

 アリオスがそう言うと、ほんの一瞬空を見つめるように目線を彷徨さまよわせた後パッキオはゆっくりと言った。

「俺はここに残る。もう一度騎馬隊に入隊し隊士をきたえる。国の中に入り込んでいる敵も見つけたいし、すでに侯爵様が承知しているとは言え、まだ動けないブルーの身も心配だ」

「ブルーを頼めるか?それなら俺も安心なんだが」

 ロズベルがパッキオを見て言う。パッキオはそんな彼を見て黙ってうなずいた。

「アリオス…」

 おずおずとした感じでエミオンが話しかけてくる。

「その…ごめん。俺もやっぱりここに残るよ。パッキオと一緒に騎馬隊に戻る」

 それを聞いたアリオスは優しい顔で微笑ほほえむと答えた。

「謝る必要なんかない、お前が決めた事だ。お前には守るべき家族もいる。ここでパッキオと一緒に調査を進めてくれ。決起けっきに早って国を出る俺こそ、謝るべきかもしれん」

「そんな…」

「エミオン、アスビティを頼む」

「うん」

 エミオンが答えるとアリオスはコスナーに顔を向けた。その視線に気が付いたコスナーが聞かれる前に話し出した。

「さっきユーリとも話したんだが、俺達はやっぱり一度故郷へ帰るよ。両親に会って来る」

「当然だな」

「その後の事まではあまり考えていなかったんだが…。まあ、俺らもまた騎馬隊に戻るかな?」

 何となく照れくさそうにコスナーが言うと、ユーリが後を次いで話しだした。

「ちょっと家にいたいんだ…。でもしばらくしたら必ず戻るよ」

「そうか。いいじゃないか。親孝行をして体を休めて来い。慌てる必要はないんだ。俺らにしても今すぐに戦える訳じゃない」

 そう言うとアリオスは再び全員の顔を見回しながら言った。

「思うのだが…、ンダライに比べアスビティへの敵の侵攻しんこうはるかにゆるやかに感じる」

「それは何故なぜ?」

 エミオンがく。

「わからないが。姫の話ではンダライには敵の四天王と呼ばれる首領格の一人が入り込み、あの王国を破綻寸前はたんすんぜんにまで追い込んだとか…。まぁ、姫達のお陰でそれは食い止められた訳だが、それに比べるとアスビティはまだんダライのような実質的じっしつてき被害が出ていない」

 全員が黙ってアリオスの次の言葉を待った。

「それは恐らく、ンダライに比べてアスビティが世界に影響をおよぼす程の大国ではないからではないかな?ンダライ攻略こうりゃくの為に隣国であるアスビティにも兵士を配置した程度の考えだったのではないかと俺は思うのだ」

 なるほど。確かに貿易実態ぼうえきじったいなどを見てもンダライは大きい。その政策を手中しゅちゅうおさめるだけで世界経済の均衡きんこうるがす事ができる。

 そうであるならば、その他 再三さいさん名前の挙がっているクナスジアやフェスタルドと言ったンダライをも凌駕りょうがする超巨大国から敵の侵略しんりゃくが始まっていくのは当然と思えた。

「ただ、後になってアスビティ公国令嬢であるココロ姫がANTIQUEのおさである“始まりの存在”である事がわかり、更にンダライ攻略こうりゃくに失敗した今になってにわかにアスビティの存在が重要な拠点きょてんとして見直されたのではないのかと、そんな風に感じるのだ」

「お見事です」

 ウルカが感動したような声を出しながら素早く立ち上がった。

「見事な推察すいさつですアリオス様」

「いや、思い付きですが」

「いいえ、きっとアリオス様の言う通りだと私も思います。私は、私はもう一度騎馬隊への編入へんにゅうを申し出てみようと思います」

「その事ですが」

「え?」

「ウルカ殿はデューカ守備隊では何分隊をひきいいておいでか?」

「私の所属は…第三分隊です」

 それを聞いた瞬間、部屋にいる男達は素早く目を見交わした。

「第三分隊と言えば…」

「はい、第三、第四分隊は最も閣下かっかのお近くにひかえる分隊です。先陣せんじんを切って敵と切り結ぶ事もなく、身をていして殿(しんがり)を務める事もない…。有事ゆうじの際は真っ先に閣下かっかを連れて安全地帯まで避難ひなんするのが役目です」

 ウルカは自嘲じちょうするように口のはしを引きつらせながら続けた。

「逃げるのが役目とは…。私は敵をこの手で殲滅せんめつしたい!」

「しかし…」

 アリオスが何気ない風に話し始めた。ウルカはそんなアリオスの顔を見る。

「今までの話を聞いた上でなお、騎馬隊への異動を希望されるか?」

 ウルカは眉間みけんしわを寄せ、怪訝けげんそうな表情を作った。

「身内に敵がいるとしたら…。今、もっとも疑わしいのはギース外務大臣。しくは、お父上の補佐官であるチャーザー。あるいはそのいずれもが敵である事も考えられる」

 ウルカはアリオスが何を言いたいのかと、ますます首をかしげた。

「ブルー殿暗殺をくわだてた実行犯は治安部隊の隊士の姿をしていたそうです。閣下かっかのすぐそばに敵がいるのだとしたら、今、閣下のお命をお守りする為にもっとも危険な役目にくのは、守備隊の第三、第四分隊…。そう、ウルカ殿、あなたの隊の隊士達ではありませんか?」

 そう言われてウルカはようやく気が付いたようだった。

閣下かっかを頼みます」

 今現在、自分が誰よりも危険な場所にいる事を知ったウルカはまだ茫然ぼうぜんとしたように目を泳がせていた。

「私は…」

 アリオスとウルカの会話が終わるのを待っていたように、ブルーが力ない声でつぶやいた。アリオスが彼の顔を見る。

「傷がえた暁には、もう一度騎馬隊へ戻りたい…。もともと警備隊には、シルバー隊長の推薦すいせんがあって共に異動したのです。隊長のいなくなった今、私も騎馬隊に戻り、その日の為にそなえたい」

「そうか」

 答えたのロズベルだった。

「シルバーは本当にお前を買っていたんだな。よし、わかった。俺が騎馬隊に戻れるよう推薦状すいせんじょうを書いてやる。何、元は騎馬隊々士だったのだ、問題なく辞令じれいりるだろうよ」

「すみません」

「とにかくブルー殿は一日も早くけがを治す事だ」

「はい」

 アリオスの言葉にブルーは素直にうなずいた。それに軽くうなずき返したアリオスは、背後の入口付近へ顔を向けた。そこにはハリスが立っていた。

「ハリス…」

 ハリスは顔を上げアリオスを見た。

「お前もやはり、アスビティに残るんだな?」

「そうだね、親父やお袋もいるし」

「もう隊士にはならないか?」

「いや、隊には入るよ。ただ…」

「ただ?」

 ハリスはそれには答えず、アリオスの後ろに立つウルカに目を向けた。

「ウルカさん…」

「え?」

「俺をあなたの隊に入れてはもらえませんか?」

「ちょ!ちょ!ちょっと待ったぁ!」

 ハリスが言った途端とたん、エミオン、ユーリ、マルコの三人がハリスに飛びつくようにけ寄ると、ささやくような声で抗議こうぎを始めた。

(お前ってば、それはないんじゃないですか?)

(いくらなんでもずるいでしょうよ?)

随分ずいぶん大胆だいたんなところ行ったもんだねぇ、おい)

 三人が次々に文句もんくを言うのにハリスも小声で言い返した。

(ああ、ずるいがどうした。今まで俺がそんな事言ったためしがあるか?)

 エミオンとユーリとマルコは、ふと記憶をさぐるように目線を泳がせた。最年少と言う事もあったが、元々ハリスは若い連中の中では大人しく、積極的に女性を求めるような事もなかった。

 他の連中が飲み屋の女や食い物屋の給仕娘きゅうじむすめをからかっている時もいつもそれには加わらず静かに笑うだけだった。

 三人とも、どう記憶をひっくり返してもハリスが女の為にがつがつと動き回った姿を思い出す事はできなかった。

 その答えにいきついた三人を代表するようにエミオンがきっぱりと言った。

(ない)

(うん、ない)

(だろう?)

(いや、だからってお前これは反則じゃね?)

 一瞬 納得なっとくしかけたユーリがしつこく食い下がる。

(反則だろうがここは引けない。今回はゆずれ。これが最初で最後だ)

 そう言うとハリスは答えも聞かずに三人を押しのけるようにして前に進み出た。

「アリオスの言う通り、今現在最も危険をともなうのはデューカ守備隊、第三分隊だと俺も思う。そこに事情を知っている人間がもう一人いた方がいい。いくら同じ建物にいると言っても隊自体 ことなれば、そういつでも連絡が取れる訳でもない。騎馬隊は、またいつどこへ遠征えんせいに出るかもわからない。そうなれば国に残るのはウルカさんだけになっちまう」

「私はそれでも平気だけど…」

 そう言うウルカにハリスは微笑ほほえんで答える。

「私も共に、閣下のおそばにいたいのです」

「そう…わかったわ。でも、守備隊は出自しゅつじが…いえ、いいわ。とにかく入隊の希望を出しなさい。あとは私がうまく要請ようせいを出させます」

「よし、これで決まったな。ロズベルは第二小宮へ、俺とマルコはンダライへ、ウルカ殿とハリスは守備隊で閣下かっかの身を守る。あとの五人は騎馬隊に戻る…」

 まとめるようにアリオスが言うと皆それに合わせてうなずいた。それぞれに決意を秘めたその顔を見回してアリオスが言った。

「俺達十人は世界で初のANTIQUE 援護部隊えんごぶたいだ。皆それぞれの場所へ行き別の仲間の元で仕事をするだろうが思いは常に一つだ。ココロ姫を筆頭ひっとうに、ANTIQUEの能力者達がこの世界を守る為に戦うと言うのであれば、我らはこの身をしむ事なく影日向かげひなたにその大願成就たいがんじょうじゅの為、見事に働いてみせよう」

 アリオスの言葉を聞いた九人の仲間達は再び力強くうなずいた。その顔を見回した後、アリオスがこの情報 共有化きょうゆうかを目的とした臨時りんじ集会の閉会を提案した。

「よし、話は済んだ。一度に動くと人の目につく、一人ずつ部屋を出よう」

 しかし、そう言われてもすぐに動こうとする者はいなかった。本当は全員がこの仲間達の中でもっと話していたかった。新たな出会いの後、その別れは余りに早く、恐らくは長いものになると思われた。

 そしてそれ以上に、山賊として四年の歳月を共に過ごしたアリオス達七人はこの長い別れをなかなか受け入れられずにいた。

 それを察したアリオスは小さく微笑むと、ブルーを振り向き声を掛けた。

「ブルー殿、一日も早い回復を」

「何とお礼を言えばよいか…」

 力なく答えるブルーに笑顔を見せたアリオスはウルカとロズベルを交互に見た。それぞれ黙ってうなずき合うと、アリオスは彼らに背を向け先頭をきって出口へと向かった。

 とびらに近づく。ハリスがその勢いに押されるように身を引く。その手がとびらに伸ばされたその時だった。

「アリオス!」

 え切れずに叫んだのはユーリだった。

「アリオス!」

 続いてエミオン。アリオスがゆっくりと振り向く。

「ア、アリオス…」

 すぐ隣でハリスがつぶやく。チラリとその顔を見てから目を部屋の中に向け直す。コスナーが半歩近づく、パッキオも椅子いすから静かに立ち上がった。

 全員の顔を見る。国境の間抜けな山賊達…。アリオスの胸に、地獄の居留地きょりゅうちから彼らと共に駆け抜けたその後の四年間の記憶が怒涛どとうのように押し寄せていた。

 アリオスは不適な笑みを見せると、仲間の顔を一人一人見つめながら言った。

「みんな、次に会う時は戦場だ。シルバー隊長やガイ分隊長を助けよう。ココロ姫や、キイタ様を守ろう…。あぁ、ついでに大地の奴もな」

 そう言ってアリオスが軽くウィンクをすると六人は派手に吹き出した。

「ついではひでぇなぁ!」

「大地が聞いたら怒るぜ!」

 そう言って男達は派手はでに笑った。ブルーやロズベル、ウルカはそんな彼らなりの別れの時に立ち合い、黙ってその成り行きを見つめていた。

 アリオスも一緒になって笑った。自棄やけになったように男達は笑い続けた。その笑いが終わる時、それが別れの合図だ。

「アリオス!」

 パッキオが大きな声でその名を呼んだ。アリオスは笑顔のまま、禿頭の巨大な体格をした優秀な部下を見つめた。

「楽しかった!」

 アリオスは顔に笑顔を張り付けたまま、もう一度一人一人の顔を見た。エミオン、コスナー、マルコ、パッキオ、ユーリ、ハリス…。

 全員の顔を見たアリオスは、再びパッキオの顔に目線を戻すと静かに言った。

「さらばだ」

 それだけを言うとアリオスは素早すばやく背を向け、一気にとびらを引き開けるとそのまま二度と振り向く事なく部屋を後にした。

 残された者達はしばらくの間声をもなく、ただ黙って立ちくしていた。

「よし、俺も行くか」

 壁に寄りかかっていたコスナーが静かにつぶやくと出口に向かい、何も言わずにとびらの外へと消えた。

 それからしばらくしてコスナーを追うようにユーリが部屋を出た。

 目立たないように時間を掛け、ハリスが、そしてマルコが出ていく。我慢がまんの限界だったのだろう、声も出さないエミオンのほほに熱い涙が流れていた。

 それを隠すようにエミオンはパッキオの肩を一つ叩いて部屋を後にした。それを見送ったパッキオがゆっくりと出ていく。

 ブルーが見つめる窓の外は黄昏たそがが迫っていた。四年振りに生き返ったアスビティの隊士達が全員姿を消した部屋は異様いように広く、寒々しく感じた。

 ブルーが静かに起こしていた身を出口に背を向けて横たえた。それをきっかけに金縛かなしばりがとけたように顔を上げたウルカが何も言わずに部屋を出た。

 それからまだしばらくロズベルは黙って全員が出て行ったとびらを見つめていたが、やがてブルーの肩に蒲団ふとんをかけ直すとそのまま最後に部屋を出て行った。











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