帰国
●登場人物
・アリオス…元アスビティ公国特別行動騎馬隊第四分隊副分隊長としてシルバーやガイのもと働いた男。四年前の遠征を辛うじて生き残り、テリアンドス帝国領内で山賊として生活していた。
・ロズベル…アスビティ公国境界警備第二小宮付第二警備隊の隊長を務めている男。涙脆く人情家。
・パッキオ…アリオスの部下。巨漢、禿頭のその姿は恐ろしげだが極めて冷静かつ優秀な軍人。
・ハリス…アリオスの部下。医学の心得を持つチーム最年少者。
・コスナー…アリオスの部下。チームの中堅どころで若手の良き兄貴分。短気が玉にキズ。
・エミオン…アリオスの部下。火薬の知識を持つ若者。少々臆病な性格。
・マルコ…アリオスの部下。ハリスの次に若いメンバー。料理が得意。
・ユーリ…アリオスの部下。ひょうきん者でチームのいじられキャラ。
●前回までのあらすじ
クロムは、エクスヒャニクの攻撃を潜り抜け二手に分かれたANTIQUEの能力者達の事をゴムンガに報告すると、一人本拠地であるザシラルへと戻った。その際、土のANTIQUEを倒したと聞かされたダキルダは驚きに唖然としていた。
夜明けと共にココロ達の元へ帰ろうと一夜の宿とした洞窟を出たキイタとガイであったが、森の中の道は複雑に入り乱れ、なかなか方向を定める事が出来ずにいた。そんな二人の前に、美しい目を持つ一匹の犬が現れる。前を行く犬が道案内をしているように見えると言うキイタの言葉に、半信半疑ながらもガイはその後に続いて馬を進め始めた。
一方、夜の内にイーダスタ共和国へと入ったココロ、シルバー、そして未だに意識の戻らない大地の三人であったが、国境を超えたにも関わらずキイタ達と連絡が取れない事にココロの気持ちは千々に乱れていた。そんなココロの前に現れたゲンムは、能力者の声が届かないのは自身の気の持ちようであるのだと諭される。ゲンムのアドバイスを受けたココロは精神を集中すると全身全霊を込めて全ての能力者へ呼び掛けた。その時、ココロの中に聞いた事のない声が応えて来たのだった。
家のドアを激しく叩く音にアリオスは薄目を開けた。深く枕に顔を埋めている自分を意識する。一瞬、そこがどこだかわからなかった。
(ここは…)
そうだ、ここはアスビティ公国にある自宅の寝室だ。ぼんやりとした頭でそこまで思い出す。薄く開かれた目に部屋の中が明るく映る。朝の光が差し込んでいるらしい。
あの日、崖の下から救い出したブルーを連れ夜の山中を駆け抜けた。その日の内に中央の侯爵官邸まで辿り着こうとしたが果たせず、結局、山を越えたベディリィ湖の畔に建つ第二境界警備小宮まで来る事が精いっぱいであった。
パッキオの腕に抱かれたブルーは再び意識を失い、高熱に苦しんでいた。仲間達の疲労も夜通し山道を駆け抜けたンダライの馬達も既に限界であった。
闇夜に聳える懐かしい第二小宮に事情を話し休息をとらせてもらうと同時に、首都中央へ向け早馬を頼むつもりであった。
しかし、実際第二小宮についた面々は言葉を失くした。アテイルの襲撃を受けたとは聞いていたが、小宮の状況は七人の想像を遥かに超えていた。
建物と言う建物はほぼ全壊。僅かに壁や床が残されている所もあったが、爆発と延焼の影響を受けていない場所は一つとしてなかった。
そして何より、そこには誰もいなかった。
何があろうとこの砦を死守する筈の第二、第三警備隊の隊士達は全員ここを放棄してしまったようだった。
或いは町中で仮の詰め所を設け、そこに移ったのであろうか?いずれにしても守るべきものの一つもない焼け焦げた小宮は完全に無人であった。
時間は深夜を越している。これから門戸を叩き事情を説明して回るより、このままここで一夜を明かす方が得策と判断したアリオスは仲間達に野営の準備を指示した。
皆疲れ切ってはいたが湖で水を汲み、火を起こし、携帯食料の味気ない夕飯を済ませた。
ここでも、元特別行動騎馬隊第四分隊の特色は如何なく発揮された。
ハリスとパッキオは苦しむブルーに付きっ切りだ。後の者はアリオスに言われるまでもなく、ハリスの指示のもとブルーに必要なものを集め、馬の世話をし、見張りに立ち、休める者から順次休んだ。
各々が自発的に作業をする間、アリオスは小さなカンテラ一つを持ち、崩壊した小宮を調べて回った。
裏庭にあたる箇所の損壊が著しい。
アリオスの知る頃から変わっていなければ、ここには武器庫があった筈だ。今、その一帯には何もない。火薬に引火し、跡形もなく吹き飛んだと見える。
正面の広間、廊下、大階段…。アリオスは、微かな記憶を辿りながら朽ち果てた残骸の山となった第二小宮の中を歩き回った。
一際高く積まれた瓦礫…、二階部分が丸々焼け落ちた事が見て取れた。
(何と言う事だ…)
その折り重なるように立ちはだかる残骸の中から、時々人の腕や足と見られるものが突き出されている。
(まだ、犠牲者の回収も終えていないのか…。一体、何日経っていると思っているのだ)
どのような事情があるのかは不明であるが、中央政府の対策の遅れに強烈な怒りが湧いてきた。
その時アリオスは、散見される犠牲者の体の一部に奇妙なものを見つけた。
灯りを近づけよく観察をした後、アリオスはカンテラを足元に置き目指す場所を少し掘ってみた。
そこには、しっかりと剣を握った犠牲者の腕が見えていた。見えてはいたが、しかし…。
アリオスが掘り崩した瓦礫の中から転がるように出てきたその腕は、どう考えても人間のものではなかった。
命を失って尚頑なに剣を握るその指先には、獣のような鋭く巨大な爪が並んでいた。
そこから伸びる腕、アスビティ公国隊士の支給服を纏ったその腕は、爬虫類のような固い鱗で覆われていた。
火災の熱でそうなったものではない。それは明らかに、自分達とは種を異にする者の腕であった。
戦場において幾多となく恐ろしい光景を目にしてきたアリオスさえ、これ以上掘り進める勇気は出なかった。掘り進めたとして、その先にあるものを想像しただけで胃の中のものが一気に逆流してきそうになり、慌てて口を押えて立ち上がった。
(何が起きているのだ…)
シルバー達にあらましは聞いている。ンダライで、ポルト・ガスから更に詳しい話も聞いた。しかし、首のない馬の死体、跡形もなく破壊された小宮、そこに残された化け物の腕…。
理解しているつもりであったアリオスも、頭が変になりそうだった。
これ以上考えるのはやめよう、そう思った。まだ、自分は全てを受け入れる準備ができていない。しかし、想像を絶する事態が起きている事だけは理解できた。今はそこまでだ。
アリオスは、そこからそっと離れ、皆の元へ戻った。僅かに残された壁の残骸に背を預け休もうとする。焚かれた炎の脇で、寝かされたブルーとその顔色を窺うハリスの背中が見える。
(あの男は、あの化け物と戦ったのか…。一対一で、剣を交えたのか…。ブルーだけではない、ココロ姫、キイタ王女、シルバー隊長、あの体の小さな大地も…。皆、あんなものと戦っているのか…。そして、ガイ分隊長も既にこんな化け物と遭遇したのだろうか?)
表情は動かなかった。しかしそう考えるアリオスの頭の中には様々な感情が現れては消えた。驚愕、怒り、悲しみ、恐怖…。自分でも制御できないそんな胸の内に、結局アリオスは夜が明けるまでついに休む事はできなかった。
夜明けと共に出発したのが二日前。その日の内に侯爵官邸へと辿り着いた。しかし、その後の官邸での対応は未だに釈然としない。
官邸に着いたのはまだ昼前であった。その時の様子は今もはっきりと思い出す事ができる。
全員が必死の思いで官邸の正面門を叩いた。門番の隊士を始め次々と隊士達が現れ、あっという間にアリオス達は囲まれた。
「我らは元特別行動騎馬隊第四分隊の者である。四年前のクナスジア遠征よりたった今 帰還した!」
アリオスは、自分達を取り囲む隊士達に向けて怒鳴った。
「ココロ姫及び、隣国ンダライ国首長より、侯爵様宛の書状をお預かりしている!速やかにお目通しを願いたい!」
ココロの名を聞いた隊士達の間に動揺が走った。
「また、ここにいるは第二境界警備小宮付、第三警備隊分隊士、名をブルーと名乗っている。危険な状態だ、緊急に手当てをしていただきたい!」
ブルーの名を出したところで更に隊士達の中からどよめきが起こり、同時に二、三名の隊士が官邸の奥へ向かって走り去るのが見られた。
「我らの判断でここを通す訳には行かぬ、しばし待て!」
あからさまに攻撃態勢をとった隊士の一人が叫ぶ。この時点からしてアリオスはこの扱いに違和感を覚えた。
「頼む、彼の治療を急いでくれ!命に関わる!」
ハリスが必死の声で叫んでも、隊士達は待ての一点張りで埒が明かない。この時の彼らの態度は、怒りや使命感と言うよりは、むしろ何かに怯えているようにアリオスには感じられた。
どの位待っただろう?苦し気に息をつくブルーの状況に、その時間は異様に長く感じた。
やがて大きな足音を立てて、官邸の奥からアリオス達のいる正面門に向かって駆け寄ってくる十名程の男達の姿が見えた。
「ブルーが戻ったとは真か!」
国中に響くかと思えるような大声で十人の中の一人が叫ぶ。男達の中で、取り分け年配な男だった。
隊士の服を身に着けてはいるが、上背と比して、隊士とは思えぬ程腹が大きく突き出ていた。新たにやってきた男達は取り巻く隊士達を押しのけ、地に倒れたブルーを取り囲んだ。
「おお!ブルー!」
「確かにブルーだ!」
「一体どうして…」
男達は倒れたブルーの顔を見、口々に叫んでいたが、一際声の大きな先程の男がその声を制し、命じた。
「そんな事は後だ!ブルーをすぐに運び込め!医療班を呼んで来い!」
その声をきっかけに男達は、数人がかりでブルーの体を抱え上げると官邸に向かって行った。
取り敢えず、けが人を託す事ができたアリオス達は安心した。そんなアリオスへ大声でブルーを連れていくよう命じた男が声を掛ける。
「我が名はロズベル。第二境界警備小宮付、第二警備隊々長。今のブルーの、上官にあたる者だ」
「私はアリオス」
「元、特別行動騎馬隊だと?」
「第四分隊の副分隊長を務めた。後の者達も同隊の隊士だ」
男はロズベルだった。彼はアリオスの後ろに並ぶ男達に目を向けた。パッキオ、コスナー、エミオン、ユーリ、マルコ、ハリス…皆、不安げな、或いは挑み掛かるような表情でロズベルを見返している。
「何があったか、聞かせてもらおうか?」
六人の男達からアリオスに目を移したロズベルが重ねて尋ねる。
「旅の道中であったココロ姫と出会い、侯爵様宛の書状を託された。その命を果たすべく祖国を目指す途中、ンダライとの国境付近の山道にて馬の死体を発見し、それをきっかけに崖下へ転落していたブルー殿を見つけ救助した」
ロズベルは、まるでアリオスの言葉を値踏みするようにその顔を睨みつけながら聞いていた。アリオスが続ける。
「自分も同じくココロ姫から書状を託されたとブルー殿が苦しい息の中で申されたので共に連れて参った。起きた事はこれが全てだ」
アリオスが話し終えても、ロズベルは相変わらず睨みつけるような顔のまま一言も発しようとしない。いい加減苛々したアリオスがその気持ちを抑え込みながらゆっくりと言う。
「おわかりいただけたなら、侯爵様にお会いできるよう、お取り計らいを願いたい」
すると、ロズベルも同じようにゆっくりとした口調で返した。
「自分は、その立場にない」
「ならばなぜ聞いた!」
ついにアリオスの我慢が限界を越した。
「書状は全部で九通!ブルー殿が託されたと言うものを含めれば十通だ!これを我らもブルー殿も、直接 侯爵様(こうしゃく様)に手渡すようにと姫様と、ンダライ国首長より直々に命ぜられたのだ!そなたに権限がないと申すのならば!…権限を有する者にお引継ぎ願いたい、今、すぐにだ」
アリオスは怒りを含みロズベルを睨み返した。ロズベルもそれを正面から受け、しばし二人の男は睨み合ったまま動かなかった。
周りを囲む隊士達も、パッキオ達六人もその張り詰めた空気に言葉を失っていた。
「ふっ…」
やがて、ロズベルが小さく息を吐いた。
「そう慌てなくとも、話は奥に通じている。じきに使者が来る」
「使者?」
アリオスが問い返したその時、ロズベルの背後からこちらへ向かって来る一人の男が目に入った。隊士とは明らかに違う、恐らくは中央政府の職にある者と思われるその男は、アリオスのすぐ近くまで来ると上品な声で尋ねた。
「クナスジア遠征より帰還したと言う隊士は、あなた達か?」
「如何にも」
アリオスが答える。
「外務室補佐付きのシュリと言います。ギース外務大臣がお会いする。案内いたします」
それだけ言うと、シュリと名乗った男は背中を向けた。
「大臣?待て、我らは侯爵様に謁見を願いたいのだ」
するとシュリは広い肩越しに顔を半分振り向け、静かに言った。
「それは、あなた達の話しを聞いた大臣が判断される。まずは、こちらへ」
もう一度アリオスに向けられた背中はそれ以上の質問を一切受け付けない事を全身で伝えてきた。
アリオスは不満を隠そうともしない顔で大股にその男の背を追った。残されたパッキオ達六人はどうするべきかお互いの顔を無言で見交わしたが、結局パッキオを先頭に全員がアリオスの後を追い、官邸へと向かった。
その後、中規模の広間に集められた一同はそこで一切の武器を押収された。着ていた服の中まで綿密に調べられた。
はっきりと自分達を信用していない様子を感じとったコスナーは、それに抗おうとしたが、アリオスの命令で渋々それに従った。
「命がけで帰ってきて、こんな扱いってあるか?」
自分達の装備品をすっかり没収されたコスナーはまだ怒りが収まらないらしく、声を荒げた。
「堪えろ、コスナー」
アリオスが冷静な声で諭す。
「けど…!」
「着く早々 英雄扱いされるとでも思ったか?」
パッキオがアリオスを援護するように言う。全員がパッキオを見た。
「四年前に死んだ筈の男達が、実は生きていました、突然七人も現れてみろ、慎重にもなるだろうよ」
「そっか、考えてみりゃ当然の対応かもな」
達観したようにマルコがため息と一緒に呟く。
「だけどもうちっと優しくしてくれてもよくね?」
ユーリが反論する。
「まあ待て」
次々に口を開き始めた仲間達を、再びアリオスの低い声が止めた。
「何はともあれ、今は姫達の書状を侯爵様に手渡すのが先決だ。その為ならばどんな仕打ちにも耐えよう。いずれ、事情が分かれば政府の対応も変わる筈だ」
最優先するべきは今世界の裏で起きている信じがたい現況、そしてその事件に当国の姫君が深く関与している、と言う事実をこの国の最高機関に伝える事だと言うアリオスの言葉に納得した男達は、それ以上の発言を慎んだ。
その時、アリオス達の入った扉とは別の、部屋の奥に続く扉から新たな男が入室してきた。
「アリオス殿」
男は名乗る事もせずアリオスの名を呼んだ。全員が男の顔を見る。
「ギース外務大臣がお会いになる、こちらへ」
「私だけか?」
「そのように聞いている」
さすがにアリオスの表情にも不安の色が浮かぶ。そっと仲間達を振り返ると、ココロの用意してくれた自分の身元を証明する公文書だけを残し、残りの三通をパッキオに差し出した。
「持っていろ」
パッキオは怪訝な表情でアリオスを見返す。
「戦争難民の救出を懇願した姫の書状と、それへの協力を誓うガス殿の公文書、それに、ブルー殿が託されたと言う姫の書状だ。できれば、皆の証明書も集めておけ」
「わかった」
言葉少なに答えたパッキオは、アリオスの手から三通の書簡を受け取りしっかりと自らの服の中へとしまった。
「お待たせした、案内を頼む」
政府の男を振り向きそう言ったアリオスは、先に立つ男を追って部屋の奥へと消えた。見送る男達は皆 一様に不安げな顔で去っていくアリオスの背を見送った。
案内の男に付き従い官邸の奥へと続く廊下を歩きながら、アリオスは緊張を隠せずにいた。
侯爵をはじめとする政府要人の官邸を過ぎ、そこはもう執政のエリアに入っていた。
中庭では公軍の隊士達が訓練をしている姿が見える。纏う活動服の色から、それはデューカ守備隊の連中だろうとわかった。その鍛えられた凛々しい訓練様式をこなす姿に、アリオスは一瞬足を止めた。
僅か四年前、自分達も毎日この場で今の彼らと同じように訓練をしていた。
その時アリオスは、訓練をしている隊士達の中の一人に目をとめた。屈強の男達に混ざり、一際体の小さな者が訓練を受けている。
しかも、身に帯びた武具防具を見る限りどうやら分隊長級の者らしい。
しかし、アリオスを驚かせたのはその体格ではなかった。他でもない、その体の小さな分隊長はどう見ても女性であった。
「あれは…」
その隊士から目を離さないままアリオスが呟く。案内の男が立ち止まり、同じ方向に目を向ける。
「デューカ守備隊の連中です」
「守備隊は、女の入隊を認めるようになったのか?」
「ああ、ウルカ分隊長ですか。あの方は特別です。ケシミ公軍大臣の第三子女でありますが、剣技、馬術に特に秀でており、本人の希望もあって異例の入隊となりました」
ケシミ公軍大臣は、アリオスが従事していた四年前から就任していたので知っていた。娘ばかり四人をもうけたと聞いた事があったが、その内の一人が隊士となって訓練を受けている、しかも分隊指揮官と言う立場で。
「ご本人は特別行動騎馬隊への入隊を強く希望しているのですが、さすがにそこまでの特待は認められず、国内での首都護衛の任についております」
説明を聞きながらも、まだ唖然とした顔でアリオスはその女隊士の姿を見続けた。
「大臣がお待ちです、お急ぎを」
男に言われ我に返ったアリオスはようやく歩きだした。最後にもう一度中庭を振り返る。うねる栗色の髪を短めに切り、それを纏めもせずに男顔負けの大声を張り上げて小隊を指揮している。
ケシミ公軍大臣の第三子女、デューカ守備隊のウルカ分隊長…。アリオスはその名前と顔を深く胸に刻みつけた。
「あちらの部屋です」
ふいに案内の男が声をかけてきた。彼が指し示す方には、執政の間の一つであろう、重々しい作りの扉が静かにアリオスを待ち構えている。
アリオスは、再び顔を緊張で強張らせながら男に続いてその扉の前に立った。




