表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ANTIQUE  作者: OOK&YOK
49/440

氷漬けのガイ

●登場人物

・ココロ…始原の存在であるゲンムに選ばれたアスビティ公国領主の娘。

・吉田大地…土のANTIQUEテテメコに選ばれた能力者。

・シルバー…鋼のANTIQUEデュールに選ばれた能力者。

・キイタ…火のANTIQUEフェルディに選ばれた能力者。

・ガイ…雷のANTIQUEウナジュウに選ばれた能力者。


エクスヒャニク…アテイルに生み出された恐れを知らぬ機械兵士達。ズワルド、ゴムンガの命を受けココロ達ANTIQUEの能力者を襲う。



●前回までのあらすじ

 何とかエクスヒャニクの弱点を探ろうとその戦闘を観察していた大地は、シルバーの宿す鋼の能力の可能性に気が付いた。剣にこだわるな、大地はそうシルバーに忠告する。大地の助言を得たシルバーはデュールとの対話を通じ、折れた剣を元に幻想のデュールが手にしている強力な武器を現実に生み出した。シルバーは剣の通用しないエクスヒャニクに、ついに決定的な一撃を加える事に成功する。

 更に奮戦するガイの元へ駆けつけた大地は、ガイの電撃に倒されたエクスヒャニクの体の構造から、強力な電力が過充電を引き起こし、エクスヒャニクの体をショートさせる事を突き止める。機械に対する知識を持たないガイに大地は、エクスヒャニクにはガイの持つウナジュウの能力が非常に効果的である事を必死に説明する。

 大地の活躍により戦いの道筋を得たシルバーとガイは、集団で襲い掛かって来るエクスヒャニクに対抗する。その時、戦場を離れ物陰に隠れていたココロとキイタを狙う一体のエクスヒャニクの存在に気が付いた大地は二人を救出するため一人馬を走らせた。

 ココロ達のもとへ向かう途中、大地は遠く岩の上で自分達の戦いをじっと見つめる謎の人物を見つけるが、ココロ達の救出を優先し、それを無視して走り続けた。

 テテメコからエクスヒャニクとは三種の魔族ではなく、彼らの手で生み出された傀儡くぐつである事を知らされた大地は、命をもてあそぶアテイルに激しい怒りを覚えるのだった。







 その頃、岩場のかげに隠れたココロとキイタは自分達に迫る足音をその耳に聞き取っていた。大きな岩に空いた穴の中で寄りって隠れていた二人は不安げな顔を見合わせた。

 ココロはきびしい顔つきになると、小さいがはっきりとした声で言った。

「キイタいい?敵が近づいたら私がそいつを止める。そのすきにここを出て全力で走って」

「そんなココロ!」

「しっ!ここで二人とも倒されてしまうよりその方がずっとましよ。いいね、私が走れと言ったら立ち止まらずに森を目指して。絶対に、絶対に振り向いては駄目。わかった?」

 またキイタが何かを言い返そうとしたその時だった。柔らかい砂の上に重い金属が打ち付けられるような独特の音が想像以上に近くから聞こえた。

 敵がじっくりと二人の隠れる岩を調べて回っているらしい。ココロは自分の口に指をあて、キイタに声を出すなと伝えた。

 父親からたくされた細身の剣を狭い岩穴の中で立てると、いつでも飛び出せるように体制を整えた。敵の足音はゆっくりと、しかし確実に二人に近づいていた。

 ズシャ、ズシャ、ズシャ…

 やがて、銀色に光る奇妙な足が二人の隠れる穴の前に降ろされた。甲高かんだかい、金属同士がれ合うような不愉快ふゆかいな音が聞こえる。敵が身をかがめて二人のいる穴の中をのぞき込もうとしているのだ。

 ココロとキイタは固唾かたずを飲んでその様子を見つめた。やがて外光を背に受けかげになった相手の顔が目の前に現れた。

 逆光で暗くなった顔の中にガラス玉のような表情のない赤い目玉だけが奇妙に光っている。ココロは切っ先を向けたまま相手に体当たりを喰らわす勢いで穴から飛び出した。

「キイタ、走って!」

 予想外のココロの行動にきょを突かれ、敵は思わず身を退き、一瞬動きを止めた。ココロの叫びと同時に穴から飛び出したキイタは敵の横をすり抜け広い荒野を一心不乱いっしんふらんに走った。

「この!」

「私が相手よ!」

 ココロは城で習った事を思い出しながら必死に剣を振るった。その切っ先が自分の頭をかばおうとした相手の腕に当たるやいなや、ココロの細い剣は高い音を立てて折れ飛んでしまった。折れた剣先はクルクルと回りながら宙を舞い、やがて柔らかい砂地に突き刺さった。

「無駄だ」

 そうつぶやいた敵は右手で強くココロの胸を突いた。強烈な衝撃しょうげきが走り、ココロの体は真後ろへと吹き飛んだ。今飛び出して来た穴の入り口に背中をしたたかに打ち付ける。

 呼吸が止まった。ココロは声も出せず、口から血を吐き出しながら顔から地面に叩きつけられた。敵はゆっくりと身を起こすと倒れたココロにとどめを刺そうと一歩近づいた。

 その時だった、エクスヒャニクに横から一頭の馬が物凄ものすごい勢いで迫って来た。絶叫ぜっきょうを上げながら馬をあやつる大地が体当たりを喰らわそうと風のように突っ込んできたのだ。

 それに気づいた銀色のエクスヒャニクは咄嗟とっさに体を反転させてこれをかわした。自分の背を岩場にぴったりとつける。

 馬の背から飛び降りた大地は敵が身を寄せた岩に手を伸ばした。変化はすぐに起こった。大地が触れた岩が生き物のように動き、背をつけたエクスヒャニクの両手両足にからみついたのだ。

「ココロ!」

 大地がココロの名を叫びながら走り寄ろうと顔を向けた時、突然目の前に巨大な砂の柱が現れた。大地の頭上から大量の砂が降り注ぐ。大地は落ちてくる砂から自分をかばおうと腕を上げ、身をかがめた。

 ようやく顔を上げて見れば、大地とココロの間に立ちはだかるように新たな機械人間が立っていた。全身が黒く光ったその敵は、右手が大きなドリルに、左手はチェーンソーの形になっている。

 右手のドリルが不愉快ふゆかいな音をたてて回転している。どうやら地中を掘り進んでここまで来たらしかった。

 砂の中から現れた黒い敵は大地には目もくれず背を向けると、土の能力により岩に張り付けられた仲間の元へ向かった。

 相手が自分への攻撃よりも仲間の救出を優先したと判断した大地は、ココロの元へ駆けつけようと再び足を踏み出した。

 その瞬間、足元の地面が盛り上がり更にもう一体、今度は全身緑色のエクスヒャニクが大地の行く手をはばむように砂を払い落しながら地中から立ち上がって来た。

「嘘でしょ…」

 緑色の敵は両手のこぶしが異様に巨大であった。今度こそ仕掛けてくると感じた大地は急いで身構える。元の形に戻っていた右腕が再び怪しく光り巨大化し始めた。

 戦闘態勢に入った大地の耳に脳をさぶるような不快な音が響いた。黒いエクスヒャニクが左手のチェーンソーを駆使くしして岩に取り込まれた仲間を自由にしようと刃を立てているのだ。

 強烈な衝撃しょうげきに破壊された岩のいましめは音をたてて砕け散り、ジェットエンジンを積んだ銀色のエクスヒャニクは岩から脱出を果たした。

 大地の目の前に現れた緑の巨人がゆっくりと右腕を振り上げる。ハッとした大地は体を横に飛ばし、振り下ろされた鉄拳をかわした。

 せっかく岩に閉じ込めた敵が仲間の手を借りてそこから脱出するのを目のはしとららえながら襲い掛かる緑色の敵一体を相手に、大地にはどうする事もできなかった。

(ココロ―――!)

 敵の攻撃をけながらココロの身を案じ頭の中で呼び掛ける。だがココロは気を失っているのか、地に倒れたままピクリとも動く様子ようすがない。

 大地の中にふつふつとした怒りがき起こり、それに合わせて周囲に散らばる無数の小さな石片いしへんが大地の右腕へと引き寄せられ集まりだした。

 執拗しつように大地をねらう緑色のエクスヒャニクが腕を振り上げて迫る。右腕を岩石のプロテクターで固めた大地も雄叫おたけびを上げながらこれに立ち向かう。お互いのこぶしが激しくぶつかり合った。

「うわぁ!」

 さけんだのは大地だった。激突の衝撃に小さな体は弾き飛ばされ、右腕に宿った岩石達も粉々に砕け散った。

(だめだ――――)

 大地はすぐに地面に起き上がり敵をにらみつけた。

(やっぱりただの岩じゃ鉄のかたまりには勝てない…。敵は三匹…どうしよう?どうしたらいい?)

 大地は油断なく相手をにらみつけながら考えた。よろいを砕かれた右腕はびりびりとしびれている。

 この圧倒的な力の差を前に、何か起死回生きしかいせいの逆転技がないか大地は必死になって考えていた。しかし、そんな都合のよい案はそう簡単に浮かぶはずがなかった。

 その時だった、ひづめの音も高らかに銀色の髪をなびかせ、シルバーがこの戦いの輪に割り込んできた。

 シルバーの馬は空を飛ぶように大地と大地の戦う相手の頭上を軽々と飛び越え、倒れたままのココロのすぐ近くへ着地した。

「ココロ様!」

 馬上で振り返りながらシルバーが叫ぶ。それでもココロは目を覚まさなかった。

貴様きさま…」

 動かないココロを見たシルバーの怒りが一瞬にして頂点に達した。

貴様きさまぁ――――っ!」

 叫んだシルバーは鋭い剣と姿を変えた右腕を高々と突き上げながら馬から飛び降りると、銀と黒の二体のエクスヒャニクに向かって飛び掛かった行った。

 地を蹴ったシルバーを見上げながら黒い敵がすぐに一歩前へと進み出た。チェーンソーになった左腕でシルバーの剣を受ける。二つの金属の間ではげしい火花が飛び散った。

 第一刀を弾かれたシルバーは、その勢いのまま体勢を低くし、回転しながら相手の足を横にぎ払った。

 切られた訳ではない。しかし強烈な一撃を足に受けた黒いエクスヒャニクは砂を巻き上げながらその場にひっくり返った。

 すぐに立ち上がったシルバーは後ろにひかえた銀色の敵に襲い掛かる。一、二、三の剣と、目にもまらぬ速さで技をり出していく。

 絶え間ないシルバーの攻撃に相手は防戦一方に追い込まれていた。その特殊とくしゅな体のお陰でかろうじてかわしているようにも見えるが、生身の体であったらすでに数回、切りきざまれていたはずである。

 地に倒された黒い敵は、ようやく立ち上がると、すぐにシルバーに向かっていった。シルバーもそれに気が付き二人を相手に戦いを始める。

 敵が二人になってもシルバーの剣はまったくそのスピードを落とさなかった。敵はその場に釘付けになったまま動く事ができずにいた。

 大地は相変わらず緑色の敵一体に手を焼いている。戦う、と言うよりは結局相手の攻撃をかわすのが精一杯の状態が続いていた。

 大地の戦いは進展を見せない膠着こうちゃく状態に見えたが、このままこの攻防が続けばやがては体力を消耗しょうもうし、敗北するのは自分の方だと言う事はわかった。

 一人で二体の敵を相手にしているシルバーは獅子奮迅ししふんじんの活躍をしているとは言え、とても大地の救出に回る余裕はなさそうだ。残った敵全員を相手にしているであろうガイは未だに姿が見えない。ココロはまだ目覚める事なく地に倒れたままだ。一人イーダスタの森へ走ったキイタを頼る事も勿論もちろんできない。

 体中を汗だくにしながら地面を転げまわるようにして敵の攻撃をかわし続ける大地は、じょじょ々に精神的にも追い込まれていった。

 その時、敵の攻撃から逃げ回る大地の目に黒い敵と剣を合わせるシルバーの姿が映った。そしてその後ろに身を退いた銀色の敵が、何かを狙っているかのように身構みがまえる姿も同時に確認した。

 シルバーは黒い敵のチェーンソーと剣を合わせ力比べをしている。次の瞬間、敵の腹が突然 観音開かんのんびらきに開いた。開いた腹の中から回転する電動の丸鋸まるのこが現れ、シルバーの胴体に切り掛かってきた。

「うぉっ!」

 思いもかけない相手の攻撃に驚いた声を上げ、シルバーは咄嗟とっさに身を退こうと力比べをしていた右手を力いっぱいぎ払った。そのせいで相手はたたらを踏み、シルバーの右側に体をずらした。

 黒い敵が視界から消えると、そのすぐ後ろに中腰で身構みがまえる銀色の敵が現れる。大地はそこで初めて敵の狙いを理解した。

「シルバー危ない!!」

 大地は自分の身もかえりみずに叫んだ。シルバーもハっとして顔を上げる。しかし、気づくのが遅かった。銀色の敵は得意のジェット噴射ふんしゃを使い、弾丸のような速さで体ごとシルバーに突っ込んで来た。

 シルバーは至近距離しきんきょりから敵の体当たりをまともに喰らい、そのまま真後ろに吹っ飛んだ。すぐ後ろの岩場に背中を打ち付け前のめりに倒れたシルバーの上から、砕けた岩がバラバラと落ち掛かって来る。

 大地の咄嗟とっさの叫びに体を鋼鉄に変えていたかはわからない。もし生身のまま今の攻撃を受けたのだとしたら到底とうてい助からないと思えた。

「シルバー!」

 大地は敵の腕をくぐり、柔らかい地面に足をとられながらも何とか倒れたシルバーの元にいつくばるようにして駆けつけた。

「う…ん…」

 周囲の騒々しさのせいか、ココロが苦し気な声を上げて意識を取り戻した。かすむ目に倒れたシルバーと、それをかばうように両手を広げる大地の姿が映った。

 二人の前には三体のエクスヒャニクが弱ったネズミをいたぶる猫のような余裕のていで迫っていた。

 肩で息をしながら大地は考えた。咄嗟とっさにシルバーの前に来たはいいが、特に妙案みょうあんがある訳ではない。この上はテテメコの能力を最大限に動員して防げるだけ敵の攻撃を防ごうと覚悟を決めた。

「大地…」

 大地の背後からかすれた声が聞こえた。シルバーだ、よかった生きている。しかしダメージは決して小さくはないようだった。

 体中に物騒ぶっそうな刃物を仕込んだ黒色の敵が、ジワリと前に進み出る。巨大なチェーンソーを見せびらかすようにして大地とシルバーに近づくと、二人同時に切り裂こうと言うつもりか勿体もったいぶった態度で腕を振り上げた。

 大地はかなはずがないと知りつつも必死に右手を頭上にかざした。黄色く輝きながら肥大ひだいした腕に次々と周りの小石が集まり吸いつくと、巨大なプロテクターを形成して始める。

 しかし黒いエクスヒャニクは大地の腕の変化など気にもめず、躊躇ちゅうちょなく頭上の腕を二人めがけて振り下ろした。

 大地が衝撃しょうげきそなえようと歯を食いしばったその時、後ろから突然シルバーが大地の右腕を両手でつかんだ。

「え?」

 大地は一瞬シルバーに目線を移した。大地のすぐ横に座るようにしてシルバーは大地の右腕をつかみ、共に敵の攻撃を受ける体勢を作った。

 突然大地の右腕に変化が起きた。岩石で固められた大地の右腕が突然 白銀色はくぎんしょくの光を放ち始めたのだ。

 敵の振り下ろしたチェーンソー型の腕が、差し出された大地の右腕をたてに切り裂く。そのまま大地の体まで真っ二つにする勢いで切り進んだチェーンソーが、突然 耳障みみざわりな音をあげその進行を止めた。

 チェーンソーはそれ以上切り進む事ができなかった。ジャリジャリと細かい粒子りゅうしつぶすような音を立ててその場で空転くうてんしている。

「大地、押せ!」

 シルバーの合図で二人は力を合わせて立ち上がり敵の体を押し返した。深々と大地の腕にはさみ込まれた腕が抜けないまま、空いては二人の力にされ身をていった

 後ろで見物に回っていた二体のエクスヒャニクがこの変化におどろきの仕草しぐさを見せる。二人と戦う黒いエクスヒャニクは必死に自分の腕を大地のプロテクターから引き抜こうと暴れた。

 一進一退の攻防を繰り広げる三人の間で、突如とつじょ回転するチェーンソーの刃が切れた。チェーン状の鉄片てっぺん四散しさんする。

 力の行き場を失った大地とシルバー、それにエクスヒャニクの三人は折り重なるようにもつれ合いながらその場に倒れこんだ。

 体の自由がかないシルバーは巴投ともえなげの要領で一人前方に投げ出され、背中から地に落ちた。大地は敵の体の上におおかぶさるように倒れこむ。先程シルバーを真っ二つにしようと飛び出した丸鋸が収められた胸の上だった。

 次の瞬間、大地は襟首えりくびつかまれ強い力で後ろに引かれた。痛みにえ、助けに入ったココロが力いっぱい大地を敵の体から引き離したのだ。

「ぐぇっ!」

 首がしまったせいで一瞬気が遠くなった大地が妙な声を出す。しかしココロの機転で大地は敵から離れる事ができた。今度はココロと一緒に地面に倒れこむ。

 ココロ、大地、シルバー、そして腕を失ったエクスヒャニク。地面に倒れる全員が満身創痍の状態であった。

 起き上がろうともがいていた敵が、何かに気づいたようにハっとした様子ようすを見せる。何事かと大地は敵の見る方に顔をめぐらせた。いつからそこにいたのか、ココロとキイタが隠れていた岩場の上に一人の男が立っていた。

「おっまたせ~~~」

 岩の上で敵味方全員を見下ろしながら言ったのはガイであった。どうやら残ったすべての敵を打ち破り、今 ようやくこの戦場に辿たどり着いたらしい。

「それにしても…」

 ガイは倒れたまま動けないシルバーと口元を血で汚したココロを見た後、仰向あおむけにひっくり返った黒いエクスヒャニクをにらみつけて言った。

「よくもまぁ、やってくれたじゃないの」

 言いながら岩の上で身をかがめ、義手になった左手を顔の位置に上げる。その指先がビリビリと金色の稲妻いなずまを見せ始める。

 次の瞬間ガイは岩の上で飛び上がり、そのまま地面に敵の上に飛び降りた。上から襲い掛かるガイの左腕がその黒い体に当たった瞬間、敵は体を弓なりに大きくしならせながら痙攣けいれんした。まぶしい程の放電が辺りを照らし出す。

 大地とココロはかばい合うように身を寄せながら目を細めた。やがてその光が収まり、静かになった時、ガイがゆっくりと立ち上がる。その足元には幾筋いくすじもの煙を上げた黒い鉄のかたまりが身動き一つせずに転がっていた。

「ココロ様」

 ガイが目の前の敵をにらみつけながら背後のココロに声を掛ける。

「こいつらはアテイル一族じゃあないんですか?」

 かれたココロは返答に迷った。今のところ彼女が知っている敵はアテイルだけだ。しかし目の前にいる敵はどう見ても自分の知っているアテイルとは種をたがえているように見える。こんな連中は今まで自分の悪夢にも出てきた事がない。

「アテイルではない」

 ココロが回答を躊躇ちゅうちょしていると、当の相手が変わって答えて来た。シルバーを吹き飛ばした銀色のエクスヒャニクだ。

「我らはアテイル一族四天王、智の竜ズワルド様、そして剛の竜ゴムンガ様につかえし一族…。エクスヒャニクだ」

「エクス…」

 大地が口の中で小さくつびやく。またまた大地には発音しづらい名前が出てきた。きっと地球にはない音使いなんだろうな、とぼんやり考える。

「エクスヒャニクとは恐れ入ったな」

 ガイが皮肉な笑いを浮かべる。しかしすぐにその笑いを消すとすごみのある声を出した。

生意気なまいき言ってんじゃねえよ、鉄屑共てつくずどもが」

 ガイの一言に二体のエクスヒャニクはいたくプライドを傷つけられたらしい。鋼鉄の表情に変化はないが、すぐさま攻撃の態勢に身構みがまえた。

「おや、怒ったかい?ますます生意気なまいきなガラクタ共だ。いいぜ、掛かって来いよ。お前らで終わりだろう?他の連中と同じように二度と動けねえようにしてやるよ」

 ガイのその言葉に二体のエクスヒャニクは慌てて後方を見る。先程まで戦っていた大地の作ったドーナツ状の輪がある辺りで、幾筋いくすじもの煙が狼煙のろしのように天に向かって立ち昇っていた。

 すべてガイの電撃を受けて破壊はかいされたエクスヒャニク達の体から出ているのだ。それを見た二体の敵はひるんだように半歩身を退いた。

 勝った―――。

 頼もしいガイの姿を見ながら大地は安堵あんどし、体中の力が抜けるのを覚えた。そのままココロに身をあずけるように寄り掛かる。

「どうしたぃ?ほれ、掛かってて来いって」

 余裕のガイが逆に一歩敵に向かって踏み出したその時だった。

「ん?」

 ガイが怪訝けげんな表情を見せて立ち止まった。その表情のまま自分の足元を見て眉根まゆねを寄せている。

「何だ?こりゃ…」

 ガイの言葉に大地は再び身を起こした。戸惑とまどったように立ちくすガイは、何かに慌てている様子ようすだが、大地からは特別な変化は見られない。

 しかしガイは必死になって体をらし、自分の足を地面から離そうとする仕草しぐさを見せている。

「どうなってんだ、こりゃ!?」

 ついにガイは取り乱した声を出し始めた。

「どうした?ガイ!」

 苦し気に胸元むなもとかばいながらシルバーが起き上がり声を掛ける。

「え?え?え――――っ!」

 シルバーの問い掛けも聞こえていないのか、ガイは何かにあらがうように必死に体を動かしている。よく見れば、ガイの足元から段々と上にい上るようにかすかな変色が始まっていた。

「これは…」

 大地は身を乗り出してガイを見つめた。ココロもシルバーも、敵達ですらガイの突然の異変に声も出せずにいた。

 一体何が起こっているのか誰にも理解できなかった。ただわかっているのは、ガイが体をい上る変色が起きた部位から、自由がうばわれているらしい事だけであった。

 胸元まで変色の進んだガイは、ついに声も出せず絶望的な表情を敵に向けた。その瞬間、残っていた首から上まで一気に色が変わり、ガイはそれっきり彫刻のように動かなくなってしまった。

「ガイ!」

 真っ先に叫びながら固まってしまったガイに駆けつけたのはココロだった。ココロはガイのそばまで来ると、一体何か起こったのかとガイの体に手を伸ばした。

 その指先がガイの体に触れた瞬間、ココロは驚いたようにその手を引いた。

「冷たい…」

「え?」

 ココロの言葉に大地とシルバーが同時に声を上げる。

「ガイ…凍っている…」



















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ