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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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雷の能力者 ~ウナジュウ~

●登場人物

・ココロ…はじまりの存在、ゲンムをバディとする少女。ANTIQUEのリーダーとして仲間を集めている。

・吉田大地…土のANTIQUE、テテメコをバディとする地球の少年。

・シルバー…鋼のANTIQUE、デュールをバディとするアスビティ公国の元公軍隊長。

・キイタ…火のANTIQUE、フェルディをバディとする少女。ンダライ王国第二王女。


吊り橋の山賊

・ガイ…雷のANTIQUE、ウナジュウをバディとする元アスビティ公国特別行動騎馬隊分隊長。恵まれた体格とシルバーに次ぐ剣術と馬術で戦場にあってシルバーからの信任も厚い優秀な戦士。

・アリオス…元アスビティ公国特別行動騎馬隊において副分隊長を務めていた男。冷静かつ優秀な頭脳で分隊長であるガイを補佐していた。以外な特技は料理。

・パッキオ…ガイの部下。無口だが巨体を生かした戦闘はチーム一。アリオスと共にガイの補佐をする頭脳派でもある。

・コスナー…ガイの部下。山岳地帯出身の元隊士でクライミングを得意とする。気のいい兄貴分で年下の連中から慕われている。かなりの酒豪。

・ハリス…ガイの部下。四年前、僅か十二歳にして幼年部隊から選抜され、兄のデスターと共に戦場へと出た。チーム最年少の男。薬草に詳しい。

・マルコ…ガイの部下。ハリスと共に幼年部隊から参加してきた若者。若いながら剣の腕は相当のもの。アリオスを敬愛し、自ら料理を習っている。

・エミオン…ガイの部下。どこか飄々としたお調子者でチームのムードメーカー。火器、火薬の扱いに長けている。また、チーム一の俊足。

・ユーリ…ガイの部下。コスナーと同郷でやはり山地での作戦遂行を得意とする。やや理解力に欠け、普段からポケっとしている事が多い為、チームでのいじられ役になっている。



●前回までのあらすじ

山賊の正体は、四年前の戦争で生き残った元アスビティ公国特別行動騎馬隊の隊士達であった。戦場に取り残された彼らは、シルバーに見捨てられたものと勘違いした事から、長年に渡りその恨みを抱き続けていたのだ。

そんな彼らにココロの怒りが爆発する。一方、シルバーを追い詰めていくガイの戦いぶりを見ていた大地は、彼こそ五番目の仲間、雷のANTIQUEの能力者である事を看破した。

一瞬の隙をついて逆転に成功したシルバーもまた満身創痍の状態であったが、そんな二人の戦いを終わらせたのはココロの涙の叫びであった。







 ガイと呼ばれたANTIQUEの能力者は、何も答える事ができなかった。そうしている間にシルバーは、ガイに向けた指を茶髪の男に向けた。

「アリオス…」

 そう呼ばれた茶髪の男は、血の気の引いた顔でシルバーを見つめた。シルバーは、そこに立つ山賊を一人一人指さしながら、名前を呼んでいった。

「パッキオ、コスナー…ええっと…違ったら申し訳ない、お前ユーリか?ああ、エミオン、お前、伯父おじさんになったぞ。妹のタイラーな嫁いで、つい先日元気な女の子を産んだんだ…」

 うわ言のように言い続けるシルバーの声を聴きながら、いつの間にか山賊達は泣いていた。

「マルコ、両親は元気だぞ…お前は、デスター…、いや、ハリスか?」

 シルバーは全員の名前を呼び終えると、歯を食いしばりながら体を起こし始めた。

 ケーブルをつかみ立ち上がる両足は、ガクガクと目に見えて震えている。その口からこぼれる声も同じように震えていた。それでもシルバーはその震える声で言った。

「お、お前達が、私を恨む理由はわかった…確かに、その通りだ…私は、お前達を死地へと送り込み、一人生き残った…」

 話し続けるシルバーに、大地がそっと近づいていく。

「理由がわかった以上、もう抵抗ていこうはしない。私を殺したければ、殺せばいい…」

「シルバー…」

 更に一歩近づく大地を手でせいするような仕草しぐさを見せたシルバーは続けて言った。

「だが、最期に言わせてくれ…八人…。わずかに、八人…それでも…」

 シルバーは突然顔を伏せた。長い銀色の髪が彼の顔をおおかくす。

「生きていてくれて…良かった…!」

 次の瞬間、力尽ちからつきたようにシルバーはひざを折った。体を支えようと地についた両手の側に、ぼたぼたと音を立ててシルバーの涙が落ちた。

「隊長!」

「隊長!」

「隊長ぉっ!」

 呆然ぼうぜんと立ちすくむ、アリオスと呼ばれた茶髪の男を突き飛ばすように、後ろにいた山賊達がシルバーのもとに駆け寄る。全員が泣きながらシルバーの体を支え、子供のようにシルバーに抱きついた。

 雷のANTIQUEの能力者ガイは、再び大の字に寝転んだ。自分の呼び寄せた雷雲はいつの間にか姿を消し、見上げる先には再び青い空が広がっていた。

 そのガイのそばにアリオスが近づき、ガイの顔を上からのぞき込んで言った。

「どう見ても、あんたの負けだと思うぞ?」

「けっ!」

 ガイは顔をそむけ、血の色をしたつばを吐きだした。

「くだらねぇ、まったくくだらねぇ!…なぁアリオス、俺達の四年間は一体何だったんだろうなぁ?」

 ガイがそう言うとアリオスは、仰向あおむけにひっくり返るガイの横にゆっくりと胡坐あぐらをかき、優しい笑顔で空を見上げた。

「そりゃあ…今の隊長の言葉を聞く為の、四年間だったのでしょうよ」

「あ―――――――――っ!!」

 突然ガイは絶叫すると、一気に体を起こし更に叫んだ。

「負けだ!俺の負けだ!こんちきしょー!!」

 ガイがそう言うと、他の若い山賊達が一斉に話し出した。

「お頭が負けた!」

「隊長の勝ちだ!」

「隊長をねぐらに連れて行こう!」

「よし、お前そっち持て!」

 戦いが終わった事に、そして長く呪われてきた恨みのくさりが断ち切られた事に、元アスビティ公国特別行動騎馬隊の隊士達は歓喜かんきし、シルバーを連れて行こうと立ち上がり始めた。そんな手下達を見たガイが怒鳴った。

「待て!てめぇら!!」

 その一喝いっかつに、男達は金縛りにあったように動きを止めた。

「その前に、やる事がある…」

 言いながらガイは、アリオスに手を借りて立ち上がった。

「誤解が解けたから、仲直りって訳にはいかねぇ。俺達は、俺達のした事にけじめをつけなきゃいけねぇんだ…。全員、俺の横に並べ!」

 シルバーの体を支えていた男達は戸惑とまどったように顔を見合わせていた。

「早くしねぇか!」

 ガイのこの一言で、慌ててシルバーの体をそばにいた大地とキイタに任せると、立ち上がり、ガイとアリオスの隣に横一列に並んだ。

 シルバーを支える大地とキイタ、そのかたわらに立つココロ。彼ら四人の前に、八人の男達が整列をした。

「い、いいか!」

 言うとガイは、アリオスの体から手を放すと何とか一人で立った。

「今から、けじめをつける!てめぇら、俺に続け!」

 一体何が始まるのかと、横に並ぶ男達は不安そうに眼を見交わした。

 ガイはにらみつけるような眼差しでシルバーを見つめる。シルバーも、涙の乾いた目でガイを見返した。

 次の瞬間、ガイは、突然腰から体を九十度前に倒すなり、響き渡る大声で言い放った。

「ごめんなさい!!」

 一瞬男達は、驚いたような顔をして動きを止めた。

「ごめんなさい!」

 アリオスがすぐにガイに続いて体を倒した。それを見た他の六人の男も、全員が頭を下げ、声をそろえて大きな声で言った。

「ごめんなさい!」

 シルバーも、ココロも、キイタも、静かに笑いながら頭を下げたまま一列に並ぶ男達を見ていた。

 そんな中、大地が一人、うつむいて体を震わせていた。

(ごめんなさいだって、ごめんなさいだって!よりによって、ごめんなさいだって…)

 大地は頭の中で繰り返しながら小刻こきざみに体を震わせる。彫刻ちょうこくのように筋骨逞きんこつたくましい男達が、髪をなびかせ、夕日に照らされながらする「ごめんなさい」は、余りにもシュールで、腹がよじれる程おかしかったのだが、何となくこの場で爆笑するのもはばかれる思いがして、必死にくちびるを噛んで笑いをこらえていたのだった。

 苦しさの余り顔は紅潮し、涙がこぼれてきたが、そんな大地を見たキイタは大地が感動のあまり泣いていると勘違かんちがいしてもらい泣きをしていた。

「お前達のけじめ、確かに受けた」

 シルバーが静かに言う。それをきっかけに全員が顔を上げる。こうして、国境吊り橋の山賊退治は終わった。

 すると、ガイがふらつきながらシルバーの前まで来ると、その場にどっかりと胡坐あぐらをかいた。

「ガイ…」

 シルバーがガイを見つめて言う。

「すまなかった…私を、許してくれ…」

「やめてくれ、謝るのは、俺の方だ」

 ガイがすぐに答える。

「ガイ」

「ん?」

「会わせてはくれないか?お前の、ANTIQUEに」

 シルバーがそう言うと、ガイはにやりと笑った。次の瞬間、ガイの体がまばゆい程の金色に輝き始めた。

 その光のふちは放電し、小さなひび割れのような稲妻を放っていた。ガイの髪の毛が逆立ち始める。そばで見つめるアリオス達には何が起きているのかわからなかった。

 しかし、ココロ達には見えた。ガイの背後から現れた黄金色のANTIQUE。蛇のような体をしていた。その背中には横に幾筋もの縞模様しまもようが入っていた。

 丸みを帯びた顔に光る眼に瞳はなく、大きく開けられた口の中には幾重いくえにも鋭い牙が並んでいる。恐ろしい形相ぎょうそうをしたANTIQUEであった。

 体の三分の一辺りから二本の細い腕が出ており、その手には、奇妙な形をした武器が握られている。のこぎり状の細かい刃を持つ、三日月型の剣だ。はなく、ブーメランのような形をしていた。

 足はない。その体は金色の光を放ち、今、ガイがまとっているような、稲妻をともなう光に包まれていた。

「こいつの名は、ウナジュウだ」

 ガイが言った途端とたんついえ切れなくなった大地は大きく一つ吹き出すと、シルバーから手を放し、みんなに背を向けて声を出さずに笑い出した。

鰻重うなじゅう鰻重うなじゅう…」

 ようやく笑いが収まりだした頃、大地はもう一度そのANTIQUEを見た。その恐ろしい姿、蛇のようにうねる体…そして、その体の末端、尾にあたる部分を見た瞬間、大地の中で我慢がまんの糸が完全に切れた。

 その尾は、大地の良く知るウナギの尻尾そのものであった。限界だった、大地は仰向あおむけにひっくり返ると、腹を抱えて笑い出した。

 ここまでえにえた笑いを一気に解き放ち、橋の上を転げまわりながら大地は笑い続けた。

 ANTIQUEの姿を見る事のできないアリオス達は、突然笑いだした大地を気の毒そうに見つめる。どうも頭がいかれてしまったのではないかと思えたらしい。

 そんな大地をよそに、ココロの胸のペンダントが薄桃色の光を放ち始めた。現れたゲンムは雷のANTIQUE、ウナジュウに話しかけた。

「よく来た、雷のANTIQUEよ。お前の力が必要だ」

「魔族がよみがえったと聞いた」

 初めて聞くウナジュウの声は、思ったよりも若そうな男性の声をしていた。きりっとした、男らしいその声に、大地は笑いを納めウナジュウを見た。ゲンムがウナジュウに答える。

「その通り。そして、我らがANTIQUEの一人、闇が暴走を始めた」

「ほう…」

「不自然な命を、虚無きょむへ帰す…。共に戦おう」

「そうだな、そうしたいものだが…」

 今までのANTIQUEは全てどこかで始まりの存在であるゲンムに深い敬意けいいを払っているような話し方をしていたが、このウナジュウと名付けられたANTIQUEはゲンムと対等と思える口ぶりで話した。

「共に行くか行かぬかは…我がバディ次第だ。ガイが行くと言うのならば、勿論もちろん力を合わせよう」

 思わせぶりな事を言い、ウナジュウは静かに姿を消した。それと同時にゲンムも宝石の姿に戻る。

「ウナジュウはここだ」

 そう言ってガイは、右手をみんなに見せた。ガイの右手の中指に、美しく金色に光る石のついた指輪がはめられていた。姿を見せない時、ウナジュウは指輪の姿でガイと共にいるらしい。

「テテメコォ、テテメコォ…ウナジュウに比べたら、俺の方がまだネーミングセンスあると思わね?」

 大地は独り言のようにそうつぶやくと、再び笑いが込み上げてきた。当分これは止められそうもなかった。

「それにしても…」

 二人のANTIQUEが姿を消すと、ガイが改めてと言った具合に話し出した。

「シルバー隊長がANTIQUEの能力者とは驚いた。その上、ココロ姫が始まりの存在のバディになられていたとは」

「それに、こちらにいらっしゃるのは火のANTIQUEの能力者。隣国ンダライ王国の第二王女、キイタ様だ」

「何と!」

 シルバーがキイタを紹介すると、ガイは更なる驚きに言葉を失い、慌ててキイタに頭を下げた。キイタも軽くうなずくような仕草しぐさでこれに応える。

「それと…」

 そう言いながらシルバーは、大地を振り返った。大地は、今度は四つんいになって腹を抱えている。

「あそこでどうにかなってしまっているのは大地。このプレアーガとは違う世界からやってきた、土のANTIQUEの能力者だ」

「別の世界…それで、あんなに変わっているんすか?」

「いや、いたって普通の、頼りになる男なのだが…」

「とてもそうは見えませんが?」

「そう、だな」

 ココロ、シルバー、キイタ、ガイ、そして元特別行動騎馬隊の面々はそろって笑い転げる大地の姿を心配そうに見つめていた。

「それはそうと」

 気を取り直したようにガイがシルバーを見て言う。

「間もなく日が落ちます。とにかく一度我らのねぐらへ招待したい。到底とうてい姫や王女をお招きするような場所では、ございませんがね」

「いいえ、是非ぜひ。お邪魔するわ」

 ココロが言うと、ガイは笑顔で軽く頭を下げ、後方の仲間達に声をかけた。

「おい、帰るぞ!誰か客人の馬車を引け!」

「おう!」

 男達は大きな声を出すと、すぐに出発の準備を始めた。






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