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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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王国の再建

●登場人物

・ココロ…ANTIQUEのリーダーである始まりの存在に選ばれた公国公女。テレパシストであり、唯一全てのANTIQUEとコンタクトを取る事ができる。

・吉田大地…土のANTIQUEに選ばれた地球の少年。幼い頃闇のANTIQUEに攫われた幼馴染を救い出そうとココロの仲間になった。

・シルバー…鋼のANTIQUEに選ばれたアスビティ公国の隊士。剣術、馬術に長け最も頼りになる戦士。頭が固く融通が利かない性格。

・キイタ…大国ンダライ王国の第二王女。火のANTIQUEに選ばれ四番目の戦士として仲間になった。


ポルト・ガス…ンダライ王国代行執政官。先代国王の側近で優秀な男であったがアテイル四天王の一人メロの策略に嵌まり王国を滅亡へと導く手助けをしてしまう。




●前回までのあらすじ

初めての魔族との戦いに辛うじて勝利したココロ達ANTIQUEの能力者は、メロに洗脳され我を失くしたポルト・ガスを連れ何とかンダライの塔を降り地上へと帰ってきた。

そんな彼等を待っていたのは、かつてガスと共にキイタの父、ンダライ王の元で働いた大臣達であった。彼らはアテイルに操られたガスにより全員が罷免されていた。







「う、う~~~~ん」

「ガス!」

 苦しそうな声を出しながらポルト・ガスが意識を取り戻した。キイタが慌ててその名を呼ぶ。ガスは痛むのか、頭に手をあて顔をしかめている。

「ガス、大丈夫か?」

 元大臣の一人が声を掛ける。

「お前達…」

 ガスはそうつぶやくと、周りを見回した。

「これは…私は一体何を…?」

 目の前に広がる瓦礫がれきの山に、声もない様子であった。

「ガス!」

「正気に戻ったか!」

 男達が一斉いっせいに声を掛ける。それを見ていたココロや大地も驚いた。シルバーが大地に向かって言った。

「大地、お前どんな魔法を使ったんだ?」

「何も。うるさいから黙らせようしただけだけど…」

 大地が首を振りながら答えた。

「ガス…」

 キイタが笑顔のまま涙を浮かべる。

「キイタ様…」

 不健康な灰色だったガスの顔に、みるみる生気が戻ってくる。ガスが崩れた塔を見上げる。

「私は…」

「いい、何も言わなくていいの」

 キイタがガスの言葉をさえぎる。ガスは、呆然ぼうぜんと周囲を見、自分を取り囲む仲間達を見た。その瞬間、ガスの中に今までの事が怒涛(どとうの波のごとよみがえった。

 ガスは、再びその顔から色を失くすと、自分のした事への恐怖に震えだした。

「わ、私は…取返しのつかない事を…」

「あなたはあやつられていたの。あなたに罪はありません」

 キイタが言う。周りの男達は訳がわからずお互いの目を見交みかわす。キイタはそんな彼等を見上げて言った。

「ポルト・ガスは敵の術中にまり、操られていました。あなた達を罷免ひめんしたのも、国をほろぼす政策をとったのも、全て彼の意志とは無関係」

「そうでしたか…」

「ガス」

 キイタは再びガスの顔を見る。ガスもおどおどとした表情でキイタを見返した。

「ここからです。敵は去りました。今こそあなたの力で父の意志を継ぎ、このンダライを元のえある姿へと導いて欲しい」

 ガスの顔が悲しみと後悔にゆがみ、その口から血を吐くように苦しみの言葉がきだ出された。

「しかし…!しかし私は…私は、王を!」

「ガス!」

 今正に、両親の死の真相がポルト・ガスの口から語られようとした時、キイタは大きな声でそれをさえぎった。キイタは、両手を地につき、後悔に震えるガスの肩をつかんで言った。

「全て、運命なのです…。起きてしまった事を悔やんでも死んだ者は生き返らない。でも、国を立て直すのは今からでも遅くはない」

 ガスは、キイタの顔を見ながら首を大きく何度も振った。

「私には、私にはとても無理です。私には、その資格はありません。キイタ様どうか、どうか新国王として国民をお導きください。ンダライの民を元の心優しく、豊かで生気溢(あふ)れる姿に…」

 しかしキイタは静かに首を振り、その申し出をこばんだ。

「ガス、あなたには父王が全てをたくしたはずです。あなたと、国を思う気持ちを一つにできる仲間達とが歴代の国王の信念を受け継ぎ、今こそ一丸いちがんとなってこの危機を乗り越えるのです」

「しかし…!」

 その時、元大臣の一人がガスのかたわらひざをつき、その肩を叩いた。

「お前にできぬと言うのなら、一体他の誰にできると言うのだ」

 ガスは、はっとして仲間の顔を見つめる。そんなガスの反対側にもう一人の男がしゃがんだ。

「できぬなどと言う事があろうか、我らが支える」

 ガスは、その男へ顔を向ける。やがて他の男達も次々とガスのかたわらひざをつき、口々にはげまし始めた。

「今こそ我らの力で、先代の意志を引き継ごうではないか」

「それこそが先王の望みとは思わぬか!」

「お前にしかできぬ事を成し遂げる、それこそ先代にむくいる事ではないか」

ばつを受けるなど、大儀たいぎした後にいたせ!」

 ガスは、呆然ぼうぜんとした顔で周りの男達に聞いた。

「…私を、許すと言うのか…?」

「いいや許さん。決して許さん。だから、その身、その命、全て国に捧げよ。我らも付き合う」

 それを聞いたガスは慟哭どうこくした。土下座どげざでもするように地面に頭をつけ、はげしく泣き始めた。ガスの体にかつての仲間達が手を伸ばした。

 キイタは立ち上がると、そんな男達を見下ろし静かに宣言をした。

「私は、旅に出ます」

 その言葉に、泣き顔のポルト・ガスをはじめ、男達全員が顔を上げる。

「ここに居るアスビティの令嬢ココロ殿と共に、何処いずこかへ去った我が姉イリアを捜す旅に出る」

 男達は一様いちようおどろきの声を上げる。キイタを思いとどまらせようと全員が一斉いっせいに話し始める。

「どうしても行かれると言うのであれば、私もお供いたします!」

 ガスが大声で名乗りを上げる。キイタはやはり静かな声で答えた。

「共をして、それでどうするのです?ガス。お前も見たであろう?体を鋼鉄に変え、石を自由にあやつる彼らと共にあの獣のような化け物と戦うと言うのか?」

「た、確かにその通りではありますが、しかし!しかし、キイタ様の身にもしもの事があれば…!」

 すると、キイタはゆっくりとてのひらを上に向けた右手を、胸の高さに持ってきた。

「フェルディ…」

 そうつぶやいた瞬間、その右手の上に十cm程の炎が立ち上がった。男達がに驚きの声を上げ、揃って身を引く。キイタは静かに微笑ほほえむと彼らに言った。

「魔女などと呼ばないでね?今、この世界に現れた巨大な敵を打ち倒す為、一時的に私に与えられた力よ。私達はこの力で、この世界を救う為に選ばれたの」

 聞いていた男達はみな、余りの事に声もなく呆然ぼうぜんとしている。彼らが再び話し始める前に、キイタは今まで出した事もないりんとした声で、父親程の年齢である男達に向けて言い放った。

「私は必ずイリアを見つけ出し、このンダライに連れ戻す!私達姉妹が再びこの国に戻り、晴れて我が姉、イリアが女王の座につくまで、あなた達が力を合わせ、滅びかけたンダライ王国を立て直すのです!」

 キイタの思いもよらないきびしい声に、男達はただ地にひれし、そのめいに従う意思を示した。

 夕日を受けかしずく男達と、その前に堂々と立つキイタの小さな姿を見た大地は、小さい頃テレビで観た時代劇を思い出していた。

「あ、いかんいかん」

 立ち位置的に、自分はうっかり八兵衛はちべえか、などと考えてしまった自分を否定し大地が一人首を振った時、後ろから素っ頓狂すっとんきょうな声が聞こえてきた。

「あっれ~~~~~~~ぇ?」

 大地達が知るはずもないその声の主は、メロに命じられるまま我を失ったポルト・ガスが貿易大臣に任命にんめいした町のゴロツキであった。

「なんだなんだぁ?塔がなくなっちゃったじゃないの?執政官殿、これじゃあ今夜のうたげはどこでするのよ?」

 両手を広げて大袈裟おおげさなげいて見せる男を、その場の全員が冷めた目で見つめた。

「あれ?どう、しちゃったの?」

うたげがしたければ家に帰って存分ぞんぶんにするがよかろう」

 元大臣の一人が立ち上がって言った。

「え?え?どういう事?」

「わからんのか?お前はな、くびだ」

 別の男が立ち上がりながら言った。

「はい?何それ、意味わかんないんですけど?」

 ポルト・ガスが静かに立ち上がり、大きくため息をついた。

あやつられていたとは言え、何たるおろかな…」

 そうつぶやいたガスは、最早もはやそんなゴロツキなど気にもめず、キイタに向かい言った。

「キイタ様、ご出立しゅったつするにも間もなく日が落ちます。如何いかがでしょうか?お仲間のみな様とご一緒に、今夜は城にてお休みになられては」

「ガス、ありがたい。正直、私達は非常に疲れている」

「よし、みんな城へ戻ろう!」

 ガスの号令に、大声で答えた男達は、ある者はココロをエスコートし、ある者はシルバーに手を貸した。一人の男が大地の側により、その手から馬の手綱を受け取った。

「あ、ありがとう」

 大地はその男に礼を言い、どうやら今夜はタダで飯が食えそうだ、と考えていた。

「え、ちょ、ちょっと!ねぇ、俺は?」

 動き始めた一行に、慌てて声を掛ける貿易大臣であったが、誰一人としてその声に振り向く者はいなかった。

 列の最後尾についた大地は、もう一度崩くずれ去ったンダライの塔を振り返った。よく見れば、くずれた瓦礫がれきの間から死んだアテイル達の手や足がのぞいている。大地はそれを見て眉根まゆねを寄せた。改めて、彼らの命をうばったのだと言う思いが胸によみがえる。

 そんな大地に気づいたココロがそのそばに立つ。シルバーは、馬上ばじょうで振り返りそんなココロと大地の背を見つめた。どうしたのかと、ポルト・ガスや他の男達も立ち止まった。

 たたずんだままくずれた塔を見る大地とココロのそばへ、キイタも寄ってきた。

「あれは、俺がやったんだね…」

 大地がつぶやく。

「大地…」

 馬に乗ったまま近づいたシルバーが、そんな大地のつぶやきを聞いてその名を呼んだ。

「大地…」

 ココロも言うと、そっと大地の腕に触れた。

「大地、行こう」

 反対の腕に、キイタが触れる。

「うん…」

 三人ともわかっていた。どのようななぐさめも大地の胸についた傷をいやす事はできないのだと。それでも声を掛けずにいられなかった。

 その時、突然ココロの胸の宝石が薄桃色に輝き始めた。

「え?」

 ココロとキイタが同時に驚きの声を出す。能力者達の目に、まるで妖精のような姿のゲンムが映った。不思議そうに四人の背中を見つめるガスたちには何が起きているのかわからない。

「大地」

 ゲンムが大地の名を呼ぶ。大地はゲンムを見た。

「この際だから教えてやろう。魔族は、死なない」

「は?死なない?」

 大地は怪訝けげんそうな顔でゲンムに問い返した。他の三人も意味がわからず、ゲンムの次の言葉を待った。

「そう、確かに奴らの肉体は滅ぶ。その時には痛みを感じるだろうし、だから、恐怖も覚えるだろう。しかし奴らの持つ肉体は、所詮しょせん仮初かりそめのものなのだ」

「どう言う事?」

 やはりその言葉の意味をつかみ切れず、大地がさらに聞いた。

「奴らの持つ肉体は、お前達のように自然の中で発生し育まれたものではない。本来魔族は、私たちANTIQUEに非常に近い存在なのだ」

「魔族が、ANTIQUEに近い?」

 ココロがゲンムの言葉を繰り返し、理解ができない事を示した。

「もともと魔族はお前達のように限られた時の中に生きる者達ではない。人間の目に見えるような存在ではないのだ。それが、地上にあこがれ、地上を我が物にする為、仮の肉体を手に入れたに過ぎない」

「一体どうやって?」

 大地がたずねる。

「明確に正体はわからない。しかし、奴らにこの地上で活動できる肉体を与えている“生産者”がいるのだ」

「生産者…?」

 キイタがつぶやく。

「そう、その生産者に与えられた仮の肉体が滅ぼされたとしても、魔族の精神意識は消えない。本来の姿なき姿に戻り、本来いるべき虚無きょむの世界に戻るだけ」

 まったく理解ができなかった。それは大地だけではない、そばで聞いていたココロやシルバー、キイタも同じであった。

 両親から生まれ、時間をかけて成長してきた人間である彼等にとっては想像もつかない話である。そんな能力者達にゲンムが言う。

「理解する必要はない。ただ知っておけ。魔族はその肉体を打ちくだいてもお前達のように死ぬ訳ではないのだ。ただ、元いた世界に強制的きょうせいてきに帰るだけなのだと」

「そう、なんだ…」

 理解はしようもなかった。なかったが大地は、自分の気持ちが少し軽くなるのを感じた。

納得なっとくしたか?」

 馬の上から、シルバーが大地に声をかける。

「…うん…」

 一度シルバーの顔を見上げた大地は、もう一度ンダライの塔であった瓦礫がれきの山を見て答えた。

「理解はできないけど…」

「それでいいとゲンムは言っている。戦いが進めば、私達にもわかってくる事なのかもしれない。とにかく奴らを倒しても、奴らは死ぬ訳ではないそうだ」

「うん…」

 大地はもう一度頷うなずいた。

「わかったか?わかったなら行こう。私はとにかく腹が減った」

「ああ、そうだね。俺も、腹が減ったし、超眠いし」

「よし、じゃあ行こう!」

 キイタがうれしそうに大地の腕を取って歩き出す。引っひっこみ思案じあんで、人見知りのキイタだが、アテイルとの死闘を共にくぐり抜け、仲間としての強い意識が芽生めばえたようであった。

 

 ハンデルの町に沈む夕日に向かい、ポルト・ガスを先頭に、ンダライ王国の城に向かうココロ達の背中を、建物の陰から二人の男が見つめていた。

 二人とも、屈強くっきょうな体つきをしていた。どちらも顔中にひげを伸ばし、粗末そまつな服を着ていた。一人は黒に近い茶色の髪を伸び放題に伸ばしていた。もう一人は見事なブロンドの髪をしていたが、長くくしを通していないらしく、これもまた乱れたまま長く伸びていた。

おどろきましたね」

 茶色の髪の男が言うと、ブロンドの男もすぐにそれに答えた。

「まったくだ…」

 しかしブロンドの男は、一時のおどろきが去ると髭面ひげづらの口元を大きくゆがめ、残忍ざんにんな笑いを浮かべた。

「長生きはするもんだなぁ、おい。ンダライの塔で反乱が起きたと聞いて見に来てみりゃ、こりゃどうだ、とんでもない奴に出くわしたぜ」

「どうします?」

「どうする?勿論もちろんこの手でぶち殺す。俺はその為に今日まで生き残ったんだ…。こりゃぁ神のお導きってやつだよ」

 男達の目は、去っていくココロ達の背中にそそがれていた。ブロンドの男が握りしめた左手が、金属のきしむような奇妙きみょうな音を立てる。

「じゃあ…」

 茶色い髪の男が腰に下げた剣に手をかける。それをブロンドの男が制する。

「待て待て、慌てるな。一度ねぐらに戻るぜ」

「え?しかし、それでは奴を見失っちまうんじゃ…」

「だぁいじょーぶだよぉ」

 茶色い髪の男に、全てを言わせずブロンドの男が言った。

「奴は自分から俺達の所へ来るから」

「なんでそんな事が?」

「わかるんだよぉ。俺ぁはなぁ、奴を呼び出す方法を知っているんだ」

 そう言うとブロンドの男が愉快ゆかいをそうに笑いだした。

「まぁ、かしらがそう言うなら…」

 そんな相手の声が聞こえているのかいないのか、ブロンドの男は狂ったように腹を抱えて笑い続けた。茶色の髪の男は、かしらと呼んだその男を気味悪そうに見つめた。

 アテイル達をからくも倒し、ンダライ王国再建の希望を得たココロ達の前に、早くも次の暗雲あんうんが立ち込めているようであった。













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