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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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死闘のあと

登場人物

・ココロ…全宇宙の始原の存在である時のANTIQUEに選ばれた公国の姫。虚無の世界から蘇り、宇宙の制服を企む魔族から世界を守ろうと仲間を探し続けている。

・吉田大地…土の能力者。魔族を倒し、闇のANTIQUEに攫われた幼馴染である白雪ましろを連れ戻す為、時空を超えてココロの元に現れた地球の少年。

・シルバー…ココロの生まれた公国で行軍隊士として勤めていた剣士。領主の娘であるココロには絶対的な忠誠心をもって接している。

・キイタ…ココロが生まれた公国の隣国であり王国の王女。火のANTIQUEに選ばれた事で仲間になった。


・ポルト・ガス…元はンダライ王国大臣であり、国王からの信頼が最も厚かった男。アテイルの一人メロに洗脳され、母国を崩壊寸前まで追い込んでしまった。



●前回までのあらすじ

崩壊を始めるンダライの塔最上階で繰り広げられたANTIQUEとアテイルによる死闘は、火の能力者、キイタの機転により、ANTIQUEの勝利で終結した。

この戦いの中でアテイルの戦士エルーランを倒す事ができたココロ達ANTIQUEだったが、首領格であるメロには、ダキルダの手により戦場からの逃亡を許してしまう。

激しい戦闘に耐えきれなくなったンダライの塔は、縦に切り分けられたように半分を崩壊させ、完全に機能を停止した。







 ココロ、シルバー、キイタの手を借りて破壊し尽くされた執政の間に上がった大地は、そのまま仰向あおむけに倒れこんだ。その横にシルバーも寝転ぶ。

 屋根まで失った見上げる先には、青く高い秋の空が広がっていた。心地ここちよいと言うには強過ぎる風が吹き抜け激闘をせいした四人の能力者に吹き付けていた。

 しばらくの間四人は、言葉もなく呼吸を荒くしていた。やがてココロがポツリと呟いた。

「終わったね」

 その声を聞くと、シルバーが素早く上体を起こした。その目は鋭く、勝利の余韻よいんにふける様子ようすもない。

「しかし、勝てませんでした…。メロも、ダキルダも取り逃がしてしまいました…」

「シルバー…」

 ココロは、あくまでも自分にきびしいシルバーをなぐさめるように声を掛けた。と、そんな二人の横で突然大地が勢いよく起き上がると、いきなり部屋のすみに向かい走り出した。

 大地は、壁際まで辿たどり着くなり、両手を床についてはげしく嘔吐おうとし始めた。初めて命の危機に直面した、敵とは言え初めて生ある者の命をこの手でうばった。今更いまさらながらにその恐怖が全身をつらぬき、大地は涙を流しながら吐き続けた。

「大地」

 ココロが心配して立ち上がり、大地の方へ向かおうとする。

「ココロ様」

 そんなココロをシルバーが呼び止める。ココロが振り向くと、シルバーがそっと首を横に振った。

 シルバーにも覚えがある。初めて本物の戦闘に参加したあとは今の大地のように何とも言えないをもようしたものだ。戦士として戦った男が見られてうれしい姿であるはずがない。今は一人にしておく事こそ優しさだとシルバーは思った。

 ココロは、シルバーのかたわらに座ると、足の傷を始めた。心配そうに大地を見つめていたキイタも目をらした。二人ともシルバーの言わんとする事がわかったようだった。

「大した事はありません」

「とてもそうは見えないわ」

 言うなりココロは自分の着ている服のそでを破り始めた。

「姫!何を…」

 シルバーは慌てた。しかし、ココロはそれを無視して裂いた布をシルバーの流血している足の傷に当てると、強くしばった。

「シルバーあなたねぇ、さっきから何度私の事を姫と呼んだ?」

「あ…」

「まだまだ修行不足しゅぎょうぶそくね」

 からかうようにココロがシルバーを見上げる。

「返す言葉もございません」

 シルバーも微笑ほほえみながら答える。

「助けに来てくれてありがとう…」

 シルバーがココロのそんな言葉に下げた頭を上げると、目が合ったココロはニッと歯を見せる。

「はい、これでよし」

 しばり終わった傷口をココロがポンとはたく。

「痛っ…!」

「わぁ、ごめん!」

 ココロとシルバーがそんな会話をしている頃、キイタは壁に寄りかかったまま動かないポルト・ガスの近くへ来ていた。

 今は完全に気を失ってしまったようである。そんなガスの顔を見下ろすキイタの瞳は、決意の炎に燃えていた。

「ガス…」

 キイタはガスの前にひざをつくとその肩をすった。

「ガス起きて、お願い」

 ガスは目を開けた。しかし、その目はやはりどんよりとにごり、目の前のキイタを見てはいなかった。

 そんなガスを見て、キイタはため息をついた。そのままガスのすぐ横で壁に寄りかかり、頭上の空を見上げた。

「ンダライを、取り戻さなくてはね…」

 キイタが聞いているはずもないガスにそっと呟く。

 ココロに礼を言われた気恥きはずかしさをごまかすように、シルバーは大地を振り返った。ひとしきりき出したのか、大地は正座をするような姿で背中を向けていた。

 肩を落とし、軽く上を見上げ放心したように大地は動かなかった。シルバーは、床に手を突くと立ち上がり始めた。ココロが慌てて肩を貸す。傷ついた足を引きずりながらシルバーは、大地のそばまでやってくると再び腰を下ろした。

「どうだ、気分は?」

 えて軽い口調で声をかける。まばたきもせずにシルバーの方を振り向いた大地の顔は、既に流れた涙も乾いていた。シルバーは軽く笑顔を見せると続けた。

「すっきりしたか?」

 大地は目線を下へ落とすと、言葉少なに言った。

「こんな事が、続くんだね…」

「そうだな…それが宿命のようだ、私達のな」

 大地は目をつむり、深く息をついた。

「だけどな大地」

 再び話し出したシルバーに、大地が顔を上げる。

「お前の辛さは私も背負せおう。決して、お前一人で苦しむな」

「私も一緒に背負せおう」

 すぐ隣でココロも言う。大地はそんな二人の顔を交互に見た。シルバーが続けて言う。

「何の因果いんがか、随分ずいぶんと辛い役をになう事になっってしまったが、せめてもの救いは、私達が一人ではないと言う事だ」

 ココロも強くうなずく。大地は、一度目線を落とすと、もう一度目をつむった。その目を開き、見上げた顔に、遠くンダライの街並みが映った。風が大地の髪を乱す。

「…腹が減った…」

 どの位であったか、ンダライの塔最上階からの眺めを見つめていた大地がポツリと言う。ココロとシルバーはおどろいたように目を見合わすと、大声で笑いだした。

「そうだな、少し遅くなったが、約束通りみんなでそろって昼飯を食おう」

 シルバーが大地の肩を叩く。

「だが大地、お前にはもうひと働きしてもらわなくてはならない」

「え?」

「私は何より地面が恋しい。一刻も早くこの場所から降りたいのだ。階段を作ってくれ、この足でも降りる事のできる、やさしい階段をな」

 シルバーがそう言うとようやく大地に笑顔が戻った。大地は立ち上がると大きく腰を伸ばした。

「よし!じゃあ、降りようか」

 大地がそう言うと、ココロも立ち上がり、キイタの元に駆け出した。

「キイタ行こう。今大地が階段を作ってくれるから」

 キイタ頷くと立ち上がり、ガスの腕を取って一緒に立ち上がらせた。

「ほらガス、行くよ」

 キイタに支えられたガスは相変わらずぶつぶつ何事がつぶやきながらも素直に立ち上がった。

「よし」

 大地が床に手を突く。その後ろに全員が集まった。その目の前で、壁からせり出した石がゆるやかな階段を作り始めた。

 慎重しんちょうに石を動かしながら大地が階段を作る。すぐ後ろにはココロが付いて来る。そのさらに後ろからキイタがガスの手を取り、いちいち声をかけながらゆっくりと下る。

 一番後ろから階段を下るシルバーは、やはり不自由そうにやや遅れて一歩一歩階段を降りてきていた。

 そんな調子であったため、五人が地上に無事に降り立つまでに相当の時間を要した。シルバーが、昼飯を、と言ったが、既にハンデルの空は夕焼けに染まりつつあった。

「ガス!」

 五人が地上に降り立つと、そこへポルト・ガスの名を呼びながら近づいて来る数人の男達がいた。

 メロに洗脳せんのうされたガスにより、政界を追われたかつての大臣達であった。

「キイタ様、これは一体…」

 元大臣の一人が、王女の姿をみとめ声をかける。

「あなた達こそ、どうしてここへ?」

 キイタは、長く父につかえ、栄光のンダライ王国を支え続けた優秀な男達の顔を見回した。

「どうしたもこうしたも、町ではえらいさわぎです。ンダライの塔で戦闘が行われているらしいとうわさが広まり、逃げ出す者もあれば、革命だと叫びながら決起けっきしようとする者などが続出し、ひどい混乱こんらんが起きております」

 男が報告している間も、他の大臣達は何とかポルト・ガスの正気を取り戻そうと名前を呼んだり、体をすったりしていた。

「そうでしたか…いや、そうであろうな」

「キイタ様、何があったのですか?」

 元大臣の質問に何と答えたものか、逡巡しゅんじゅんした後、キイタが口を開きかけた時、不意ふいに大声が響き渡った。

 見れば、ポルト・ガスが意味の分からない絶叫ぜっきょうを上げながら、かつての仲間達の手を振り払って暴れだしていた。

「ガス!」

 慌てて止めようとする大臣達に混ざり、キイタもガスを取り押さえようと駆け寄る。しかし暴れるガスの腕がキイタをいとも簡単にはじき飛ばした。年を取った元大臣達も暴れるガスを止めきれず、ただオロオロとしているばかりだ。

 大地が、ため息をつきながら塔の壁に寄りかかるように手をつくと、その壁から小さな石の欠片かけらねらさだめたようにガスの頭の上に落下してきた。

 見事に石片いしへんを頭に受けたポルト・ガスは、そのまま意識を失い、地面に長く伸びてしまった。

 キイタが振り向くと、大地はすました顔で肩をすくめ、背を向けた。大地はそのまま何処どこかへと去って行く。キイタは慌ててガスの元へ駆け寄ると、そのかたわらにひざをつき、ガスの名を呼んだ。

 傷ついた足をかばい、瓦礫がれきに腰を下ろしていたシルバーが見ると、大地は無事でいた二頭の馬を引き連れて戻って来た。そのまま大地は、少し離れた場所で、事の成り行きを見る事にした。








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