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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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すれ違う思い

●登場人物

・ココロ…始まりの存在に選ばれ仲間探しの旅に出た能力者のリーダー。わずか十四歳にして全宇宙の平和をたくれる羽目はめになってしまった。

・吉田大地…土の能力者。闇のANTIQUEにさらわれた幼馴染おさななじみを救い出す事を目的にココロの仲間となった地球人。

・シルバー…鋼の能力者。ココロに絶対の忠誠を誓う公軍隊士。抜群ばつぐんの安定感でココロを補佐する姿に仲間達からの信頼も厚い。

・キイタ…ANTIQUE最強と呼ばれる火の能力を手に入れた少女。大国の第二王女であり自国の民を救うため命懸けの戦いに挑む。

・ガイ…雷の能力者。過去に部下を救おうとして左腕を失った元分隊長。純粋じゅんすい馬鹿ばかが付く程のお人好ひとよしだが戦闘能力は非常に高い。

・アクー…水の能力者。常に冷静で頭脳明晰ずのうめいせきな少年。ただしほとどの記憶を失っており、人の微妙びみょうな心理などにはまったくもってうとい。

・ナル…生命の能力者。不幸な事故により両親を失う。自暴自棄じぼうじきになり闇にちかけていたところをココロに救われ仲間になった。



●前回までのあらすじ

 ついに見つけたカンサルク王第二の武器はナルの呼びかけに応え、自分をキバと名乗る。目の前で見せつけられた奇跡に道具屋の主人はナルにその武器を渡す事を決意する。

 赤の精霊であるタテガミに対し銀の精霊であるキバが宿る武器はやはり一振りの美しい剣であった。出航を翌日にひかえ、ようやくナルは新たな武器を手にする事ができたのだった。

 その頃ましろを捜すため大地について町へ出たココロであったが、昼時を迎え一度宿に戻る事を提案した。しかし大地は自分はまだましろを捜すと言い一人別行動を取ろうとする。

 大地のその態度にココロは一人足早に宿へと戻り始めてしまった。町の雑踏ざっとうの中、背中を向け合い離れていく二人の間でキイタとアクーはどうしてよいものかわからずただオロオロとするばかりであった。







 両手にミニートを抱いたままココロはズンズンと宿に入って行った。その後ろをキイタが必死に追いかけて来る。

「ココロ!ねえ待って!ココロってば!」

 キイタが息を切らして呼んでもココロは振り向かないどころか足を止めすらしなかった。

「ココロ…」

 自分を無視して階段を上がって行くココロの背中を見上げながらキイタは泣きたいような気分でつぶやいた。

「もう!」

 一度気合を入れるように声を上げたキイタは、一気に階段をけ上がった。三階の廊下に出ると丁度ココロが部屋のドアを開けるところだった。

 一つため息をついてココロを追って部屋に向おうとしたキイタは、その時響いた大きな声に足を止めた。

「ココロ様っ!!」

 キイタは恐る恐る部屋の中をのぞいてみた。そこには鬼のような形相ぎょうそうのシルバーが立っていた。

「何よシルバー、びっくりするじゃない!」

 ココロがいらついた声で抗議こうぎする。

「どこへ行かれていたのです?キイタ様も」

 部屋の入口で顔だけのぞかせるキイタに気が付いたシルバーが慌てて言い加える。

「どこにも行ってないわよ。町の中をぶらついただけだわ」

「あれ程宿から出ないようにお願いしたではないですか!」

 ガミガミと怒鳴どなるシルバーを無視して部屋の奥へ進んだココロは、日当たりのいい出窓にそっとミニートを降ろした。

「ココロ様!」

「ああ、もううるさいなあ、そんな大きな声を出さなくても聞こえているわよ。まったく、シルバーあなた段々じいやみたいになってきたわよ?」

 シルバーは気を落ち着かせようと一度大きく息を吐くと、ボリュームを落とした声でそれでも小言を続けた。

「わかってください。私はココロ様が心配なのです。私のいない間にまたお二人が襲われでもしたらと思うと…」

「うるさいって言っているの!!」

 突然ココロが大声で叫んだ。この旅が始まって以来出した事もないような大きな声に、シルバーとキイタは固まった。

「何かって言うと心配だ心配だって、ドルストの町で私とキイタがダキルダにさらわれた時の事を言っているのならお生憎様あいにくさま、あの時だって私達は宿から一歩も出てなんかいないんですからね!それでも敵はどんどんどんどん部屋の中まで入って来たわよ!第一あなたは私一人につかえる特命を帯びた隊士でしょう?だったらうるさく言う前に私のそばから離れないでよ!もう二度と離れません~、とか言って、口ばっかりじゃない!」

「ココロ様…」

「大体ここは女子部屋よ?あなたが言ったんでしょう?私達とは一緒に寝られないって!なのに留守中に勝手に入り込むとはどう言う事よ!」

 小さな穴からダムが決壊けっかいするように、ココロは止めどなく怒鳴どなり続けた。

「そ、それは、部屋に戻ったところ誰もいなかったので…」

「言い訳なんかしない!!」

「あ、あのね!」

 一方的にまくし立てるココロを止めようとキイタが必死に大きな声を出した。

「大地が、出て行ってしまったの」

「大地が?」

 シルバーは驚きの目をキイタに向けた。

「そうよ、大地が行きたい行きたいって聞かなかったのよ」

 ココロが両手を広げて投げやりな感じで言う。

「止められなかったのですか?」

 シルバーがキイタにたずねる。

「止めたわ、私もアクーも必死になって止めたんだけど…」

「私が行こうって言ったのよ」

 ココロの言葉に再びシルバーが目を見開く。

「何よ?悪い?あなたの言う通り、大地は普通じゃなかった。私達が何を言ってもましろぉ、ましろぉ~って。だったらいっそ好きなようにさせればいいと思ったのよ。こんなところにこもってもんもん々としてたって悪化するばかりよ。捜しに行って見つかればそれでよし、見つからなければあきらめるでしょう」

「…それで、大地は今どこに?」

「知らないわよ」

「アクーがついてるわ」

 キイタが急いで言うと、シルバーは慌ててドアに向かった。

「結局また私を置いていくんだ」

 ココロのねたような声にドアノブをつかんだまま止まったシルバーが振り返った。

「お許しください。しかし今の大地を野放しにはしておけないのです。彼はクールに見えて実は相当の情熱家です。こうと決めたらとことんまでやり抜いてしまう男です。たとえ、自分の命と引き換えにしようとも」

「結局あなたは大地の事が大好きなのね?」

 ココロが皮肉めいた声を出す。シルバーは一度自分の足元に落とした目を再びココロへと向けた。

「否定はしません。しかし、好きと言うのとは少し違います」

「どう違うのよ?」

「私は、大地を尊敬しているのです。決して失ってはならない仲間なのだと考えております」

 それだけ言うとシルバーはココロに一礼し、急いで部屋を出て行った。

「何なのよ…」

 自分の服を強くにぎりしめながらココロが低い声でつぶやく。

「何なのよ!どいつもこいつも!!」

 そう叫ぶとココロは寝室へけこんでしまった。

「ココロ…」

 思いも寄らない展開にキイタはそれ以上何も言えないまま部屋の隅にただ立ち尽くすほかなかった。





 シルバーは町の中を走った。相変わらずジスコーの町はにぎわっている。決して広い町ではなかったがこの人手の中大地一人を見つけるのは至難しなんわざだった。

 それでもシルバーは大地を捜す事をやめなかった。行きう大勢の人々の中から何とか大地の姿を見つけ出そうと必死に走り続けた。

「シルバー!」

 そんな声にシルバーは慌てて足を止めた。声の主を捜し顔をめぐらせる。小さな女の子の手を引いた少年がこちらに向かって一生懸命に手を振っている。

「スティア!」

 それは連絡船と客船のチケット交換したスティアだった。シルバーは急いで往来おうらいを渡ると彼のそばけつけた。

「買い物か?」

 シルバーの問いにスティアは元気にうなずいた。

「うん。今日中に必要な物をそろえないといけないからね。あ、これが妹のジョシュア。ほらジョシュア、挨拶あいさつしろ」

「こんにちは」

 言われた少女はスティアの後ろに隠れながらそれでも小さな声で言った。シルバーは顔を半分だけのぞかせているジョシュアに愛想あいそ笑いを投げておいて、すぐにスティアにいた。

「スティア、大地を見なかった?」

「大地?うん、見たよ」

「何、見た!?」

「うん。ついさっきこの通りを港の方に向かって行った。何か、変なんだよ大地」

「変?」

「うん、俺が大声で呼んだら振り向いたんだ。しっかり俺の顔を見たはずなんだけど、すぐにそっぽ向いて歩いて行っちゃったんだ。わからなかったのかなって思ったんだけど、ジョシュアがいたから追い掛けられなかったんだ」

 スティアが言っている間にもシルバーはもう彼が指さした方に向かって数歩を踏み出していた。

「助かった。スティア、明日の出航は早い。買い物が終わったらすぐに帰って休むんだ、いいな!」

 言いながらシルバーはスティアの答えも聞かずに人混みの中に消えて行ってしまった。

「何だろう?」

 兄のズボンから手を離そうとしない幼いジョシュアと目を合わせながらスティアがポツリとつぶやいた。





「ねえ大地。僕らも一度宿に戻ろうよ。どう考えたっておかしいって、絶対に大地の勘違かんちがいだよ」

 アクーがうんざりした声で言うが、前を行く大地はまったく足をゆるめようとはしなかった。

 ため息をついたアクーの耳に、小さな女性の悲鳴が届いた。

「げっ!?」

 声の方を見たアクーは驚きのあまり声を上げてしまった。人混みを強引にき分けながらシルバーがすご形相ぎょうそうで迫って来るのが見えたのだ。

「だ、大地、大地…」

 おびえた声でアクーが大地を呼ぶが、それでも大地は止まろうとしなかった。やがて風のようにアクーと大地を追いぬいたシルバーが大地の前に立ちはだかる。

「あれ?シルバー」

 目の前に立ったシルバーにようやく気が付いた大地がほうけた声を出した。

「何をしている…?」

 シルバーが押し殺した声で言う。

「何って…」

「ココロ様とキイタ様のそばを離れ、お前は何をしているんだ!!」

 そう叫ぶなり突然シルバーはタックルでも喰らわすように身をかがめると、一瞬にして大地の体を肩の上にかつぎ上げた。

「な、何だよ?何をするんだシルバー!!」

「宿に戻るんだ」

「や、嫌だよ!俺はましろを捜さなくちゃいけないんだ!!」

「黙れ!」

 シルバーはジロリとアクーをにらみつけた。その鋭い目力にアクーが冷や汗をかく。

「い、いやシルバーこれはね…」

「お前も来い」

 アクーの言葉を皆まで聞かずに低い声で言うと、シルバーは大地をかつぎ上げたまま大股おおまたで今来た道を戻って行った。

 シルバーの歩く先で人垣が割れて行く。その間も大地はシルバーの肩の上で暴れ、大声で叫び続けていた。しかし左腕一本で大地の体を押さえつけているシルバーは彼の抵抗をものともせずに歩き続けた。





 キイタは意を決してそっと寝室をのぞいてみた。ベッドの上にココロがうつ伏せになって顔を埋めている。

「わかっているわよ」

 キイタがココロの名を呼んでみようと口を開き掛けた瞬間、思いがけずココロの方から先にしゃべり始めた。枕に埋もれた口からくぐもった声が聞こえる。

「え?」

私今物凄ものすごく嫌な子になってる。そんな事、わかってる」

「ココロ…」

 キイタがつぶやくとココロはガバっと両手をついて上半身を持ち上げた。

「でも私は別にかまってちゃんな訳じゃないんだからね?」

「か、かまってちゃん?」

 キイタが戸惑とまどってき返すと、ココロはベッドの上で反転し、キイタの方を向いて座り直した。

「別に、ずっと誰かに気に掛けていて欲しいとか、そばにいて欲しいとかそんな事を言う気はないの」

「う、うん」

「だけど今の大地は何?どんな状況でも私を守ってって言ってみたら勿論もちろんって答えたのよ?聞いてたでしょ?勿論もちろんって言ったの」

「そうだね」

「なのに私が宿に戻るって言ったら今度は何よ?気をつけてねですって?それはないんじゃない?」

 両手を広げてうったえて来るココロにキイタは苦笑いを返した。ココロは急に声を落とすと尚も続けた。

「…私は何も本当に大地に守ってもらいたいなんて思ってないのよ。だって魔族と戦うって決めたんだもの。自分の身位自分で守ろう位の覚悟はあるわ…。ただ大地にはANTIQUEの能力者としての使命を忘れないでねって、そう言いたかったの」

「うん、わかるよ」

「でも大地はそれを放棄ほうきした」

「それは…、大地の目的はましろさんを連れ帰る事だから…。大地は六年間もその事ばかり考えていたから…」

「それじゃあキイタもイリアを見つけたら私から離れるの?」

「そ、それは…」

 キイタの答えを待たずにココロは首を振った。

「私はできないわ。私は始まりの存在のバディよ?何があってもこの戦いから身を退く事はできないの」

「私だって!何もイリアが見つかったら能力者をやめるなんて言わないわ」

 キイタがやっと言ったその言葉にココロはすっと目線を外した。それでもココロは話す事をやめなかった。

「ンダライの塔がくずれ始めた時、大地は私達に自分を助けにくるなと叫んだわ」

「え?」

 突然言い出したココロにキイタがまゆを寄せる。

「テリアンドスではキイタを助けようとして死にかけた。レメルグレッタではたった一人で私を助けに来てくれたのよ。本当はお化けが怖いのに…」

「そ、そうなの?」

「大地が情熱家ですって?」

 ココロはキイタの質問を無視してブツブツと言い続ける。

「そんな事、いちいち言われなくったって私の方がよくわかっているわよ。シルバーなんかよりも、私の方が…」

「ココロ…」

 キイタが困ったようにココロの名前を呼んだその時、部屋のドアが叩かれる音が聞こえた。

 キイタは一瞬ドアとココロの顔を交互に見たが、ココロは顔を伏せたまま動こうとしない。仕方なくキイタはドアへと急いだ。

「コッコロ様~、キイタ~、いますかぁ?」

 ドア越しに聞こえる能天気のうてんきな声はガイのものだった。キイタは急いでドアを引き開けた。

 そこには再びドアを叩こうと手をあげたままの間抜けな恰好かっこうのガイが立っていた。

「ガイ!」

「ああ、何だいたんだ」

 キイタの姿をみたガイが笑って言った。その後ろにはナルもひかえている。

「男部屋の方に誰もいないんすけど、みんなこっちすか?」

「と、とにかく入って」

「え?」

 キイタの慌てた様子ようすにガイとナルは目を見交わすと訳も分からぬままキイタに手を引かれて部屋へと入って行った。

「キイタ、何かあったの?」

 二人を導き入れ、急いでドアを閉めるキイタにナルがたずねた。

「そ、それがね…何て言ったらいいのかな?」

 キイタが弱り切った声で言う。その間も彼女の大きな赤い目は奥の寝室にチラリチラリと動く。

 ようやく手に入れたキバの事を話したくてウズウズしていたガイとナルは、それどころではないらしい雰囲気に拍子抜ひょうしぬけしたような顔をしてキイタのたどたどしい説明を聞いていた。

 キイタが二人にすべてを説明しきる前に、ドアの外からそうぞう々しい叫び声が聞こえて来た。その叫び声はじょじょ々に自分達の部屋に近づいて来る。

 青い顔をしてドアに向かったキイタの肩をつかんで止めたガイはドアを開き廊下をのぞき見た。

「何だありゃ?」

 廊下の先からシルバーが近づいて来る。それだけならば何も不思議がる事もないのだが、その肩の上でこちらにしりを向け両足をバタバタさせて暴れている奴がいる。

 ガイがぎょっとした顔をしている内に、シルバーは暴れる男をかついだままもうすぐ目の前まで来ていた。


















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