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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
190/440

銀の精霊

●登場人物

・ココロ…ANTIQUEのリーダーである始まりの存在に選ばれた公国の公女。

・吉田大地…土の能力者。

・シルバー…鋼の能力者。

・キイタ…火の能力者。

・ガイ…雷の能力者。

・アクー…水の能力者。

・ナル…生命の能力者。



●前回までのあらすじ

 一夜明けたジスコーの宿で朝食の席につく能力者達。その中に大地の顔はなかった。食事を終えたガイとナルが早速カンサルク王第二の武器を探すべく町へと出て行くと、シルバーはココロ、キイタ、アクーの三人に今日一日宿の中で大地の様子を見ていてほしいと頼むのだった。

 大地の変調に気が付きもしていないガイとナルは、昨晩タテガミが精霊の武器がいると言った道具屋へとやって来る。

 たくさんのかめの中に無造作むぞうさに刺された古い剣の中から目指す精霊の武器を探し出そうとナルは必死に生命の能力を発動し続ける。

 そこへやって来たシルバーは何を思ってかナルが漁っている大量の剣の上に手をかざすと、ナルに探すべきかめを指示するのだった。

 一方、道具屋の店主が持ち出して来た様々な古い武器を検分するガイ。店に入る前にタテガミから聞いた、カンサルク王の武器は剣だけではない、と言う言葉に従い歴史のありそうな武器を持って来させたのだ。

 ひとしきり武器の蘊蓄うんちくれる店主に、何故かシルバーが怒りの表情を見せ始めた。







「だが…」

 得意げな顔で胸を張る店主に向かってシルバーが低い声を出した。

「ここに私達の探しているものはない」

「え?」

 ガイと店主は同時に声を上げた。店主の顔を見上げるシルバーの目はわっていた。それを見てガイは、シルバーが何かに怒っている事を思い出した。

「これら全てアガスティアの遺物と言ったなおやじ?」

「え?あ、おお…」

 店主はシルバーににらまれあからさまに狼狽うろたえた声を出した。

「シルバー?」

 ガイが恐る恐る声を掛けると、シルバーは首を横に振った。

「飛んでもない。どれもこれも全く年代が合いやしない。この中で最も古いものでもせいぜい百年前の代物だ」

「なっ…!」

 ガイが急いで店主の顔を見る。店主は変わらず腕を組んだまま虚勢きょせいを張るように背を伸ばしていたが、その顔はまるで水でもかぶったように汗だくだった。

「て、てめえおやじ!俺をだまそうとしやがったな!」

 ガイが恐ろしい声で怒鳴どなりつけると、体の小さな店主はガイに負けじと言い返して来た。

「うるせえ!アタシは道具屋だよ!?武器屋じゃねえんだ!知るかそんな事!」

「何開き直っていやがるこの野郎‼」

 ガイはカウンター越しに手を伸ばすと店主の襟首えりくびつかんだ。

「く、苦しい、やめろ!暴力反対!」

「黙れこの盗人野郎が‼」

 多くの外国人や上流階級の人間、最下層の貧乏人に、中には海賊のような犯罪者まで多種多様な人間が行き来する港町。そんな街で商売をするとなればハッタリも生きる術なのだろう。

 だからこそ純朴じゅんぼくなナルがそんな商売人の口車に乗せられないようにとついて来たと言うのに、危うく自分がだまされそうになった事でガイの怒りは沸点ふってんに達していた。

 バカみたいに怒鳴どなり合う二人に背を向けたシルバーは地道に一本づつ剣を手にし続けるナルに近づいて行った。

「どうだ?」

 シルバーの問いにナルは手を休めずに首を振った。

「これと言って感じるものはないです。何だか自信がなくなってきたよ」

あきらめるな。タテガミがここにいると言う以上、第二の武器はこの店にあるはずなんだ」

 ナルはふと顔を上げシルバーを見た。

「さっきは、何をしていたの?」

「デュールの力を使えば、いつ頃鍛えられた鋼であるのかおおよそわかると思ったんだ。思い付きだが、うまくいった」

 ナルの目が大きくなった。まさか鋼の能力にそんな使い道があったとは思わなかった。

 店に無数にある剣の内、シルバーが選別してくれたお陰で可能性は半分程までに絞られていた。

「シルバー…」

 ナルが嬉しそうに微笑みながら言う。剣士として、チームリーダーとして尊敬していたシルバーの協力にナルはときめきにも似た感動を覚えていた。

「こんな事位しかしてやれんが…、すまん、頑張ってくれ」

「そんな!シルバー、僕がんばります!絶対に今日中に見つけて見せます!」

 そう言うとナルは再びかめの中に立つ剣をにぎった。そんな姿を見たシルバーは微笑むと、ガイに声を掛けた。ガイはまだ店主の首をめあげている。

「ガイ、ガイ!」

「何すか!?」

「ココロ様の事が気掛かりだ。私は一度宿へ戻る。ナルを頼んだぞ」

「ええ、任せてください!」

「それとな」

「まだ何か!?」

「ほどほどにしておけよ」

 店主の小さな体がガイの丸太のような腕に振り回され頭をガクガクとらしている。白目を向き、意識が遠くなってきたらしい店主の顔を見たガイは、怒りも収まらぬまま店主の体を投げつけるように離した。

 そんな様子ようすを見て苦笑いを浮かべたシルバーはそのまま店の外へと出て行った。

「だ、大体!あんた達一体何を探しているんだ!」

 ようやくガイの手から解放された店主が咳込せきこみながら叫んだ。

「見りゃ二人とも大層たいそうこしらえじゃねえか。言っておくがこの店に武器になるようなもんなんか売っちゃいねえぞ!」

 床に尻餅しりもちをついていた店主は必死にカウンターをよじ登るようにして立ち上がるとナルを指さしながら更に叫んだ。

「あの兄ちゃんは昨日から一体何をしてるんだい?あのかめの中にあるもんなんかどれもこれもガラクタばかりだ!」

「ようやく認めたか、ガラクタだってな」

「そりゃそうさ!見りゃわかんだろうよあんた達なら。びついてさやから抜けない剣ばかりだよ!中なんてどうなってるのか想像もつきやしねえ!古すぎて色もげてるし装飾品だってみんな欠損けっそんしてる。飾りにすりゃならねえ代物ばかりだ!」

 そんな風にがなる店主を無視してナルはただひたすらに剣をにぎり続けた。

(ガイア、ガイア…。僕を導いて、偉大いだいなるカンサルク王の武器の元へ)

 一本一本のつかにぎりながらそのたびにナルは胸の中でり返した。店主には見えていないが、この店に入った時からナルの体はガイアの生命の能力を発動させ緑色の美しい光を放ち続けている事をガイは知っていた。

「昨日からああやって一本一本見てるけどさあ、まさかこの店にある剣を全部あんな風に調べる気かい?そうやって閉店まで居座って何一つ買わねえ気じゃないだろうねえ!?」

 突然ガイがカウンターを力いっぱい叩いた。店主は恐怖に身を縮めて凍り付いた。

「買うさ…」

 顔を伏せたままガイが低くつぶやいた。

「この店にあるはずなんだ。何時間掛かろうと見つけ出す。見つけ出す事ができりゃあ必ず買う」

 そう言ってどけた手の下には一枚の硬貨があった。

「必ず買うから、黙ってろ」

 ガイの迫力に目を見開いたまま動きを止めていた店主の右手がそろそろとカウンターに置かれた硬貨へと伸びる。

 ガイの手が再び硬貨の上からカウンターを叩いた。

「まだだ!」

 歯をき出すガイの顔を見て店主が照れたような笑いをこぼす。そのしたたかすぎる商売根性に、ガイはあきれるのを通り越し少しこの店主を尊敬し始めていた。



 ガイとナルが町の道具屋で必死にカンサルク王第二の武器を探している頃、宿に残ったココロ、キイタ、アクーの三人はぐったりとした表情で部屋の真ん中にしゃがみ込んでいた。

 シルバーがガイ達を追って出掛けた後、すぐに部屋に戻った三人は言われた通り大地の様子ようすを見守っていた。

 やはりいつもの大地ではなかった。アクーの言う通り正に心ここにらずと言ったていであった。

 ココロ達は何とかそんな大地の気持ちを盛り立てようと散々に手を尽くしたがその全ては徒労とろうに終わった。

 何を言っても、何に誘っても、大地の反応は鈍かった。最早もはや一切いっさいの手段を失った三人はせいこんき果て、今や大地と同じく魂を抜かれたようにぼんやりと座っていた。

「一体どうしちゃったのよ大地は?」

 ココロがポツリとこぼす。

「ましろさんの姿を見たと言うのが相当ショックだったのね、きっと」

 足を投げ出してココロの背中に寄り掛かっていたキイタも力なく言った。

「大地!」

 アクーが叫ぶ声にココロとキイタが顔を上げる。ベッドの上でひざを抱えたまま身じろぎもせずに窓の外をながめ続けていた大地が、フラリと寝室から出て来たのだ。

「大地、大丈夫?お腹すいた?」

 ココロが立ち上がりながら精いっぱいの笑顔でたずねるのに、大地はぼうっとした顔を向けて来た。やがてノロノロと首を振った大地はかすれた声を出した。

「大丈夫…。それより俺、行かなきゃ…」

「行かなきゃって、一体どこへ?」

「え?」

 キイタの質問に大地はほうけたような顔を上げる。

「大地、今日は宿にいよう。シルバーもそうしろって言っていたし」

 アクーが大地をなだめる。言われた大地はかすかにまゆひそめた。

「シルバーが…?何でだろう?何でシルバーはそんな事を言うんだろう?」

「だって…そりゃ大地が心配だからだよ」

「俺が?」

 そう言うと大地は薄く笑いを浮かべた。口元だけをゆがめた感情のない笑いだった。白い顔はまるで幽霊のようだ。

「俺、行かなきゃいけないのに…ましろを捜しに、行かなきゃいけないのに…」

 そう言って大地はフラフラと部屋の出口へ向かって歩き始めた。それを見たキイタとアクーは大いに慌てた。

「ちょ、ちょ、ちょ待って大地!」

 アクーが急いで大地の前に回り込む。

「今日は出ない方がいいって」

「何で?」

「何でってそりゃ…」

「大地が普通じゃないからよ!」

 答えにきゅうしたアクーに代わり、後ろからキイタが叫んだ。大地はゆっくりとキイタを振り返る。

「俺?俺のどこが普通じゃないって?」

「だっていつもの大地と違うじゃない!」

「何言ってるんだよキイタ。俺は何も違わないよ」

 そう言うと大地は再び出口に向かおうとした。アクーがその前で手を伸ばして止めようとする。キイタも後ろから大地の手を引いた。

「いいじゃない」

 突然部屋の奥からココロが言った。アクーとキイタが驚いた顔をココロへと向ける。

「こんなに行きたがっているんだもん。その方が気がまぎれるなら大地がしたいようにさせた方がいいよ。こんな状態のまま一日部屋の中にいても絶対によくなんかならないよ」

「で、でも…」

 判断のつかないアクーが戸惑とまどった声を出す。ココロはそれを無視して大地のそばに歩み寄ると正面に立ち、その目をのぞき込んだ。

「ココロ…」

「いいわ大地。私達も一緒にましろを捜す」

 一瞬大地の白い顔に赤みがさすのがわかった。ココロは大地の手を取ったまま続けた。

「その代わり、もし途中で魔族が襲ってきたりしたらその時は大地、私を守ってくれるよね?」

「魔族…」

 大地はポカンとしたような顔をした。魔族と言う響きが何を表すのか一瞬理解できなかったようだ。

「あ、ああ。勿論もちろん、当然だよ」

 大地はようやく答えると何度も首を縦に振ってうなずいた。

「大地」

「何?」

「あなたは何の能力者?」

「え?」

「答えて」

「お、俺は…土の能力者だよ」

 大地が言うとココロはにっこりと笑った。

「そうよ大地、あなたは土の能力者。この宇宙の大自然に選ばれたANTIQUEの能力者よ。それだけは決して忘れないで」

 大地の目にいつもの光が戻って来た。大地はキュッと唇を引きめると力強くうなずいて見せた。

「行きましょう」

 ココロはそう言って大地の腕を取ると、いそいそと宿の長い廊下を歩き始めた。部屋の前に取り残されたキイタとアクーは顔を見合わせると、慌てて二人を追って走り出した。



 店の中に大きなため息が響いた。かめの中に最後の一本を戻したナルは、休む間もなく次のかめに取り掛かった。

 ガイとナルが店に入ってから数人の客が来店した。しかしどの客もただひたすら剣を漁り続けるナルと、商品すら見ずにカウンターに寄り掛かったまま腕を組んでいるガイの姿を薄気味悪そうに見ると、逃げるように店から出て行った。

「まったく、営業妨害もいいとこだぜ」

「もうそんなには掛からん」

 ぶつくさと文句を言う店主に、ガイが低い声で言い返す。店主は露骨ろこつに嫌な顔をすると舌打ちをした。

 何も買わずに出て行った客を愛想あいそ笑いで送り出した店主がにがりきった顔でカウンターの中に戻ったその時だった。

「あ…」

 ナルの何かにおびえたようにも聞こえる声がして、ガイが目を開いた。店主も何事かとカウンターの中から振り返る。

 そこに起きている現象に二人は声もなく目を見張った。ナルににぎられた一本の剣が、目をくらます程の美しい銀色の光を放っていた。

 ナルがまとう緑色に輝くANTIQUEの光は店主には見えていなかったが、ナルが手にした剣が発する銀色の輝きははっきりと見えているようだった。

「こ…こりゃあ…」

 店主が驚きの余りかすれた声を出した。銀色の光は一層いっそう強く細い光の帯を触手しょくしゅのように方々へと伸ばす。

 店の中がまぶしい光に満たされていく。ゆるやかにれ動く光の波は生命を宿したように生き生きと動き、つややかと表現したくなる程力に満ちあふれていた。

「でかしたぞナル!見つけたか!?」

 ガイがね起きるようにしてカウンターから離れると大声を出した。ナルは自分の手の中で起きている事に困惑こんわくしている。

「タテガミ!これなの?これが…」

 その時光の中から声が聞こえた。ガイ、ナル、そして道具屋の店主の耳にもその声ははっきりと聞こえた。

「私を呼ぶのは、誰…?」

 誰の声でもなかった。はかなく美しいその声は、子供ものだったのだ。

「よお、お前だったのか」

 タテガミの声が響く。姿なき者の会話に、店主は混乱の余り目を見開いたまま完全に固まってしまっていた。

「その声…、赤の精霊か…?」

「おうともよ、随分ずいぶんと久しぶりじゃあねえか。いつまでも寝とぼけてるんじゃねえ、起きる時間だぜ?え?銀の精霊よ」

「ぎ、銀の、精霊…?」

 手から次々とき出しますます々強くなる銀色の光に照らされながらナルが思わずつぶやく。

「銀の…精霊…」

 光の中の声は戸惑とまどった声でそう言ったが、すぐに記憶が蘇ったのか、次に話し出した時、その声は確信を持って響いた。

「そう、私は銀の精霊…。カンサルクにつかえし、白銀の刃…。私は、銀の精霊…。私の眠りをさまたげげる者よ、お前は何者?」

 光の中の声が問い掛けて来る。しかし、一体誰に対してなのか?何一つ状況がわからず黙り込んでいる人間達に代わりタテガミが答えた。

「次なる使い手はANTIQUEよ。さっさと起きろ、再び時は動き始める。俺達の力が必要とされているんだ」

 次なる使い手はANTIQUE。そう言われてナルは初めてそれが自分の事だと気が付いた。

「あ、あの僕の名前はナル。精霊の武器よ、あの、その、ええっと…。よ、よろしく」

 ナルの何とも緊張感を欠いた挨拶あいさつに、ガイは思わず体の力が抜けた。

















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