表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ANTIQUE  作者: OOK&YOK
19/440

シルバーの秘密

●登場人物

ココロ:アスビティ公国領主ドナル三世の娘にしてANTIQUEのリーダー、始まりの存在のバディに    選ばれたテレパシスト。能力者の中でもリーダーとして仲間を先導する。

吉田大地:土のANTIQUEにバディとして選ばれた地球の高校二年生。六年前、闇のANTIQUE     に攫われた友人、白雪ましろを救い出すためココロの元に集う。

シルバー:鋼のANTIQUEに選ばれた能力者。アスビティの兵士であり、元来よりココロの部下。誰     よりも早くココロの前に現れた能力者。剣の腕は国内一と定評がある。

キイタ:ココロの生まれたアスビティ公国の隣国、ンダライ王国の第二王女。僅か六歳にして火のANT    IQUEのバディとして選ばれた少女。魔族に攫われたと思われる双子の姉、イリアを探すため    仲間に。



●前回までのあらすじ

ンダライの町ドルストにて傷ついたキイタを看病するため宿をとったココロ達一行は、回復したキイタからンダライ王国の現状を聞く事となった。どうやら死んだキイタの両親である国王と王妃は魔族の陰謀で殺害されたらしい事が分かる。更に次の王位継承者であるキイタの双子の姉、イリアもまた魔族の手に落ちた可能性が高くなった。

次期継承者であるイリアの死亡が確定しない限り次女であるキイタに継承権はない。そんなンダライの掟を逆手に取った魔族は、イリアを連れ去り、生死不明のまま、王位空席のンダライを自由に操り、大国ンダライの民を調略しようと企てているようであった。

姉、イリアを救うのではなく、イリアの死体を見つけ、正式な継承権を手に魔族の手からンダライを取り戻す、そんな救いのない悲壮な覚悟をキイタの口から聞かされた大地達は…。







「キイタ!」

 イリアの死体を連れ帰る、わずか十三歳のキイタの口から出たそんな痛切つうせつな言葉にても立ってもいられなくなった大地は、彼女のそばに駆け寄ると続けた。

「まだわからない。お姉さんが生きているか、死んでいるか、まだわからないよ。でも、とにかくココロの言う事は正しい。お姉さんを探す君の旅と、魔族と戦おうとする俺達の旅の目的は同じだ」

 今日初めて会った少年が、突然強い調子ちょうしで話しだした事に、キイタはおどろき、圧倒あっとうされていた。

「俺も同じだ…。俺の旅の目的は、滅亡めつぼうと言う未来から世界を救う事だけど、同時に、ネビュラにさらわれた友達を助け出し、そいつを連れて元の世界に帰る事だ。家族のいる、元の世界に帰る事だ」

 大地はめずらしく必死をかくす事なく語った。ANTIQUEの能力者にだってそれぞれ事情がある、それは、これから見つけなくてはならない他の仲間だってきっと同じはずだ。それぞれの目的を持ったまま、共通する大きな目標に向かって一緒いっしょに旅をする事ができる、ここでそれを証明しょうめいしなくてはならない、大地はそう思っていた。

「いいかい、キイタ。俺達が世界を救おうとすれば、おのずと今、敵の手に落ちている君のお姉さんや、俺の友達を追う事になる。だったら、一人でいるより一緒いっしょにいた方がいい。ココロの言う通り、君はもう一人じゃない」

 ココロも、シルバーも、ややおどろいた様子ようすで、キイタを説得せっとくする大地をだまって見つめていた。出会ってから今日まで、こんなにもたくさんの言葉を駆使くしして話す大地を見たのは初めてであった。

 しかし、大地の言葉を聞きながら、キイタの表情はみるみる落ち着きを取りもどしていった。

「でも…世界を救うなんて…私にできるとは…」

「大丈夫よ!」

 ココロがすぐに言った。

「ANTIQUEに選ばれたのよ?フェルディのバディになったんでしょ?絶対に大丈夫。私達十一人がそろった時、必ず世界を救う事ができる!」

「フェルディのバディと言っても…」

 そう言いながらキイタが差し出した右手の上に、突然燃える炎が出現した。

「うわ」

 おどろいた大地とココロが体をのけらせる。その火は、実際に熱く燃えさかってはいたが、大きさは十cmにも満たないものであった。

「私にできるのは、この程度ていどで」

 そうキイタが言うと、彼女の手の炎は、一瞬いっしゅんで消えた。と、突然大地がはじけたように笑いだした。みんな何事かと大地の顔を見る。

「こりゃすげぇや。キイタ大丈夫、ANTIQUEの能力は成長するんだ。これからの旅の中で、いやでも進化させなきゃいけなくなる。今はまだ弱い力でも、何も心配する事はないよ。それに…」

 キイタは大地の顔を見た。ココロとシルバーも、大地が次に何を言うのかと彼を見つめた。大地は、急に真面目まじめな顔をすると言った。

「このシルバーおじさんの手に水をめてキイタがあぶれば、何とお湯がかせる」

「私はなべか!」

「おじさんの方を突っ込んでほしかった!」

 そんな二人のやり取りにココロが吹き出した。

「ココロ…」

 キイタが大地とシルバーを見て笑っているココロに声を掛けた。ココロもキイタを振り返る。

「私も、一緒に行っていいの?」

 ココロは、微笑ほほえむと、優しい声でキイタに答えた。

ちがうわ、キイタ。私達が、あなたに一緒いっしょに来てほしいのよ」

 その言葉を聞いた途端とたん、キイタは声もなく再び泣き始めた。そんなキイタを、ココロは抱きしめた。

「四人目の仲間だ」

 抱き合って泣く二人の背中を見ながら、大地がシルバーに言う。シルバーはだまったまま、答えなかった。

「で、シルバーはどこへ行っていたの?」

「あ、話が長引くと思ったのでな、ここで一泊できるように宿の者に話してきた」

 そう言われれば、すでに午後を回り、間もなく夕刻ゆうこくとなる時間だ。今から出発すれば、途中とちゅうで夜となってしまうのは間違まちがいなかった。

「さすが、気がくねー」

「しかし、問題が…」

 シルバーの言葉に、三人が彼の方を見る。

「突然だったもので、その…部屋が、ここしか空いていないのです」

「だから?俺は別に床で寝ても構わないよ?」

「そう言う事を言っているのではない、ココロ様やキイタ様と私達が同じ部屋で休む訳にはいかないだろう」

 何を言っているのだと言わんばかりに目をいてシルバーが言う。それを聞いた大地は、わざとらしく大きなため息を一つついた。

「あのさぁ、この際だから、ココロやキイタにも言っておくけど」

「何だ?」

「シルバーは元々第二警備小宮を脱出するつもりで、それなりに準備してきたとは思うんだけどね?それでもこの先、闘いがどれだけ長期化するかわからないよね?」

 言い出した大地の言葉を、三人はだまって聞いている。

「しかも、この後仲間が増えていったら、俺らは最大十一名の団体様ご一行いっこうになる訳だ」

「それがどうした?」

「新しい町に着くたびに宿をとって、それでみんな食事もして…。そんな事してて、お金は残るの?」

 いかにも現実主義者げんじつしゅぎしゃの大地らしい発言であった。

「あ、お金なら私も少し…」

 キイタが言う。大地は、キイタの顔を見てから、その目線をキイタの荷物に移した。大きな荷物、もちろんキイタだって一国の王女だ、大地とは金銭感覚きんせんかんかくが大きくずれている事だろう。

「だとしてもだよ、旅の途中とちゅうには野宿のじゅくをしなくてはならない場所だってあるかもしれない。もういい加減かげん、男女で二部屋とか、そう言う感覚はなくしていった方がいいんじゃないかな?冗談抜きで、鋼の両手をなべに、キイタの火で調理ちょうりする位の覚悟が必要かもしれないよ?」

「しかしだな…」

「シルバー」

 大地の意見に言い返そうとしたシルバーを、ココロがせいする。

「私達はかまいません。宿泊の手続きは、それで」

「いや…」

「キイタも、いいよね?」

 キイタは、だまってうなずいた。

「…承知しょうちしました…」

 二人の王女に言われれば、シルバーもそれ以上の反発はんぱつはできなかった。男女の別、だけではないのだ。国につかえる兵士として、その国の王女と同じ部屋で休むなど想像すらできない程恐れ多い事なのだ。それを大地はわかっていない。

 シルバーは、うらみがましい目で大地をにらんだ。しかし、大地はそんなシルバーの気持ちをさっする事もなく、平然としている。それがまた、シルバーの気にさわった。

「ところで」

 ほっとした雰囲気ふんいきに満たされた部屋の中で、大地が話しを始めた。みんなの注目が大地に向く。

「新たにキイタが仲間に加わったところで、俺はどうしてももう一人ちゃんと仲間になってもらいたい人がいる」

「え?」

 みんな、何を言い出したのか?と言う顔で大地を見る。そんな仲間一人一人の顔を見ながら、大地は答える。

「シルバー」

「ん?」

 突然とつぜん指名されたシルバーは、きょを突かれ、おどろいた声を出した。

「そろそろ本当に、仲間になろうか?」

「な、何を言っているか貴様きさまは、私は誰よりも早くココロ様に名乗りを上げた能力者だぞ?確かにお前の事は気に入らんが、正義のため、共に戦う覚悟かくごはできている」

「それはココロの部下としてでしょ?アスビティ公国の兵士として、でしょう?そうじゃなくて、シルバー自身の事でまだ、俺らに話していない事があるんじゃない?って事」

「話していない事?」

とぼけない。ココロは、仲間が入るたびに自分の辛い話をしている。俺だって、ましろと俺がしてしまった事をちゃんと話たうえで仲間になったんだ」

 それは、星雲せいうんの竜を閉じ込めたほこらを開く事で、自分達が世界 滅亡めつぼうの引き金を引いてしまったのではないか?と言う話の事だ。

「キイタだって、全部話して、こんなに涙を流して仲間になったんだよ?腹をってくれなきゃ」

「いい加減かげんにしろ、私には、お前のように語る程の事がないだけだ。何もかくしてなどいない」

「じゃあ、なぜ鋼の能力が嫌いなの?なぜきたえようとはしてこなかったの?」

「それは言ったはずだ。剣士であり、軍人である私に、“身を守るだけ”の能力など、必要ないと考えたからだ」

「シルバー」

 大地とシルバーのやり取りに、ココロがり込んだ。

「話したくない事は、皆それぞれにあると思います。しかし、私もあなたに一つ聞きたい」

 大地を相手にしている内は強気だったシルバーも、相手がココロとなると、急に緊張きんちょう面持おももちに変わった。

「何でしょうか?」

「あなたは、中央にいる時、特別行動騎馬隊の隊長をつとめていたはずです」

「はい」

「特別行動騎馬隊と言えば、公軍隊士の中でも特に成績優秀せいせきゆうしゅうな者だけを選出せんしゅつするエリート部隊」

「………」

「それが、立場は変わらず隊長とは言え、なぜ辺境警備へんきょうけいびの第三警備隊へ配置転換はいちてんかんをされたのですか?」

「いや…それに大きな意味はありませんココロ様。私は比較的ひかくてき若い内に行動騎馬隊の隊長を拝命はいめいしました。しかし、若いだけに経験が不足していた。だから一度他の場所を見せるためであったと、理解していますが…」

「………」

 ココロはじっとシルバーを見据みすえた。シルバーは、居心地いごこち悪そうに冷や汗をかきながら目を泳がしている。

若年じゃくねんの隊長は他にも例があります。しかし、特別行動騎馬隊の、隊士ならばまだしも、隊長までつとめながら境界警備小宮への配置転換はいちてんかんなど、聞いた事がない」

 シルバーは、ますます追い詰められたような表情に変わっていく。

「答えてください、あなたの転属てんぞくには、どのような事情があったのですか?」

「…お答えする必要は、ないかと…」

「あんたが俺に言ったんだよ、お互いに命をあずけて戦わなくてはならない、心底しんそこ信用できないやつ一緒いっしょに戦う事はできないって。だから、俺も話す気になったんだ」

 大地のその言葉がとどめだった。そうだ、確かに自分はそう言った。観念かんねんしたように、シルバーは目をつむると、一つ大きく息を吸い込み静かに話し始めた。

「姫…いえ、ココロ様。覚えておいででしょうか?四年前。クナスジア王国で、戦争が勃発ぼっぱつしました」

 四年前と言えば、ココロも、キイタもまだ十歳に満たない子供であったが、その戦争の事は記憶にあった。国土発掘権こくどはっくつけんめぐ小国同士しょうこくどうしの戦争に、プレアーガ最大国家さいだいこっかであるクナスジア王国は、長引ながびく戦争を終わらせるべく介入かいにゅうした。

 クナスジアと友好関係にあったアスビティにも、その戦争への出軍協力要請しゅつぐんきょうりょくようせいが来た。もちろん、非戦闘国ひせんとうこく標榜ひょうぼうしているアスビティが前線ぜんせん出向でむく事はなく、主に武器食料の補給部隊ほきゅうぶたいとしての後方支援こうほうしえんとしての役割をになった。

 アスビティ公国の公軍の中で、海外活動が許されているのは、特別行動騎馬隊のみである。当時シルバーは、隊長として、三個中隊さんこちゅうたい、八百八十二名の大隊だいたいひきいてこの作戦に参加した。

 活動拠点かつどうきょてんは、非武装地域ひぶそうちいきとされていた。戦闘や、命の危険はないはずであった。しかし、そうはいかなかった。補給路ほきゅうろつために編成へんせいされたゲリラ部隊に、シルバーの隊がおそわれた。

 報告を受けたシルバーは、できる限りの物資確保ぶっしかくほ支援要請しえんようせいの指示を出したうえで、自ら先頭に立ちおそわれた隊の救出へと向かった。

「…戦いが終わった時、敵も味方もなくその場に立っているのは私一人でした…。周りは千もの遺体が折り重なり、その中で私は、生き残った者はいないかと必死で仲間を探しました…」

 遺体の山の中を、さけびながらさ迷うシルバーの姿を想像した三人は、声を発する事もできず話の続きを待った。シルバーが三人を見た。その顔は、少し、あおざめて見えた。三人は、気まずく視線をそらした。

だれ一人、生きている者はいなかった…。私は一人帰国しました。その後も、度々仲間の消息しょうそく照会しょうかいしました。実際、二度程現地へもおもむきました。しかし、生き残った者の情報はありませんでした。戦争が終わった後、私には、転属てんぞく命令がくだされました」

「そんな…」

 大地が声を上げた。

「その転属てんぞく左遷させんでしょう?シルバーはちゃんと戦ったんでしょう?」

 シルバーは、めた目で大地を見ると言った。

「そう言う問題ではないのだ大地。部下を一人残らず死なせ、一人生きて帰って来た隊長に対して、これは当然の処置しょちなのだ」

「そんなのおかしい」

「そうだな、お前の住んでいた世界ではそうかもしれない。だが、一個大隊いっこだいたいを全滅させた上に、その隊長は、かすり傷一つわずに帰国したのだ…。もしあの時、あそこで私もみんなと一緒いっしょに死ねていたら…」

「そんな風に考えちゃいけない!」

「だが、隊を全滅ぜんめつさせた事実は消せないのだ!!」

 静かに話していたシルバーが、初めて大きな声を出した。そうかもしれない、戦争のない、平和な世界で生きてきた大地には、一生かかっても理解できない事なのかもしれない。

「共に剣を抜き、戦場で戦った私が、ただ一人無傷でいられたのは他でもない、デュールの力のおかげだ。こうして、ココロ様と世界を救う旅に出る事になった今となっては感謝かんしゃしている。しかし、これまでの私は、私のみに宿やどったこの能力ちからうらみ、のろい続けていたのだ」

 話しえたシルバーは、三人の顔を見た。

「これが、私が第三警備隊に配属はいぞくされた事情です。ご理解、いただけましたか?」

 そう言われた誰もが声もなく、再びシルバーから目をらすようにうつむいた。それを見たシルバーは、ふっと小さく笑いをらすと、やや明るい声で言った。

「少し、頭を冷やしてまいります。宿の手配はしておきます。夕飯は、私を待たずに始めてください」

 そう言うとシルバーは、壁に立てかけた自分の剣をつかみ、部屋から出て行った。後に残された者は、誰もその背に声を掛ける事ができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ