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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
189/440

道具屋

●登場人物

・ココロ…始まりの存在に選ばれた公国公女。明るく活発な女の子ながら旅のリーダーとして仲間達を導く。

・シルバー…鋼の能力者。責任感の強い公軍の隊士。皆が頼るサブリーダー。

・キイタ…火の能力者。大国の王女だが人見知りで気の弱い少女。

・ガイ…雷の能力者。元はシルバーの部下だった隊士。怪力自慢で戦闘スキルが高い。

・アクー…水の能力者。記憶を失った少年。冷静な判断力と高い身体能力で戦う。

・ナル…生命の能力者。精霊の武器に次の持ち主として選ばれた青年。


・道具屋の主…カンサルク王第二の武器が置いてあるとされる店を運営する店主。にぎわう港町で様々な客を相手にしている商魂しょうこんたくましい男。



●前回までのあらすじ

 エクスドヴィルにて正体を現したタオゼンを一刀のも下に退治したアテイル四天王の一人メロは、五隻ごせきの船とそれを操る二百人の海賊達を自らの配下として手に入れた。

 一方そのかたわらではマニチュラーが虚無と現世をつなぐ扉を開いた事により、虚無に暮らす無数の精神体がアテイルとしての肉体を得て地上へと生まれ出た。

 船と操舵手そうだしゅ、そして狂暴な兵士をそろえる事に成功したメロは海上でANTIQUEを襲おうと残酷な計画を立てるのだった。







「大地は一体どうしたの?」

 月明かりの射し込む窓際のベッドの上、まばたきもせずにひざを抱える大地の姿を見ながらアクーがひそやかな声でシルバーにたずねる。

 ベッドの上で体の向きを変えたシルバーは自分を見下ろして来るアクーを見つめた。その目を今度はシルエットとなっている大地へと向ける。

(ましろがいた…)

 ほうけたようにつぶやき再びその姿を追おうとした大地を何とかなだめ無理やり宿へと連れ帰って来た。

 二人が帰って来た事に安心したガイとナルは早々にそれぞれのベッドへともぐり込み寝入ってしまったが、明らかに様子ようすのおかしい大地にアクーはすぐに眠りにつく事ができなかった。

「いいんだ」

 シルバーがそっとアクーに答える。

「明日にしよう。お前ももう休め」

 シルバーは再び寝がえりをうつと目を閉じた。少し不満そうな顔をシルバーの背に向けたアクーは、もう一度大地を見た。

 相変わらずひざを抱えた姿勢まま大地は動かない。何もなかったはずがない。こんな大地をアクーは見た事がなかった。

 しかし大地自身に何があったのかをくのも躊躇ためらわれた。もやもやした心持ちのまま、アクーもベッドに身を横たえるしかなかった。

 銀色の光を浴びながら大地の思考は止まっていた。一瞬だった、振り返ろうとした瞬間、ほんの一瞬群衆の中にましろの顔を見た。それは間違いなくましろだった。何故かそれだけは確証が持てた。

(ましろ…。君はこの町にいるのか?)

 大地はゆっくりと月明かりに照らし出される街並みに目を向けた。にぎやかな港町ジスコー。この町のどこかにましろが…。

 寝静まった町を見つめながら、それでも大地の頭はまるで寝起きの時のようにまったく働いてくれなかった。



 翌朝ー。

 朝食の席に大地の姿はなかった。疲れているらしいと言うシルバーの説明に一応納得した面々は、大地を欠いたまま食事を済ませた。

「よし、行こうぜナル!」

「うん」

 ガイに声を掛けられたナルはまだ口を動かしながら急いで立ち上がった。

「待てガイ」

 二つ目の精霊の武器を朝一番から探しに行こうとはやるガイをシルバーが止めた。

「何です?」

 ガイがき返すとシルバーは一枚の紙とペンを差し出した。

「店の場所を書いて行ってくれ」

「は?」

「思うところがあってな、私も後で行く」

 言われたガイは何となくナルの顔を見た。

「だったら、一緒に行きましょうよ」

 ナルがシルバーを誘うがシルバーは軽く首を振った。

「いや、少しやる事がある。二人はとにかく店に行き、少しでも早くカンサルク王第二の武器を見つけられるよう頑張がんばってくれ」

「そう言うなら、まあ…」

 そう言ってガイはテーブルに手をついて簡単な地図を描きシルバーに渡した。

「うむ」

 ガイから受け取った地図をポケットにしまい込む。

「では後で」

 シルバーが言うとそれにうなずいたガイとナルがテーブルを離れ宿から出て行く。

「さて、じゃあ私達は今日はどうしよっか?」

 ココロが軽く伸びをしながらキイタとアクーの顔を見る。そんなココロにシルバーが身を乗り出すようにして声を掛けた。

「ココロ様」

「ん?」

「今日は一日、ここにいてはいただけませんか?」

「えぇ?何で?」

 自分は出掛けると言っておきながらこちらにはここに残れとは随分ずいぶんではないか。そんな思いにココロが不満めいた声を出す。

「大地の事なのですが…」

「大地?大地がどうかしたの?」

 花火見物を終え宿に帰ったココロとキイタはそのまま自室に入り眠ってしまったので、その後シルバーが大地を連れ帰った事を知らない。大地の状態が今 尋常じんじょうでない事も勿論もちろん知らなかった。

「実は昨夜から様子ようすがおかしいのです。申し訳ありませんが三人で今日一日大地を見ていてやってはいただけませんか?」

様子ようすがおかしいって?」

 キイタが心配そうに小首をかしげる。

「何だかぼ~っとしちゃって全然 まばたきもしないし口もかないんだ」

 アクーが割り込んで来る。自分自身大地の事を心配していただけに、シルバーがようやくこの話題に触れてくれた事に少し安心したようだ。

「何があったの?」

 ココロが急に真剣な顔でシルバーにたずねた。

「実は…」

 シルバーは少し言いにくそうに言葉をにごした。自身昨夜の大地の行動は未だに理解しきれていないのだ。

 それでもシルバーはポツリポツリと花火見物から突然離れた後の事をテーブルについた三人に説明し始めた。



 説明を終えたシルバーはガイの書いた地図を見ながら足早に目抜き通りを店に向かって歩いていた。大地の事は心配だったが今はとにかくカンサルク王の武器だ。シルバーにはナルの手助けができるあてがあった。それで今二人を追って店への道を急いでいるのだった。

 一方ガイとナルは昨日タテガミが「奴がいた」と言った古道具屋の前で腕組みをしたまま立っていた。やがて店の木戸がガタピシと音を立てて引き開けられると、見覚えのある店主が表へと出て来た。

「おおっ!」

 店の前に仁王立におうだちをしている二人の巨大な男の姿に眠そうだった店主の顔が一気に目覚める。

「おはようございます」

 ナルが人懐ひとなつっこい笑顔で挨拶あいさつをする。

「あ、ああ、いらっしゃい」

 薄気味悪そうに二人を見ながらも店主は木戸を全て開け放った。まだ店主が開店の準備をしている内からガイとナルは店の中へと入り、早速さっそく古い剣の束をガチャガチャと物色ぶっしょくし始めた。

 相変わらず怪訝けげんな顔つきのまま横目で二人の大男を見ながら開店準備を進めていた店主がカウンターに入ると、ガイはすぐに近づいて行った。

 ガシャリと音を立てて義手をカウンターに置く。少し驚いた顔を見せた店主だったが、大勢の外国人を相手にこの港町で商売をし続けて来ただけあって度胸が据わっているのかそれ程動じる事もなかった。

「昨日も来とりましたね?」

「ああ」

 ガイが金髪をらしてとびきりさわやかな笑顔で答えた。

「何か目当ての物でも?」

「あるんだよこれが」

「一体どんな物をお求めで?」

「なるべく年代物の武器が見たい。そう、特に三百年前に起こったマウニールとアガスティアの戦争に関する物がいい」

 ガイは特に隠し立てもせず真正直に言った。

「アスビティ戦争のねえ…」

 アスビティ戦争。アスビティ公国創立のきっかけとなったあの戦争は、外国ではそんな風に呼ばれているのか。ガイは変なところで感心してしまった。

「ああ、あるよ」

 しばらく天井を見上げて考えていた店主はガイに顔を戻すとあっさりと言った。

「あるかい?」

「ああ、あるさ。あるけど、見たら買うのかい?」

「探してる物だったら勿論もちろん買うさ、そのために来たんだ」

 ガイは店主をその気にさせようとシルバーから預かった金の入った袋を大きな音を立ててカウンターに置いて見せた。一瞬店主の目が光るのにガイは気が付かなかった。

「さて、あれはどこだったかなぁ?」

 ブツブツと独り言をつぶやきながら店主が店の奥へと引っ込んで行った。

「ガイ、ナル!」

 店主が店の奥へと引っ込んだところへシルバーが飛び込んで来た。呼ばれた二人が店の入り口へと目を向ける。

「シルバー」

 ナルが嬉しそうに声を上げると、シルバーは無言で彼に近づき、ナルが漁っていた剣の束に左手をかざした。

「シルバー、何を?」

「まあ待て」

 そう言ったシルバーの体が薄く銀色の光を放つ。デュールの能力を発動しているのだ。シルバーが何をしようとしているのかわからないナルとガイはそっと目を見交わした。

 かめに刺さったたくさんの剣の上に手をかざし、シルバーは瞑想めいそうするように目を閉じている。

 しばらくして目を開いたシルバーは、体を銀色に光らせたまま隣のかめに移った。今度は両手を差し出し、数個のかめを一度に調べているようであった。

 そうやってシルバーはかめからかめへと同じようにしながら店の中を歩き回った。時々数本の剣を手に取り、別のかめに差し直したりなどしている。

 そんな事をり返しながら店の一番奥、光も差さない隅に追いやられている埃塗ほこりまみれのかめまで行ったところでようやくシルバーの体を包む銀色の光が音もなく消えて行った。

 シルバーがふうっと息をつく。ちょうどそこへ店主が両手にいくつかの物品を抱え店舗てんぽに戻って来た。

「ナル」

 シルバーはナルの方へ歩み寄りながら声を掛けた。

「はい」

「そちら側のかめはみんな駄目だ、調べなくていい。この手前の四つもだ。この奥の一列、ここから向こう側だけを調べろ」

「え?あ、は、はい」

 両手を広げて調べるべきかめを指定するシルバーに戸惑とまどいながらもナルは言われた通り今まで一本一本の剣を手に取って調べていたかめを離れ、店の奥へと進んで行った。

 シルバーが振り向くと、カウンターの向こうにいる店主と手前側のガイがそろって自分を見つめているのがわかった。二人ともぽかんとした顔をしている。

「ガイ、何をしている?」

「え?あ、ああ」

 シルバーに問われ我に返ったガイは慌ててカウンターに乗せていた手をどけて店主の方を見た。

「あったかい?」

「ああ、この位かねえ?」

 言うと店主は両手いっぱいに抱えたままだった商品をカウンターの上に音を立てて広げた。

 短刀、大型ナイフ、スローイングナイフ、棍棒こんぼう星球せいきゅう武器と言ったオーソドックスでシンプルなものから、いしゆみやトリプルダガーなどの珍しいものもあった。しかしいずれも相当に古い代物である事は一目でわかった。

 興味をかれたシルバーが自分の前に並べられた物騒ぶっそうな道具達を見つめているガイのそばに寄って来た。

「後は…、あの後ろに立てかけてある長槍ながやり長弓ちょうきゅうも大体その辺りの品のはずだけどね」

 店主に言われるままシルバーとガイはそろって後ろを振り向いた。確かに店の片隅に歩兵用の長い槍や長距離向けの長弓ちょうきゅう無造作むぞうさに立て掛けてある。

「ガイ…」

 不思議そうな顔をして何かを言い掛けたシルバーの腕を取ったガイはそっと長槍ながやりの置いてある店の隅までシルバーをうながした。

「開店まで店の前で待っている間にタテガミから聞いたんですよ」

「何を?」

 そっと耳打ちしてくるガイにシルバーも声をひそめてき返すと、ガイの目が自分を見つめ返して来た。

「カンサルク王の武器は、どうも剣だけではないらしい」

「そうなのか?」

「ええ。それで店の主にアガスティア時代の武器がないかたずねたところ、持ってきてくれたのがあの品って訳です」

 ガイが背中越しにカウンターの方を親指で指す。シルバーがそっと振り向くと、腕組みをした店主がいぶかし気にこちらを見ている。

「見てみよう」

「はい」

 シルバーとガイは再びカウンターの前に戻ると店主が持ってきてくれた武器を検分し始めた。

「何か言われがあるのかい?」

 シルバーが武器を手に取って見ている内に、ガイが気さくな調子で店主へとたずねた。

「ああ、これらの武器は全部ジルタラスのレメルグレッタと言う洞窟どうくつで戦争に勝利したマウニール王国の戦利品せんりひんだ。ここへ流れ着いた経緯はもう定かじゃあねえが帰国の途中荷物だからと売り飛ばしたか、盗賊にでも奪われたか…」

「間違いねえのか?」

 ガイが真剣な顔で確認する。カウンターに身を乗り出す勢いだった。店主はやや胸を張りった。

「あんたねえ、アタシだって商売だよ?道具の年代位はわかるさ。それにその使い道や特徴なんかもね。例えばほら、この投てき用のナイフなんざこれはあまり西諸国では見られないもんでね。こう言う武器を使っていたのは東諸国、今のクナスジアなんかによく見られるもんだ。反対にこのいしゆみをごらんなさいよお兄さん、こりゃあ間違いなくアスビティ公国の文化だろうがさ?作られた年代を考えりゃ、すなわちマウニールの武器って事だ。それが今ウチの店にあるっつう事はだ、こりゃアスビティ戦争時代の遺物と考えるのが自然だろう?」

「な、なるほど…」

 ガイが店主の思わぬ博識振はくしきぶりに感心した声を出したその時、突然シルバーが手にしていた短刀をガチャンと音を立ててカウンターに置いた。

「お客さん、商品は丁寧ていねいあつかってくれなきゃ…」

「なるほど、よく勉強しているようだなおやじ」

 シルバーは店主の苦情を皆まで聞かず口を開いた。付き合いの長いガイにはその一言だけでシルバーが不機嫌になっている事がわかった。

「そりゃあまあ、さっきも言いましたが商売なんでね」

 得意げに言う店主を無視してシルバーはガイの前にあるスローイングナイフを手に取った。

「この小さなナイフはストックバルラと呼ばれる武器でおやじの言う通りクナスジアの物だ」

 シルバーが言うと店主は「ほらね」とでも言いたげな顔でますます々胸を反らした。

「クナスジアにはジャコウと呼ばれる集団がいてな」

「ジャコウ?」

 ガイがき返す。

「ああ。彼らは王族を守るため特殊とくしゅな訓練を積み、そこで認められた者だけが国王一家を守る任務にくんだ。国王一家一人に一組のジャコウ…。国王には国王の、王妃には王妃のジャコウが付く。王子や王女、国王の兄弟やその子…。いずれ国王となる可能性を持った血族それぞれに専用のジャコウチームがついている。このストックバルラはそのジャコウが好んで使っている武器だ」

「へえ…」

 武器については相当の知識を持っているガイであったが、外国の物となるとさすがにシルバーの方がよく知っていた。

 そもそもガイはクナスジアに実在すると言うジャコウの存在すら今日まで知らなかったのだ。

 ガイは素直に感心し、シルバーが元通りに置いたストックバルラをしげしげと見つめた。

 ふと気が付くと、すぐ目の前に店主の顔があった。彼もガイと一緒になってびついた小さなナイフを一心に見つめていた。

 ガイの目線に気が付いた店主は慌てて背を伸ばすと大声で言った。

「そ、そうとも。こちらの兄さんの言う通りだ。勿論もちろんアタシは知っていたけどね」

 その額にはじんわりと脂汗あぶらあせにじんでいる。

















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