安宿の夜
●登場人物
能力者
・ココロ…アスビティ公国の侯爵令嬢。始まりの存在と出会いANTIQUEの能力を持つ十人の仲間を捜す為旅を続けている。
・吉田大地…土の能力者。闇のANTIQUEに攫われた幼馴染を助け出す為自ら異世界へとやって来た地球の青年。
・シルバー…鋼の能力者。アスビティ公国公軍の隊士。かつては大隊長を務めた実力者。今回の旅でも仲間を率いるリーダー格として活躍する。
・キイタ…火の能力者。大国ンダライ王国の第二王女。敵の手に堕ちた双子の姉を見つけ出す為に旅に加わった。
・ガイ…雷の能力者。元はシルバーの部下として分隊長を務めた隊士。自慢の怪力で大刀を振り回す。四年前の戦いで左腕を失っている。
・アクー…水の能力者。記憶を失ったまま能力者として仲間になった少年。冷静かつ高い身体能力をもって敵に挑む。
・ナル…生命の能力者。不幸な過去を背負い闇に堕ちかけていたところをココロに救われた。剣の使い手で精霊の武器に選ばれた。
フェズヴェティノス
・ハナ…人間と特に地球をこよなく愛する魔族の一人。若くして一族を率)い、ANTIQUEの味方となって戦う。
・タマ…ハナに付き従う魔族の一人。明るく元気いっぱいな少女を装っているが実体は狂暴な化け猫。歌と踊りが大好き。
●前回までのあらすじ
暴走の末ガイの電撃を喰らい意識を失っていたアクーが漸く目を覚ました。その場にフェズヴェティノスであるハナとタマがいる事に狼狽えるアクーであったが、そのハナからアクーが再び暴走する事がないよう二度と姿を現さないと言うラプスの覚悟を聞き冷静さを取り戻す。
ココロ、大地、ガイら仲間達は記憶が戻らなくともアクーはアクーだと励ますが、キイタだけは、記憶を取り戻す事を諦めるなとアクーを諭す。
キイタの言葉を受けたアクーは例えどんな辛い過去があろうとそこから逃げはしないと決意を固め、ラプスに隠れる必要などない事を伝えてもらえるようハナに依頼するのだった。
ココロ達を送り出したシルバーは、漸く仲間達の輪に加わり床に腰を下ろした。
「何だ大地、お前また食べているのか?」
「育ち盛りだからね!」
大地は口いっぱいに食べ物を頬張りながらモガモガと答えた。
「まただと?」
ガイが険しい表情を作り顔を上げる。
「さてはお前シルバーにくっついて行って先に何か食いやがったな?」
「しょうがないだろ!倒れそうだったんだよ!」
「てめえこの野郎!俺達だって同じだ、腹ペコで待ってたんだぞ!」
言うとガイは正面の大地に掴み掛かりその首を絞め上げた。真ん中に置かれた食べ物を蹴散らかされアクーとナルが抗議の声を上げる。
小学生でもしないような騒ぎの中、シルバーは一人黙々と食事を続けていた。
「ちょっとガイ落ち着いてよ、いいじゃん別に!」
「いい事あるか!この野郎、アクーが大変な時に一人だけ抜け駆けしやがって!俺はお前のそう言う根性が気に入らねえんだ!」
「アクーが負傷中で俺まで倒れる訳にいかないだろう!」
「またそうやってお前は屁理屈ばかり抜かしやがる…!」
「イダダダダダダダダダダダダ!」
「吐け!吐き出せ!てめえに食わす分なんかねえ!」
「吐き出してたまるか~~~~~~!」
大地は必死に口の中のものを咀嚼した。
「やめなってガイ!騒ぐと苦情が来るよ!あ、そうだそれよりあの話!」
「ああ!?」
ナルがガイの気を逸らそうと話題を振ると、ガイは不機嫌そうに顔を上げた。
「タテガミの話!あれはシルバーにも聞いてもらった方がいいんじゃない?」
「おお、そうか」
ガイは一瞬で表情を戻し、大地の首を離した。
「か~~~~~、痛ぇ。この馬鹿力シャレになんねえよ」
大地が首を振り振りぼやく。
「ナル、タテガミの話しとは何だ?」
自分も聞いた方がいいと言う言葉に、シルバーが顔を向けて来た。
「う、うん。実はね、シルバー達が買い物に行っている間にタテガミに聞いたんだけど…」
「ちょっと待て」
「え?」
「ナル、お前の言っているタテガミとはあのタテガミの事か?レメルグレッタで引き抜いた」
「そうだよ」
ナルは早く本題に入りたいと急いで頷いた。
「あれは、剣だぞ?」
「そうだよ。あ、そうか、シルバーも知らないのか!あのね、タテガミはね、喋るんだよ」
シルバーはゆっくりと肉を食みながらナルの顔をじっと見つめた。ゴクリと音を鳴らしてその肉がシルバーの喉を落ちていく。
「シルバー?」
「タテガミは、喋るのか?」
「そうなんだ、それでね…」
「待て」
「何!?」
なかなか話しが進まない事にナルが少し苛ついた声を出した。しかしシルバーは慌てた素振りも見せず手を上げてナルを制した。
「それは、何か比喩的な事か?」
「違うよシルバー、タテガミはね、喋るんだ」
なかなか事情が呑み込めないらしいシルバーを見かねた大地が口を挟む。
「そうなんだ、凄くおっさんな声なんだけどね」
アクーが新たな肉に手を伸ばしながら愉快そうに言う。
「俺も一緒に聞いたんだが、これがなかなか興味深い話しなんですよ」
ガイもタテガミの語った話しをいち早くシルバーに聞いてもらいたいらしく早口で言った。
シルバーは口を小さく開けたまま一人一人の顔を見た。まだ“タテガミが喋る”と言う事にピンと来ていないらしいシルバーの表情にナルは勢いよく立ち上がると、隣の寝室に大股で向かった。
「論より証拠!直接聞いてもらう方が早い!」
そう言いながら元の位置に帰ってきたナルの手には、朱塗りの鞘に収まったタテガミが握られていた。
どっかりと胡坐をかきながらナルは自分の正面にタテガミを突き立てた。
「タテガミ、さっきの話しをみんなにもしてあげて」
「何だよ、また同じ話しをしろってのか?」
ナルの手の中でタテガミが面倒くさそうな声を出す。
「お願い、みんなにも知っていてほしいんだ」
「ナル、お前…」
「え?」
言われたナルはふと正面に座るシルバーの顔を見た。眉間に皺を寄せ、理解不能と言った顔つきで自分を見つめている。
瞬間的にシルバーの考えている事がわかったナルは、急に顔を真っ赤にして否定した。
「ち、違うよ!僕、腹話術なんてできないから‼」
大地が派手に吹き出した。
「あ、あのなシルバー」
ガイが控えめに声を掛けると、シルバーは呆けた顔でガイを見た。
「タテガミには戦いの精霊が宿っているんだと。タテガミってのはこの剣の名前っていうより、その精霊の名前なんだよ」
「はあ」
ガイが必死に言うがシルバーからはそんな気の抜けた返事しか返って来なかった。
「その武器に宿った精霊がナルの持つ生命の能力に反応して、まあ何だ、俺達みたいに喋れるようになったと、まあそう言う事らしい」
「ほ――う」
そんな声を上げたシルバーは目の前に置かれた肉片に手を伸ばすと口に運び噛り付いた。なかなか噛み切れないのか、頭を振って苦戦している様子だった。
「シ、シルバー?」
俯いたまま肉と格闘するシルバーの顔をガイが覗き込むようにして声を掛けたその瞬間、突然シルバーは大きな声で叫ぶと、結局噛(火)み切れなかった肉を思いきり床に叩きつけた。
「うわ!」
飛び散った肉汁を顔に浴びた大地が驚いた声を出す。
「私は決めたのだ!」
シルバーが唐突に宣言した。
「え?」
「な、何を?」
アクーとナルがシルバーの豹変ぶりに戸惑った声を出した。
「今後一切どのような事が起きようとも取り乱さないと!驚きはしないと!なのに何故こうも次から次へと私の決心を鈍らせるような事ばかり起こるのだ!今日までの経験すら既に私の理解では追いつかないと言うのに、今度はみんな揃って私に剣の話しを聞けと言うのか!え?そう言うのか!」
「シ、シルバー、シルバー」
嘶く馬を宥めるように大地がシルバーの服を指先で引く。シルバーは何度か荒い呼吸を繰り返すと、突然顔を伏せブツブツと呟き始めた。
「いい…。もう何でもいい、どんと来いだ」
シルバーはゆっくりと顔を上げると、正面に建てられた一本の剣を見つめた。
「私はシルバー、鋼の能力者だ。タテガミ、お前の話しを聞かせてくれ」
「大丈夫かこいつ?」
タテガミが不安そうな声を出すまでもなく、他の仲間達もシルバーの中で何かが壊れてしまったのではないかと心配そうな顔を互いに見合わせた。
「勿論大丈夫だ。私は何の問題もない。さあ話してくれ、ガイが興味を持ったと言うその話しをな」
「まあそう言うなら聞かせてやってもいいが…」
そう言って語り始めたタテガミの話しは、大地やアクーにとっても初めて聞く内容だった。
灯かりを落とした部屋に静かな寝息が聞こえていた。戦いに次ぐ戦いを乗り越えたココロとキイタは、部屋に入った解放感からか、食事の途中で早くも舟を漕ぎ始めた。
大した量も口にしない内にベッドに潜り込んだ二人はそのまますぐに眠りに落ちてしまったのだ。
部屋の隅で丸くなって眠っていたタマは、気配にふと目を覚ました。半開きの目で周囲を見回すと、暗い部屋の中、窓辺に佇む背中を見つけた。
「ハナちゃん?」
すっかり静寂に満ちた表の通りを見下ろしていたハナに音もなく近づいたタマが声を掛ける。
「寝られないの?」
「ううん。ただちょっと、色々考えちゃってね」
「何を?」
タマが首を傾げて訊ねるとハナは表の景色から顔をタマに移した。その目をすぐに正体を失くし眠り続けるココロとキイタに向ける。
「無邪気に寝ているねえ」
つられてココロ達の寝顔に目を向けたタマが微笑ましそうに言う。タマはそっとベッドに近づくと片膝をその上にあげ、眠るキイタの顔を間近に見た。
「キイタちゃんって本当にかわいいね」
タマはベッドの上で振り向くと嬉しそうにハナを見て言った。
「本当に無邪気。私達を、フェズヴェティノスと知っていながら…」
「こんな人間もいるんだねえ」
タマがしみじみとした声を出す。
「タマちゃん」
「んー?」
「何で残ったの?」
「はあ?」
突然聞かれたタマは訳が分からず間の抜けた声で訊き返した。
「何で、じっちゃんと一緒に行かなかったの?」
「だから言ったじゃん。ハナちゃんが残るなら私も残るって。ヒカルちゃんも一緒。私達はシキの巫女でしょう?」
タマがそう言うと、ハナは小さく微笑んで答えた。
「言葉卸の儀は、もうないよ?」
「カンケーないねえ。それでも私達はシキ。シキは三人 揃ってこそのシキでしょう?ここまで来てソロ活動はないよお?」
「そうだね、でも…。私についてきていい事なんてないかもしれないよ?」
「何言ってんの?」
ハナは数歩ベッドに近づくとココロの寝顔を見下ろした。同じように穏やかな寝息を立てるミニートを胸に抱き、ココロはピクリとも動かない。
「こんな人間もいるんだ…」
ハナはそっとココロの桃色の髪を撫でながら密やかな声でタマと同じ言葉を繰り返した。
「タマちゃん…」
「ん?」
「私は人間が好き」
「うん」
「人間が作ったこの世界が好き」
「うん」
「今更、魔族になんか渡したくないの」
「魔族ねえ。私達だって虚無の住人だよ?」
タマが言うとハナは静かに手を引き、身を起こした。
「そうだねえ。何で虚無になんて生まれてきたんだろう?」
「え?」
「タマちゃん」
「なあに?」
「私はココロちゃん達を守りたい」
「友達だかんね?」
タマが即答すると、笑いを零しながらハナは深く頷いた。
「そうだね、友達。そう呼んでくれた。魔族の私を」
そう言ってハナはタマの顔を見た。
「これは私の我儘。私の勝手な思いなの」
「ハナちゃんの我儘に付き合うのは私の勝手」
「タマちゃん」
「お嬢は存分に我儘こけばいいよ。私とヒカルちゃんは勝手にその後をついて行くから」
暗い部屋の中でも浮かび上がるタマの白い顔をハナはじっと見つめた。その顔は既に笑顔を消していた。
「守る為に戦うの。例え、この体を失う事があっても、それでも私はココロちゃん達を守る。ANTIQUEの能力者を、この宇宙に生きる人間達を守る」
それについて来ると言う事は、自ずとタマやヒカルの身にも危険がつき纏うと言う事だ。ハナはそれを心配しているのだ。
タマは一つため息をつくように笑うと、身を翻しベッドから離れた。微かな音すら立てず床に着地したタマは軽い口調で言った。
「タマちゃん難しい事はわかんないよ。でもハナちゃんについて行くのが私の楽しみだもん。だからそう決めたんだもん。友達の為なら体を失っても構わないなんて、そんな風に言う友達の為だったら私だって、私の体なんか消えてしまっても構わないって、そう思うんだよ?」
ハナは少し驚いたような顔でタマを見た。サラサラと柔らかい髪を乱してタマが振り向く。
「やだ、忘れないでよね?私だってハナちゃんの友達なんだから」
そう言ってタマは明るい笑顔を作った。ハナは静かにタマに近づいていく。タマは笑顔のままじっとハナを待ち受けた。
ハナが両手を伸ばしタマに抱きつく。抱きついた途端、タマも強くハナを抱きしめた。
「バカにしないでよね?何千年あなたの友達やってると思ってるのよ,筋金入りなんだから」
ハナの温かい体温を感じながらタマが静かな声で言う。
「ハナちゃんが命懸けで守るものなら私だってそうする。来るなと言われてもついて行くわよ、最後まで、ついていくわよ」
ハナの手に力が籠るのがわかる。
「後悔しないよね?」
タマの体に埋めたハナの口からくぐもった問いが漏れる。
「ハナちゃんとヒカルちゃんがいない世界に残された方が後悔だよ」
ハナは突然タマから離れると、改めてタマの目を覗き込むようにじっと見つめた。触れあいそうな程の距離に二人の顔が見つめ合う。
「じゃあついてきて」
「勿論」
「最後まで一緒にいて」
タマは目を細めて頷いた。
「勿論」
「私達シキは人間を守る」
「シキは三人 揃ってシキだかんね?」
「うん。私達三人は、この身を賭けて人間達の世界を守るよ」
「了解であります」
おどけて敬礼をして見せるタマにハナはもう一度強く抱きついた。
「三種の武器か…」
タテガミの話しと精霊の宿るカンサルク王の武器はアスビティ以外のどかにあると言うガイの推理を聞き終えたシルバーは低い声で呟いた。
「面白い話だね」
同じくタテガミの話しに聞き入っていたアクーが笑顔で言った。
「じゃあその三つを集めてそれを全部ナルが手にしたら、それらもみんなペラペラ喋りだしたりするのかね?」
大地が少し興奮気味に言う。
「そりゃあナルの能力がありゃ、そう言う事になるんだろうな」
タテガミが大地の質問に答える。
「ナル」
シルバーがナルの名を呼んだ。ナルは顔を上げてシルバーを見た。
「はい」
「お前は、二刀を扱う事はできるのか?」
「ええ、そう言う競技もありましたから一通りは…」
「そうか…」
シルバーはナルの舞うように美しい剣技を思い出し、考え込むように顔を伏せた。
「生命の能力者が剣術使いだってのはラッキーだったぜ」
タテガミの言葉にシルバーはもう一度顔を上げた。タテガミがそれを見越したように笑いを含んだ声で言う。
「へへへ、シルバーよ、お前の考えている事はわかる。大丈夫だ、ナルが俺を使い続ける限り戦いは俺が組み立てる。戦争を知らないこいつが、いっぱしに生き残れるようにな」
「え?」
「え?じゃねえよナル。シルバーはな、お前の実力が心配なんだよ」
「そ、そうなんですか?」
ナルがショックを受けたような顔を向けると、シルバーは少し慌てた声で言った。
「い、いや。心配と言う程ではない。ナルの実力は実際大したものだと思う。ただ…」
「ただ?」
「うむ。正直に言わせてもらえればナルは少々技に頼りすぎるきらいがある」
「技に、頼る?」
「点を競い合う競技ならばそれでよかろう、だが…」
「お上品過ぎて戦場じゃ役に立たねえっつてんだ」
言い淀むシルバーにガイが遠慮のない声で続く。シルバーはすぐにそんなガイを否定した。
「役に立たないとまでは言っていない。だが確かに危うさを感じもする」
「だからそれはこれから俺様が補ってだな…」
「シルバー!」
「お、おう」
タテガミが言いかけるのを無視してナルが大きな声を出した。呼ばれたシルバーはナルの勢いについ圧され気味に返事をした。
「僕に剣を教えてください!戦場で通用する剣術を!」
「い、いや。ナルは今のままでも十分…」
「いいえ不十分です!それは僕自身一番感じているんです!僕はココロを守らなくちゃならない。どんな敵が相手でも、途中で倒れる訳にはいかないんだ…」
最後は独り言のように呟いたナルは、もう一度強い目でシルバーを見つめた。
「お願いですシルバー、僕に、剣を!」
「剣の指南だったら俺がよぉ…」
「それと、馬の乗り方も教えてください!」
シルバーの手を煩わせるまでもないと思ったガイが名乗りを上げたが、ナルはそれを一切無視して重ねてシルバーに頭を下げた。
「そうだな」
やがて小さな吐息と共に笑顔を見せたシルバーが言った。
「同じ剣を扱う私達が組めば、何か効果的は布陣が見つかるかもしれんな」
「お願いします!」
ナルはもう一度深く頭を下げた。スポーツ競技としての剣術を習得していたナルは、ゴムンガとの戦いを通し、自分に命を賭けて戦う術が欠けている事を痛感していた。
同じ剣士として尊敬するシルバーを、ココロとはまた違った意味でリーダーだと感じていたナルは直接指導を受けられる事に感無量と言う思いだった。
「何かやな感じじゃね?」
完全に無視されたガイは少し拗ねた声で隣のアクーに囁いた。
「妬かない妬かない」
笑顔でガイを宥めたアクーは改めてタテガミを見た。
「しかし凄いね、本当に三つの武器を全部ナルが手にしたら、正に鬼に金棒だね」
「手に入れたらすぐに使いこなせるようにしっかり訓練をします!」
ナルはアクーの目を見て力強く言った。
「いいよなあ…」
ぽつりとそんな言葉を漏らしたのは大地であった。みんなの目が一斉に彼を見る。大地は何だか落ち込んだような顔で下を向いていた。
「どうしたあ、お前?」
ガイが下から大地の顔を覗き見る。
「シルバーは剣、アクーは弓、ガイも伝説の剣を手に入れて、ナルにはカンサルク王の三種の武器…。それに引き換え俺はテテメコの能力だけだ…」
「だから武器を持てと私が言ったのに、それを断ったのはお前だろう!」
大地が落ち込んでいる理由を知ったシルバーが呆れた声で言った。
「だって、俺はナルみたいに元々そんなスキルがないもん。今から鍛えたって素地がないからどうせ役にたたないもん」
「で、でも大地は充分土の能力で戦力になっているじゃないか」
ナルが取り成すように言った。
「そんな事ないよ。みんなANTIQUEの能力プラスアルファ何か持っているのに、俺は何もないんだ…」
「それを言うならキイタだってそうだよ」
アクーも落ち着いた声で大地を励ますが、大地は拗ねたように口を曲げたまま立ち上がると、ドアに向かいだした。
「駄目だよ、やっぱり俺はみんなみたいには戦えない、ここにいちゃいけないんだ…だから…」
そう言って静かにドアノブを掴んだ大地は男仲間の方を振り返った。
「俺はココロと寝るよ!」
言った瞬間シルバーの鉄拳がロケットのように大地の頭上に飛んできた。
「何だよ痛えなあ‼単なる冗談じゃねえか‼」
「貴様、言っていい冗談と悪い冗談があるぞ!」
苦笑いのガイに羽交い絞めにされながらシルバーは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「おお~~~、さっきガイに殴られたのと同じ場所を…」
「よりによってシルバー相手にそんな冗談を言うなんて…。命知らずだなあ大地は」
アクーが首を振り振り呟く。
「大地!」
肩を揺すってガイの手を振りほどいたシルバーは大地に人差し指をつきつけて言った。
「貴様出会った頃と随分性格が変わっていないか⁉」
そう言われた大地はびっくりしたように目を大きく見開いた顔でシルバーを見つめながら言い返した。
「あんた程じゃないよ」
「何!?」
そう叫んだシルバーは、大地の目線が自分の背後に動くの見て勢いよく振り向いた。すぐ後ろに立つガイの目が泳ぐ。
「ガイ、何故目を背ける?」
「え?い、いやあ、別に…」
「お前もそう思うのか?」
「あ、さて~。何の事でしょう?」
仲間に加わってまだ日の浅いアクーとナルは三人の会話がよくわからず目を見交わした。
シルバーは突然大地の襟首を掴むと無理やり輪に戻した。
「いてて…」
「ガイ!」
「はい!」
「お前も座れ。とくと聞かせてもらおうではないか。私の一体どこがどう変わったのか」
シルバーの暗く光る眼がガイを睨みつける。ガイは恨みがましい目で大地を見た。




