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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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火の能力者 ~フェルディ~

●登場人物

・ココロ…アスビティ公国令嬢にしてANTIQUEのリーダー。始まりの存在の能力を宿し、テレパシストとして仲間を探す旅を続けている。

・吉田大地…土のANTIQUEに選ばれた地球の少年。土の能力を持つ三番目の仲間。幼い頃、闇のANTIQUEにさらわれた幼馴染おさななじみ、白雪ましろを見つけ出す事を目的に、旅に加わった。

・シルバー…鋼のANTIQUEに選ばれたアスビティ公国の剣士。最も早くココロの前に現れた能力者で、忠義にあつい男。滅多に表情を崩す事はないが、内面はとても優しい。

・キイタ…ココロの生まれ育ったアスビティ公国の隣国、ンダライ王国の第二王女。ココロと一つ違いの十三歳。旅を続けるココロ達の前に突然現れたが、その真意は今のところ謎。



●前回までのあらすじ

 ンダライ王国、ドルストの町に辿たどり着いたココロ達一行は、そこで人目を引いてしまう衣服を処分し目立たない旅の装いをそろえた。

 遂にANTIQUEの能力者を探す旅が本格化した訳だが、そんな中、アスビティの剣士であるシルバーは、仲間の一人である大地が剣の一本も持とうとしない事に不安を覚える。

 あくまでも土の能力だけでこの先も戦い続けようとする大地に、シルバーが苦言くげんていしていたその時、三人の前に突然一人の少女が飛び出してきた。少女はココロの顔を見つめこう言った、「私を、呼びましたか?」と。







 目の前に現れた少女に突然「呼びましたか?」と問われ、馬上のココロは戸惑とまどった。大地とシルバーの二人も同じく動きを止めたまま、目の前の小さな少女を見つめていた。

 最初に我を取り戻したのはシルバーだった。自分にしがみついたままの大地を冷静に押しのけ、少女に声を掛けた。

「君は…」

「ココロの声が聞こえたの?」

 大地もシルバーの後ろから言った。

「ココロ?」

 逆に問いかけられた少女は、一度シルバーと大地へ向けた目線を再びココロに戻した。

「ココロ!?」

 少女が小さくさけぶように言った途端とたん、名を呼ばれたココロも反応した。

「あなた…」

 驚いたように目を見開いたココロはそう言うと、慌てて馬から降りた。手を貸そうとしたシルバーも間に合わない程素早く地に立ったココロは、走る勢いで男達の間を抜け少女に近づくと、その細い両肩を掴み顔を近づけた。

 少女の顔をまじまじと見て確信を得たココロが、大きな声で言った。

「あなたキイタ?キイタね!?」

「え!?」

 ココロの言葉に大地とシルバーが同時に声を上げた。

「キイタって、確か…」

「この、ンダライ王国の第二王女、キイタ様だ」

 そう言うとシルバーは突然その場に片膝かたひざをつき、頭を下げた。一国の王女であれば他国とは言え立場はココロと同じ。その王女を目の前にして礼をくそうとしたのであろう。

 勿論もちろん大地にそのような習慣はない。と言うよりも、ココロに両肩を掴まれたままの薄汚れた小さな少女が王族の娘であると言う事実に今一つピンときていなかったのだ。だから大地は立ったままキイタを見つめていた。

 本当に小さい。大地よりも背の低いココロが更に腰をかがめている。昨日の話ではキイタは双子ふたごの姉であるイリアと同じく十三歳。現在十四歳で間もなく成人を迎えるココロと年齢は一つしか違わないと言う事であったが、目の前に立つキイタは、どう見ても小学生位にしか見えなかった。

 表に出た事がないのではないかと思える程の白い肌、それが、素直で美しい髪の毛の赤を余計に引き立てていた。

「ココロ?本当にココロ?アスビティ公国の?」

 ようやくキイタは言葉を発した。

「そうよキイタ、あなた…こんな所で何をしているの?」

 その時、問い詰めるココロに返事をしないキイタの顔は、薄く笑ったように大地には見えた。

「あ!」

 ココロと大地が同時に声を出す。何事かとシルバーが顔を上げる。一瞬笑ったように見えたキイタは次の瞬間、ココロの腕の中にくずれるように倒れ込んでしまったのだ。

「キイタ!?」

 慌ててキイタの体を支えようとしたココロはバランスをくずし、しりもちをつきながらも大きな声でキイタの名を呼んだ。

 咄嗟とっさに駆け寄った大地は、地面にひざをつくとキイタと折り重なって倒れそうになるココロの背中を後ろから支えた。そばに来たシルバーがすぐにキイタの様子を伺う。

「大丈夫、気を失っているだけです」

「よかった…。ここではどうにもなりません、シルバー、どこか休める場所へ行きましょう」

 ココロがシルバーへ指示を出している短い間に、大地は再びココロの腕の中で眠ったように動かないキイタを見下ろした。

 その小さな体にまとったマントの下は、動きやすそうなシャツにズボン、底の厚いすねまであるブーツをいている。その上、シルバーの物とは比べ物にならない程小さく、頼りないとは言え、一本の短剣を腰にっていた。

 かたわらには、その体格に似合わない程大きな荷物が転がっていて、どう見ても大地達と同じく旅のよそおいであった。

「シルバー、キイタを」

「は」

 答えたシルバーは、ココロの腕から意識のないキイタの体を受取り、軽々と抱き上げながら立ち上がった。それを見て起き上がろうとしたココロに手を貸しながら大地も一緒に立ち上がる。

「大地は私の馬へ」

 ココロは大地を振り向いて言葉短かに言った。どうやら相当キイタの事が心配であるらしい。今度はさすがにシルバーも異議いぎとなえなかった。いち早く、キイタを安全な場所へ連れて行かなくてはならない。

「うん」

 大地も短く答えると、足元に転がるキイタの物と思われる大きな荷物を掴み、すでに馬に向かって走り出したココロを追った。

 ココロに続いて、慣れない手つきで馬にまたがる。左手に持ったキイタの荷物はずっしりと重たかった。

「ココロ様参ります、よろしいですか?」

 そう言って馬上で振り向くシルバーの腕に抱かれたキイタの、あどけない顔がチラリと見える。腕に抱えた荷物の重さを感じながら大地は思った。

(このお姫様は一体、どこへ行こうとしていたんだ?)

 次の瞬間、ココロの掛け声と共に走り出した馬に、大地は慌ててココロの肩に掴まった。





 安宿の女主人は初め、キイタを抱えたシルバーを見てあからさまに迷惑そうな顔をした。だが、シルバーが料金も聞かずに金貨を一枚握らせた途端とたん急に態度を変え、愛想よく自ら先頭に立つと一階の奥まった部屋へ一行を案内してくれた。

 安物のベッドをきしませへキイタの小さな体を横たえたシルバーは、腰の剣を外しながら部屋の入口に立つ女主人を振り向いた。

「すまん、湯をもらえるか」

「はい、あ、お湯ね。ええ、すぐに」

 そう言って立ち去ろうとする女主人の後を追ってシルバーも一緒に部屋を出て行く。

「それと、ここに薬は置いているか?」

「薬は高価だからねぇ、あまり種類はありませんが…」

 廊下を進み遠ざかって行く二人の会話を大地はぼんやりと聞いていた。

「キイタ」

 ココロの声に大地が振り返る。ココロはキイタの寝かされたベッドに近づき、床にひざをついてキイタの手を握っていた。その姿は病床の妹を思いやる姉のように見えた。

 大地も静かにベッドに近づいた。ベッドの上では、キイタが大きな目を開けていた。どうやら意識を取り戻したらしい。現状がすぐには把握はあくできなかったのか、キイタは一度周囲に泳がせた目を心配そうに自分を見つめるココロに移した。

「ココロ…」

「よかった」

 そう答えるココロの目にみるみる涙があふれてくる。それを見たキイタはベッドにひじをつくと上体を起こし始めた。

「まだ起きない方がいいよ」

 ココロの後から大地が声を掛ける。半端はんぱに起き上がった状態で大地の顔を見上げたキイタは弱々しい笑顔を見せた。

「大丈夫」

 そう言ってベッドの上に体を起こした。真っ赤な髪がキイタの肩を流れ落ちた。少年のようなショートカットだと思われた髪は、その大半をフードの中に隠されていたらしい。ムラのない美しい赤毛は、実際は彼女の腰まであるかと思われる程豊かに長かった。

「キイタ、大丈夫なの?」

 ココロが声を掛ける。一度深く呼吸したキイタはもう一度笑顔を作り直すと改めてココロを見た。さっき大地に見せた笑顔よりも、力のある笑顔であった。

「大丈夫よ、どこも痛くもないし、多分、疲れてしまったのね。ごめんなさい」

「あんな場所で何をしていたの?それも、たった一人で」

「うん…」

 まだ年端としはも行かない一刻の王女が、共も連れずにあんな村外れの茂みの中にひそんでいたのだ、ココロの疑問はもっともだった。

 しかしキイタはココロから外した目線を自分の手元に落とたまま、その問いには答えなかった。せた白い顔に長い睫毛まつげが影を落とす。答えの得られない事に歯痒はがゆい思いを感じながら、更にココロが続けた。

「私、あなたに何度も手紙を書いたのよ?なぜ返事をくれなかったの?」

「手紙を?私に?」

 キイタが目の覚めたような顔を上げココロを見た。

「あなたにも、イリアにもよ。お母様がご逝去せいきょされた後、私、あなた達が心配で三度、ううん、四回位は手紙を出したわ」

 しかしその言葉に聞いたは驚いた様子のまま首を横に振った。

「知らなかった…。私の手元には、届いていないわ」

「届いてない?」

「ええ」

(それは、おかしいじゃないか?)

 二人の会話を黙って話を聞いていた大地は思った。隣国りんこくの姫同士がやり取りをした手紙が途中で消えるなんて事があるのか?キイタの様子を見る限り嘘を言っているようには見えない。大地はそこに、恣意的しいてきな悪意を感じ取った。

 と、そこへ湯気の立つ大きなたらいを抱えたシルバーが帰ってきた。

「おお、キイタ様、気が付かれましたか?今、宿の者に消化の良いものを作らせております。少しでも食べて、元気をお出しください」

 言いながらシルバーは湯をベッドのかたわらに置くと、荷物の中から清潔せいけつな布を何枚も引っ張り出した。

 キイタと、彼女を心配するココロの心情を思ってか、シルバーはらしくもなくはきはきとした言い方で言いながらまめまめしく働いた。

「そうだね」

 シルバーの態度がこうそうしたのか、ココロは涙をくと笑顔を見せて言った。

「じゃあ、大地とシルバーは部屋の外に出ていて」

「え?」

 男二人がき返す。

「キイタの体をくの。そのつもりでお湯を用意したんでしょ?まさかあなたが手伝う気?シルバー」

 ココロににらまれ、シルバーは慌てて言った。

「いえ、滅相めっそうもございません。それでは姫、後をお願いします」

 シルバーは嫌に堅苦しい態度で一つ頭を下げるときびすを返し、扉に向かった。

「お前もだ、ほら」

 行きがけに突っ立ったままの大地の襟首えりくびを掴むと、乱暴に引きずった。

「イテテ…」

 シルバーに引かれて大地が廊下ろうかに出ると、すぐに背後で扉が閉じられた。ご丁寧ていねいに鍵までかける音がする。

「ふぅ、やれやれ…」

 閉ざされた扉に背をあずけてシルバーがため息をついた。大地もその隣の壁に寄りかかると、並んで立った。

「慣れない事しちゃって」

「何の事だ?」

 大地のつぶやきに、前を見たままシルバーが答える。

「ココロをはげます為に元気に振舞ふるまったんでしょ?」

「別に私は…」

「基本的には優しいんだよなぁ、シルバーって。ココロの事が本当に好きなんだね」

「ば、ばかを言うな!」

 シルバーはがばっと体を起こすと大地の方を見た。大地はニヤニヤした笑いを浮かべてそんなシルバーを見ている。

「好きとか、そう言う事ではないだろう恐れ多い。私はただ…」

「いいからいいから、シルバーのそう言うとこ、好きだなぁ俺」

「気持ちの悪い事を言うなっ」

 そう言うとシルバーはまた荒々しくドアに寄りかかり、腕を組んでしまった。

「それにしても…」

 再び大地が小さな声を出した。

「今度はなんだ」

「あの、キイタ。ココロの声を聞いたんだろうか?」

「つまり、キイタ様は能力者なのか?と言う事か?」

「うん」

「さぁな、とにかく落ち着いたらその辺りもふくめて、色々といてみなくてはなるまい」

「うん」

 それきり男二人はだまったまま、手持無沙汰てもちぶさたに時を過ごした。





三十分後―――。

 体をき終えた上に、宿が用意した食事を綺麗きれいに平らげたキイタは、見た目にもすっかり元気を取り戻したように見えた。

「お腹が空いていたんだね」

「ごめんなさい…」

 大地が微笑ほほえましそうに言うとキイタは恥ずかしそうに顔を下げた。

「謝る事なんかないよ、元気になってよかった」

「ありがとう」

 しかし、見れば見るほど美しい少女だと大地は思った。白すぎると思った顔は、食事をしたせいか薄く赤みをびていた。ココロも目の大きな少女であったが、キイタはそれに輪をかけて大きく光る瞳をしている。

 丸く可愛かわいらしいココロの目と対照的に、目尻めじりの上がったりんとした目をしている。ヨーロッパ人ともアジア人とも違うその顔立ちはプレアーガの、それもンダライ特有のものなのかもしれなかった。

 だが、ややきつい印象を与えるりり々し顔立ちに反して声は小さく、か細い。そう言えば昨日、引っ込み思案じあんな性格だとココロが言っていたのを思い出す。

「キイタ」

 キイタがすっかり落ち着いたの見たココロは改まった調子で呼び掛けた。

「はい」

 話題の転換てんかんを察したのか、キイタも姿勢を正してココロを見つめた。

「たくさん聞きたい事はあるし、キイタも私達に話したい事があると思うけど…、一番に確かめたい事があるの、いいかしら?」

 そんな二人を見ていると本当に姉と妹と言う風に思えた。

「うん」

 何を考えたものか、少しの沈黙の後、キイタはうなずいた。

単刀直入たんとうちょくにゅうくね?キイタ、あなたは私の声を受け取った?」

 何の表情も変えずにキイタはじっとココロを見つめていた。やがて静かにキイタが口を開く。改めてまだ子供なんだと思わせるか細い声がその口からこぼれ出た。

「昨日、遅い時間にドルストに入った途端とたん、頭の中に私を呼ぶ声を聞いたの。それがココロの声だったかどうかは今もまだはっきりとしないけど…。その声は今日になってもずっと聞こえていた。それどころか段々はっきり聞こえてきたの、だから私、声の方に向かって歩いたの」

「声を追って歩き、あの場所で私達と出会った…」

 シルバーが確認するように言うとキイタは彼を見ながらうなずいた。

「そう。ココロの顔を見たら、安心してしまって…」

何故なぜ答えてくれなかったの?」

「答える?」

「私の声が聞こえた時、答えてくれていればすぐに探しに行ったのに」

「あ……。答え、られるんだ?」

 キイタの返答を聞いた途端とたん大地は思わず吹き出してしまった。シルバーににらまれ慌てて咳払せきばらいをすると、笑いを引っ込めた。

(なるほど、そりゃそうだ。いきなり頭の中に正体不明の声が聞こえて来たら、どうしていいかわからないのが普通だろう)

 妙に納得しながら大地はそっと小さな赤毛のお姫様を盗み見た。

「キイタは、ANTQUEの、能力者なのね?」

 ココロが最後の確認、と言った具合ぐあいに一言一言区切るようにしていた。

「そう。私を選んだのは火…。火のANTQUE…」

 ココロが更にキイタにたずねる。

「キイタ、その火のANTQUEなんだけど、今この場で私達に紹介する事はできる?」

 大地が仲間になった時のシルバーと同じだ。本当に仲間なのかどうかの最終確認。それを今、ココロが主導で行っていた。ココロにもチームリーダーとしての自覚が芽生めばえ始めた証拠だった。

 キイタは黙ったまま心持顔を上げると、小さな声で火のANTQUEに呼び掛けた。

「フェルディ」

 次の瞬間、キイタの体が赤い光に包まれた。ゲンムやテテメコ、デュールが現れる時のゆるやかであわい光に比べ、フェルディと呼ばれるANTQUEの出現は短い間に一気に燃え上がるように濃い色の光でキイタを包んだ。

 やがて窓を背にベッドに腰かけたキイタの背後からそれは現れた。火のANTQUE、フェルディ。

「うゎ…」

「これが、火のANTQUE…」

 そう言ったきり、大地とシルバーは絶句ぜっくしてしまった。ココロは初めから声もなかった。

 ゲンムもテテメコも、少なくとも人の形をしていた。デュールでさえ馴染なじみのある動物の姿に似て、それなにりに違和感いわかんなく受け入れる事ができた。

 メンバーの中では唯一大地だけが見ている闇のANTQUE、ネビュラでさえ、伝説の竜を思わせる姿でまだイメージを掴む事ができた。それに比べて、今目の前に出現した火のANTQUEの異様いようさは際立きわだっていた。

 顔と思える場所は燃え盛る炎だった。まぶしさをこらえてよく見れば、髪の毛のようになびくその炎の間から、爬虫類はちゅうるいのような巨大で鋭い目がのぞいていた。

 体もまた全身 れる炎を思わせる不定形ふていけいで掴みどころのない姿をしており、胸で逆巻さかまく炎が大きなマフラーのように口元をおおいかく隠している。

 全長はキイタとほぼ変わらず人の子供程度の大きさであるが足はなく、下半身は渦を巻く燃え盛る炎だった。当然地に立つ事もなく、ふわふわと体を宙に浮かべている。

 これだけ異様いような姿をしているにも関わらず、最も目を引くのが細く伸びる二本の腕であった。

 全身を赤く燃える紅蓮ぐれんの色に染めていながら、ネズミのそれのように細い腕だけが妙に生々しく肉感的で、不健康な人肌の色をしている。

 いっそ完全に異形いぎょうであればここまでの違和感いわかんを覚えはしないだろう。その腕のせいで、そこに生きながら焼かれている人の姿が連想され本能的な恐怖を呼び起こす。叫ぶのをおさえきれないような不気味な腕であった。そして、その両手にはそれぞれ細く、鋭い剣が握られていた。

 本来姿を持たないANTQUEはそれを感じる能力者のイメージによりその形を得る。キイタにとってANTQUEとは恐怖の対象でしかなかったのだろうか?そう思わせる程、フェルディの姿は恐ろしかった。

 初めから床に座っていて良かったと大地は思った。立ったままこのANTQUEを見ていたら、恐怖のあまり無様ぶざまに腰を抜かしているところだった。

 どの位経っただろうか?ココロ達を見下ろすようにそこにいた火のANTQUEフェルディは、結局一声も発する事なく、静かにゆっくりと姿を消していった。

 フェルディが消えると同時に、キイタの顔の辺りでチリンと小さな音が鳴った。キイタの長い髪に隠され、普段は見えないその右耳には、炎をかたどった真っ赤な耳飾りが付いていた。

 言うまでもなく火のANTQUE、フェルディがキイタと共にいる為に変化した姿であった。













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