国王の武器
●登場人物
能力者
・ココロ…プレアーガ西諸国に属するアスビティ公国侯爵令嬢。ANTIQUEのリーダーである始まりの存在と出会い、共に世界を守る仲間を捜す旅を始めた。
・吉田大地…土の能力者。時空を超え地球からココロの前に現れた青年。六年前、暴走した闇のANTIQUEの攫われた幼馴染を助けようと仲間になった。
・シルバー…鋼の能力者。アスビティ公国公軍大隊長を務めた実力者。現在はココロ一人に使える非公認隊士の身となり付き従う。最も早く仲間になった能力者。
・キイタ…火の能力者。アスビティ公国と国境を接する大国ンダライ王国の第二王女。アテイルに国を襲われ両親を殺害されたうえ、正式王位継承者である姉を連れ去られてしまった。
・ガイ…雷の能力者。四年間行方不明となっていたがココロの呼びかけに応じ現れた能力者。元はシルバーの部下として分隊長を務めていた。
・アクー…水の能力者。三か月前に意識不明の状態で発見された少年。今もってそれ以前の記憶をなくしており、時折フラッシュバックを起こして暴走する。
・ナル…生命の能力者。不幸な過去の経験から深い闇の中に引き籠っていたが、ココロの言葉の力に救われ仲間となった。剣術の使い手でカンサルク王の武器の持ち主として選ばれた。
フェズヴェティノス
・ハナ…シュベルの手により蘇った三種の魔族の一つフェズヴェティノスを率いる次期首領。長年物理世界で生きていた為魔族でありながら人間が大好き。
・タマ…ハナに惚れ込んでおり自ら戦いの場に残ったフェズヴェティノス。可憐な少女の姿をしており非常に明るい性格だが正体は狂暴な化け猫。
・タテガミ…三百年前に滅ぼされたアガスティア王国の国王カンサルクが愛用していた剣。長い時を超えてナルを新たな持ち手として選んだ精霊の宿る不思議な武器。
●前回までのあらすじ
我を失くし暴れまわるアクーに危険を感じた雷の能力者ガイはその指先から小さな電撃を生み出すと、仲間であるアクーに向けそれを放った。
電撃の直撃を受けたアクーは全身を痙攣させたまま意識を失ってしまうが能力者、フェズヴェティノス共誰一人傷つける事なくアクーを止める事ができた。
アクーの錯乱振りを目の当たりにしたフェズヴェティノス、オオグチの一族を率いるラプスは、アクーの暴走の原因を失われた記憶が蘇り始めた為と推測する。そして、アクーが理由もなく自分達フェズヴェティノスを憎んでいる事から、彼の失われた記憶に自分達が深く関わっていると想像する。
アクーの記憶が喚起され今度のような暴走を引き起こす引き金が自分達の存在にあると考えたラプスは、陰ながら協力を続ける事、そして二度とアクーの前に姿を現さない事を誓いその場から立ち去って行った。
それを見たオウオソのテンも大将モリガノの下へ帰るべく夜空へと昇って行き、小屋の前には意識を失ったアクーを気遣う能力者達と、ハナ、タマ二人のフェズヴェティノスだけが残された。
ハナの提案で麓の町まで移動する事になった能力者達は、馬を駆り夜の山中を走る。やがて足元に広がる街の灯りを見つけた時、ハナとタマの二人も一緒に宿に泊まると言い出した。それを容認するココロにシルバーは悩まし気に頭を抱えるのだった。
それから半時も経たずココロ達ANTIQUEの一行と、成り行きでついてきた二人のフェズヴェティノスはその町では比較的大きな宿の一室に集まっていた。
寝室に置かれた大きなベッドには小さなアクーが一人、首まで布団を掛けて寝かされていた。未だに意識が戻った様子は見せない。
「ココロ様」
灯かりを落とした仄暗い部屋の中に窓を通して外の光が射し込んでくる。夜中に近い時間であったが、安宿街はまだまだ活気に満ちていた。光と共に外のざわめきも聞こえてくる。宿の壁も窓に嵌められたガラスも薄く、外の喧騒を遮ってはくれなかった。
「私は食べ物を調達しに行って参ります」
眠っているアクーに気を使ったのか、シルバーが自分を見つめるココロに囁くような声で言う。辛うじて宿は開いていたものの、深夜の到着では食事の用意はできないと言われてしまったのだ。幸い表はまだ賑わっている。多少の食糧を購入する事はできそうだった。
「俺も、俺も行く!」
大地が食いつくように手を上げた。空腹はとうの昔に限界値に達していた。
「わかった大地、一緒に行こう」
「ココロちゃん、私達はお風呂に行こう!」
ハナが未だに不安げな顔でアクーを見つめるココロに屈託のない笑顔を向けた。
「え?」
「宿のおじさん言ってたじゃん?食事はできないけど風呂は一晩中 沸かしてるから入っていいって」
「で、でも…」
「ココロちゃんもキイタちゃんもひどい恰好だよぉ?せっかくお宿に来たんだからお風呂位入ろうよ」
ココロはそっと隣の部屋に見えるアクーの寝顔を見つめた。次の町に着いたらお風呂に入りたい。そう言ったアクーの言葉が脳裏に蘇り、益々 表情を暗くした。
「アクーは俺が見ています。ココロ様、行って来てください」
寝室の入り口に立ったガイが声を顰めて言うと、すぐにナルもそれに続いた。
「僕も先輩の傍に付いている。心配しないでココロ」
「う、うん…」
それでもまだ逡巡の色を見せるココロの手を、突然キイタが握った。
「行こ、ココロ。ここにいても今の私達にできる事はないから。いつアクーが目覚めてもいいように、私達は休める時に休んでおこう」
「キイタ…」
ココロはもう一度そっとアクーの顔を見た。苦しそうな様子はない。呼吸も安定しているようだった。
「そうだね…」
「よぉし、行こう!」
ハナははしゃいだ声で言うと大袈裟に手を振り上げドアに向かう。
「ごゆっくり~」
そんな声に振り向くと、部屋の隅のソファーの上に寝転んだタマがふらふらと手を振っている。
「何してるの?タマちゃん」
ハナが笑顔を消し冷たい声を出した。
「にゃ?」
「にゃじゃないよ、タマちゃんも行くんだよぉ」
「にゃはは、わ、私はお風呂は~…パス!」
「何言ってるの!来なさい!」
突然ハナはタマに近づきその首を取るとヘッドロックに固めたまま引きずり起した。
「にゃー!いやぁー!!お風呂はいやぁぁぁ!!」
「やかましい!暴れるな!」
「猫は風呂嫌い…」
ハナに引きずられて部屋から出て行くタマの背中を見送りながら大地がポツリと呟いた。
「ココロ様、これを」
キイタと連れ立って部屋を出ようとしたココロに、シルバーが一つの鍵を渡した。
「二つ隣の部屋が取れました。ここよりは狭いですが、キイタ様とお二人であれば十分かと」
「二人?私達はよ?」
シルバーの声に廊下から半身を部屋に戻したハナが訊いてきた。
「お前達はここでいいだろう」
「なにぃ!?お前達みたいなむさい男どもと一緒に寝ろって言うの!?」
「嫌なら下女部屋か納屋でも借りてやろうか?」
「ココロちゃん達と一緒じゃなきゃお泊りの意味がないじゃんか!!」
「ココロ様とキイタ様をフェズヴェティノスと同じ部屋で休ませる訳にいくか!」
シルバーも負けずに言い返す。顔を真っ赤にしたハナが両手の拳を震わせてシルバーを下から睨みつける。
「何だその目は?嫌なら山に帰れ、フェズヴェティノスの姫」
「ハナちゃん!!鋼の能力者、てめぇ脳みそまで鋼かよ!」
「何とでも言え」
「何て頑固なおっさんなんだ!」
「おっさんだと!?」
「静かにしてよ二人とも!」
一触即発の雰囲気で睨みあうシルバーとハナに向かってキイタが怒りの声を上げた。
「ハナちゃん、とにかく部屋の事は後で考えるとして早くお風呂に行こう」
キイタが取り成すように言うと、ハナは改めてシルバーを睨み返した。
「ふん!何と言われようが絶対にココロちゃん達とパジャマパーティーしてやるんだからね!」
「パジャ…何?」
意味がわからなく混乱したシルバーの後ろで大地が激しく吹き出した。
「もういいよシルバー、俺達も行こう。店が閉まっちまうと大変だ」
「うむ…。ではココロ様、くれぐれもご用心を」
「大丈夫だから」
ココロは呆れた声を出すとシルバーを部屋から追い出すように促した。
「まったく」
大地と共に去って行くシルバーの背中を見ながらため息をついたココロにキイタが声を掛けた。
「行こう、ココロ」
「うん」
「ほら、タマちゃんも!観念しなさい!」
「フギャー!」
「行けば楽しいから!」
「ふえ~ん」
ハナは柱に爪を立てて抵抗するタマの体を引っぺがした。
「行ってらっしゃい」
風呂へと向かう四人の背中に手を振ったナルは、そっと静かに扉を閉めると奥の寝室へと入って行った。
ベッドの横に椅子を寄せたガイが深い眠りの中から目覚めようとしないアクーの顔を心配そうに覗き込んでいる。
仲間達を守る為とは言え、アクーに攻撃を仕掛けたガイの痛々しい思いが暗い部屋の中でひしひしと伝わってきた。
ナルは腰に差していたタテガミを抜くと、壁から張り出した柱の陰に立てかけ、自分もベッドの傍へと歩み寄った。
寝室の中には、部屋いっぱいに大きなベッドが二つ並んでいる。身軽になったナルはそのベッドを回り込むようにガイの隣まで来ると、後ろを振り向き窓から賑わう夜の街を見下ろした。
「ガイの判断は間違いなかった…。シルバーが言った通りだと、僕も思うよ」
ナルは肩越しにそっとガイの横顔を盗み見た。ナルの言葉が聞こえたのかどうか、ガイは変わらずただひたすらにアクーの寝顔を凝視したまま動かなかった。
ナルは小さくため息をつき、窓の外へと目を戻した。
「他に、思いつかなかった…」
突然ガイがポツリと呟いた。ナルは体ごとガイに向き直る。
「咄嗟だったんだ…。キイタは吹き飛ばされる、俺の体は動かねえ。それでも何とかしなくちゃと…。いや、そんな風に考えるよりも先に体が動いていた…」
「そのお陰でみんな助かったんだよ。キイタも言っていたけど、結果的にそれでガイは先輩の事も救ったんだ」
ナルがガイを励ますように笑顔で言った。しかしガイは益々深く項垂れてしまった。
「あの場を収めたかっただけなんだ…。駄目だなあ俺は。決してアクーを傷つけるつもりなんかなかったんだ…。アクーはあのアテイルと戦って、散々に傷ついていたって言うのに…。俺は…」
アクーの眠るベッドに額を押し当てるようにして、ガイは小さな声でブツブツと呟き続けた。
それを見ていたナルは、突然ガイの脇に片膝をついた。
「ガイ…ごめんなさい」
ナルの突然の謝罪にガイは驚いた顔を上げた。すぐに目の前で自分を見つめる美しい緑色の目とぶつかる。
「なぜ、お前が謝る?」
謝罪の意味が理解できずガイが問い掛けると、ナルは辛そうに顔を下げた。
「あの時、キイタも大地も、シルバーも先輩を止めようと立ち向かっていった…。なのに、僕は何もできなかった」
「それは…」
「僕が何とかしていれば、ガイがこんなに苦しむ事もなかったかもしれないのに…」
ナルの自分を責める言葉にガイは慌てて言い返した。
「いいや、それは違うぞナル!お前は戦い慣れてる訳じゃない。何もできなくても無理はないんだ。だが俺は軍人だ、もっといい方法があった筈なのに…その最適な方法を考え、選ぶ事ができなかったんだ」
「違うよ、僕が悪いんだ。僕がすぐに…」
「いや、悪いのは俺だ」
「違う、僕だよ」
「俺だって」
「僕だよ!」
言い合い、睨みあっていた二人の口から、どちらからともなく小さな笑いが零れた。
「言ってても始まらん、もうよすか?」
「そうだね。誰も悪くなんかないんだから、きっと」
ガイは無言で何度も頷くと、もう一度ナルの綺麗な瞳を見つめ返した。
「ありがとうな、ナル」
「僕の方こそありがとうガイ。先輩を止めてくれて、ありがとう」
そんなナルの言葉に笑顔を見せたガイは、再びアクーの寝顔に目を戻した。長い睫毛に覆われた大きな瞼は、まだあの海よりも深く青い瞳を隠したままだった。
「おいナル」
ガイとナルが複雑な思いでアクーの顔を見つめていると、部屋の暗がりの中から野太い男の声がした。ナルの腰から抜かれ壁に立てかけられていたタテガミの声だった。
「な、何だ!?」
ガイがひっくり返った声を出した。ゴムンガとの戦いの混乱の中で、ガイはタテガミが口を利くのを見ていなかったのだ。
「ああ、ガイは知らなかったんだね?このタテガミにはね、精霊が宿っているんだ」
「そ、そりゃあレメルグレッタでクロウスが言っていたのは聞いたが…。でもまさか口が利けるとは思いもしなかった」
「なあに、そりゃあナルの能力のお陰だ」
呆然とした顔のガイにタテガミが気安い声で答えた。
「こいつの持つ生命の能力が俺様にこんな力を与えたって訳だ。まあそれを見越して俺はナルを次の持ち主に選んだんだがな」
「そうだったのか…」
「それで、何?タテガミ」
まだ驚きから立ち直れずにいるガイをよそにナルはタテガミに訊ねた。
「ここはどこだ?」
「え?宿の部屋の中だけど…」
「んな事を訊いてるんじゃねえ!今俺達はどの辺りにいるのかって訊いてるんだ!」
「ああ、何だ。さあ、僕はプレアーガの地理には詳しくないから…。ガイは?わかる?」
「え?あ、ああ。さて、町の名は俺にもわからんが…。シルバーはジルタラスの東端にあるジスコーと言う港町に向うと言っていた。間違いなくそこから船に乗って海を渡るつもりなんだ」
アウケラと言う名の惑星から来たナルに代わってプレアーガ人であるガイが答えた。
「レメルグレッタからジスコーまで四頭の馬で一週間の見立てだった筈。途中の安宿街で泊まるとも言っていたからあのゴムンガとか言う化け物に襲われる前から道を大きくは外れていないと思うがな」
その年一番の劣等生として公軍に入隊したと言うガイだが、アスビティの歴史と言い、古い甲冑の形といい、自分が興味を持った事に関しては驚くべき記憶力を覗かせる。
生粋の軍人であるガイは上官の指示を一言一句、逐一覚えていた。それが最も敬愛するシルバーの言葉となれば尚更であった。
「だって。それがどうかしたの?タテガミ」
「ああ、何だか臭うんだ」
「臭う?」
ナルがタテガミに訊き返す後ろで、ガイは慌てて自分の体に鼻を押し付けしきりに匂いを嗅ぎ始めた。
「ああ、何だか妙な感じだ…。この先に、とんでもねえ物が待っている予感がする」
「何言ってんだ?この刀」
タテガミの予言めいた言葉にガイが怪訝な声を出す。
「とんでもない物って何?」
ナルが興味を示した。眠るアクーを気遣いタテガミの傍に近づく。
「俺は剣に宿る戦いの精霊だ。カンサルク王はその気質、実力、気高さ。そのどれを取っても俺達を使いこなす事に不足のない人物だった…」
「へえ…。凄い人だったんだね」
ナルは国を守る為に自らの首を敵に差し出した三百年前の王を想い素直に感心した声を出した。
しかし、後ろでタテガミの話しを聞いていたガイは色を失くした顔で椅子から立ち上がると、ゆっくりとベッドの足元を回ってタテガミに近づいて来た。
やがてタテガミの前まで来たガイは、ナルの体を押しのけるようにして壁に立てかけられた剣の前に膝をつくと食いつくように言った。
「おい刀」
「俺の名はタテガミだ、金髪の小僧」
「今お前、俺達と言ったか?カンサルク王は、俺達を使いこなしたと」
ガイの言葉にナルがハッとした顔を上げた。
「ああ言ったさ」
「タテガミ…それって…」
ナルも遅まきながら顔色を失った。ガイは鋭い目でタテガミを睨みつけながら訊いた。
「いるのか?他にも、お前のように精霊の宿った武器が…」
「ああ、勿論いるさ」
タテガミは大した事でもないように言った。
「ええっ!」
「しぃっ!」
タテガミの答えに思わず大きな声を出したナルをガイが窘める。ナルは慌てて自分の口を押えると、ガイと一緒にアクーを振り返った。
広い部屋に響き渡る声を出してしまったが、どうやらアクーはまだ目を覚まさないようだった。耳を澄ませば彼の立てる規則正しい小さな寝息が耳に聞こえてくる。
二人は改めて口を利く不思議な剣へと顔を戻した。しかし衝撃の余り次の言葉はなかなか出てこなかった。
何から聞けばいいのかわからず戸惑う二人に、笑いを含んだ声で先に言い出したのはタテガミであった。
「どんな武器にも、多かれ少なかれ精霊なんてなぁ住み着いているものさ」
「そう言うものなの?」
ナルが訊く。ガイは無意識に自分の腰に下がる騎士の剣に手を触れた。それを見たタテガミが納得したような声で言う。
「そうだな、お前さんのその剣にも勿論精霊は宿っている。人の強い思い。その剣を鍛えた者、その剣を手にした者、そして、その剣で命を絶たれた者…。多くの人間達の想いが俺達を生み出し、呼び寄せる。もっとも、殆どの奴がそうとは気づかれずに終わるがな」
「カンサルク王は、精霊の宿る武器を数種類使いこなしたと言う事か?」
「そうだ。俺のように特別な能力、明らかに人外の力を帯びた三つの武器を王はその手で操った」
「三つ…」
「じゃあ、お前みたいにこうやってペラペラ喋るようなトンチキな武器が、この世界にまだあと二つあるって事か?」
「おいお前何気に失礼な奴だなさっきから。俺は品のない奴は嫌いなんだ」
「何だと!?」
タテガミの不愉快そうな言い方にガイは怒りの声を上げた。
「少しは敬え、俺はお前の先祖達と共に戦ってきたんだぞ?お前の生まれた国を守る為になぁ」
鋭い声で言われたガイは、ぐっと声を詰まらせた。
「た、確かに…」
ガイも認めざるを得なかった。目の前に無機質に立つ喋る剣は、三百年の昔から存在し、伝説の王の手に握られてきたのだ。
「わ、悪かった。気に障ったなら謝る」
ここは素直になっておこうと考えたガイが謝ると、タテガミは機嫌の直った声で言った。
「わかりゃぁいいんだ、わかりゃぁよぉ」
「く~~~~~~~~っ」
何だかとてつもなく悔しい思いでガイは歯を食いしばった。しかし、今 訊いている話しは尋常な内容ではない。
それが自分達ANTIQUEの旅にどう影響するのか、或いはまったくしないのか、それは今の段階ではわからなかった。
だがガイはここはどうしても精霊の宿る三つの武器について知っておくべきだと、腹が立つのを抑えて尚も訊いた。
「だ、だがレメルグレッタに残っていたのはお前…、あ、いや。そ、その…タテガミさんだけだったじゃないっすか?」
「気持ち悪い男だな、俺の事はタテガミと呼べばそれでいい」
「お、おう」
ガイは脂汗を浮かべて頷いた。
「あの洞窟に俺しかいなかったその理由かい?そりゃあ簡単だ。後の二つは奪われたんだよ、レメルグレッタが攻め落とされたあの日、去って行くマウニールの連中にな」




