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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
161/440

友達

●登場人物

能力者

・ココロ…始まりの存在に選ばれた公国の令嬢。

・吉田大地…土のANTIQUEに選ばれた唯一の地球人。

・シルバー…鋼のANTIQUEに選ばれた公軍の隊士。

・キイタ…火のANTIQUEに選ばれた王国の王女。

・ガイ…雷のANTIQUEに選ばれた元はシルバーの部下だった男。

・ナル…生命のANTIQUEに選ばれた青年。大地と同じく異星人。


フェズヴェティノス

シキ(巫女)

・ハナ…わずかな仲間と戦いの中に残ったフェズヴェティノスの次期首領。眼鏡を掛けた少女の姿をしている。

・ヒカル…ハナをしたい残った蛇型の魔物。普段はスタイルのよい美しい娘の姿をしている。

・タマ…同じくハナとの友情から戦いに残った猫型の魔物。肌の白い可愛い娘の姿をしている。


オウオソ

・モリガノ…精鋭せいえいである十人の部下と共にハナの下へ残った戦闘集団の大将。

・テン…オウオソの知恵袋、モリガノの懐刀ふところがたなと呼ばれる知性の高い老齢ろうれいのオウオソ。

・ハクザサ(イシキリ)…その腕前から二つ名を持つただ一人白い羽を持つオウオソ。

・ミドリマル…モリガノの下に残った十人の中では最も若いオウオソ。ココロを救出し戦場を離れた。

・コウガ…同じく十人の中の一人。ミドリマルに次いで若く、飛翔のスピードに定評がある。


オオグチの一族…狼型のフェズヴェティノス。残忍 獰猛どうもうな性格で群れを成して闘う。



前回までのあらすじ

 自分を救い出したラプスの腕の中で意識を取り戻したアクーは現状を知るやいなやその腕を抜けラプスに攻撃を仕掛けた。

 ラプスがアクーの異常なまでの自分達に対する憎しみの理由を問うと、アクーは支離滅裂しりめつれつな事をわめき散らした挙句あげく再び意識を失い高い木の上から落下してしまう。

 慌てて木から飛び降りたラプスだったが、アクーはそのまま闇に乗じてラプスの前から忽然こつぜんと姿を消してしまう。

 混乱し取り乱したアクーの姿を目の当たりにしたラプスは戸惑とまどい、アクーが背負っているものに思いをせるのだった。

 一方 ようやくココロの下へと追いついたシルバーはフェズヴェティノスの次期首領であるハナとオウオソの一人ミドリマルが命がけでココロを救ってくれた事を知り困惑こんわくする。

 同じ疑問を口にしたココロにハナは笑顔で答えるのだった。

「だって私達は友達になれるはず、なんでしょ?」と。







 夜の森の中を小さな灯かりがれている。その灯かりは進むべき道を求め大きく動いていた。

「だめだ…。完全に道を見失った」

 悔しそうな声でつぶやいたのはガイだった。せっかくヒカルの援護を受けキイタと共にゴムンガとの戦闘の場から馬で離脱したガイだったが、先に出たシルバーを追っているつもりでいつの間にかはぐれてしまったようだった。

「ガイ…」

 右手にフェルディの炎を灯しながら周囲を照らしていたキイタが小さな声で呼んだ。

「ココロとつながった」

「本当っすか?で、ココロ様はいまどちらに?」

「それがそのぅ…」

 キイタは不安そうな顔を上げてガイを見ると、小さな声で言った。

「わかんないって」

「は?」

「ココロも今自分のいる場所がどこだか全然わかんないんだって」

 ガイは何とも返事のしようもなく大きなため息をついた。

「参ったなあ…。と、とにかくキイタはそのままココロ様と通信を続けていてください。その声を頼りに進んで行くしかないだろうし…」

「うん、そうだね」

「取り敢えずどっちだ?ざっくりした方角位わかりますか?」

「う~~~~ん…。こっち。あ、いやあっちかな?」

 キイタの何とも頼りない案内に、ガイはもう一度大きなため息をついた。

「あっ!」

 ガイが絶望感に打ちのめされていると、突然キイタが短い声を上げた。驚いたガイが慌てて顔を上げる。

「何だ!?どうした?」

「あの子…」

 キイタは右手を頭上にかかげると、少しだけ火を強くした。照らされる範囲が広がり、闇が退しりぞいて行く。

 照らし出された先に、一頭の犬がいた。静かにたたずみ、じっと二人の方を見つめている。これと言って特徴とくちょうのない、灰色の毛をした中型犬だった。

「何だ、ただの犬じゃないっすか」

「ガイ、覚えていない?」

「え?」

 キイタの言葉にガイが怪訝けげんな顔でき返す。キイタは前方で動かないでいる犬を見たまま答えた。

「ほら、私達がイーダスタの森でココロ達とはぐれた時」

「ああ、ありましたねえ、そんな事も」

「あの時もやっぱり灰色の毛をした犬が私達をココロの元まで案内してくれたじゃない」

 キイタの言いたい事が何となくわかったガイは前方に目を向けた。犬はまだその場を動かず、相変わらずこちらを見つめている。

「あれが、あの時の犬だって言うんですか?」

「だってどう見たってそうじゃない」

「そうですかぁ?あいつはもっと大きかったような…。って言うか犬は縄張なわばりを重んじる動物ですよ?イーダスタにいたあの犬が、こんなジルタラスまで遠征えんせいしてくる訳ないじゃないっすか」

「ううん。間違いない。あの子はあの時の子よ」

「そうかなぁ?」

 キイタの確信を持った言い方にガイは不審ふしんぬぐいきれず思わずつぶやいた。

「あ、ほらガイ。行っちゃう」

 キイタが慌てた声で言う通り、犬はイーダスタの時と同じようにゆっくりとした足取りで二人の前を歩き始めた。

「追って、早く!」

 まだ疑わしそうな顔をしたままガイは、それでもキイタの命令に犬の後について馬を進め始めた。二人が見失わない程度の距離を置いて犬はゆっくりと先行して歩いて行く。その後ろ姿を見つめ続けていたガイも、何となくこれはあの時の犬で間違いないかもしれないと、そんな風に思い始めていた。

「ガイ」

「え?」

「気が付いた?」

「何が?」

「あの子、首輪をしている…」

 キイタの言葉にガイは目を細めた。豊かな毛におおわれはっきりとは見えないが、確かに犬は首の辺りに何かをめているようだった。銀色をした小さな突起物とっきぶつがキイタのかかげる炎に照らされ、時々小さく光った。

「やっぱりあの子、誰かに飼われているのね」

 ならば人の姿を見ておびえないのはわかる気がした。しかし、飼い主がいると言うのなら尚更なおさらこんなに遠くまでは来ないのではないか?

 ガイは首輪の存在を知り、ますます々訳がわからなくなったがその思いをキイタには言わないでいた。



 ココロはハナの言葉に驚いたような顔のまま何も言い返せずにいた。れる焚火たきびの炎が照らし出すハナの顔は静かな笑みに満たされていた。

「ココロちゃんがそう言ってくれたから」

 ハナが最後にポツリとそう言うと、ココロは板の間にけ上がりハナの近くに走り寄った。ココロの突然の行動に驚いたハナが慌ててポケットから抜き取った両手をココロは強くにぎりしめた。

「そうだよハナちゃん!私達は友達になれる!ううん、私達は、もう友達だよ」

「エ…エヘヘヘヘ…」

 ココロの勢いにされ驚いた顔のまま固まっていたハナが、照れたように顔を上気させて笑い声を上げた。

 急に走り出したココロに一瞬 きもを冷やしたシルバーとミドリマルだったが、手をにぎり合ったまま笑う二人の少女の姿に、ため息をついて再び肩の力を抜いた。

 なるほど、とシルバーは思った。この狸の少女は人類の味方になった訳でも、我らANTIQUEを助け出そうとした訳でもない。ただただ、ココロと言う友人一人のためにあのような危険をおかしてまで自分達に手を貸したと言う事だ。

 主君と手を取り合って無邪気むじゃきに笑う魔族の娘を、シルバーは複雑な顔で見つめた。

 その時だった、ひざをついて焚火たきびの番をしていたミドリマルが急に手にしたまきを放り投げると勢いよく立ち上がった。ココロの手を振りほどいたハナも引きめた表情で明り取りの窓に身を寄せる。

「どうした?」

「しっ!」

 シルバーが鋭くくが、すぐにミドリマルに止められてしまった。

「誰か来る…」

 ハナが緊張した声で言った。しかしココロとシルバーの耳には何も聞こえなかった。

「二騎だ」

 ミドリマルが言葉少なにつぶやくと、シルバーは素早く腰の剣に手を掛けた。

 一分か、二分だったか。長くはない時間であったが、痛い程張り詰めた空気の中で四人は身を固くして待った。

 やがてココロ達の耳にもはっきりと数人の人が話す声が聞こえてきた。会話の内容までは聞き取れなかったが、声は段々と自分達のいる小屋へと近づいて来る。

「あー!」

「ハナちゃん!?」

 突然大きな声を上げたハナは、ココロが止める間もなく小屋の外へと飛び出していった。

「おーい、ここ、ここぉ!」

 やがて小屋の外からハナのそんな声が聞こえてきた。続いてそれに応える若い女の声も届いた。

 一気に緊張を解いたミドリマルが再び囲炉裏いろりそばにしゃがみ込む。ココロは土間に降り、シルバーの横で小屋の入り口を見つめていた。しばらくそのまま様子を見ているとやがてハナが笑顔で入って来た。

「到着だよ~」

 そう言うハナの後ろからどやどやと三人の人物が入って来た。

「大地!ナル!」

 小屋の中に入って来たのは戦場で離ればなれになっていた大地とナルであった。

「ココロ!」

 大地とナルの二人は同時に叫ぶと、笑顔でココロにけ寄った。

「無事だったか」

 シルバーもホッとした声を出す。実はココロに次いで心配の種であった二人の元気そうな姿にシルバーは心底安心した。

「うん、タマちゃんが助けてくれたんだ」

 言いながら大地が振り向く方に目を向けると、イーダスタで白の巫女と名乗っていた娘がハナとの再会を喜んでいる姿があった。

「タマちゃん、ありがとう」

「にゃん」

 ココロの言葉にタマは笑顔で答えた。

「シルバー、他のみんなは?」

 ナルが小屋の中を見回しながらたずねた。

「キイタ様にガイ、それとアクーはまだ現れてはいない」

 シルバーが急に声を落として答えた。

「何だって?」

 シルバーの返事に、入り口から新たな声が飛んできた。小屋の中にいた全員が声の方に目を向ける。

「ヒカルちゃん‼」

 ハナとタマがそろって叫ぶと、ヒカルはくずれるように小屋の中に転がり込んできた。二人が慌ててけ寄る。


「ガイは随分ずいぶん前に戦場を離れたはずだ…。せっかく助けてやったってのに何をぐずぐずしていやがるんだあの男は…」

 ヒカルが顔をしかめながら言った。

「ヒカルちゃんどっか痛くしたの?」

 ハナがヒカルに手を貸しながら聞く。額に汗をにじませたヒカルが苦し気に答えた。

「あのアテイル…、とんでもない馬鹿力だよ」

「ヒカルちゃん痛いの?痛いの?」

「ああ、痛いよ、べらぼうに痛い。私はちょっと休むぞ」

 泣きそうな声で聞くタマに笑顔を作ったヒカルは、二人の手を借りて立ち上がるとそのまま板の間に倒れ込んだ。

「ココロ、ガイから連絡は?」

 大地がココロの顔を見て聞いた。

「ガイからはないけど…。でもキイタからはあったの。ガイと一緒にいるみたい」

「キイタと言えば、私達と一緒にステージでおどった火の能力者だな?」

 ヒカルがわずかに首を持ち上げていてきた。

「なら間違いない。二人は一緒に馬に乗り、戦場を離脱りだつした」

「そうか、なら安心だね」

 ココロの答えに大地は笑顔を見せた。しかしココロの顔は晴れなかった。

「二人とも、道に迷ってしまったみたいで…」

「でも、テレパシーが届くならここを教えてあげれば…」

「だけど私もここがどこだかよくわからないから、うまく案内できなくて…」

「あ、そうか」

 今更いまさらながらそんな当たり前の事に気が付いた大地が言うと、ココロはますます々不安そうな顔になった。

「誰かアクーを見てはいないか?」

 シルバーが仲間の顔を見回しながら言うと、すぐにナルが反応した。

「先輩は黒い、狼みたいな奴が連れて行きました」

「ラプスだ」

 ナルの説明にハナが声を出した。ココロ、大地、シルバーの三人は、ガイとアクーを散々に痛めつけたオオグチを思い出した。

 特にココロはアテイル同様、かなり初期の段階からラプスの姿を悪夢の中で見ていただけに、その姿を思い描いただけで体が震えだすのを止められなかった。

「先輩を始まりの存在の元へ連れていくから心配するなと、そう言っていました」

 アクーを連れ去ったラプスの言葉をナルが伝える。すると急に大地は大きくため息をついた。

「何だかピンとこないなあ。ついこの間までフェズヴェティノスに殺されそうになっていたってのに」

「同感だ」

 頭をガリガリきながら大地が言うと、シルバーもうなずいた。

「私、もう一度キイタ達に声を送ってみる」

 不安にいてもたってもいられなくなったらしいココロは言いながら小屋の木戸に向かった。

「ココロ様、表は危険です」

 シルバーが慌てて声を掛けると、ココロは立ち止まり振り返った。

「うん、でも今三人にとっては私の声だけが頼りのはずだから…」

 そう言われると、シルバーもそれ以上止める事ができなかった。シルバーが次の言葉を口にできないでいる内にココロは木戸を開け、すっかり暗くなった小屋の外へと出て行った。

(キイタ、ガイ、アクー。今どこ?お願い、何とか私の声を捕まえてここまで辿たどり着いて!)

 ココロは暗い森を見つめながら三人にメッセージを送った。その時だった。突如とつじょココロの周りにいくつもの黒い影が現れた。目の前で数えきれない程の黄色い光が自分を取り囲んでいる。

 驚いて息を飲んだココロは、影の正体を知ろうと小屋かられるわずかな明かりを頼りに目を細めた。薄明りに浮かび上がったのは、数十と言う数のオオグチの一団であった。

 今やフェズヴェティノスは敵ではない。そうわかっていても、その恐ろしい姿にココロは思わす短い悲鳴をあげてしまった。

「ココロ!?」

「ココロ様!」

 ココロの声が聞こえたらしく、すぐに後ろの木戸が激しく開き、大地、シルバー、ナルの三人が飛び出して来る。シルバーもナルも剣の柄に手をえていた。

「こらー、オオグチ!」

 三人の後ろからハナが怒鳴りながら出て来た。

「ココロちゃんを驚かせちゃダメじゃないか!」

 命令に従い帰還きかんしただけの彼らは、突然の叱責しっせきの意味がわからず慌てた。

「い、いやお嬢。俺達そんなつもりは…」

「うるさい!そんなつもりがなくってもあんた達見た目が怖いんだからどっか隅っこ行ってなさい!」

「そ、そんなぁ…」

 オオグチの一人が情けない声を出すと、後ろでタマが大爆笑の声を上げた。

「だからちゃんと人間に化けれるようになれって言ったじゃーん」

「やかましいタマ‼」

 オオグチの怒鳴り声にタマは更に笑い声を高くした。

随分ずいぶんにぎやかだな」

 そんな声にシルバーが後ろを振り向くと、いつの間に舞い降りたのか小屋の屋根にハクザサが座って自分達を見下ろしていた。

「イシキリ!」

 シルバーの上げた声に、小屋からミドリマルが飛び出して来る。

「大将!!」

 ミドリマルが夜空を見上げながら叫ぶ。彼の見つめる先からオウオソの一団が高く羽音を響かせながらゆっくりと地面に舞い降りてきた。

「ご苦労だったな、ミドリマル」

 ミドリマルはねぎらいの言葉を掛けてきたモリガノの元へけ寄ると、甘える子供のように不満をまくしたてた。

「大将、俺もうこんな役やだよぉ。俺もみんなと一緒に戦いたかった」

「そう言うなミドリマル。誰かがやらねばならんこれも大切な仕事だったんだ」

「だったら次はコウガにやらせてくれよ」

「な!」

 ミドリマルは自分と同じく若いコウガを名指しにした。自分の名前が出た事に驚いたコウガは思わず大きな声を出した。

「わかったわかった。今回のところはまあこらえろ」

 モリガノは吹き出すと、ミドリマルをなだめるようにその肩を叩いて言った。

「お嬢、オウオソ十一騎無事 帰還きかんした。ANTIQUEは全員離脱、あのアテイルを倒す事はできなかったがな」

 モリガノはハナの前まで進むと低い声で報告した。

「うん、ご苦労様。でも逃がしたはずのANTIQUEはまだ全員ここにそろってないよ」

「そりゃあ…。また随分ずいぶんとのろまな連中だ」

 オウオソ十一騎、二十はいそうなオオグチ一族。ハナ、ヒカル、タマのシキの巫女。フェズヴェティノスの集団の輪の中で、四人の能力者は緊張の面持おももちちで立ちくしていた。

「余り、いい気分ではないな」

「生きた心地もしないよ」

 シルバーのつぶやきに大地が続ける。つい数日前に彼らと命懸けの激闘をり広げてきた二人としては当然の感想であった。

「ココロ、彼らは…?」

 フェズヴェティノスの事を知らないナルが隣にいるココロにそっとたずねる。

「うん、彼らはフェズヴェティノス。シュベルの力によって蘇った三種の魔族の一つよ」

「え!?」

 ココロの答えにナルは驚いた声を出した。その声に周囲のフェズヴェティノス達が一斉いっせいにココロの方を見た。

「三種の魔族ねえ」

 ハナが少しあきれたような声で言った。

「あたし達はそんな風に呼ばれているんだ」

「シュベルの力で蘇った虚無の住人は三種族。竜の一族アテイル、君達フェズヴェティノス。そして、東諸国にいると言うゼクトゥム一族。私達はこれらの種族を総じて魔族と呼称こしょうしている」

「失礼な奴らだな」

 シルバーの説明にコウガが不機嫌な声を出す。

「そうか?魔族なんて、何かちょっとカッコいいじゃんか?」

 屋根から飛び降りたハクザサが能天気のうてんきな声を出す。

「レヴレントの城に現れたゼクトゥム一族のおさからも同じような事を言われたわ。はるか昔から存在する一族だ、もっと敬意けいいを払えと」

「ラビュートかぁ、私あいつ嫌いだなぁ」

 ココロの言葉にハナが苦い薬でも飲んだような顔で言った。

「私達はANTIQUEからの情報のみで戦っている。この世界を形成する自然現象の象徴しょうちょうであるANTIQUEにとって、自分達の生業なりわいによって生み出された訳ではない命はすべて不自然な存在なのだと、そう教えられた」

「それは間違いではない」

 シルバーの話しに、オウオソの知恵袋であるテンがおだやかな声で答えた。

「でも別にだから敵って訳じゃないし」

「今の私にならそれがわかる」

 ハナの言葉にシルバーはうなずいた。

「我らは別種の存在だが種のへだたりを超えわかり合う事ができる。私にそれを教えてくれたのは…、ココロ様とハナ殿だ」

 シルバーが言うと、暗がりの中でココロとハナは黙って目と目を見交わした。

「私はあなた達を敵だとは思ってはいない。だが一度はシュベルの下に集い、我らを倒そうと考えた」

「そりゃあ…」

「いや、それを責めているのではない」

 ハナの不満そうな声にシルバーは慌てて続けた。

「その経験から知り得た事を、教えていただきたいのだ」

「何が知りたいのだ?若いの」

 シルバーの必死の声に応えたのはテンであった。シルバーはテンの顔に目を移して更に言った。

「あなた達虚無の住人とは、一体どのような存在なのか…。それと、あなた達を蘇らせたシュベルの本当の狙いは一体何であるのか。それを教えていただきたい」

 シルバーはテンの目を真っ直ぐに見つめながら言った。



「あ!」

 キイタとガイは同時に叫んだ。自分達を導くように先行していた灰色の毛をした犬が、突然馬では到底登れそうもないがけの上に跳躍ちょうやくしたのだ。

「何だよ畜生ちくしょう!ここまで来てそりゃないでしょうよ」

 ガイが自分達を見下ろす犬を見上げて情けない声を出す。

「ガイ、あれ」

「え?」

 言われたガイは自分の前に座るキイタを見下ろした。彼女はあらぬ方を指さしている。ガイがキイタの指さす方に顔を向けると、上り坂になった先にかすかに灯かりが見える。

「あれは…」

「家があるみたい」

 キイタの声にガイは思い出したようにもう一度犬に目を向けた。

「いない…」

 遠くにれる小さな灯りに目を向けたそのわずかな間に、犬は忽然こつぜんと姿を消してしまった。

「あいつは、ここに俺達を連れて来たかったのか?」

「わからないけど、でもココロの声もどんどんはっきりとしてきたし、やっぱりあの子、私達をみんなの所まで案内してくれたんだよ」

「何とも信じられん話しだがなぁ。けどまあ人家があったのは確かだし、取りえずあの灯かりを目指してみますか?」

 キイタは何を思ったかガイの問い掛けには答えず突然馬の背から地面に降り始めた。

「キイタ何してるんです?」

 驚くガイを余所よせにキイタは、遠くに見える人家の灯かりを目指して坂を上り始めた。

「お、おいキイタ…」

 ガイが慌てて馬を進めようとすると、キイタは坂の上からガイを振り向き、笑顔を見せて言った。

「私が様子ようすを見てくる。ガイはここで待っていて」

「そんな、駄目だ。様子よすなら俺が見てくる」

「駄目!」

 キイタは突然怒ったような声を出した。

「キイタ…」

 驚いた顔で自分を見つめるガイにキイタはもう一度笑顔を作ると落ち着いた声で言った。

「大きな声を出して、ごめんなさい…。でもお願い、私に行かせて。ガイはここを動かないで。ココロ達がいたらすぐに呼びに来るから」

 言い終えるとキイタはすぐにガイに背を向け再び坂を上り始めた。ガイは慌てて馬から飛び降りるとキイタを追った。

「待ってください、キイタ待って。あそこにいるのは敵かもしれない、一人じゃ危険だ」

 ガイの言葉にキイタはもう一度坂の上から振り返った。右手の炎に照らされたキイタの顔はやはり静かな笑みを浮かべていた。

「もしそうだったら、危なそうだったらすぐにガイを呼ぶから。そうしたら急いで助けに来て、いつもみたいに」

「キイタ…」

 キイタが何を思ってそんな事を言うのか理解できず、ガイは困惑こんわくした声を出した。しかしキイタはそんなガイには構わず暗い坂道を急ぎ足で登って行ってしまった。

 どうしていいか決めきれずにガイはただ呆然ぼうぜんとした表情で遠ざかって行く赤い火を見つめていた。

























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