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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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ナルの正体

●登場人物

・ココロ…始まりの存在に選ばれた能力者。仲間を集める旅を始めたリーダー。

・吉田大地…土の能力者。唯一地球からやって来た少年。知性が高く作戦で仲間をリードする。

・シルバー…鋼の能力者。一番初めにココロに合流した能力者。

・キイタ…火の能力者。大国の第二王女。性格は大人しく人見知り。

・ガイ…雷の能力者。戦闘力は高いが知性に乏しく猪突猛進型。

・アクー…水の能力者。大地と共に知恵袋として活躍するが戦闘力もかなり高い。

・ナル…生命の能力者。体は一番大きいが孤独な青年。


前回までのあらすじ

 ミニートの不思議な力でソローニーアまで移動した能力者達はそこに眠るエミカ王女の亡骸を前に胸を痛める。キイタの願いを受けた大地は土の能力を発動し、ソローニーアの入口を封印し、永遠にエミカの体を埋葬するのだった。







「お、いたいた」

 恐らくはキイタ達三人がここへ来た時のまま、三頭の馬が大人しくそこに立っていた。

「よしよし。みんないい子だったねー」

 大地は馬の顔をでながら声を掛ける。

「おーい、大地ぃ!」

 上の方からガイの声が近づいてきた。どうやらようやくエミカへの追悼ついとうを終えたらしい。数人の足音が聞こえてきた。

「おーい、馬ちゃんといたよー!」

 大地は近づいて来る仲間達に大声で答えた。

「大地」

 ナルは手慣てなれた様子ようすで馬の手綱たづなを解く大地に声を掛けた。

「大地は、馬に乗れるの?」

「うん。と言ってもプレアーガに来てから練習したんだけどね」

「え、そうなの?」

「そうだよ、俺が育った国じゃあ馬なんか普通乗んないもん」

「練習すれば、乗れるようになる?」

「まあほら、うちにはシルバーと言うとても優秀な先生が…って、ナルもしかして馬乗れないの?」

 大地がそう言うと、ナルは困ったような、照れたような顔のまま無言でうなずいた。そこへソローニーアから降りて来た仲間達がどやどやと合流する。ココロとガイは声高にこの後の事を話している最中であった。

「さあココロ様どうします?能力者は七人、馬は四頭です」

「体重で考えればやっぱりガイとキイタ、私とシルバー。それに、大地とアクーじゃない?ナルはあの体格だから一人乗りがいいでしょう?」

「ちょ、ちょ、ちょい待ち!」

 二人の話しが聞こえた大地が大声でそれを制する。

「何だよ大地、どうした?」

 急に話に割り込んできた大地にガイが驚いた声を出す。

「シルバーは?」

「馬連れだからね、ゆっくり来てるけど」

 そう答えたアクーは、大地の真剣な顔に怪訝けげんな表情を作った。

「問題発生」

「問題?」

 き返してきたココロの顔を見つめて大地がうなずく。

「ナル、馬乗れないって」

「ええっ!」

「お前もか!?」

 ガイが大袈裟おおげさなげいて見せる。

「ああ、あのごめんなさい」

 ナルはオロオロとした声を出して謝った。

「待って、乗れないのは仕方ないとして、ナルの国の移動手段は何?」

 大地がガイを押しとどめてたずねると、ナルはきょとんとした顔で答えた。

「そりゃあ、主には自動車だけど」

「じ、自動車ってあの、丸いタイヤのついた?」

 大地が重ねて聞くと、ナルは吹き出すように笑った。

「タイヤなんてそんな。そんな自動車は僕が生まれる前の話しだよ」

「マジで?じゃあ何を燃料に走ってるの?」

「いや、勿論もちろんエルテラスだけど…」

「エルテラス?エルテラスって何?化石燃料の事?天然ガスとか」

「いや、エルテラスはエルテラスだよ」

「エルテラスがわからない!どうやって走るの?」

 立て続けに質問をする大地とそれに応えるナルの会話に、他の面々はまったくついて行く事ができずポカンとした顔で二人を見つめていた。

「地面に敷いた無害鉛むがいえんとの反発力で浮遊させて、発生ベルトを回転させる事で推進力すいしんりょくを得る…って、どうしたの大地?そんなの子供だって知ってる事だよ」

「じゃあ君があった事故って言うのは…」

「…うん…自動車事故だよ」

「ああ、ごめん。嫌な事を思い出させた」

「いや、別に…」

 そんな会話の途中で遅れていたシルバーがようやく追いついて来た。話が見えないシルバーが何事かとガイにくと、ガイが声をひそめて答えた。

「いや、ナルの奴馬に乗れないらしいんですが、何だか話が訳わかんない方に行っちまって」

「ナル、君の生まれた国って、何て言うの?」

「えと、タリッカだけど?」

 大地は慌ててココロ達の方へ顔を向けた。大地に見られたココロ、キイタ、ガイ、シルバーの四人はそろって首を横に振った。

「タリッカなんて国の名は、聞いた事もない」

 代表する形でシルバーが答える。

「ナル、じゃあその、君の生まれた惑星の名前は?」

「アウケラだよ?」

「プレアーガじゃないのねぇ!?」

 大地はこれ以上ない程驚きの声を上げた。

「プレアーガはこの世界の事でしょう?僕はアウケラでココロの声を聞いてプレアーガまでやって来たんだもの」

 呆然ぼうぜんとする六人の間に夕暮れ時の風が吹き抜けていく。ナルの衝撃の発言に、皆声を失っていた。

「驚いた…」

 大地がようやくつぶやいた。

「そのアウケラにはさ、ナル。空飛ぶ機械とかもある?こう、人を乗せてバビーンって空飛ぶ機械」

 大地は自分の手を斜めに動かし、空を飛ぶような仕草しぐさをして見せた。

「?飛行機の事?」

「飛行機です、飛行機ですよ!その飛行機は何の燃料で飛ぶの?それもやっぱりエルテラスとかなの?」

「それは飛ぶ距離にもよるけど、離陸時だけは水素かなあ?」

「液体水素?」

「うん」

「それって宇宙とか行くやつじゃん?」

「そうだね」

「宇宙とか行くですか!?」

「そ、そりゃまあ、年に一回位は…」

「あれまあ年一?」

 今度こそ大地は絶句ぜっくした。ナルが自分と同じくプレアーガ以外の惑星から来た能力者である事も驚いたが、どうやら彼が生まれ育ったアウケラと言う星の文明は大地がいた地球と同等か、それよりも発達しているようだった。

「最近じゃ移住計画も随分ずいぶん活発かっぱつになってきてね」

「え、移住?誰が?どこに?宇宙に?」

「宇宙に、って言うか。うん、隣の星とか?」

「星単位でお隣さん的な言い方しないでもらっていいですか?」

「え?え?何か僕おかしい事言ってる?」

「ココロ」

 慌てた声を出すナルを無視して大地はココロを呼んだ。

「はい?」

「え~っと、何かすごいよこの人。結論から言うと俺と同じでプレアーガ人じゃない。別の惑星か、別の次元から来た人だ。そして、彼の住んでいた星の文明はプレアーガより四~五百年進んだ俺がいた地球より更に発達している」

 大地の説明にココロは大きな目をぱちくりとさせたまま黙っていた。

「全然響いてないでしょ?」

「ええっと、取りえず馬には乗れない訳ね?」

「相当ざっくりだね?まあ確かに今一番問題なのはそこなんですけどね」

「あの…」

 ナルがひかえめな声で大地に声を掛ける。

「って言うかその、みんなプレアーガの人なの?」

「俺は違う。俺は地球と言う星から来た地球人」

「チキュウ…」

「あとは、まあ大体プレアーガの方々かな」

「大体ってなんだ、まるっとまとめるな!」

 ガイが抗議の声を上げる。

「だって、アクーはわからないもんね?」

「え?」

 言われたアクーが顔を上げる。そう、彼だけは全ての記憶を失っているため純粋なプレアーガ人かどうかは不明である。

 とは言え、ココロの声を聞いたのはイーダスタの森の中であったし、まさか自分の生まれが別の星かもしれないなどとは考えた事もなかった。

「しかしまあ、別に悪い話でもないでしょう」

 いち早く冷静さを取り戻したシルバーが馬をきながら言った。

「他の惑星にいる仲間にもしっかりとココロ様の声は届いている何よりの証です。大丈夫、馬の扱い方は私やガイがしっかりと仕込んでやる」

「あ…」

「鋼の能力者、シルバーだ。私は君と同じく剣で戦う。同じ剣士が増えるのは心強い限りだ。よろしく頼む」

「ああ、はい。こちらこそ」

 自分よりかなり年配らしいシルバーに言われ、ナルは緊張した声を出した。

「まあ驚く事は多いが、今我々が遭遇そうぐうしている事は、つまりはこう言う事なんだ。いちいち驚いていたらきりがない。ではナルは大地かアクーと一緒に馬に乗るといい」

 言いながらシルバーは次々と馬の手綱たづなを取り始めた。頑固堅物がんこかたぶつのシルバーであったが、この旅に出て以来 遭遇そうぐうし続けた余りにも常識外れの出来事のお陰ですっかり柔軟な精神を身に着けたらしい。

 神経質とも呼べるシルバーのおおらかな態度に、一同は安心したように気を取り直し、めいめい々旅 支度じたくを始めた。

「ちょっと大地」

 いつの間に近くに来ていたのか、アクーが大地の服を指先で引っ張る。

「僕やだからね、あんな大きいのと一緒に馬に二人乗りするなんて」

「あのねえアクー。俺は最近ようやく馬に乗れるようになったばかりだよ?それが後ろに人乗せて走れると思う?」

「フェズヴェティノスから逃げる時は僕を後ろに乗せたじゃないか」

「だってそりゃアクーだからだよ。アクーは軽いし、正直走る馬から落ちたってケガする心配もなかったからさ、こっちだって何の遠慮もなく走ったけど。ナルは素人だぜ?素人が素人乗せてどうやって戦場をめぐれと言うのさ?」

「じゃあ僕はキイタと一緒に乗る」

「大丈夫かアクー?ガイとナルを一緒に乗せた馬が一体どれだけもつと思うよ?よりによって一番でかい二人を一緒の馬に乗せられる訳がないでしょうよ」

「じゃあ、じゃあ…」

「頼んますよ、アクー先輩」

「大地!」

 からかわれた事に気が付いたアクーは顔を真っ赤にして怒ったが、大地は素早く一番体の小さいアスビティの馬の手綱たづなを取るとさっさとまたがってしまった。

「アクー、どうした?早くしろ!」

 シルバーの声にアクーが顔を上げる。彼は既に馬上の人となり、ココロをその腕に抱いていた。ガイとキイタもとっくに馬にまたがっている。最も体の大きな黒毛の馬だ。

 アクーは所在投げに立つナルをチラリと見た。ナルは困ったような笑顔でアクーに頭を下げた。

「よろしくお願いします、先輩」

 怒りに声もないままアクーは馬の手綱たづなを引くと、ナルに乗るように合図した。ナルが大きな体を生かしてやすやす々と馬にまたがると、アクーはナルの前に空いたわずかな隙間すきまに飛び乗った。

「どこへ向かうんです?」

 ガイがシルバーの背中に大声でたずねると、シルバーは馬体を回して答えた。

「これよりジルタラスの東部、ジスコーの町を目指す。結局さっきまでいたレメルグレッタの近くを通る事になるがな」

「どの位で着くの?」

 大地が馬を寄せていて聞いた。

「ジスコーまでか?軽く見ても五日は掛かる。今日は何とか人の住む町まで出たいとは思うがな」

「五日かあ」

「場合によっては一週間見る必要もあるぞ。天候や体調、それにお前の乗馬の腕前とかな」

「何だよ、ちゃんと着いてくよ」

「今日行く街に店はある?」

 突然アクーが馬面を割り込ませるようにしていてきた。その背中には大きな体を縮めるようにしてナルが恐々アクーの肩に手を乗せている。

「そりゃあ店も宿もあるだろうが…」

「何が欲しいの?アクー」

 シルバーの腕の中でココロが身を乗り出してきた。

「薬。それと服が欲しい。今日の戦いでもうボロボロだ」

「あ、あの…ごめんなさい」

「そうだね君はそこで海よりも深く反省してなさい」

「は、はい」

 アクーの背中でナルがますます々小さくなった。ココロは苦笑いすると、改めて仲間達を見回した。みなひどい恰好かっこうをしていた。

「そうね。町についたらお湯を浴びて、みんな新しい服を買いましょう」

「日没まで時間がない、準備が良ければ出発する」

「俺はいいよ」

「僕も大丈夫」

 シルバーの言葉に大地とアクーが答える。

「よしガイ、最後尾を頼む」

「おう」

「では、出発‼」

 シルバーの大きな声を合図に、四騎の一団はまずはレメルグレッタへ向け、夕日に染まる荒野を走り始めた。目指すはジルタラス共和国東部、ジスコーの町。

 シルバーはそこから客船に乗り、ついに東諸国へ渡る事を想定していた。
















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