表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ANTIQUE  作者: OOK&YOK
148/440

崩壊と終結

●登場人物

能力者

・ココロ…強力なテレパシスト。唯一人能力者の声を聞く事のできるチームリーダー。

・吉田大地…土の能力を手にした地球の少年。頭脳明晰、冷静沈着だが戦闘は不向き。

・シルバー…鋼の能力を身に着けた剣士。常に先頭に立つココロに従順なサブリーダー。

・キイタ…火の能力を操る大国の王女。人見知りだが人一倍努力家で芯の強い少女。

・ガイ…雷の能力で戦う怪力無双の戦士。ひょうきん者だが仲間達からの信頼は厚い。

・アクー…水の能力を操る少年。知的な策士だが弓矢の腕に長け、戦闘能力も高い。


ANTIQUE

・ゲンム…ココロをバディに選んだ全ての根源。始まりの存在。可愛らしい妖精の姿をしている。

・テテメコ…大地をバディに選んだ土のANTIQUE。明るい少年の姿で現れる。

・デュール…シルバーをバディに選んだ鋼のANTIQUE。寡黙な動物の姿をしている。

・フェルディ…キイタをバディに選んだ火のANTIQUE。恐ろしい見た目だが戦闘力は最も高い。

・ウナジュウ…ガイをバディに選んだ雷のANTIQUE。フェルディに次いで攻撃力が高い。

・ハル…アクーをバディに選んだ水のANTIQUE。ゲンムに知恵の者と呼ばれる程知性が高い。


・クロウス…三百年前に滅んだアガスティア王国近衛隊の隊長。



前回までのあらすじ

 暴れまわる生命のANTIQUEをしずめるためにはそれをあやつる七人目の能力者を取り押さえなくてはならない。大地、シルバー、アクーの三人は何とか生命の能力者が身を隠す大樹を破壊しようと手を尽くす。

 しかしANTIQUEが離れてしまったシルバーの力では大樹を破壊する事はできなかった。ココロはそんなシルバーを引き連れANTIQUE同士が戦う人知を超えた戦場へと向かって行く。

 生命のANTIQUEに挑みかかるレヴレント達を天上へとかえらせる事。それこそがすべてに優先すると判断したココロはレヴレント達を戦場から離脱りだつさせようと声を張り上げた。

 しかしゲンムは戦場から離れるだけではなく、天井の門をくぐらない限り本当の平穏へいおんは彼らの元に訪れない。そして破壊を恐れた天井の門は間もなくその扉を固く閉ざすだろうとココロに伝える。

 レヴレント達を天井の門へと誘導するため叫び続けるココロの姿についにクロウスが動く。隊長の命令を受けたレヴレント達は次々と天井の門へと入っていく。しかし部下を助けようと戦場にとどまる副隊長のジーンを助けようと、クロウスただ一人だけが地上へと取り残されてしまった。

 すべてのレヴレント達を天井へかえそうと必死に戦ったココロはクロウスが残ってしまった事に号泣ごうきゅうする。そんなココロの姿を見たクロウスは静かに剣を抜くと、生命のANTIQUEに向け身を躍らせるのだった。







「クロウスさんっ‼」

 階段の頂点から真下にいる生命のANTIQUEに向け、緑の光が一直線に落ちていく。地上に残ったクロウスが地獄へちる覚悟で特攻を掛けたのだ。



「大地!もうよせ限界だ!お前の体がぶっ壊れちまうよ!」

 テテメコが叫んだ。しかし汗を飛ばし拳を振るう大地は止まらなかった。絶叫しながら大地は何度も何度も大樹の根を叩き続けた。

 アクーも必死で水を送り続ける。樹の内部はアクーのり出す激流にまれめちゃにめちゃに破壊されているはずであった。

 大樹も地中から新たな根を伸ばし、最後の抵抗を見せる。地を割り伸びる大樹の根は大地とアクーに直接攻撃を仕掛けてくる。

 体力の限界を超えた大地が気力だけで放った渾身こんしんの一撃は、太い根の一本を粉々に吹き飛ばした。しかし同時に大地の腕を守る岩石のプロテクターも微塵みじんに砕け飛散ひさんした。

 テテメコの光が消えていく。そこに長い触手しょくしゅのような根が襲い掛かり、大地の体を弾き飛ばした。

「大地!」

 叫んだアクーに大樹の幹を形成している枝の一本が襲い掛かる。枝はアクーの小さな体にからみついた。

「うわ!うわあぁぁぁぁぁ!!」

「アクー!」

 倒れたガイを戦場の外に連れ出そうと必死にその体を引いていたキイタが枝につかまれ上昇していくアクーに向かって叫ぶ。

 アクーは自分の体をからめとる枝を切り落とそうと必死に手ににぎった短刀を振るった。しかし頑丈がんじょうな枝はわずかにけずり取られるばかりででとても切断する事はできなかった。

「うっ…」

 アクーは苦し気にうめいた。体をめ付ける枝の力が強くなった。ギリギリと生き物のように枝が体に食い込む。

 その間もアクーの体は見る間に天高く持ち上げられて行った。地に叩きつけられればアクーと言えども無事では済まない高さまで上がって行く。

 ココロが生み出した光のよろいはどこまで期待してよいものか。飛んでくる石や敵の剣を防ぐのはわかっていた。ガーディアンクロウジャルの光のよろいは間違いなく打撃だげき斬撃ざんげきに劇的な効果を発揮する。

 しかしクロノワールに吹き飛ばされたガイ、たった今根に弾き飛ばされた大地を見る限り、衝撃をやわらげる様子は感じられない。

 この高さから地面に叩きつけられたとしたら、光のよろいの中にある自分の体そのものが衝撃にえられずバラバラになってしまうのではないのか?

 そんな恐怖に何とかこのいましめから抜け出さなくてはと、アクーは追い込まれた気持ちで一層強く剣を振るった。



「こいつ!まだ止まらねえ!」

 ウナジュウが体の下で暴れまわる生命のANTIQUEにあきれたような声を出す。

あきらめるな!このまま押し込むぞ!」

 デュールが更に力を込め巨大な背中を押す。フェルディの真っ赤な炎が背中を焼く痛みに、巨大ANTIQUEが恐ろしい声を上げる。

 生命のANTIQUEの下で地面が大きく割れた。赤黒い光が天に向かって伸びる。更に地獄の門が開く。

「押せぇぇ!」

 ウナジュウが必死の声を上げる。しかし、三体のANTIQUEが上空から突撃した衝撃をえた生命のANTIQUEをこのまま力尽ちからづくで地中に押し込むのはかなりの無謀むぼうと思えた。

 その時、上空から迫る緑の光が巨大ANTIQUEの背中にすさまじい勢いで突っ込んできた。

「何だ!?」

 突然の衝撃にウナジュウが驚きの声を上げる。雄叫おたけびを上げながらその背中に剣を突き立てたのはクロウスだった。

「お前ぇ⁉」

「人間…、何故?」

 ウナジュウとフェルディが驚嘆きょうたんの声を上げる。しかし、どうしても欲しかったあと一撃を得たANTIQUE達は話しは後とばかりに更に力を込め相手の背を押した。

 デュール、フェルディ、ウナジュウにクロウスを加えた四つの力が生命のANTIQUEを押しつぶし、地の底へと沈めていく。

 その下に開いた新たな地獄の門がみるみる大きくなり地面に亀裂を走らせる。その亀裂がココロ達のそばに開く最初の門へと向かって走るとやがて二つの門は融合し、一つの巨大な穴を生み出した。

 地面を揺るがす大きな音共に地面が割れ、地の底から真っ赤な光が点を指して何条も伸びていく。割れた地面に大量の土砂が滝のように流れ落ちていった。

 生命のANTIQUEが長く大きな声でえた。その瞬間、後足あとあしの方からその巨体が割れた地面に落ち始めた。



 体をめ付ける痛みにえきれず声を上げたアクーは、かすむ目に映る巨大な光に気がついた。大樹の中程まで来ていた。キイタがしがみついていた場所よりもはるかに高い位置だ。

 目の前に見える樹の幹は、その一部が強烈な緑の光を発していた。この樹を包む光の根源がそこにあった。

 アクーがまぶしさをこらえよく見れば、強く光を放つその部分はこぶのように幹が丸くふくらんでいた。

「そんなところに、いたのか…」

 アクーは短剣を口にくわえると、空いた右手を頭上へかざした。

「出てきなよ、一緒に、行こう…」

 アクーはつぶやくと、右手の先に生まれた巨大な水の玉を力いっぱいその幹のふくらみへと叩きつけた。



「もう少しだ!」

 ウナジュウが叫ぶ。

「ゲンム!言葉を!」

 デュールが力を込めながら叫ぶ。その巨大な体が次々とくずれる地面の下へと落ちていく。



 フラフラとした足取りで大樹の根本に戻った大地は、無言のままこぶしを振り上げた。しかし、振り上げたその腕に既に岩のプロテクターはなかった。大きさも普段の大地の腕に戻っている。

 それでもテテメコの力を宿し辛うじて薄黄色い光に包まれた右手を上げた大地はまばたきもせず、折れかけた根をにらみつける。その顔は額が割れ大量の血に染まっていた。

 ポタポタと血をしたたらせながらも大地はテテメコの力を上げていく。大地の体を包む光が大きくなるのと同時に足元に転がっていた大きな岩が音もなく浮き上がった。

「ふんっ!」

 大地が勢いよく腕を振り下ろすと、浮かび上がった岩が思いきりその根を叩き折った。それが、均衡きんこうたもつ最後の一本であったのだろうか、大樹は大地に根を折られた瞬間今までにない程大きくかしいだ。

(アア…)

 ココロの頭に、生命の能力者の声が響く。

「朝だ、起きろ」

 アクーが放つ水の玉は強烈な衝撃で光を守るようにふくらんだ幹を叩き、何本もの枝を砕き飛ばした。

 体をめ付ける力がゆるんだ。アクーはその一瞬のすきを逃さずいましめから脱すると、急いで倒れ始めた大樹の幹に飛びついた。両手両足を使い光の根源へと向かう。

「君は、そこにいるんだろう?」

 アクーは倒れていく大木の幹にしがみつきながら、それでも必死にい上がり新たな仲間の元を目指した。



 巨大なANTIQUEの体はみるみる沈んでいく。自分の背を押す強力な力に抗おうと大きな頭を振り上げ一声高く鳴いたその時、唐突とうとつにその足元が抜け落ち、生命のANTIQUEはデュール、フェルディ、ウナジュウそしてクロウスを背に乗せたまま一気にその巨大な姿を地中へと消した。



 かたむいていた巨木がその自重じじゅうえ切れず、耳をろうするような大きな音をたてて幹の途中から真っ二つに折れた。

 折れた幹はその中程にアクーを乗せたままものすごい速さで落下してく。

「大地逃げろ!上だー!」

 テテメコの叫びに我に返った大地は、頭上から倒れるように落ちてくる巨木に気づき避難を始めた。

「大地!」

 ガイの重たい体を引きずり階段近くまで撤退てったいしていたキイタが叫ぶ。大地がこちらに向かって走ってくる。その頭上から次々と折れた枝をき散らしながら巨大な木が倒れ掛かってくるのが見える。

「大地ぃーっ!」

 キイタが必死の声でもう一度叫ぶ。どう見ても間に合うとは思えなかった。大地の体が巨大な倒木とうぼく下敷したじきになると思われたその瞬間、巨木は大地の頭上で粉々に砕け、無数の木片と化して地面に降り注いだ。頭を抱えて地に伏せた大地の上から何本もの、何千本とも見える折れた枝が容赦ようしゃなく降りかかった。



(ココロ!)

 ココロの頭の中に今度はアクーの声が響いた。ココロはハッとして顔を上げる。ANTIQUEの戦いにばかり目を奪われていたココロは驚愕きょうがくした。あの巨木が折れ、倒れようとしている。

(アクー!)

(ココロ!呼び掛けて!彼はここにいる!生命の能力者は、今僕の目の前にいる!)

 次の瞬間、ゲンムが離れているはずのココロの体を包む光が薄い桃色に変化した。見ればゲンムの体も同じ色の強い光を放っている。

 ゲンムとココロの力は瞬時にシンクロし、全く同時にその能力を発動させたのだ。

「応えよ、生命のANTIQUE!」

「私の声に応えて!生命の能力者!」

「我が声に応えよ!」

 数千本の折れた枝で築かれた山の上に、緑に輝くひと際太い幹の一部が落下してきた。

 そこにしがみついていたアクーの体が衝撃に吹き飛ばされる。舞い上がる砂ぼこりに視界が奪われた。

 振動にられた大量の泥水が波打ち、広がっていく。流れた泥水が生命のANTIQUEと共にデュールやクロウスを飲み込んだ地獄の門をふさいでいく。

 広がった泥沼は、現実には開かれていない地獄の門の中に流れ込んではいかない。ただその上をおおい隠すようにさざ波を立てて広がっていった。

 いつの間にか地面のれは収まっていた。激しく鳴り響いていた巨木の倒壊とうかいする音も止み、誰の声も聞こえなかった。

 もうもう々と舞い上がる灰色の砂埃すなぼこりの中、たった一つの音もなく大空洞の中は怖い程の静寂せいじゃくに満たされていた。



 巨木がくずれ落ちる大音響と振動の中で固く目をつむっていたキイタは、訪れた静けさにそっと目を開いた。気付かぬ間に自分の体は太い武骨な腕に抱きすくめられていた。

「ガイ!」

 ガイが自分をかばおうと自らの体をたてとしていた事に気が付いたキイタは大きな声で彼の名を呼んだ。ガイがそっと腕の力をゆるめる。

「キイタ…、怪我けがは?」

「どうして!?どうしてあなたはいつもそうなの!今は私が、私があなたを守りたかったのに!」

 怒ったような声で叫ぶキイタに、ガイは小さく微笑ほほえんだ。

「守ってもらったさ。いいや、俺はいつもキイタに助けられてばかりだ」

「ガイ…」

「あなたにもしもの事があったらアリオス達に合わせる顔がねえ。だから、俺のためにもあなたには無事でいてもらわなくちゃぁならないんだ」

 目にあふれ出た涙を隠すようにキイタは慌てて目をらすと、ガイの横をすり抜け、木屑きくずを山と積み上げた戦場へと戻って行った。

「アクー!」

 仰向あおむけに倒れたアクーを見つけたキイタは散乱した木片に足を取られないように注意しながら彼の下へけつけた。

「アクー!アクー、しっかりして!アクー!」

 気を失っていたらしいアクーがキイタの呼び掛けに薄く目を開ける。

「アクー!良かった、気が付いたのね?」

「彼は…?」

 アクーはひっくり返ったまま自分を見下ろすキイタの顔を見つめ、れた声を出した。

「彼?」

 アクーの問いにキイタは顔を上げ周囲を見回した。十mと離れていない場所に巨大な幹の一部がまるで鎮座ちんざするように立っていた。

 不自然にゆがみ、ところどころを折られ砕かれた枝がかたみついた奇妙な樹木。 そこに立つ樹の幹はまだ薄く緑色の光を放ち続けていた。

 キイタは思い出したように息を飲むと、アクーの元を離れて木片の山へとけ出した。目の前に積み上げられた木片の下には大地が生き埋めになっているはずだった。

「大地!大地!大地ぃ!」

 キイタは涙声で何度も大地の名を叫びながら折れた枝で築かれた山に取り付き、狂ったように掘り返していった。

 ようやく上体を起こしたアクーのそばにガイがそっとひざをつきその体を支えた。二人は一度目を合わせると、必死に枝の山を掘り返すキイタを見つめた。

 まだ頭がぼうっとしていた。体も思うようには動かない。あの下に大地がいるらしい、そうとわかっていながらも二人ともすぐには動けなかった。

「降ろして」

 ココロは静かな声でシルバーに言った。シルバーは流れてくる泥水からココロを守るため、彼女の体を両腕で抱え上げ、自分はすねまで沼につかかったまま立っていた。

「しかし…」

「いいから」

 躊躇ためらいを見せるシルバーをさえぎるようにココロが言った。ほんの少しの間その目を見つめたシルバーは、ココロを抱きかかえたまま静かに泥沼の中を歩き始めた。

 沼が浅くなったところを見つけ、そこへそっとココロの体を降ろす。ココロはすぐに見る影もなくくずれ落ちた大樹の元へと歩き始めた。

「大地!お願い返事をして、大地!」

 キイタが泣きながら枝を取り払っていく。そんな彼女の後ろからガイが近づいてきた。それに気が付いたキイタは必死の声をあげた。

「ここにいるの!絶対ここら辺にいるのよ!私見たの、見たんだから!ガイ、手伝ってお願い!」

 必死にガイの服を掴むキイタの指先は流れ出た血で真っ赤に染まっていた。ガイはキイタの後ろに積みあがった山の中から無言で枝を一本手に取った。

 しばらくじっとその枝を見つめていたガイは突然それを投げ捨てると、猛然もうぜんと枝の山に挑み掛かっていった。

 キイタとは比べ物にならない勢いで次々とガイが枝を飛ばし、払いけていく。そんな二人を見つめたまままだ立てずにいるアクーのすぐ横に音もなくココロが立った。

「ココロ…」

 アクーが呆然ぼうぜんとした声でつぶやいた。

「シルバー」

「は!」

 ココロの声にすぐに応えたシルバーは、何も言わずキイタの元にけ寄ると、ガイと一緒になって山を切りくずしにかかった。

「アクー、あなたの声、聞こえたわ」

「え?」

 アクーが見上げると、にっこりと微笑ほほえんだココロが見下ろしていた。

「ありがとう」

 ココロが静かに言った。礼を言われたアクーは急にソワソワとした落ち着かない気分になり、慌てて目をらした。

「い、いいよそんな事…。それより彼は?」

 アクーの問いにココロは静かに目を前に向けた。天上の光も、地獄の赤い光も消え、ガーディアンクロウジャルの放つ光も既に消え失せた大空洞の中で、ただ一つ薄く緑色の光を放ち続ける幹の一部が転がっている。

「彼はそこにいるわ」

 そうつぶやくとココロは静かに光る幹に向かって数歩踏み出した。そんな彼女の頭上に薄い桃色の光が舞い降りた。ゲンムだ。

 ふと見れば、アクーのすぐ隣にハルがいた。左右の上空にはデュールとフェルディが浮遊ふゆうし、下界の様子ようすを見つめている。

 ハルの大きな体の向こう側では、うずくまるようにしてウナジュウが倒れ込んでいた。

「おわ!手!手!」

 突然ガイの大声が響き渡った。シルバーとキイタが慌ててガイのそばけ寄る。見ればからみ合った枝の間から人間の左手がのぞいていた。その手は元気にヒラヒラと上下に動いた。

「大地!」

「大地か!?」

 キイタとシルバーが交互にその名を呼ぶ。大地は声が出せないのか、指で丸を作ってみたり親指を立てて見たり、何とか自分の存在を伝えようとしきりに手を動かしていた。

 キイタがしっかりとその手をにぎる。

「待ってて大地!今出してあげるから!」

「よしガイ、やるぞ!」

「おうよ!」

 この下敷したじきになったのだとすると場合によっては、と最悪の状況も想定していたシルバーとガイだったが、元気そうな大地の反応に俄然がぜんやる気を見せ、今まで以上の勢いで枝を取り払い始めた。

 大地発見にく三人の様子に立ち上がったアクーは、ゆっくりとその現場に向かって歩き出した。

「苦じい…」

 枝の奥から大地の小さな声が聞こえた。

「大地!?」

「息がでぎない、早ぐ…」

 大地の声にシルバーとガイが目を合わせる。二人の大男が怪力にものを言わせ取り組んでいるものの、複雑にからみ合った枝は容易よういに大地の元に行かせてはくれなかった。

 そこへやってきたアクーがキイタの隣にしゃがみ込み、隙間すきまの奥にいるらしい大地に声を掛けた。

「キイタの火で枝を燃やすか、僕の水で一気に吹き飛ばす手もあるけど大地、火責ひぜめと水責みずぜめ、どっちがいい?」

 全員が固唾かたずを飲んで大地の答えを待った。しばらくの沈黙の後、小さな声が返ってきた。

「…どっちもやだ」

「よーじじゃあもうしばら辛抱しんぼうしてて。さあガイ、シルバー、頑張ろう!」

 そう言って立ち上がったアクーは両手につばきかけると、一緒になって枝を引き始めた。

 必死に枝を引く男達にキイタも力を貸し、全員が息を合わせてひときわ太い枝を引き抜いた。からみ合った他の枝を引き連れ大きなかたまりとなって一気に取りのぞかれたその先にり傷だらけの大地がうずくまっていた。

「大地…」

 キイタの大きな目にみるみる涙の粒があふれ出す。キイタは枝の山を乗り越えると鋭い折れ口が服を裂くのも構わず大地にけ寄りその首に抱きついた。

「いたたた」

怪我けがは?」

 息を切らせたアクーが汗をたずねてくる。

「してるよ。でも体は大丈夫、大した怪我けがはないよ」

「ココロ様の助けがなければ、こんなものでは済まなかったところだ」

 思いのほか元気そうな大地の声にシルバーがぼそりと答えた。

「ココロ…」

 言われて目を転じた大地は、光る樹の幹をじっと見つめたまま動かないココロを見つけた。

 名前を呼ばれたココロは、一度大地の方に顔を向けると安心したような笑顔を見せた。

 すぐに目を戻したココロはそっと折れた幹に手を伸ばした。ココロの指先が光る樹に触れようとしたその瞬間、太く低い声が響き渡った。

「我が名はガイア…」

 その場にいる全員の耳に届く声は能力者のものではない。

「ガイア…」

 ココロが驚いたように手を引き、届いた言葉をり返した。

「我に与えられし名はガイア。私は、生命のANTIQUE…」

































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ