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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
143/440

ANTIQUE VS ANTIQUE

●登場人物

能力者

・ココロ…始まりの存在のバディに選ばれた公国公女。強力なテレパシストだが戦闘力は低い。

・吉田大地…土のANTIQUEび選ばれた地球人。攻撃力は高いが本人に戦闘経験がない。

・シルバー…鋼のANTIQUEに選ばれた優秀な軍人。戦闘力は高いが能力は防御系。

・キイタ…火のANTIQUEに選ばれた大国の王女。最も高い戦闘力を持つが本人は戦闘経験がない。

・ガイ…雷のANTIQUEに選ばれた元はシルバーの部下。戦闘力はずば抜けて高いが現在重症の身。

・アクー…水のANTIQUEに選ばれた少年。身体能力が高く戦闘力は高いがスタミナがない。


ANTIQUE

・ゲンム…始まりの存在と呼ばれるANTIQUEのリーダー。妖精のような可愛らしい姿で現れる。

・テテメコ…土のANTIQUE。少々口の悪いいたずら好きの少年の姿で現れる。

・デュール…鋼のANTIQUE。巨大なアルマジロのような姿をしている。

・フェルディ…火のANTIQUE。巨大な火の塊のような姿をしている。

・ハル…水のANTIQUE。顔は猫、体は魚と言う異様な姿をしている。ゲンムからは”知恵の者”と呼ばれている。


レヴレント

・クロウス…アガスティア王国 近衛隊このえたいの隊長。

・ジーン…クロウスの部下。副隊長を務める。


・第七の能力者…その正体は一切不明。現在巨大な生命の樹に身を隠しココロの声をこばみ続けている。



前回までのあらすじ

 エミカ王女の呼び掛けに天上から現れた初代ココロ妃。その姿に導かれるようにエルフィン王妃、マヌバラ、戦い続けた近衛隊このえたいの全隊士、そしてエミカ自身も含めすべてのレヴレント達が現世と別れ、天上への階段を登って行った。このまま事態は収拾するかと思えたその時、一人置いて行かれる事に怒りを覚えた生命の樹が反抗の狼煙のろしを上げた。

 大地のせり上げた地面は生命の樹の力でことごとく破壊され、能力者達は暗い谷底へと叩き落とされそうになる。大地は新たな能力を発動し、落ちたすべての仲間を救出するも、みなは広い大空洞の中でバラバラになってしまう。

 ココロを助けようとした大地とシルバーは落ちれば助からない崖の下へと飲み込まれたが、落下していく二人を助けたのはレヴレントであるクロウスとジーンだった。

 一方、かろうじて一人生命の樹の根本にやってきたアクーは、生命の樹が起こす揺れに呼応するように大きく地面が口を開ける情景を見て言葉を失う。そんなアクーの耳にその場に取り残されていたエイクの声が届いた。彼もまた地面に開いた巨大な穴を見つめこうつぶやいたのだ「地獄の門が開いた…」と。

 不審に思いアクーが見つめるエイクの顔は、何故か気味の悪い笑顔に歪んでいたのだった。







「エイク?」

 アクーはエイクの顔つきが変わっている事に気が付き声を掛けた。しかしエイクはアクーを無視したまま、大きく口を開ける地割れを見つめている。彼はあれを「地獄の門」と呼んだ。

「こ、これは…」

 シルバーは突然起こった地割れを上から見下ろし声を失った。大規模だいきぼな地割れはココロや大地、シルバー達が立つ場所の真下で起こったのだ。

 彼等からは地割れの中が丸見えだった。赤黒く渦を巻く何かがうごめいている。強い風が吹き上げてきたが熱を感じる事はなかった。

 しかし、その地割れの中はまるで沸き立つ溶岩のように真っ赤に燃えさかっていた。

「あ!あれ!」

 同じく大穴の中をのぞき込んでいた大地が指さして叫んだ。

「何かいる!」

 言われて見れば、溶けた溶岩のように赤く光る地底奥深くに動く者がいた。

「何だあれは!?」

「でかいぞ!」

 一緒に穴の中をのぞき込んでいたクロウスとジーンも叫んだ。それはもがくように体を動かしながら徐々に穴の外へとい出そうとしていた。

「アクー!何か出てくる、そこから逃げろ!」

 シルバーが叫んだ。アクーがハッとしてこちらを見上げるのがわかる。

「キイタ!そこから動かないで!」

 ココロは未だに大樹の幹にしがみつくキイタに向かって大きな声を出した。キイタは半分泣きそうな顔でココロの方を見た。

 地面のれはますます々ひどくなっていく。回廊かいろうに立つ大地達もついには壁につかまりながらその場にしゃがみ込んでしまった。

 大樹の根本にいたアクーは再び片膝かたひざをつくとあせったような顔で頭上を見た。小さくキイタが見える。彼女も必死に樹の幹にしがみつきながらこのれに耐えているようだった。

 その時、大樹の根が更に地面を割りながら立ち上がり始めた。樹をめぐる三百六十度あらゆる場所から次々と根が持ち上がる。

「これは…」

「す、すごい…」

 少し離れた高台からこの様子ようすを見ていたシルバーと大地が思わずつぶやく。緑色の光を放ち続ける大樹の周りで何十本もの太い根が鎌首かまくびをもたげる大蛇のように起き上がっていく。

 バキバキと木が鳴り、その身に着けた泥や石が雨のように降り落ちていく。常識では考えられない余りにも壮大な光景に、誰もが言葉を失っていた。

 大樹が自分の身を囲むように根を立ち上げてから間もなく、再び大きく開いた地割れの中からあの巨大で恐ろしい動物の雄叫おたけびが響いた。

「出るぞ!」

 クロウスが緊張した声を出した。ココロをかばい立つシルバーも歯を食いしばり、にらみつけるように真下に広がる地獄の門を見下ろした。

 何かの背中が見える。動いているそれは相当に大きかった。そして、それは唐突とうとつに頭を地中から引き抜と、真上にいるシルバーに向かって吠え掛かるように一つ鳴いた。

「な…、何だ、あれは…」

 大樹の根本で地割れの中から現れた巨大生物を見つめながら、アクーが声に出して言った。彼からは立ち上がった何本もの木の根を通して、まるで格子こうししにその生物を見ているようだった。

 力強く張った下顎したあご雄叫おたけびを上げる大口の中には震える舌と不規則に並ぶ巨大な何本もの歯が見えた。顔面から飛び出した両の眼球は左右が違う方を見ながらギョロギョロと大きく動いている。

 樹の上からこの様子ようすを見ていたキイタもやはり言葉を失っていた。今眼下に見えるあの生物らしきもの…。体は土のような黄土色、まるで全身を固いよろいのような巨大なうろこが固めている。

「恐竜…?」

 上から見下ろしていた大地が我知らず声をらす。地面の中から現れた生物の背中は亀の甲羅こうらのようにも見える固そうなよろいに包まれ、尾の先には巨大なこぶがついている。頭、背中、尾などには巨大な角やとげのようなものが何本も飛び出していた。

 地上にい出そうと地面をく前足にはワニのそれに似た鋭い爪が刃物のように光っている。筋肉を盛り上げ、渾身こんしんの力をこめた前足の下で地面がけずられ、くずれていく。

 四肢ししを使いい出して来るその姿は、大地が図鑑で見た四つ足の恐竜にそっくりであった。しかしでかい。真上にいる大地から見て全長は裕に十m、いや、それ以上ありそうであった。

 アクーはれる地面をうようにして大樹に近づくと自分の右手を樹にあてた。その手が深い青色に輝きだす。次の瞬間、アクーの右手には水でできた一本の矢がにぎられていた。

 アクーはすぐに生み出したばかりの水矢を弓につがえると、面前にいる巨大生物に狙いを定めた。

「おやめなさい、アクー」

 突然頭の中に響いた声にアクーがハッとして顔を上げると、すぐかたわらにハルが立っていた。

「ハル!」

 ハルは表情のない顔で静かにアクーに言った。

「あれはANTIQUE、お前の矢も通じはしない」

「そんな!じゃあ、一体どうすれば!?」

 アクーの必死の声に、しかしハルは答えずスッと顔を上方へ向けた。つられたアクーもその目線を追う。その先には回廊かいろうから下を見下ろしているココロ、大地、シルバーがいた。

 そうしている間に完全に地上へとい出した巨大生物は、ゆっくりと体の向きを変えその頂点にエミカ達を置く天上への階段に向かい前進を始めた。

「奴は王の元へ!」

 巨大生物の行動にジーンが驚いた声を上げる。その瞬間、ココロの胸に下がる赤い石が桃色の光を放ち始めた。

「ゲンム…」

 ココロが突然出現したゲンムの名をつぶやく。長い髪をたなびかせながらココロの前に現れたゲンムはいつもより少し厳しい顔をしているように見えた。

「ココロ」

 ゲンムが落ち着いた声で話し掛けてくる。

「あれはANTIQUE、お前達の力では奴の動きを止める事はできない」

「あれが、ANTIQUE?」

 今までにココロの前に姿を現したANTIQUEの中で最も体が大きかったのは水のANTIQUEハルと鋼のANTIQUEであるデュールだ。それでもその体長はせいぜい二m半程、人よりも少し大きい位だ。

 しかし今自分の足元をいずるように動くあのANTIQUEの巨大さはどうだ?まるで怪獣、いや、それこそ悪夢に見る竜のごとき姿をしている。

「ゲンム、あれはやはり闇のANTIQUEなのか?」

 シルバーがたずねる。

「それはわからない」

「違うよ!」

 冷静な声で答えるゲンムに、大地が言葉をかぶせるように叫んだ。

「俺は六年前、闇のANTIQUEの姿を見たんだ!あいつはあんなんじゃなかった!」

「落ち着けよ大地」

 そう言いながらひょっこり顔を出したのは大地のバディ、土のANTIQUEテテメコだ。

「テテメコ…」

「あの時お前が見たのはお前がイメージした闇の姿だ」

「え?」

 テテメコの言っている意味がわからずき返すと、ゲンムがうなずいて言った。

「今お前達に見えている我等の姿はバディとなったそれぞれの能力者が思い描いたイメージを共有しているに過ぎない」

「じゃあ、あの時見たネビュラの姿は…」

「新たなバディを得た闇のANTIQUEが六年前にお前が見た姿と違っていたとしても何も不思議はないって事だよ」

 テテメコにそう言われても大地は地面をいずるあの巨大生物が闇のANTIQUEとはどうしても思えなかった。大地の中の闇のANTIQUEは、やはりあの日に見たネビュラの姿以外には考えられなかった。

「ココロ」

 再びゲンムが口を開く。黒目がちな大きな瞳がじっとココロの顔を見つめている。

「ゲンム?」

「奴が正真正銘しょうしんしょうめい我等と同じANTIQUEであるならば、どのような物理的攻撃も効果はない。奴は我等に任せ、あなた達は能力者をどうにかして」

「どうにかって…」

「呼び掛けるんだよココロ。デュール!」

 最後に優し気に微笑ほほえんだゲンムは、ココロの返事も待たずに鋼のANTIQUEを呼び出した。すぐにシルバーの腰に下がる銀のメダルが輝き鋼のANTIQUE、デュールが姿を現す。

「私に続け、あのでかいのを今一度地中へ戻す」

「奴は何かにあやつられているのか?」

 デュールが両手で大槌おおづちを持ち直しながら低い声でたずねてきた。

あやつられているのだとしたらそれは能力者の方だろう。あいつは能力者の意志に振り回され、自我を失ってしまっているのだ」

かれた人間に操作されていると言う事か?」

「何者かはわからんが、ひどく未熟なANTIQUEだ。奴の上につく!一気に押し込めるぞ!」

「おうっ!」

 ゲンムはココロの体を離れ背中の翼を広げると、きらめく光の帯を引きながら空中へと飛び出す。それに答えたデュールも同じく宙を舞った。

「ゲンム!」

 ココロが巨大なANTIQUEに向かい飛び立つ背中に向かって叫んだ。

 立ち上がった樹の根に取り囲まれたアクーのそばで、空中へ飛び出していくゲンムとデュールの姿を認めたハルは今度は大樹へと目を向けた。

「さて、こちらはこちらで何とかしなくてはね?」

「何とかって?」

 アクーが相棒であるハルを見上げてたずねる。ハルは猫そのものの顔をアクーに向けると、キュッと笑うように一つ目を細めた。

 その樹の上では、キイタのイヤリングから火のANTIQUEフェルディが姿を現した。

「フェ、フェルディ…」

「キイタ、しばしお前の体から離れる。火の能力は使えなくなる。私が戻るまで決して戦うな」

「何をする気なの?」

 キイタは必死にれに耐えながら、すぐ近くにただようフェルディに問い掛けた。逆巻さかま業火ごうかと見える体からのぞく、爬虫類のように表情のない目がじっと見つめ返してくる。

「始まりの存在に従う。奴を止めなくては」

 そんなフェルディの言葉にキイタは顔を上げる。はるか下、れる視界に巨大な生物が体を引きずるように天上への階段に取り掛かろうとしているのが見て取れた。

 次の瞬間、フェルディはキイタを離れ音もなく空中高く舞い上がった。

「フェルディ…」

 切れ切れに炎の尾を引きゲンムの元へと急ぐフェルディの背をキイタは見送った。

 自分の足元を見る。激しくれる樹の根本にアクーとハル、そしてエイクの姿が見えた。キイタは歯を食いしばると慎重しんちょうな足取りで地面に向かって樹を下り始めた。

「シルバー、見て」

 大地が下をのぞき込むようにして言った。その視線の先では、謎のANTIQUEがいよいよ巨大な前足を天上への階段に掛けようとしていた。

 その真上にゲンム、デュール、フェルディ、三体のANTIQUEが集結していた。

「何だ?」

 シルバーが大地の顔を見てき返す。

「あの巨大なANTIQUEが踏みつけた場所」

 そう言われてココロもシルバーと一緒に下をのぞき込む。

「奴がい出てきたあの巨大な穴の周りは、奴の体重でくずれている。王妃達が登った階段も同様だ」

「相当 自重じじゅうがあるんだな」

「バーカ」

 シルバーの答えに、テテメコが即座そくざあきれた声を出す。

「何!?バカと言ったか!今私にバカと言ったのか!」

「それがどうしたの?大地」

 テテメコの発言に怒りを見せたシルバーを押しとどめるようにココロがいてくる。

「ANTIQUEは、実体がないはずだよね?」

「あ!」

「そう言えば…」

 シルバーとココロが同時に言う。ANTIQUEは概念がいねんの存在、実体は持たない。ならば、なぜ奴の踏む地面はその体重につぶされくずれるのか。

「だけど穴から階段まであいつが歩いたところは何の変化も見られない」

 大地がその場所を指さしながら言う。

「と言う事は…」

 ココロの声に大地がうなずきながら続ける。

「この地割れも、あの階段も、実在はしていない…」

「そんな…」

「でも、あの階段にはさっきまで私達もいたのよ?」

「恐らく、天上の門が開かれてココロ妃が降りて来た時から、あの階段はこの世のものじゃなくなったんだろうね」

 大地の推理にシルバーは愕然がくぜんとした。実体を持たないANTIQUEが踏みつぶす地面は、それ自体がANTIQUEと同じく概念がいねんの存在。単なるイメージでしかないと大地は言いたいのだ。

 しかし、大きく口を開けた地割れの底から吹き上げてくる強烈な上昇気流は、事実シルバーの髪を乱している。大きな音を立ててくずれる地面、真っ赤に燃えるように輝くその地中の情景が、全て実際には存在していないのだとはとても思えなかった。

 言い出した大地自身、ではあの穴の中に飛び込めるかと言われればそれはとても無理だと感じていた。

 その時だった、突然大空洞内に無数の雄叫おたけびが響き渡った。

「王をお守りしろぉ!」

 そんな声と共に、光輝く階段の頂点から緑色の大きな光の玉が飛び出し、巨大生物に向かって突進してきた。

「隊長!」

「あいつら…」

 ジーンの叫びにクロウスが歯を食いしばり声をしぼり出す。迫る謎の生物に向け、先に王の元へとけつけた五十を超えるアガスティア近衛このえ兵士達がその進行を食い止めようと出撃したのだ。

(ミンナジゴクニオチロ!)

 なぐりつけるような能力者の叫びに、その声を聞く事のできるココロとクロウスの二人は眉間みけんしわを寄せた。

 クロウスはすぐにジーンに向かって叫んだ。

「ジーン!皆をとめろ!王のおそばを離れるなと命ずるのだ!」

「は!」

 ジーンは短く答えると、やはり緑色の光を全身にまとい、その場から飛び出していった。

(ダレヒトリ、ココカラダシハシナイ)

「やめて!」

 頭に響く能力者の声にココロが叫んだその時だった。地中から天を指して立ち上がっていた大樹を囲む無数の根が、一斉いっせいに倒れ地面を叩いた。

 ひと際大きなれが起き、地面にいたアクーとエイクの体はその衝撃に跳ね飛ばされ宙を舞った。

 階段に手を掛けた巨大生物の背後を根が叩いた瞬間、その場にも巨大な穴が開いた。砕けた岩や石の破片はへんが空中高く舞い上がり、ココロ達人間に襲い掛かる。

「危ない!」

 シルバーは咄嗟とっさにココロの上におおかぶさるようにして彼女をかばった。

「ぐわっ!?」

「シルバー!」

 ココロが慌ててシルバーの大きな体を押し返す。ココロの細い腕に押されただけで、シルバーはくずれるようにその身をずらした。

 彼の身に着けているよろいの背中部分が大きく変形している。どうやら相当に大きな破片はへんが激突したようだ。シルバーが守ってくれていなければ、ココロは命すら落としかねなかっただろう。

 しかし、デュールが体から離れている今のシルバーに鋼の能力を発動させる事はできない。よろいをつけていたとは言え、シルバーは生身の体で今の攻撃を受けたのだ。

「シルバー!」

 ココロが必死の声を上げる。しかし痛みと苦しさのためシルバーはその呼び掛けに応える事もできずに倒れてしまった。

「あの樹…」

 大地が黄色く光る右腕を前に突き出したままの姿勢でつぶやいた。どうやら彼はテテメコの力を発動しかろうじて自分の身は守っていたようだ。

「あの樹は本物だ、樹の攻撃は俺達に当たる…」

 大地の言葉にココロは周りを見回した。空洞入り口付近の回廊かいろうでは、身を丸めるようにして倒れているガイの姿が見える。彼はその姿勢のままピクリとも動かない。

 目を転じれば、大樹の幹に取り付いたキイタが今の衝撃に足を踏み外したのか、今にも落ちそうな状態でぶら下がっている。樹を下り始めていたキイタであったが、今いる場所はまだかなりの高所だ。落ちたら無事では済まないだろう。

 その樹の根本で、今漸ようやく立ち上がったアクーは飛んできた岩の破片はへんが直撃したのか顔の左半分を鮮血に染め、肩で息をしている。

「怪物はゲンム達に任せるとして、実体のあるあの樹は俺達が止めなくちゃ…」

 大地はそうつぶやくと、れる地面に足を取られながらもガイの倒れている方に向かい歩き出した。アクーと同じ経路を辿たどり大樹の根本に行こうとしているらしい。

 ココロはハッとして顔を上げた。地面に叩きつけられた大樹の根が再びゆっくりと立ち上がり始めたのだ。二度目の攻撃準備に入り始めたようだ。

「やめろ!やめろー!」

 大地が叫びながら回廊かいろうを走っていく。細く足場の悪い回廊かいろうは走り辛く、しかもれはまだ収まっていない。一歩でも足を踏み外せば崖下がけしたに転落し、そうなればまず助からないだろう。気はあせってもスピードは上がらない。

 ガイ、キイタ、アクー、大地…。ココロは自分の腕の中で苦し気にうめくシルバーに目を落とした。

(みんなが、みんなが危ない…。みんなを守らなくては、みんなを守らなくては…)

 その方法もあてもなく、ココロの脳裏にはただそんな言葉がり返された。その時、ココロの耳に甲高かんだかい笛のような声が響いた。





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