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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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ンダライの塔

登場人物

・ココロ…アスビティ公国令嬢にしてANTIQUEのリーダー的存在であるゲンムのバディとして選ばれた少女。共に魔族と戦う仲間を探すために旅をしている。

・吉田大地…ココロの呼びかけに応じ地球からやって来た少年。土のANTIQUEのバディとして選ばれその能力を身に宿す。

・シルバー…アスビティ公国第三警備隊々長であり、一番初めにココロの仲間となった能力者。鋼のANTIQUEのバディに選ばれており、体を鋼鉄に変化させる事ができる。


・ブルー…シルバーの腹心の部下。陰ながらココロとシルバーの手助けをしている。馬術の名手。

・アローガ…シルバーの直近の部下で、第三警備隊副隊長を務める。口は悪いが気の良い男。



●前回までのあらすじ

 アテイルの襲撃から逃れ隣国ンダライ王国へと逃げ延びたココロとシルバーは、そこで三人目の能力者である吉田大地と出会った。

 大地の遠慮のない言い方は、早速シルバーとの間に軋轢あつれきを生んでしまう。そんな三人のもとにシルバーをココロ拉致犯らちはんと思い込んだ第二警備隊々長ロズベルひきいる警備隊の一員が迫ってきた。

 その場にいたブルーの協力を得、脱出を試みた三人であったが、その時、ついにシルバーと大地はANTIQUEの能力を発動したのだった。







「どう、どう!」

夕刻の迫る山中でブルーは馬を止めた。ココロを腕にいだきながら馬を反転させる。程なくして、今自分達の登ってきた道を、二人を追うようにひづめの音が近づいて来た。

「隊長!隊長、こちらです!」

 ブルーは馬の足音へ向け大きな声を上げた。しばらくすると、重々しい息を吐きながら一頭の馬が坂を超えて姿を現した。その大きな馬の背にはシルバーと大地が乗っていた。

「ココロ様!無事ですか!?」

 シルバーはすぐに馬を寄せるとココロの安否あんぴ気遣きづかった。

「大丈夫です」

 ココロが馬上から答える。

「よかった」

 言いながらシルバーが馬を止めると、一緒に乗っていた大地が慌ふためいて馬から降りようとした。

「シルバー、シルバー…」

 なぜかシルバーの名を呼びながら、随分ずいぶんと取り乱している様子で、その上乗り慣れない馬から無理に降りようとした為、大地は馬の足元に見事にしりもちをついてしまった。

「何をしているのだ、お前は」

 馬上から大地を見下ろしたシルバーが、あきれた声を出す。

「シルバー、あ、あんた、背中、背中…」

 しりもちをついたまま大地はシルバーを指さす。

「背中?」

 言われたブルーが馬をシルバーの背後に回す。

「キャッ!」

「隊長!!」

 シルバーの背中を見た途端、ココロとブルーが同時に声を出す。二人が見たシルバーの背中には、深々と三本の矢が突き刺さっていた。その内の一本は、なんと直接シルバーの首に刺さっている。

「ああ、これか」

 三人の動揺を余所よそにシルバーは、至極平然しごくへいぜんとした顔で自分の背中に手を回すと、体から突き出ている矢を二本、片手で掴んだ。

 そのまま、無造作に抜き取るが、抜き取ったその跡からは一筋の血すらにじんでもいなかった。

「誰がったか知らんが、なかなかの腕だ」

 自分の手の中にある矢を見ながらシルバーが呟いた。

「まだあるか?」

 そう言ってブルーに背中を見せる。ココロは思わず目をそむけてしまった。

「まだ一本、残っております…」

「手が届かん、すまんが抜いてくれ」

「大丈夫、なのでしょうか?」

「ん?もちろん大丈夫だ」

「では…」

 言うとブルーはシルバーの背中に刺さっている矢を掴み、力任せに引き抜いた。相変わらずシルバーはすずしい顔をしており、やはり、怪我をした様子はなかった。

 馬を降りるたシルバーは、大地に手を貸して立たせ、その顔を見つめて言った。

「あれが、お前の能力か?」

 大地は一つため息をついて答えた。

「そ。スマートじゃないんで、あんまり好きじゃないんだけどね」

「大きなお世話だ」

 突然大地の右肩に現れたテテメコが言う。そちらを見もせず大地がその頭をひっぱたく。

「いったくないよぉ~だ」

 と言いながら、テテメコは再び姿を消した。

「で、これがシルバーの能力な訳?」

「私は鋼の能力を持っている。体を鋼鉄に変え、あらゆる攻撃を防ぐ事ができる」

「そりゃぁ便利だなぁ。戦う男にはうってつけだね」

 するとシルバーは大地から目をらし、低い声で言った。

「私も、この能力は好きではない」

「え、何で?」

 大地の問いにシルバーは答えなかった。その時の寂し気な目元が、やけに気になった。

「シルバー…」

 呼ばれて振り向くと、いつの間にかブルーもココロも馬から降り立っていた。

「ココロ様、お怪我は?」

「いいえ。あなたこそ」

「ご心配をお掛けいたしました。私はごらんの通り、いたって無事にございます」

「よかった…大地も」

「うん、ちょっと怖かったけどね」

 大地は自分を見つめるココロに複雑な笑顔を見せると正直に答えた。

「シルバー、ペンと紙を」

 突然ココロが言った。

「え?はい」

 言うとシルバーは、馬の背に乗せた荷物から言われたものを出しココロに渡した。受け取ったココロは近場にあった岩に紙を広げ、携帯用のペンでそこに何やら書き始めた。書きながら説明した。

「父へ親展しんてんの書状をしたためます。詳しい内容は書けないけど、私達を追わないようにお願いする事はできる。ブルーにはご苦労ですが、この手紙を公爵宮こうしゃくきゅうへ、父の手に渡してもらいたい」

「でもココロ…」

「大丈夫。第二小宮へ旅立つ直前まで私は父と話しをしていた。まだ父のもとへ敵の手は回ってはいない」

「断言…」

「できるわ」

 ココロは振り返り、言いかけた大地の言葉をさえぎるように強い口調で言った。

「………わかった」

 ココロの迫力に押され、大地もそれ以上は何も言わなかった。

「隊長…」

 紙とペンに続き、封筒と封印用の蜜蝋みつろうを準備していたシルバーに、これまで黙っていたブルーが声を掛ける。見れば、先程シルバーの背から引き抜いた矢をまだ手に持ち、何を思うのかそれをじっと見つめている。

「申し訳ありません…。お恥ずかしいのですがこのブルー、まったく状況が見えていません。これは、どういう事なのでしょうか?」

「………」

 シルバーはブルーの問いにすぐには答えず作業を進めている。何と答えていいものか考えている風であった。ブルーもそんな上官の横顔を見つめたまま根気よく返事を待っていた。

「ブルー」

 ようやく顔を上げたシルバーが呼びかけた。

「はい」

「昨夜お前は、敵を斬ったか?」

「はい」

「どんな敵であったか?」

「一見、仲間の姿をしておりました。しかしあれは仲間などではありませんでした。それどころか、人間ですらありませんでした。真っ赤な目、長い舌…あれは、まるで蛇の化身けしん、隊士の皮を被った化け物でありました」

「アテイル」

 突然ココロが声を出した。シルバーもブルーも、そして大地も一斉にココロを振り向いた。

「封印を」

 三人を見返したココロが折りたたんだ紙を手にシルバーに命じる。

「は」

 短く答えると素早くココロのもとへ封筒とろうを持ち、近づいて行く。

「よい」

 手紙を受け取ろうとしたシルバーの手を断り、ココロは自ら書いた手紙を封筒へ納めた。

 蜜蝋みつろうで封をすると、自分の右手にめられた指輪で刻印を押した。これでこの手紙はココロ自身が書いた親書しんしょと言う事になる。その手紙を手にココロは静かに立ち上がった。

「色々とあって話ができなかったけど、今日、私はまた夢を見た」

 手紙を手にしたまま、ココロは三人の男達を見回すように話し始めた。

「今日の夢はいつもと少し違ったの。夢の中に、ダキルダと名乗る敵が現れたわ。そいつは自分達をアテイル一族と名乗り、その一族のおさはクロノワールだと言った」

 男達が黙って自分の話しを聞いているのを確認したココロは続けた。

「そして私は夢の中で、そのクロノワールの姿を見せられた」

「その、姿とは?」

 シルバーが緊張した声でたずねた。

「黒い豊かな髪、黒い瞳、そして黒い甲冑かっちゅうまとった男の姿をしていた…。とても、美しい顔をしていた…」

「美しい?」

 ココロの意外な表現に大地が頓狂とんきょうな声を出す。

「ええ。でも、それは見せかけの姿よ。私は見たの、そのクロノワールと言う男が黒い煙のようなもやの中で、恐ろしい動物に変化していくのを。その姿は…、目が醒めたらよくは覚えていなかったけれど…。でもきっと、あの恐ろしい獣こそ、あの男の真の姿なのだと思う」

 しばらくの間、男達三人は黙り込んでいた。ここに来て自分達の戦うべき相手の名前が知れた途端、今まで曖昧でしかなかったものが急に血肉を持った脅威きょういとしてその胸に迫ってきたのだ。

「アテイル…」

 シルバーが小さくつぶやいた。

「でも俺は」

 大地がしゃべりだした。他の者が大地の顔を見る。

「俺はテテメコから三種の魔族がいると聞いた。ここで名前がわかったそのアテイルとか言うのは、その三種の内の一つと言う事なのかな?」

「そう言う事、なのだろうな…」

 シルバーが歯切はぎれれ悪く答える。敵の力がココロが夢に見たものと同じならばかなりの難敵だ。そんな種族が他に二つも存在する。その事実に、全員が再び言葉をなくした。

 その時、四人のいる場所を目指すひづめの音が近づいてきた。シルバーがココロをかばうように前に立ち、さらにその前に進んだブルーが素早く剣を抜く。やがて緊張した四人の前に現れた馬にまたがる男を見て、シルバーがその名を叫んだ。

「アローガ!」

 見れば、ダルティスの宿の馬小屋でシルバーが打ち倒した第三警備隊の副隊長、アローガが馬上で照れ臭そうに笑っていた。

「いやぁ参った、参った。隊長、本気でぶん殴るんだもんなぁ」

 馬から降り立ったアローガは相変わらずの笑顔で振り向き、腹をさすりながら言った。シルバーが自分を押しのけるようにしてアローガのそばに寄るのを見て、ブルーは剣を納めた。

「無事だったか…。いや、すまん。あの時はああする他なかったのだ。腹は痛むか?」

「ええ、そりゃぁ痛みますがね。いやぁ、あたしも立場上ああするしかなかったんで、まぁ、むしろ良かったんじゃないですかね」

「すまん」

「やめてくださいよ。どんな事情があるかは知りませんが、水臭いじゃありませんか。第二小宮での付き合いはブルーよりあたしの方が長い。隊長がどんな事をしようと、それを疑いなんかしやしないですよ」

「アローガ…」

 やはり同じ釜の飯を食った直近の部下だ。シルバーはさらに増えた理解者に万人ばんにんの力を得た思いであった。

「ブルー…」

 現れた相手が敵でない事を知ったココロは安心して一息つくと、そっとブルーに近づき、声を掛けた。

「は」

 ブルーが慌ててココロを振り向き頭を下げる。

「あなたが今日見聞きしたもの、それはすべて現実です。あなたがそれを理解できようができまいが、これが今起きている事実なのです」

「………」

 他の者もココロを見る。ココロは真っ直ぐにブルーの目を見上げながら続けた。

「わかりますね?あなたが今すべき事は何か。私達についてくる事ではありません」

 それはブルーにも理解できた。矢が刺さっても傷一つつかない体。突然巨大化する腕で地面を叩き割る能力。そんな連中についていって、自分にどれだけの事ができるものか。

「ブルー」

 ココロは自分の手の中にある手紙に一度目を落とすと、再び顔を上げ、ブルーに言った。

「この手紙を父に渡してください。必ず、あなた自身の手で直接手渡してください。どうかお願いします」

 戸惑とまどったようにブルーは一度シルバーを見た。シルバーは何も言わず、若く、信頼のおける部下を見返しながらうなずいて見せた。

 決心したようにココロに顔を戻したブルーは、ココロの差し出す手紙をしっかりと両手で受け取るとその場に膝をついた。

「我が一命に代えても、必ず!」

「頼みました」

「は!」

 短く、力強い声で答えたブルーは頭を下げた。

「しかし…」

 そこで声を出したのはアローガだった。

「これで隊長も晴れて完全なお尋ね者。あの時、隊長から馬を受け取り姫を連れ去ったブルーも今じゃ立派な重要参考人だ」

「それは…、仕方あるまい」

 シルバーは暗い声で答えるとすぐに顔を上げ、アローガにたずねた。

「他の者はどうした?私達を追っているのか?」

「いやいや」

 アローガは頭の上で右手をヒラヒラ揺らしながら否定した。

「俺達は今朝一番で第二小宮を出立しゅったつしました。ああ、元、第二小宮ですがね」

 アローガの言い方に、ココロは胸が締め付けられる思いがした。第二小宮は燃え尽きたのだ。ロッドニージと共に…。

「とにかく急いで姫様を捜さなきゃならねぇっつんで、動ける者をつのって取るものも取り敢えずすぐに出掛けました。これはロズベル隊長の判断で正式な中央の指示じゃぁねぇんです」

 そうか、とシルバーは思った。事の次第はまだ中央の公爵家までは伝わっていないのだ。だが、それも時間の問題だろう。

「そんな状態の即席部隊で国境を越えて来たんだ。そうそう暴れられねぇですよ。このダルティスの田舎町いなかまちで姫様を連れ戻せればいいと思っていたようですがね。あんな騒動になっちまったらねぇ…。よそ様の国で正式な命令もなくこれ以上 騒ぎは起こせねえってんで、一度引き返す事になりやした」

「そうか…」

 アローガの話に一同はほっとした表情を見せた。

「で、アローガお前は?」

「あの混乱の中ですからねぇ、こっそり抜けてくるのなんか訳ねぇですよ。隊長の足跡を追ってここまで来ました」

「さすがだ」

「いやぁ」

 アローガは再び照れたように頭をきながらシルバー達に背を向け、馬のくらに手を掛けた。

「こうしましょう。あたしは今からブルーと二人で山を下ります。町中でもう一頭馬を買い、二人でアスビティの首都を目指しやす。何、変装をしていけばそうそうばれやせんでしょう」

 そう言いながらアローガは馬の背に乗った。

「万が一ばれた時ぁ、あたしがブルーを捕らえて公爵家へ引き渡しに行くところだって事にすりゃぁいい。何としても、ブルーを中央の公爵宮へ連れて行ってみせますよ」

「アローガ…」

「副隊長…」

 アローガのありがたい申し出に、ココロとブルーが同時に声を出す。特にココロは、一時でもアローガを疑った自分を恥じた。

 アローガは馬の上で体を後の方に下げ、くらを空けた。

「ほれ、ブルー。そうと決まりゃ早速行くぞ。お前の方が馬の扱いはうまい。山の下まではお前が手綱たづなを取れや」

「はい」

 ブルーは答えると、ココロの手紙をしっかりと胸のポケットにおさめながら小走りで馬に近づいた。そんなブルーへ、馬上からアローガが手を差し伸ばしてくる。

「ブルー。何ならその手紙、あたしが持っていた方が安全じゃぁないか?」

 ブルーはアローガの目を見上げ一瞬迷うような表情を見せたが、すぐに服の上から手紙に手をあてて答えた。

「いえ、これは姫から直接お預かりしたもの。最後まで私が」

「そうかい、まあいいや」

 そう言ってアローガはあっさりと手を引っ込めた。ブルーは器用にアローガの空けたスペースに自分の体を引き上げると手綱たづなを取り、シルバーとココロを振り返った。

「それでは姫、隊長、ご無事で」

「互いにな」

「ブルー、アローガ。頼みます」

 シルバーとココロが代わる代わる声を掛ける。

「では」

 ブルーはもう一度頭を下げると、すぐに馬の脇腹を蹴り、あっという間に山道を下って行った。

 ブルーとアローガが去った後、静かな夕暮れの山中には再び三人の能力者だけが残された。ココロ、シルバー、大地は置いてきぼりを喰った子供のような心細い思いで、二人の去った道をいつまでも見つめていた。

「さて」

 シルバーが二人をはげますように声を出す。

「我々も出発しますか、このままでは山の中で日が暮れてしまいます」

「そうですね」

 ココロも答え、自分の馬へと近づく。

「ダイチ、あなたは私と一緒に馬に乗って」

 ココロがそう言うとシルバーが慌てて言った。

「姫!そのような事はなりません」

「シルバー、また姫になっているわよ」

「や、これは…」

「そちらの馬は大量の荷物じゃない。その上男二人を乗せる気ですか。次の町まで頑張ってもらわなくてはならないのよ?」

「はぁ…、しかし」

「しかしじゃありません。私達は偉くも凄くもないただの旅の仲間よ。そうでしょう?ダイチ」

「うんまあ、そう言う事だね」

「貴様」

「シルバー、これ以上の言い合いは時間の無駄です」

 ピシャリと言われたシルバーは返す言葉もなかった。

「わかりました」

「じゃあダイチ、馬に乗って」

「うん」

 シルバーが苦々し気に見つめる中、ココロと大地は笑いながら苦労して馬の背に乗った。そんな二人の姿はこの先の暗い未来を思い、無理をしてはしゃいでいるようにも見えた。

「さあシルバー案内して、次はどっち?」

 ようやく馬の背に落ちついたところでココロがシルバーを見下ろしながら言った。シルバーはため息をつくと、宿から失敬しっけいしてきた立派な体格の牡馬おすうまに飛び乗ると、手綱たづなを操りココロのそばまで馬を寄せて言った。

「この山の標高は高くはありません。尾根沿おねぞいに次の町、ドルストに出る事ができます。そこまで行けばンダライの塔が見えてきます」

「ンダライの塔?」

 大地がココロの背中からたずねた。

「ンダライの首都中心部に建つ巨大な塔だ。現在ンダライのまつりごとはすべてその塔から発信されている」

「でもその塔が建てられたのは先王せんおうきさき様が亡くなられた後だから随分ずいぶんと最近の事なの。」

 馬を進めながらココロが引き継いで答える。

「いつの間にかンダライは、天空にそびえる塔の上から国民に一方的な命令を下すような国になってしまった…」

 ココロがさびしそうな声で言った。

「ああ、ほら。ここからでも見える」

 そう言うシルバーを見ると、木々のわずかに切れた隙間すきまを指さしている。その先を目で追えばなるほど、思ったよりも近くに高い塔が天を突き刺すやりのように建っているのが見えた。

「あれが、ンダライの塔…」

 大地は小さくつぶやいて、最上部を雲でかすませた灰色のとうを見つめた。下に広がる町を見下みくだすように建つ塔の姿は、まるで「権力の象徴」を絵に描いたような光景であった。













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