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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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マノエの死

●登場人物

・吉田大地…土のANTIQUEに選ばれた能力者。闇のANTIQUEにさらわれた幼馴染おさななじみを助け出す為地球を離れプレアーガへとやって来た。

・シルバー…鋼のANTIQUEに選ばれた能力者。剣術と馬術に長けた元公軍大隊長。戦場に於いては常にリーダーシップを執る頼れるチーム最年長。


・マノエ…三百年前女中頭のマヌバラに連れられ逃亡隊に加わった若い女中。国に残して来た幼い弟をいつも気に掛ける心の優しい娘。

・ジーン…アガスティア国王近衛隊副隊長。気は優しく腕の立つ好青年だが上官の命令には絶対に背かない堅物。



前回までのあらすじ

 三百年前、アガスティア王国国王であるカンサルクの死後、日に日に自我を失い壊れて行く王妃エルフィンを哀れに思った女中頭のマヌバラは天上で待つ国王陛下の元へ彼女を旅立たせようと近衛隊長であるクロウスと共謀しエルフィンを暗殺。

 しかし殺されたエルフィンの魂は自身の死に気づかぬままレメルグレッタへと残ってしまう。それに気が付いたマヌバラとクロウスは生き残った兵士、女中の全てを惨殺し王妃を囲む偽りの日常を作り上げていた。

 ある日突然現れた巨大な木の力で蘇った彼らは浮かばれぬ魂レヴレントとして復活した。彼らの魂を救い全員を天上へ上がらせたいと願うココロに対し、マヌバラとクロウスは彼女もまたレヴレントの仲間に引き込もうと襲い掛かって来たのだった。







 痛みを感じるか?そんなシルバーの問いに答える事もできずジーンは驚きに目を見開いたまま凍り付いていた。大地とシルバーの後ろで床にしゃがみ込んでいたマノエもやはり驚愕の目でジーンを見つめたままだ。

 ジーンは今、シルバーの剣で胴体のど真ん中を貫かれ珍重ちんちょうな蝶にでもなったかのように背後の壁に打ち付けられている。しかし、そこから一滴の血が流れ出る事もなければ、シルバーの指摘通り痛みをともなう事もなかった。

「痛みはない…。そうですね?それは既にあなたが亡くなっているからなのです、ジーン殿」

「なっ!…何を言っている?」

 この状況になって尚、ジーンはシルバーの頭がどうかしてしまったのではないかと疑った。

「思い出していただきたい、アガスティア国王一家が男女合わせ百名程の共を連れ国を発ったのが六月の終わり。十日程を掛けこのジルタラスへ辿たどり着き、巨大な洞窟どうくつに荷を解いた」

「それがどうした!?

「あなた方逃亡隊はその洞窟どうくつに身を隠し八月を過ごした…」

「それが…」

 言いかけたジーンの言葉が切れる。シルバーをにらみつけていた瞳がはげしくれた。床に手をついたままのマノエの目も同じようにれている。二人の目はかすむ記憶を見つけようと虚空こくう彷徨さまよった。

「九月…」

 シルバーが低い声で言う。

「数日続いた雨が止んだ日の朝だった…。わずかな兵を連れてエミカ王女様がこの洞窟どうくつを出た理由は定かではないが、とにかくその日、王女はここにはいなかった…」

 ジーンのはげしくれていた目が止まる。遠い記憶の一端いったんを捕らえたようだ。

「その日、一体何がありましたか?何が…、起こりましたか?」

 ジーンの体が小刻こきざみに震え始める。食いしばった歯の間から苦し気なうめき声がれ出した時、シルバーは大股おおまたで彼に近づいて行った。

 彼の体を貫く愛刀をつかむと、容赦ようしゃなく引き抜く。支えを失ったジーンはそのままがっくりと床に手をついた。右手につかむ折れた刀が床に当たり高い音をたてた。

「ジーンさん…」

 マノエがつぶやく。シルバーは一瞬肩越しに後方のマノエを気にする仕草しぐさを見せたものの、振り返る事なく言葉を続けた。

「八月下旬、執拗しつように食い下がるアガスティア残留隊ざんりゅうたいを振り切ったマウニールは、ようやくアガスティア国王軍 討伐隊とうばつたいを編成。逃亡したアガスティア国王一家を追撃するにいたる。歩兵の総数 およそ四百。引き連れた馬の背には慎重に過ぎる程の刀剣、弓矢の束…。それは、何が何でもここでこの戦争を終わらせようとするマウニールの凄絶そうぜつなまでの覚悟の表れだったのでしょう」

 大地はかたわらに座り込むマノエをチラリと見た。彼女は両手で自分の肩を抱くようにして、小さく震えていた。目はどこを見るともなく見開かれていたが、耳だけはしっかりとシルバーの声をとらえているようであった。

大所帯おおじょたいのマウニール討伐隊とうばつたいは逃亡隊のようには動けなかったものの、それでも二週間後にはジルタラスに入国。あなた達が容易よういにこの洞窟どうくつを見つけたように、マウニールもまた入国後すぐに逃亡した国王軍を発見した。しかし折悪おりわる雨期うきを迎えたジルタラスの岩石地帯では兵馬へいば共に動けずに立ち往生おうじょう。そして数日後、遂に訪れた晴れた日の朝、討伐隊とうばつたいは一気に洞窟どうくつへと攻め込んだ…」

「ああっ!」

 突然マノエが両手で頭を抱えながら叫んだ。記憶が戻りつつあるらしかった。自らが最期を迎えた日の記憶が。

 シルバーは胸が痛んだ。何故なぜこの少女にもう一度死の恐怖を与えなくてはならないのか?何故なぜ二度までもこのような思いをさせなくてはならないのか?

 それでもシルバーはその苦しみを振り払うように続けた。

「国王を守るは百名にも満たぬ疲弊ひへいしきった近衛このえ兵士。対して武器食糧 潤沢じゅんたくにして意気軒高いきけんこうたる四百の追撃隊。記録には”一日ともたず“とあるが、事実はどうであったか?恐らくは、数時間の後には勝負は決していたのではなかったか?」

 シルバーは両手を床についたジーンのかたわらに静かにひざを折った。

「いや…、勝負などと言うものは、討伐隊とうばつたいがこのジルタラスに入った時点で既に決まっていたのかもしれません。あなた達には、この討伐隊とうばつたいを打ち払う可能性など、万に一つも残されてはいなかったのだから…」

 再びマノエが大きく叫び、そのまま床に突っ伏してしまった。

「それでも、戦ったのですね?勝ち目のない事を承知であなた達は…、いえ、あなたの部下達は、迫る敵に向かって行った…」

 シルバーの語る国王軍最期の瞬間が、史実としてすらそれを知らぬ大地にもありありと見えるようであった。その悲惨ひさんつ、救いのない最後の戦いの情景が。

「戦いは数時間で終結したものと私は信じる、ジーン殿。次々と倒れていくあなた達近衛兵を見て、カンサルク王の決断がそこまで遅れたとはとても思えぬからだ。王は、一切の抵抗を禁じた。そして…」

「やめろ!」

 突然ジーンが叫んだ。しかしシルバーはひるまなかった。

「やめればお認めになりますか?あなたの中に蘇ったその記憶は、正しく真実であったのだと、受け入れていただけますか!?」

「王は…、我が王は…」

「そう、偉大なるカンサルク王は、その戦いに終止符しゅうしふを打つべく自らの首をマウニールに差し出したのだ」

「違う!」

「史上最も気高い最期として後世に語り継がれる見事な命の使い方」

「やめろ!違う!王は死んでなどいない!」

「その崇高すうこうなる最期を、汚すおつもりか!」

 ジーンはハっとして顔を上げた。

「あなた達を生かす為に逝った国王の想いも知らず、あなた達はみなその国王の後を追い自ら命を絶った!あの日、この洞窟どうくつで!まだ自分をいつわるおつもりかジーン殿!わずか二か月の逃亡生活…、このような堅牢けんろうな城を築く暇など、あったはずがないではありませんか…」

 最後はしぼり出すようにシルバーの声がかすれた。その場は水を打ったように静まり返った。

 彼らには伝わったのだろうか?自らが既に命を持たぬ亡者である事を、受け入れる事はできたのであろうか?だが、それが成されたとして、それでどうなると言うのか?

 この場一切をシルバーに任せ傍観ぼうかんの姿勢を決めた大地はこの後の予想がつかず、ただ固唾かたずを飲んで成り行きを見つめていた。

「違う…」

 静まり返った彼らの間にポツリと小さなつぶやきを落としたのは、床に伏せたまま動かなかったマノエだった。

 大地はハっとして彼女を見る。マノエは長い髪をらしながらゆっくりと手をついて身を起こし始めた。さっきまでの底抜けに明るい、能天気のうてんきな娘の様子は消え失せていた。

「違う…、違う…、違う…。私は死んでなんかいない…」

「マ、マノエ…」

 ジーンが彼女の名を呼ぶが、その声はマノエには届いていないようであった。

「私は、王を追って自害などしなかった…。決して、自害などしなかった…。ビルターさんが言ったの、ここに隠れていろと…。それで私は飼い葉の中に…」

 ビルター。それはこの城で初めにシルバーが出会った御者ぎょしゃ係の兵士だ。敵の襲撃を悟った彼は、幼いマノエを馬の飼い葉の中に隠した。

「怖かった…、たくさん悲鳴が聞こえた…。剣の鳴る音も…。私は目をつむり、耳をふさいで小さくなって、震えていたの…」

 顔を上げないままマノエの独白は続いた。さっきまでの彼女からは想像もつかない低い声に、理由のわからぬ恐怖を感じた大地は、身を退いて彼女から離れた。

「怖い、怖い、怖い…。そうやって震えている間私が思っていた事は、王妃様の事でも、王様の事でもなかった…。父ちゃんや、母ちゃんや、弟の事…。ただ、生きて国に帰る事。もう一度みんなに会う為に、生きて国に帰る事…」

 その想いはかなわなかった。彼女は間違いなくあの日、ここで死んだ。そして未だにその事実を忘れたままここに取り残されている。

「嫌だ…、嫌だ死にたくない!死にたくない!死にたくないよ!父ちゃん助けて!母ちゃん助けて!死にたくない!…死にたく、ない…。ただそれだけが頭の中に、何度も何度もり返されて…」

 しかし、ならば彼女は何故死んだのだ?国王が死に、敵が去った後、自害した訳ではないのであれば、彼女は一体…。

「やがて周囲は静かになった…。隠れていた私には何がどうなったのかなんて全然わからなかった…。それでも私は隠れていた。じっと隠れていた…。いつしか、眠っていたのね」

 今なら行ける、あの階段を下りココロのところへ向かう事ができる。大地はそう思った。実際そうすべきだった。しかし話し続けるマノエを見つめたまま動く事ができなかった。

「次に目を開けたのは、大きな悲鳴を聞いたから。誰の声かはわからなかった。でも、女の声だった…。その悲鳴は断続的に何度も何度も響いた。私はまた怖くなって身を縮めた。何も聞きたくなかった、何も見たくなかった…」

 シルバーが静かに立ち上がった。大地は驚いた。うつむいたままのシルバーは、ゆっくりとマノエに近づいて行ったのだ。

 一瞬心を幽霊に操られているのではないかと疑いたくなる程、迷いなくシルバーは自分の死の瞬間を語る少女に歩み寄って行ったのだ。

「突然、私の上にかぶされていた飼い葉が乱暴に取り払われた」

 マノエはゆっくりと顔を上げた。

「私は悲鳴を上げた…。でも、飼い葉を払った相手は私の名前を呼んだの、“マノエ”と、私の名前を呼んだの…。私は恐々顔をあげた…」

 その言葉の通り顔を上げたマノエは目の前にひざをついたシルバーなどには目もくれず、ただ一点を見つめたまま話し続けた。

「そこには、よく知る兵士が立っていた。共に国から逃げてきた、よく知る近衛このえ兵士が…。短い髪、たくましい体…、綺麗きれいな、とび色の瞳…」

 大地はハッとしてマノエの見つめる先を見た。倒れたジーンがその顔を見つめ返している。美しいとび色の瞳で。

「彼は私を見つけると、驚いたような顔をして…それから、少し悲しそうな顔をして、最後に、怒ったような顔をして…、剣を…剣を…」

 そこまで言うとマノエは突然、高々と恐ろしい悲鳴を上げた。その瞬間、シルバーはマノエの体を強く抱きしめた。

 何と言う事だ、彼女は仲間に殺されたのだ。彼女は敵の手に掛かったのでも、自ら死を選んだ訳でもなく、今、目の前にいるこのジーンの手によって殺害されたのだ。

 その理由までは大地にはよくわからない。いや、それを言うならば、敵の襲撃を乗り越えた直後、仲間の手によって命を奪われたマノエ自身が最もその理由をわかっていないのかもしれない。

 わからないままに、よく知る男が振り上げた剣が自分に向かって振り下ろされる光景を最後に、彼女の時間は止まったままだ。

 大地は声もなく目を見開いた。シルバーに抱きすくめられながら、それでもまだ悲鳴を上げ続けるマノエの姿が見る間に変わり始めたのだ。

 伸ばした手、目と口を大きく開けた顔、その全てが緑色の光を発しながら透き通り始めた。皮膚を透かして、その中の骨が見え始める。

 髪は乱れ、マノエのみずみず々しく美しかった体は、みるみるあの荒野で大地とココロを襲ったレヴレントと同じ姿に変わっていった。

 余りの恐怖に足の力が抜けていくのがわかる。そうしている間にも耳をろうする高かいマノエの悲鳴は、巨大な動物があげるうなり声のような恐ろしいうめき声に変わっていく。

 見るもおぞましい姿で苦しむように暴れるマノエを、それでもシルバーは渾身こんしんの力を込めて抱きしめている。

「もうよい、もうよいのだマノエ殿!もう終わったのだ、全ては終わったのだ!もう怖くはない!もう痛くはない!もう終わったのだ!」

 マノエを抱きしめたままシルバーが叫ぶと、マノエの動きが止まった。ギョロギョロと嫌に大きく見える眼球がシルバーの肩越しに不規則ふきそくに動いた。

「さあ、マノエ殿…。家に、帰る時間だ」

 シルバーがささやくように言うと、最早もはや眼球と舌だけを残した無残なむくろとなり果てたマノエの口がゆっくりと開いた。

「…い…え…」

 つぶれて低いその声は、何を言っているのかはわからなかった。かすかに聞き取れた彼女の最期の言葉は、”家“その一言であった。

 次の瞬間、マノエの体は一瞬にして砂となってくずれ落ちた。

「うわぁ!」

 余りに予想外の結末に、遂に耐え切れなくなった大地が大きな声を出す。しかし、シルバーはただ静かにそこに座っていた。その手には、ボロボロに朽ちた一着の灰色の服があった。

 これが彼らの結末…。自らの死を思い出し、その恐怖を再びなぞる事でそのいつわりの体はくずれただの土塊つちくれへとかえっていく…。

 日の光を浴びて仮初かりそめの肉体が滅んだとしても、夜になれば再び魂を土に宿し地上を彷徨さまようレヴレント。彼らの完璧なる攻略法はただ一つ、その肉体に宿る魂それ自体を昇天させてやる事。

 しかし、この城の中にも百人からのレヴレントがいるとして、今の方法を一人一人にほどこしているような時間はない。

「皆には会えたか?マノエ殿…」

 シルバーはそうつぶやくと、ただの切れはしとなったマノエの服を強くにぎりしめ、上を向いた。

 大地は驚いた。あのシルバーの目に涙が光っていた。虚空こくうを見上げたままシルバーが言った。

「我等には関りのない事だ…。しかし、なあ大地。できる事なら、ここにとどまる全ての人を私は…、私は…」

 救いたい。そう言いたいのだろう。しかしシルバーは言わなかった。今の方法で一人づつ昇天させていく事などとても不可能だと、シルバー自身よくわかっていたからだ。

 その時、二人の背後で重々しい金属音がした。大地もシルバーも特に驚きもしなかった。静かに振り返ると、ひざに手をついたジーンがよろいきしませながらく立ち上がろうとしているところだった。

 顔をうつむけたままユラリと立ち上がったジーンは、苦し気に見えた。

「何で、あんたはまだそこにいるんだ?」

 大地が問い掛ける。

「自分の身に起きた事を知って、何故なぜまだここにいる‼」

 大地の問い掛けにジーンは小さく笑い出した。

何故なぜ?我らは王をお守りする近衛このえの兵士…。王のおられる場所から、離れる訳にはいかないのだ」

「王は死んだ!」

 素早く立ち上がりながらシルバーが叫んだ。

「死んではいない‼」

 そう叫び返して上げられたジーンの顔は、やはり昇天前のマノエ同様、化け物じみた風貌ふうぼう様変さまがわりしていた。

 しかし、彼は砂にはかえらない。緑の光を発し、およそ生きた人間とは思えぬ姿となりながら、それでも立ってしゃべっていた。

 その見た目は荒野で襲い掛かってきたレヴレントと何変わる事のない姿であった。それでも初めて見た時のような恐怖はいてこない。

 大地の胸にも、シルバーの中にも共通してある事柄はただ一つ。目の前に立つこの化け物はただの亡霊ではない。理由はどうあれ、あのあわれな少女、マノエをその手にかけた実行犯なのだ。

 ただその一点において二人にとって彼は化け物などではなかった。憎むべき、そして同時にあわれむべきリアルな人間なのだ。

 彼が生前に負ったごうさばく、そして浄化じょうかする。あやまちを正す。彼は一刻も早く王の元へと向かい、の日の約束を果たすべきなのだ。

「思いの差か…」

「え?」

 シルバーのつぶやきに大地が聞き返す。

「この地に残した思いが強すぎるのだ…。忠義を胸に命を絶った訳ではないマノエは、自らの死を悟り行くべき場所へとかえった。しかし彼らは…。彼らの中には、死ぬ程度ではこの地を離れられぬ強すぎる意志があるのだ。だから、ああしてまだここにいる事ができる…」

「私達は、王と王妃をお守りする…。王家の血を引く者が一人でも残っているかぎり、アガスティアはまたあの栄華えいがを取り戻す事ができる…」

厄介やっかいだなぁ」

おろかな…」

 大地の言葉に続けて、剣を構えながらシルバーが悲しそうな声で言った。

「それ以上に、あわれだ」

 考える事は大地もシルバーと同じようだ。あなた達を救いたい、純粋にき上がるそんな想いに、知らず声がれる。

「ここから先は、通しはせん‼」

 言うなりジーンはほほを震わせ、大きな声で吠えた。荒野のレヴレント達がそうしたように、どこまでも響き渡るかと思えるような大きな声だった。

「副隊長?」

「副隊長!」

 今の声に呼ばれたと言う事か、二人の背後から無数の足音が迫ってくる。振り向いた二人の目に、よろいを鳴らし迫り来る数えきれない程の兵士達の姿が映る。

「大地、行け!」

 剣を顔の高さまで上げながらシルバーが言った。

「姫を頼む!」

 言うなりシルバーは雄叫おたけびをあげ、丸腰のジーンに向かって突っ込んで行った。両手でこれを食い止めようとするジーンにそのまま体当たりを喰らわす。

 ジーンの体を壁に押し付けたまま、シルバーが振り向く。そしてもう一度叫んだ。

「大地‼」

 その声を聞いた大地はシルバーに負けない叫びを上げながら、闇に沈む階段に向かって飛び込んで行った。










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