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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
134/440

地下大空洞

●登場人物

ANTIQUE

・ココロ…始まりの存在に選ばれたANTIQUEのリーダー。アスビティ公国公爵令嬢。

・吉田大地…土のANTIQUEに選ばれた地球の少年。幽霊が大嫌い。

・シルバー…鋼のANTIQUEに選ばれアスビティ公国公軍の元大隊長


レヴレント

・クロウス…アガスティア国王近衛隊の隊長。ラディレンドルブルットの秘密を握っている様子。

・マヌバラ…ラディレンドルブルットの女中頭。やはり何かしらの秘密を知っているようである。

・マノエ…マヌバラの下で働く若い女中。庶民の出らしく礼儀作法はなっていないが底抜けに明るい少女。

・ジュディ…ラディレンドルブルットの女中。白に迷い込んだココロと大地を案内した。

・マリー…ジュディの同僚。ブロンドの髪が美しい娘。


前回までのあらすじ

 相変わらずヴィゼレットを追い洞窟内を進むキイタ、アクー、エイクの三人であったが、前を行く小動物に着いて行きながらキイタとアクーはヴィゼレットが自分達を「祈りの少女」の元へ導こうとしているのではないかと思い始めていた。

 やがて曲がりくねったトンネルの先から聞こえた若い娘の声に足を止める三人。恐怖にも似た緊張を振り払い声の主の前に躍り出たアクーとキイタは驚きに声を失った。

 そこには伝説の少女、アガスティア国王第一王女であるエミカが確かにいた。しかしエミカは洞窟の天上に届く程に成長した美しい緑色の水晶石に体の半分以上を飲み込まれ身動きが取れない状態で突然現れた三人のう訪問者を見下ろしていたのだ。

 同じく一国の王女であるキイタは三百年前に滅んだ大国の王女へ敬意を払いつつも話し始めた。戦争はもう、終わったのだと…。







 小さな灯の一つも持たぬままココロは階段を下って行った。今までどの廊下にも暗がりを退しりぞける松明たいまつかかげられていた。しかし、ココロが歩くこの階段にはそのようなものは一切ない。

 慎重に手を沿わせる壁は冷たくれ、つたか木の根か、何か細いものがびっしりとうように絡み合い壁をおおっている事が指先に触れる感触でわかった。

 どこまで続くのだろうか?巨大な切り石を組み合わせた城の壁とは違う。踏みしめる階段こそ間違いなく人の手が入っているものの、指がなぞる壁は天然の洞窟どうくつそのものだった。

 階段の斜度しゃどゆるやかで、下りるごとに一段が広く取られるようになってきている。その為暗い中でも歩きにくくはなかった。

 しかし長い。いくら歩いても終わりがないように感じた。まるで、このまま地獄の底まで下りていきそうな階段だった。

 そんなココロの不安を打ち消すように唐突とうとつに階段は終わった。足元の粗削あらけずりな石の感触は変わらなかったが、螺旋らせんを描いていた壁は真っ直ぐと伸び、何歩足を踏み出しても次の段差に行きつかなかった。

 階段の終わりは、廊下となって更に奥に進んでいる。その先に光が見えた。

「こんな地下深くに、光が…?」

 闇と孤独が生み出す不安からか、ココロは胸に芽生めばえた疑問を聞く者もいない闇の中で口に出してつぶやいた。

 長く続く廊下の壁がその光に吸い込まれるように伸び、その終点は見えない。ココロはとにかくあの光まで行ってみようと更に足を前に踏み出した。

 その先に待ち受けるものを思い緊張はしていたが恐怖はなかった。今ココロの頭の中にはこの城にとらわれている新たな仲間を見つけ出す事以外にはなかった。

(タスケテ)

 七人目の仲間は確かにそうココロに求めたのだ。始まりの存在のバディとして、三種の魔族からこの世界を守ろうとするANTIQUEの能力者達の導き手としてその求めに応じるのだと言う思いだけが、ココロの中から恐怖を打ち払いかたくなに前へと進ませていた。

 脇目わきめも振らず一心に歩き続けたココロの目に、その光が大きくなってくるのがわかった。近づく程に、その光が射し込む日の光ではない事が知れてきた。目をもうする強いその光は、深い深い緑色に輝いていた。

 一切の慎重さもなく、壁に頼る事もなく廊下の真ん中を最早もはやけるような勢いで進んだ。そしてついにココロは闇の出口へと辿たどり着いた。

「これは…」

 そうつぶやいたきりココロは声を失くした。廊下を抜けた先は平らなテラス状に開けていた。

 頭上は先が見えない程に高く、ドーム状に途方もなく広い空間が広がっていた。巨大な地下空洞、横にも縦にも球状に丸く、まるで横半分に切られた卵のような形の空間だった。

 ココロが立ち尽くすテラス状に開けた場所から左右には、その丸い空間の内側をなぞってまるで回廊かいろうのように岩でできた天然の足場が続いている。

 思いがけず目の前に現れた巨大な空間にも圧倒されたが、何よりもココロに衝撃を与えたのはその空間のほぼ中心辺りから天をいて伸びる一本の巨大な木の存在だった。

 空間の地面は今ココロが立つ位置よりもまだ随分ずいぶんと下の方にある。はるか足元に広がる固い石の地面から、見下ろすココロの頭上を越え、終わりの見えない天に向かい大木は真っ直ぐに伸びていた。

 やがて落ち着きを取り戻したココロは、この光の射さない深い地下の空洞を明るく照らしだす光源が他でもない、その巨木自身であると言う事に気が付き、再び驚きに言葉を失った。

 ふと、ココロは自分の足元に更に下へと続く階段がある事に気が付いた。そこを下りれば、あの巨木の根本へ行く事ができる。そう考えたココロは躊躇ためらう事なく足を踏み出した。



「こんなところで一体何をしているんですか?」

 マノエは本心から驚いた声で問い掛けてきた。その声に不審ふしんな響きは聞き取れなかった。

 マノエの姿を見た時から大地はやや逃げ腰になっている。決意を固めたものの、やはり今目の前に立ち、話しをしている相手が実は幽霊なのだと思うと気分は落ち着かないらしい。

 シルバーはそんな大地の様子に殊更ことさら何でもないような声でマノエを紹介した。

「大地、こちらはこの城で働くマノエ殿だ。先程私をお前のところまで案内してくれたのだ」

「ああ」

 言われた大地は食堂でやたらと元気な声を張り上げた若い女中の事を思い出した。

「マノエ殿、これは私の連れで大地と言う者です」

 言われた大地はシルバーの影に隠れるように軽く頭を下げた。そんな大地の態度をおかしくも思わぬ口調でマノエは笑顔で言った。

「存じております。エルフィン王妃にもお会いになられたのですよね?」

「え、ええ」

 いささか緊張した声で大地が答える。

「マノエ殿」

 シルバーの呼びかけに彼女は大地から再びシルバーへと目を移した。

「お聞き及びだろうか?我が主、コ…、キイタ様の行方がわからなくなってしまったのだ」

「ええ?キイタ様が?」

「うむ、城内にはおられるようなのだが慣れぬ城の事、どこかで迷われているようなのだ」

「何で一人で歩き回ったのかしら?」

「今、城の方々が手分けをして捜索してくださっているのだが、クロウス殿の許可をいただき、こうして我等二人もキイタ様の行方を捜していた。しかし、やはり知らぬ城の中では要領を得なくてな」

「そうかぁ、そりゃそうだよねえ」

 驚きの為か、かろうじて保たれていたマノエの敬語は崩壊ほうかいし、すっかり国言葉になっている。元来がんらいから余り礼儀作法にこだわる性質ではないのかもしれない。そして何より、大人と礼儀正しく会話をするにはマノエはまだ幼過ぎた。

「じゃあさ、私も一緒に探すよ」

 マノエは手にした大きな籠を無造作に床に置くと、張り切った笑顔でシルバーに言った。

「ええ!?

 と頓狂とんきょうな声を上げたのは大地だった。その声を無視するようにシルバーがすぐに続ける。

「そうしていただけると非常に助かる」

「ちょ、シルバー…」

「任せてよ、お城の事ならなんでもわかるんだから」

 慌てる大地を余所よそに、マノエは得意げに腕まくりをしてみせた。その様子に軽く笑顔を見せたシルバーは、さり気なく大地を引き寄せるとそっと耳打ちをした。

「城内に詳しい者についてもらった方がはかどる」

「でも…」

 言うだけ言うとシルバーは大地の意見には一切耳を貸す気はないらしく、すぐにマノエに向き直り笑顔を見せた。

「それではマノエ殿、お仕事を中断させて申し訳ないがよろしく頼む」

「はい!」

 いくら不案内な場所とは言え、よりにもよって幽霊に道案内を頼むなんてぞっとしない話だ。大地は平気でそんな作戦を立てるシルバーを理解できず、軽く首を左右に振った。

「どうしました、マノエ?」

 早速ココロ捜索の為動き始めようとしたシルバー達に声を掛ける者があった。

「ああジョディさん、マリーさんも」

 見れば、食堂の方から近づいてくるのは同じ灰色の服に身を包んだ二人の女中であった。

「あのアスビティのお姫様がいなくなってしまったの」

 マノエの言葉に二人の女中はまゆひそめながら小さくうなずいた。

「聞いています」

「何だ、知っていたの?」

「マヌバラ様より指示が出ておりますよ、手空てすきの女達も今皆で手分けをしております」

 どうやらジョディと言うらしい右に立つ長身の女中が答えた。

「私達は捜索には加わらず、いつも通り王妃のお部屋の整頓せいとんをするよう言われたの。あなたも特別な指示がないのらいつも通りの仕事をなさい」

 もう一人のブロンドの髪の女がマノエに言う。こちらがマリーと言う事らしい。

「それが…」

 マノエが少し困ったような顔でチラリと後ろを振り返る。それを察したシルバーがすぐに進み出た。

「世話になっております。私はアスビティ公国警備隊士のシルバーと言う者。我が姫キイタ様を捜しておりましたが、どうにも不案内なもので、こちらのマノエ殿に協力をお願いした次第です」

「まあ、これは…。ご心配な事ですねえ」

 そう言って目を向けてきたジョディの顔を見た大地は小さな声を出した。その反応に、ジョディは優しく微笑ほほえんだ。

「その節は、失礼を」

「あれ?ジョディさん、大地さんをご存知?」

 マノエが意外そうな声で訊くのに、ジョディはゆったりとした声で答えた。

「いえ、夕べのご到着時に門から玄関までご案内申し上げただけですよ」

 ジョディはココロと大地がアガスティアの黒馬車にられてこのラディレンドルブルットへ辿たどり着いた時、最初に案内をしてくれた女性であった。

「そう言う事なら…」

 大地が無言でジョディに頭を下げていると、マリーがつぶやくように言った。

「どうかしらジョディ、マノエにはこのままこの方達のお手伝いをさせては?」

「そうね…。マノエ、あなたの仕事は終わったの?」

「はい!あ、いえ、あとこのかごを元に戻せば終わりです」

 そんな言葉を聞いたジョディはにっこりと笑うと、その細い指先でマノエが置いたかごを拾い上げた。

「では、これは私達が戻しておきましょう。あなたはシルバー様のお手伝いを」

「はい!」

「かたじけない」

 マノエが元気な挨拶あいさつを返すのに合わせ、シルバーはジョディとマリーに頭を下げた。

「お城の中にいれば然程さほど心配はないかと思いますが」

「私達も手がき次第お手伝いいたしますので」

 二人の女中は代わるがわるシルバーにはげましの言葉を掛け、軽く会釈えしゃくをするとその場を去って行った。

「じゃあシルバーさん、大地さん。ずはどこから見てみます?」

「この先は食堂であったな?その先は?」

「確か、食堂より奥に王妃様と謁見えっけんした部屋があったよね?」

 大地がマノエにさきんじて答えた。その言葉にマノエがうなずく。

「ええそう。その手前左側にエントランスがあって表玄関。エントランスの右奥に階段があって、そこから先は上も下も兵士達の居室きょしつだわ」

 マノエが廊下の先を指さしながら説明する。シルバーは軽く後ろを振り返りながら言った。

「こちらは馬をつないだ裏庭に続いていたな?キイタ様が城の外へ出ていないのならば差し当たり城内へ向かった方が無難ぶなんだろう」

「それじゃあ取りえず食堂の方に向かいましょう」

 言うとマノエはスカートをひるがえして二人を先導するように歩き出した。

「マノエさん、こっちは?」

 しばらく廊下を歩いていた三人であったが、突然大地が前を行く二人を呼び止めるように言った。

「え?」

 マノエが振り向くと、数歩遅れた場所で大地が右に伸びる廊下を指さしたまま立ち止まっている。

「そこは…」

「この奥の食堂はさっきまで俺もシルバーもいた。そこを通り抜けてエントランスの方まで行ったなら、いくらなんでも行き過ぎたと気づくと思うんだよね」

「そうだな、我々がいた場所より奥へ進むとは確かに考えにくい。マノエ殿、この先は一体どこへ?」

 大地の言葉に賛成したシルバーの問いに、マノエは困ったような顔を返した。

「そっちは…、実は私もあまり行った事がなくて…。私だけじゃなくて、そこから先の立ち入りはひかえるようにと普段から言われているの」

 大地とシルバーは何となく目を見合わせた。

「なるほど、それではここに入り込んでしまえば城の者と行き交う事もなく、知らない者ならば迷子になる可能性は高いと言う事だ」

「うん、まあ…」

 シルバーの説に納得しつつも、マノエの回答は歯切れが悪い。そんなマノエの立場を理解したシルバーは申し訳なさそうな声でそれでもマノエに頼んだ。

「マノエ殿、貴国の決まり事をとやかく言う気は無論むろんない。しかし今は非常事態だ。ここを、案内してはもらえぬか?」

「うん…」

 それでもまだ躊躇ためら仕草しぐさを見せたマノエだったが、元々が楽観的らっかんてきな性格らしく、二秒と待たずに決断を下したようだった。

「そうだよね、今はキイタ様の身の安全が第一だもんね。わかりました、じゃあ、こっちの道を行ってみましょ」

「助かる」

「ありがとう」

 シルバーと大地は口々にマノエに礼を言い、頭を下げた。

「いいっていいって。さ、ついてきて」

 照れたように両手を振って笑ったマノエは、二人の態度に気をよくしたのか率先そっせんして前に立つと、普段は進入がきびしく制限されていると言うその暗い廊下を進みだした。



 階段を下りきり地面に立ったココロは改めて目の前にそそり立つ巨木を見上げた。常識外れに大きい。見上げる先は大袈裟おおげさではなくその終わりを知る事が出来なかった。

 その太い幹は目をくらませる程の強い光を放っている。まぶしそうに眼を細めながらココロは巨木に近づいて行った。

 足を進めながら、ココロはある事に気が付いた。まぶしい程に周囲を照らし出すこの緑色の光は、あの荒野で自分と大地を襲った化け物達が発していたものと全く同じ色をしている。

 既にこの城の住民が全員死人である事に気が付いているココロにはこの巨木、あるいはそこから発せられる光とあの荒野の化け物達の間に密接な関係がある事はわかっていた。ただ、その関係性の内容まではわからなかった。

 更に足を進めたココロは、まばゆい中にもじょじょ々にその木の姿をとらえ始めた。地にしっかりと根を張っている、決して人工的に作られたものではなく間違いなく生きた植物である事。しかし大人数人が手をつないでも回り切れない程太いと思われた幹は、実は直径五㎝程度の何本もの枝が絡み合って形成されている事もわかった。

 絡み合った枝の奥から強烈な光を放っている。この光の源は、この絡み合った何百と言う枝の中に包み込まれるようにしてあるのだ。

(そこにいるの?)

 ココロは輝く巨木をにらむように見つめたまま、頭の中で問い掛けた。

(答えて、あなたはその中にいるの?)

(タスケテ…)

 頭の中にかすかな声が答える。かすかではあるが、今までで一番 明瞭めいりょうな音として響いた。

勿論もちろんよ、その為に私はここまで来たのだから)

 ココロは目をらさないまま声の主に答えた。

(どうしたらいいの?お願い教えて。私が助けてあげる。どうしたらあなたをそこから出してあげられるの?)

(…レ…)

(え?)

 急に声が聞こえなくなった事に不安を覚えたココロが更に必死に呼びかけると、今までとは違う声がそれに答えてきた。

(…エ…レ…、カ、エ…レ…)

(かえれ…、帰れ?帰れですって?)

(カエレ、イマスグ、タ、チ、サ、レ…)

 間違いない。つい先程まであれ程か細い声で助けを求めていた誰かは、突如とつじょ低い声でココロを追い出そうとし始めている。

「何を言っているの?」

 ココロは咄嗟とっさに声を出すと、更に数歩木に近づきその幹に手を掛けた。触れた感触は間違いなく生きた樹木そのものであった。

「帰れってどう言う事よ?あなたが私をここまで呼び寄せたのよ?」

(ウ…ソダ…、ソンナコトハ、シテイナイ…)

「だったら何故なぜ私はここにいるのよ?あなたが助けてと私に呼び掛けたからじゃない!」

 相手の突然の心変わりに慌てたココロは、なかしかりつけるように木に取りすがって叫んだ。

(チ、ガウ…、チガウ…ダレモ、ヨンデナンカイナイ…、ヨンデナンカイナイ…。デテイッテ、ニドトコナイデ、ボクニチカヅカナイデ、ボクヲミツケナイデ、ボクニカカワラナイデ、ボクニ…フレナイデ…ヤメテ、ヤメテボクヲホウッテオイテ、ホウッテオイテ…)

 次々と流れ込んでくる途切とぎれがちな言葉の波に、ココロはかっと体が熱くなるのを感じた。

「何を言っているの!?こにいるの?この中にいるのね?出てきなさい!出てきなさいよ!」

(ヤメテ、ボクニ、ハナシカケルノハ、ヤメテ…。ホウッテオイテ、ヒトリニシテオイテ…)

「そうはいかないわ!あなたは能力者なんでしょう?ANTIQUEに選ばれた能力者なんでしょう?」

 ココロがそう叫んだ途端とたん、頭の中に聞こえていた声は止んだ。それは、今後一切の会話を完全に拒否するかたくなな沈黙であった。

「何を黙っているの?あなたにだってわかっているはずよ!今、世界がどうなっているのか。今あなたが成すべき事は何か!」

 まるで牢屋ろうや格子越こうしごしに話すように、ココロは複雑に絡み合った枝の奥に向かって声を掛け続けた。

「お願いよ、そこから出てきて。あなたの力が必要なの…。お願い、私はあなたの仲間なの、仲間、なのよ…」

 それでも木はもう何も答えなかった。じょじょ々に絶望感がココロの胸を支配し始める。何を間違えたのだろう?新たな仲間を得る機会を永遠に失ったのではないかという恐怖が全身をめぐった。

「何とか言いなさいよ!」

 自棄気味やけぎみに叫んだココロの耳に再び声が届いた。しかしその声は今まで聞いていた能力者の声ではなかった。

「とうとう、見つけてしまったのですね」

 背後から掛けられたその言葉にココロは振り向いた。トンネルを抜けたココロが立ったテラス状の岩場に、今一組の男女が立っていた。

「マヌバラさん…」

 ココロがつぶやく。冷たい汗が額を流れ、ほほを伝った。女中頭のマヌバラと近衛このえ隊長のクロウスが表情のない目で、じっとココロを見下ろしていた。






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