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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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誓いの剣

●登場人物

・ガイ…雷のANTIQUEに選ばれた能力者。口が悪くがさつだが気のいい男。若くしてアスビティ公国特別行動騎馬隊の分隊長を務めるだけあり戦闘に関しては優秀。

・鎧騎士…ソローニーアの洞窟で突如キイタ達に襲い掛かって来た謎の鎧。その正体とは?



前回までのあらすじ

 ココロと大地を追いラディレンドルブルットへと侵入したシルバーは、御者のビルターや女中のマノエに案内され城の奥深くまで入り込む事に成功した。

 人の好さそうな彼らとの会話の中でシルバーはラディレンドルブルットの時が止まった時期を割り出し、この城に巣食うレヴレント達の攻略法を推理する。それと同時に遠い目をしながら故国とそこへ残して来た家族友人の身を案じるマノエの言葉に胸の詰まる想いを覚えるのだった。

 そんなシルバーの頭の中に謎のノイズが走る。ココロからのメッセージかと思うがそのノイズが何を言っているのまでは聞き取る事はできなかった。

 一方一足先に食堂に案内された大地は持ち前の話法を駆使しこの城を守る近衛隊の隊長クロウスと同じく副隊長のジーンの二人とすっかり打ち解けていた。

 しかし和やかに話す二人の顔が、アスビティ公国の領主ドナルの名を耳にした途端氷つく。その名は怨敵マウニールの皇太子と同じだと言う事であった。

 プレアーガの歴史を知らない大地の不用意な一言で場の雰囲気は一気に不穏なものへと変わるが、そこへマノエに案内されたシルバーが到着する。再会を喜び合う大地とシルバー。しかしその時ラディレンドルブルットの女中が顔色を変えて飛び込んで来た。彼女は叫んだ「キイタ様がいなくなられました!」と。







「まったく…」

 そんな声によろいの動きが止まった。キイタ、アクー、エイクの三人を突然襲った白銀のよろいは垂直に立ちふさがる岩壁を身軽に登り逃げ去った相手を追うつもりか、その下までやって来ていた。

 ゆっくりと左手を伸ばし岩壁に触れようとした時、背中からその声が聞こえたのだ。よろいは無言のまま振り返った。男が立っていた。真昼の太陽のように、輝くばかりの金色の髪を伸ばした若い男だった。

随分ずいぶんな悲鳴に怪我けがを押して来てみれば、こりゃ一体何だ?」

 ガイはあきれたような声でこちらを振り向いた鎧騎士よろいきしに向かって言った。よろいは上げかけた手を下ろし、ガイへと体を向けた。

「おー、大層たいそうなものをお持ちじゃないの」

 その右手ににぎられた鋭く鍛えられた剣を目にしたガイがおどけた声を出す。しかし、次の瞬間にはガイの表情は怒りにも似た真剣なものに変わり、低い声で言った。

「さあ、聞かせてもらおうか?一体、俺の仲間達をどこにやりやがった?」

 しかしよろいが口をく事はなかった。その代り右手に持った剣を振り上げると、ゆっくりとガイへと向かい近づいてきた。

「おい、ウナジュウ」

 ガイがつぶやいた瞬間ガイの足元に雷のANTIQUE、ウナジュウが現れた。その途端とたんそれが見えててでもいるかのようによろい)の動きが止まった。

「何だ?言っておくが俺は今 休憩中きゅうけいちゅうだからな?力なら貸さねえぞ」

「ああ、お前がグロッキーなのはわかってる。だから電撃の力を戻せとは言わねえ。すまねえがこの左腕だけどうにかならねえか?」

 ガイがそう言うと、ウナジュウは歯をのぞかせてうめいた。

「まったく人間 ごときが、何てANTIQUE使いが荒い奴だ!」

 いらついた声を出したウナジュウは一瞬でまばゆい光へと変わり、ガイの右手にめられた指輪へと吸い込まれるように姿を消した。次の瞬間、ただぶら下がっていただけの鋼鉄でできたガイの左腕が、ギシギシと音をたてながらひじの辺りから曲がり始めた。

「恩に着るぜぇ、ウナジュウ」

(長くはもたないぞガイ。三人の姿は見えない、無理せず余計な戦いは回避かいひするんだ!)

「そりゃ、あいつ次第だな」

 そう言ってガイは真正面に立つ銀色のよろいにらみつけた。ウナジュウが現れた時に動きを止めた相手は、今再び剣を掲げると戦闘の意思を見せた。

(長くもたねえのは俺も同じだ)

 重々しい音を響かせながらよろいが近づいてく来る。迎え撃つガイは雄叫おたけびを上げると、よろいに向かって走り出した。迎え撃つよろいの方も心なしか足音が早くなってきた。

 走りながらよろいは右手の剣を振り上げた。二人がぶつかる瞬間、よろいが無駄のない直線的な動きで振り上げた剣を、切っ先がガイの胸を切り裂く程度の距離で振り下ろした。

 しかしガイは右膝みぎひざを地面につくと、そのまますべり込むようにもう一歩相手の間合いに飛び込んだ。胸を狙った切っ先がガイの頭上へと落ちる。ガイは黒く光る鉄の義手を頭上にかかげた。

 ガツン!と鋼鉄同士が当たる音が天井に響く。真上から落とされた渾身こんしんの一撃を受け止めた瞬間、ガイの脳天からつま先まで電流のような衝撃が流れた。

 わずか一撃でびりびりと体中がしびれる。それでもガイは歯を食いしばり受けた左手をそのまま流し剣を払うと、右手に持っていた自分の剣を思い切り相手の首に叩き込んだ。

 とは言え、フェズヴェティノスとの戦いで既にボロボロになってしまった剣を抜いてはいなかった。分厚く頑丈がんじょうさやごと打ち付けたのだ。

 その衝撃によろいは左手に吹き飛ばされた。仰向あおむけにひっくり返ったよろいが立ち上がろうと身動きをした途端とたん、ガイは相手に飛び掛かりさやに納めたままの剣先で敵の喉元のどもとを突いた。それと同時に左足は相手の剣を強く踏みつけている。

「言え!三人はどこだ!どこへ行った!」

 ガイに組みかれたよろいはその見た目からは想像もできない柔軟じゅうなんさで右足を振り上げると、ガイの背中をしたたかにった。

「ぐあっ!?」

 背後からの強烈なりに前方につんのめったガイは、洞窟どうくつの壁に額を打ち付けた。

「痛ぇっ!痛えぞ!」

 すぐには目が開けられない程の衝撃に頭を二、三度振りながらガイは毒づいた。そのすきに立ち上がったよろいは、振り向き様に剣を振り下ろした。

(ガイ!来るぞ、よけろ!)

 頭の中に響いたウナジュウの声にハッとしたガイは相手も見ずに地を転がった。

「いたたたたたたた!」

 動くだけでも全身に強烈な痛みが走る。まだあちこちの骨が折れたままなのだから仕方がない。

「ひ~、畜生ちくしょう冗談じゃねえ。こんな体で伝説の騎士と一騎打いっきうちなんてこくにも程があるぜ」

 ガイの言葉に振り返ったままよろいの動きが止まった。ガイは肩で息をしながら痛みにえて立ち上がる。つえ代わりに地についた剣はガクガクと震えている。

「そうだろう?え?あんたのその白銀のよろいはマウニールの物だ。あんたはマウニール王国の騎士だな?」

 ぶつけた額が割れ、流れ出た血がガイの左目をふさいでいる。それでも不敵ふてきな笑いを浮かべながらガイは言った。

「あんたはこの洞窟どうくつに入ったアガスティアの王女…」

 そう言いかけるとよろいは問答無用とばかりに再びガイに向かって突進してきた。

「待て待て待て待て!話しを聞け!」

 体ごとぶつかってくる相手をさやに入ったままの剣で受け止める。その衝撃に再び体中に太い針を突き刺されたような痛みが襲いガイは悲鳴を上げた。

 言う事を聞かない体を無理に折り曲げ相手の力を逃がすと、よろいの腕をくぐるようにしてその背後に転がり出た。

「頼むから聞いてくれ!俺も同じだ!俺もあんたと同じマウニールの戦士だ!」

 再びよろいの動きが止まる。

「信じられないかもしれないが、あんたが戦場に立った時代からはるか未来の時代に生きる、あんた達マウニール人の血を引く兵士なんだ!」

 よろいきしんだ音を立てガイの方を向く。顔はかぶとに包まれ表情を見る事はできなかったが、剣を持った腕はダラリと下に降ろされていた。

「わ、わかってくれたか…。あんたは俺を知らないかもしれないが、俺はあんたの事をよく知っているぜ、試験にも出たからな…。あんたは…」

 ガイがそう言いかけた時だった。よろいは再びいやな音を立てながら剣を持ち上げた。

「え?な、何だよ、ちょっと待てって…」

(お前の話を聞く気はないようだぞ)

 ウナジュウが静かな声でガイに話し掛ける。

「何でだよ…」

あきらめて回避しろ、ガイ!)

「何でだよ!」

 ガイが叫ぶと同時に銀色のよろいはガシャガシャと音を立てながらガイに迫った。痛みをこらえて立ち上がったガイは寸でのところでよろいの剣をかわすと、そのまま四つんいになって逃げ出した。

 ゆっくりとよろいが振り向く。剣を高く振り上げると、まるでゴルフでもするように地を切り裂いた。砕かれた岩がつぶてとなってガイの背中を襲う。

「いててててててて!」

 一際ひときわ大きな一つが後頭部を直撃し、ガイは頭を抱えて地面の上をのたうち回った。そのすきに一気に間合いを詰めたよろいがガイの上に剣を振り下ろす。

(ガイ!)

「うりゃあっ!」

 気合い一閃いっせん、ガイは再びさやに納めたままの愛刀でこの一撃をはじき返した。

 また地面を転がって距離を取る。しかしよろいはすぐに追いかけてくる。必死に立ち上がったガイだったが、間を置く事のない相手の攻撃に防戦一方に追い込まれた。

「待てよ、待てって!話しを…ちょ、ちょっとぉ!待てってば!うわ!」

 下がり続けたガイは、足元の石につまづき派手に尻餅しりもちをついた。そこへ躊躇ちゅうちょなくよろいは剣を振り下ろす。

「話しを聞けっての!」

 そう叫びながらガイは顔の前で相手の剣を食い止めた。しかしよろいのパワーを一身に受けたガイは、全身を貫く激痛に又しても悲鳴を上げた。

 じりじりと上から押しつけてくるよろいの力にされ態勢がくずれる。相手の剣が肩に食い込むのも時間の問題だった。

「そ、そうだよな…そうだったよな。あんたにとっちゃ、敵も味方も関係ないんだったな。エミカ王女の祈りを邪魔をする奴は全部倒すと約束したんだもんなぁっ!?」

 ガイがそう叫んだ瞬間、何をしようと決してゆるむ事のなかったよろいの力が一瞬弱まるのを感じた。ガイはそのすきを逃さず相手の腹を足で押し戻すようにった。

 られた相手はは激しい音をたてて仰向あおむけにひっくり返った。ガイは肩で息をしながらゆっくりと立ち上がる。

「そうとも、あんたはこの洞窟どうくつの入り口に立ち、エミカ王女の祈りをさまたげる者があれば敵味方を問わず倒すと、そうオルテジアに言い残した。安心しな、オルテジアは無事に国へ帰ったぜ」

 ひっくり返ったままよろいは顔だけをガイに向け、じっとその話しを聞いているようだった。ガイは呼吸を荒くしながら尚も話そうとしたが、急激に襲い来る眩暈めまいに慌てて背後の壁に背を預けた。よろいがゆっくりと立ち上がるのをかすんだ視界の中で捕らえる。

「信じられないなら、あんたが信じるまでとことん付き合うぜ?」

挑発ちょうはつするなガイ。もう限界だ、いい加減に…)

「掛かって来いこの野郎!」

 ウナジュウの忠告を無視したガイが叫ぶと同時に、よろいは又してもガイに向かって走り寄ってきた。振り下ろされた剣をかわす。かすめた切っ先が切り取ったガイの髪の毛が飛び、差し込む陽にきらめき舞い散った。

 お互いに肩を寄せ、体の前で剣を合わせ力比べとなった。玉の汗を浮かべ、体を震わせながらガイが言う。

「まったく…、あんたの名前を忘れていたなんて俺もどうかしているぜ。なあ、ゲドマン」

 よろいの騎士がその顔をガイへと向ける。

「あんたはゲドマンだ。平和の為に敵国の王女と共に洞窟どうくつに残った伝説の騎士!」

 よろいの騎士は渾身こんしんの力を込めて上から押さえつけるガイの剣を跳ね上げた。すぐに袈裟懸けさがけに剣を振り下ろす。ガイも負けじとさやに入ったままの剣でこれを受けて立つ。

 二の太刀たち、三の太刀たち、四の太刀たち。ゲドマンの振るう剣を受ける度に樫材かしざいでできた強固なガイのさやが細かく割れ、周囲にその破片はへんき散らしていく。

「あんたは守ろうとした!エミカ王女を!王女の祈りを!国を!世界を!その平和を!」

 何度目かに振り下ろされたゲドマンの右からの太刀たちを受けた瞬間、ガイの剣はにぎっているつかだけを残して根元から折れ飛んだ。くるくると宙を舞うさやの中から砕け散った剣の破片はへんがザラザラと舞い飛んだ。

 ガイの剣を折って切り降ろされた切っ先はガイの左肩に強く当たった。鉄でできた義手をかすめる嫌な音と共に小さな火花が散る。ガイは全身の力を込めて左手を棍棒こんぼうのように振り回した。

 黒光りする鋼鉄のこぶしがゲドマンのこめかみにめり込むようにヒットした。かぶとを潰されたゲドマンが勢いよく後方へと吹っ飛んでいく。

「聞いてくれゲドマン、俺達の間であんたは英雄だ、伝説の騎士だ。何せ、史上最悪と言われたあの戦いを、収めたんだからな」

 ギシギシと聞こえる音を立ててゲドマンが起き上がろうとしている。ガイは刀身とうしんを失った剣のつかんだまま続けた。

「そう、戦いは収まった。あなたが守らなければならないものはもう何もない。王女の祈りは、届いたんだ」

 耳障みみざわりな音が止み、よろいの動きが止まった。

「戦争は終わった。世界は平和になり、そしてその平和は今も続いている。敵対していたマウニールとアガスティアは手を取り、どこにも負けない世界に誇れる平和な国を作った!あなた達が命を賭けて守り通した国で、あなた達が人生を賭けて望んだ平和を今俺達は謳歌おうかしている…。もう、戦いは終わったんだ」

 なかば身を起しかけていたよろいは、急に糸が切れたように仰向あおむけに倒れた。しばらくの間、洞窟どうくつの中にはガイの荒い呼吸音だけが響いた。最早もはや痛みすら感じなかった。体中が震え、胃の中のものが全て逆流してきそうな吐き気に襲われれるばかりだった。

(無茶しやがって。付き合いきれねえぞ!)

「へへ、悪ぃ、悪ぃ」

 ウナジュウの声にガイが答えた。その時だった。

「お…」

 仰向あおむけに倒れたまま動かなかったよろいが初めて声を上げた。

「お…おお…」

 首をゆっくりと振りながら上げるよろいの声は、嗚咽おえつだった。ゲドマンが泣いているのだ。

「王女の祈りは、届いたのか?」

 ガイは急に真面目まじめな顔になると、倒れたままのゲドマンを見てうなずいた。

「ああ」

「オ、オルテジアは、約束を守ったのだな?」

「そうだ。戦後オルテジアの書いた手記は彼の死んだ後に発表され、あなた達の事が我々の知るところとなった」

「オルテジア…、死んだのか?」

「ああ、だが寿命だ。彼は無事に国へ帰り戦後を迎えた。平和な世界で伴侶はんりょを見つけ、今も彼の子孫は同じ国で平和に暮らしている」

「おお、おお…。何と言う事だ、何と言う事だ…。この老いぼれは、ひとり置いて行かれたのか…。そうとも知らず、未だにここで王女を守ろうと…」

「いや、ゲドマンそうじゃない。エミカ王女もきっとまだこの洞窟どうくつにいるんだ。だから俺は、もう祈らなくてもいいんだと、王女にそう伝えてやりたいのさ」

「何と、王女は未だ平和の訪れを知らぬまま祈り続けていると言うのか?国へも、親の元へも帰れず…。それは…それは余りにむごい…」

「そうとも、もう解放されていいんだ。エミカ王女も、そして勿論もちろん、あなたも。伝説はもう、終わりにしよう」

 するとゲドマンは震える手でにぎっていた剣を美しい彫刻ちょうこくほどこさされた白いさやへと戻した。剣を収めると、今度は左手を頭上へ掲げた。その指先は行く手をはばむ大きな石壁を指している。

「できる事なら、最後まで王女に付き従いたかった…。しかし、私にはもう力も時間も残されてはいない…。頼めるか?未来の兄弟よ」

 かすれた声を上げるゲドマンに、ガイはふらつく足に力を込めて近づいて行った。

(ガイ、油断するな)

 ウナジュウがガイの身を案じ声を掛けてくる。ゲドマンにはその声が聞こえているかのように言った。

「安心しろ、未来の兄弟よ。私はもう行かねばならぬ…。この身が既に朽ち果てているのだと、知ってしまったのだからな。迎えが来る、そ、その前に…」

 その瞬間、今まで目の前に立ちふさがっていた石壁がまるで氷が溶けるように見る間に消えていった。

「こ、これは…」

「誰にも、祈りの邪魔をさせはせんと…そんな我らの想いに洞窟どうくつが答えたのだ…」

 どうやらソローニーアには呪いかまじないがかかっていたらしい。どおりで誰が入ってもエミカ王女に辿たどり着けないはずだった。

「王女を、頼む…」

 そう言われたガイはハッとしてゲドマンのそばにしゃがみ込んだ。

「ゲドマン!」

 そう叫ぶ内からゲドマンのよろいまとった体が光に包まれ始めた。

「ゲドマン!」

「私はこの剣に誓ったのだ…。王女を守り通し、皆が分かり合い、笑い合う事のできる世界を創るいしづえになるのだと…」

 ゲドマンはゆっくりと剣を持ち上げた。

「そう誓いをたて、この地に立ち続けた…。この剣を、振るい続けた…。平和の誓いを込めたこの剣をお前にたくそう。受けてくれるか、未来の騎士よ…」

 ガイは差し出された剣をゲドマンの手と共に静かににぎった。

「体に流れるマウニールの血に賭けて誓おう。伝説の剣を振るい、この身を平和の為にささげると。だから…」

 ゲドマンはただひたすらにガイの顔を見つめ続けた。かぶとかくされ表情は見えない。しかし、その目が自分を見つめている事はわかった。笑っているだろうか、泣いているのだろうか?

「だからゲドマン」

 ゲドマンの体を包む光はますます々強くなり、その姿は既に見えなくなっていた。

 やがてゲドマンを包む光はたくさんの小さな玉となり、美しく輝きながら虚空こくうへと消えていった。

「静かに、眠ってくれ…」

 光が昇り、やがて消えていった先を見上げながらガイは静かにつぶやいた。右手には白銀に光るマウニールの大剣がにぎられていた。ふと見れば、足元に主を失ったボロボロのよろいが一組残されていた。

 ガイはゆっくり立ち上がると、洞窟どうくつの奥に目を向けた。先程まで行く手をはばんでいた大壁は既になく、暗い道が少しづつ下りながら先へと続いていた。その先は闇に閉ざされ見る事は出来ない。

 この先にエミカ王女がいる。未だかつて誰一人見つける事ができなかった祈りの乙女が。そして恐らく、キイタやアクーもこの闇の先にいるはずだ。

 ガイは伝説の騎士ゲドマンにたくされた剣を腰に差すと、決意を固めたきびしい表情でその闇を一度 にらんだ。やがて一つ息を吐くと、痛む体にむちを打ちながら目の前の道を歩き始めた。
























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