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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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フェズヴェティノスの決意

●登場人物

フェズヴェティノス

・オヤシロサマ…フェズヴェティノスの現首領。その正体は?

・ハナ…一族の長であるオヤシロサマの孫娘で次期首領。

・タマ…オヤシロサマに仕える白の巫女。猫型獣人族。

・ヒカル…オヤシロサマに仕える黄色の巫女。正体は巨大な蟒蛇うわばみ

・ガウビ…フェズヴェティノスの作戦参謀。九本の美しい尾を持つ狐型獣人族。

・クウダン…預言が得意な牛型獣人族。恵まれた体格をした怪力の持ち主。

・ラプス…凶暴なオオグチ一族を統べる狼型獣人族。

・モリガノ…戦闘集団であるオウオソの民の長。烏型獣人族。


アテイル

・ダキルダ…竜の一族であるアテイルの斥候。旅の始めからココロ達につきまとう皮肉屋。


●前回までのあらすじ

 全勢力を上げ能力者達に襲い掛かるハナ率いるフェズヴェティノスの一団。仲間達を守るためたった一人正体を現したヒカルとの戦いに身を投じたガイは全身の骨を砕かれ瀕死ひんしの重傷を負う。

 からくもヒカルとの戦いを引き分けに持ち込んだガイは意識を失いかけた状態で馬にまたがり先に進んだ仲間達を追い始める。

 遅れを取るガイに狙いを定めたハナは全軍をガイ抹殺まっさつため出撃させるも、平野に走る謎の亀裂きれつを能力者全員がまたいだその時、その亀裂きれつから不思議な黒い光の壁が立ち上がり、追撃するフェズヴェティノス達を食い止める。

 黒い光の壁を生み出しフェズヴェティノス達を食い止めたのは何と、ココロ達を執拗しつように付け狙うアテイルの斥候せっこう、ダキルダであった。








「ラプス、奴は?」

 モリガノが静かな声でたずねる。ラプスは彼の顔を振り向きもせずに答えた。

「名は確かダキルダ。アテイルの斥候せっこうだ」

「アテイル…」

 ラプスの答えにハナがつぶやく。

「貴様!またしても我らの邪魔をする気か!」

 ラプスがハナを押しのけるように前に進み出た。その途端とたんダキルダが大きな声で叫ぶ。

「それ以上来るなと言っているのだ獣が!」

「貴様…」

「そのラインが何かわかるか?フェズヴェティノスの娘よ」

 ハナは何も言わず、ただ眉間みけんしわを寄せてダキルダを見た。ダキルダは口元をゆがめると、勝ちほこったように言った。

「国境だよ。君達が管轄かんかつするイーダスタ共和国はここまで。ここら先は我らアテイルが受け持つジルタラス共和国だ!」

 ダキルダの言葉にハッとしたハナは、もう一度足元に走る一筋の亀裂きれつを見つめた。

「国、境…」

「その通り。そのラインを超すと言う事は、すなわ領海りょうかい侵犯しんぱんすると言う事。我らアテイルはその行為を作戦決行の妨害をしようとする明確な意思表示と解釈する!」

 ダキルダの悪意のある物言いにハナはキっとした顔を向けた。その顔を見たダキルダはます々(ます)唇をゆがめ皮肉を込めた声で言った。

「ご苦労だったねフェズヴェティノスの諸君。ここからは我らアテイルに任せていただこう。どうやら能力者の一人も片づけられず、人間共の調略ちょうりゃくにもしくじったみたいじゃないか。どうぞしばらくはのんびりご休憩なさるがよろしかろう」

 歯ぎしりをするフェズヴェティノス達に向かい優雅ゆうがな仕草で両手を広げたダキルダは、にやついた笑顔を消さぬまま言った。

「おわかりいただけたかな?それではこれで失礼するよ、こちらもANTIQUE 討伐とうばつの準備で忙しいもので、いつまでも君達獣諸君の相手をしている暇はないのだよ」

「おのれぇ!」

 ダキルダが背を向けた途端とたん、その嘲笑ちょうしょうに激怒したラプスが国境を飛び越え襲い掛かった。それに気が付いたダキルダは振り向き様、迫りくるラプスに右手を向けた。

 その手から生み出された黒い球体がラプスの体を包みこんだかと思うと、ラプスの体は一瞬にして消え失せた。次の瞬間、彼の体は仲間のはるか後方の上空に現れた。宙に放り出されたラプスの体は、そのまま真っ逆さまに地面に叩きつけられる。

「ラプス!」

「ラプス様!」

 クウダンとラプスの部下であるオオグチ達が叫ぶ。一度ラプスに目を向けたハナが、もう一度ダキルダを見た。未だに右手を上げたままのダキルダは静かな口調で言った。。

「我々を甘く見ない方がいい、フェズヴェティノスの諸君。我らの邪魔をすれば容赦ようしゃなく君達を潰す…。これは、おどしではない」

 そうすごむダキルダの顔から、笑みはもう消えていた

「面白れぇ!やれるもんならやってもらおうじゃねえか!」

 そう叫んだのはオウオソ十一騎が一人、ゲンシキであった。ゲンシキは背中の剣を抜くと軽々と国境を飛び越えダキルダに迫った。

「待て、ゲンシキ!」

 同じくオウオソのテンが叫ぶが、切り込み隊長のゲンシキにつられ数人のオウオソが彼に続いて黒い翼を広げた。

「ふっ…。どいつもこいつも、単細胞が…」

 襲い掛かってくるオウオソの集団から逃げようともせずダキルダはたたずんでいた。やがて先陣せんじんをきったゲンシキの剣が頭上から振り下ろされようとしたその時、ダキルダの体は黒い球体に包まれ、一瞬の内に彼らの前から姿を消した。

 空を切ったゲンシキの剣がその切っ先で冷たい地面を叩く。その音がむなしく平地に響き渡った。気がつけばダキルダは元より、あと少しで手の届くはずであった能力者達の姿も遠く見えなくなっていた。

「ハナ様、どうなさいますか?」

 背後から近づいたモリガノが、小さくいてくる。

「ハナ…」

「ハナちゃん」

 ぐったりとした表情で見上げてくるヒカルと、泣き出しそうな顔のタマもハナの名を呼んだ。

 二人の顔を見たハナは、次に自分を取り囲む仲間達の顔を見た。背後でクウダンや同族のオオグチ達に助け起こされているラプスを見る。それからもう一度ヒカルとタマを見たハナは突然、にっこりと笑った。

「テヘっ!」

「ハ、ハナちゃん?」

「テヘって、お前…」

 ハナの予想外の反応に、タマとヒカルが戸惑とまどった声を出す。

「どうするって、そんなの決まってんじゃん。やだなぁ、こんなトコでやめれる訳ないっしょぉ!」

 自分を見つめるヒカルとタマに向かいハナは元気に答えた。

「やったー!そうこなくっちゃ!」

「やれやれ…」

 ハナの底抜けに明るい声に、タマが歓喜かんきの声を上げる。地面に胡坐あぐらをかいたヒカルは、ため息をついて前髪をき上げた。

 と、その時 突如とつじょ上空にまぶしい光が現れた。青白く巨大な光の玉は、驚いた顔でそれを見上げるハナ達の前にゆっくりと降下し始め、やがて音もなく地に降り立った。

 地面につくなりその光の玉は急激に小さくなり、人ひとり程の大きさになってその場にとどまった。

「オヤシロサマ!」

 ハナ以外、その場にいたすべてのフェズヴェティノスがひざをつき、こうべれた。

「オ、オヤシロサマ~」

 その後ろから泣きそうな声を上げて走ってくるのは、人間の姿をしたガウビであった。

「ガウビ!」

 息を切らせてけ寄ってきた彼に向かいハナが声を上げる。

「ああ、よかったみんないた!ようやく追いつきました!」

 ひざに両手をついたガウビが、肩で息をしながら言った。

「ハナ…」

 青白い光のかたまりがハナの名を呼んだ。ガウビの登場に顔を上げていたフェズヴェティノス達がその声に再び頭を下げる。

「じっちゃん…」

「ハナ。お前はこの先どうするつもりだ?」

「うん、今みんなとも話してたんだけどぉ、こんなとこじゃやめらんないし、ANTIQUEおっかけよーって」

 すると、オヤシロサマを包む青白い光は見る間に小さくなり、やがて完全に消え失せた。じゃり、っと岩を踏んでハナの前にオヤシロサマが進み出る。大きな木のつえをついたオヤシロサマは、相当によわいを重ねた一匹の狸の姿をしていた。

「ANTIQUEを追って、それでどうする?」

「どうする?」

 正体を現したオヤシロサマの質問にハナがき返す。

「戦うつもりか?」

 するとハナは急に自信のない顔になり、頭をき始めた。

「う、う~~~~~ん。やっぱ、そっかなぁ?あたしまだまだ虚無の世界には戻りたくないしぃ、人と一緒に色々したいんだよね。踊ったり、歌ったり、マルキューで買い物したり…。ANTIQUEが私達がここにいるのを許さないって言うんなら、やっぱやっつけなきゃダメっしょ?」

「ああ、渋谷のマルキュー!ハナさんはことのほか地球がお気に入りですからねえ」

 ガウビが口を挟むと、先程までハナを抱え能力者達を追って飛んでいたオウオソがふと思い出したようにつぶやいた。

「そう言えば…、土の能力者は確か地球人…」

 その言葉にハナが食いついた。

「え!うそ、マジで!?」

「え、ええ、多分…」

 ハナの勢いに急に自信をなくしたオウオソがモゴモゴと言葉をにごす。彼はイーダスタの森の中でシルバーに倒されたコクヤと共に最初に能力者達に闘いを挑んだ一団にいた。大地に「まんまカラス天狗」、と言われひるんだ内の一人であったのだ。

「マジかー!土の能力者、地球の人間だったんだ―!」

 ハナは急に目をキラキラと輝かせ始めた。

「しかしハナ、シュベルはその人間を皆殺しにせよと言っている」

 うっとりとしたように顔をほころばせるハナに向かってオヤシロサマが言うと、ハナは急に鼻白んだ顔になった。

「シュベル?ああ、シュベルねえ…。まあそれはちと、あたしにはカンケーないっつう事で」

「しかしそれではシュベル様の怒りを買う事に…」

 そばで話しを聞いていたガウビが気弱な声で割り込んでくる。

「怒らせておけば~?」

「そんな、ハナさん…」

わしはな、ハナ」

 ハナとガウビのやり取りを無視するようにオヤシロサマが低い声で話し始めた。ハナは祖父の顔を見つめる。

わしは、このまま虚無へ帰ってもよいと思っておる」

 オヤシロサマの言葉に頭を下げていたフェズヴェティノス達からざわめきがれる。

「何言ってんのじっちゃん、ぼけるにはまだ早いよー?」

わしは虚無の世界でただ漫然まんぜん揺蕩たゆたう生活をそれ程嫌っている訳でもないのじゃ。のうガウビ、お前はどうじゃ?」

「え?」

 突然振られたガウビは狼狽うろたえた声を出しながらも必死に考えた。

「ま、まあ…。そう言われれば確かにそんなに不便はございませんでしたが…」

「何言ってんのじっちゃん!」

 オヤシロサマに迎合げいごうしようとしたガウビの言葉をすべて言わせずにハナが叫んだ。

「冗談でしょ!あたしは嫌!絶対に嫌だかんね!あんな退屈な世界になんかまだ戻りたくなんかないんだから!」

 必死に訴える孫娘の顔を見たオヤシロサマは静かに微笑んだ。長くれたひげれる。

「そうか…。しかし、お前が好きだという地球には、かつてのような我らの居場所はないぞ?」

「そんな事ないし!人の中にまぎれて生きてるのとかちょー楽しいし!まだ帰りたくない!帰りたくない!帰りたくないの!」

 いつしか必死に叫ぶハナの大きな目からポタポタと涙がこぼれ、眼鏡をらしていた。

「ハナ…」

 つぶやいたヒカルがまだ言う事を聞かない両足に力を込めて立ち上がると、ハナに近づきそっとその頭を抱えた。

「ハナは、人が好きなんだもんな?」

 ヒカルが優しい声で言うと、ハナは両手で涙をぬぐいながらまくし立てた。

「そんなのわかんない!わかんないよ!人が好きかどうかなんてわかんないけど、まだ帰りたくない!もっとここにいたいの!」

「わかった、わかったよ」

「帰りたくないよ~~~~」

 ハナはついにヒカルの胸に顔をうずめて大声で泣きじゃくり始めた。ヒカルはそんなハナをなだめる事もせず、ただ黙って彼女の頭を優しくでていた。いつの間にか少女の姿に戻ったタマも、ヒカルと一緒にハナの肩を抱いていた。

「実を言うとな…」

 ハナの泣き声が収まってきたのを見たオヤシロサマが再び口を開いた。全員が彼の顔を見つめ、次の言葉を待った。

いつわりであったとは言え、あの村で過ごしている間、わしは楽しくて仕方がなかった」

「…え?」

 ハナが真っ赤に泣きはらした目を上げる。

「人と共に生き、人を導く真似事まねごとをしながら、昔、人の生活の中に生きていた頃の事を思い出してなぁ…。いつしか本当に、あの村の人々を導いてやりたいと、そんな風に思うようになっておった…」

「じっちゃん…」

 オヤシロサマはいつくしむような目でハナの顔を見た。

「今の地球にわしのいる場所はない…。しかし、ヤック村のような所がこの広い宇宙の中にまだあるのだとしたら…。せっかくじゃ、もう一度そんな居心地いごこちのよい場所を探してみるのも悪くないと思うておる」

「そんな所、もうなかったらどおすんの?」

 しゃくりあげながらハナが切れ切れな言葉でたずねると、オヤシロサマはます々(ます)笑顔になって答えた。

「そん時は、躊躇ためらう事なく虚無へ帰る」

「………そっか………」

 しばらくの沈黙の後、ハナが小さくつぶやいた。

「でもあたしはヤ。まだこの世界にこだわる。じっちゃんが何と言おうが、あたしはANTIQUEを追っかける」

「それを止める事はわしにはできまい」

「ちょ!オヤシロサマは、ここでハナさんと別れるとおっしゃられるのですか!?」

 ガウビが飛び出さんばかりに目を広げて叫ぶ。

「シュベルの思惑おもわくとは言え、こうしてもう一度この世界にやって来る事ができたんじゃ。そのシュベルに義理立てする気はわしにはない。せいぜい、それぞれが好きに過ごせばよかろう」

「そ、そんな…」

「お前は、どうするのじゃ?」

「え…」

 かれたガウビはそう言ったまま固まったように押し黙った。

「やられっぱなしははなはだ不本意ではあるが、俺はオヤシロサマが行くところどこまでもおともする覚悟」

 ガウビが返答にきゅうしていると、真っ先に言ったのはクウダンであった。

「この世界だろうが虚無の世界だろうが、オヤシロサマに付き従います」

「そうか」

 クウダンの言葉にオヤシロサマが満足そうな声を出す。

「あ…」

 クウダンに先を越され返答のタイミングをのがしたガウビは、助けを求めるようにハナの顔を見た。

「何よ?」

 そんなガウビにハナが冷たい声を出す。

「あ、や、その…」

「あんた戦う気あんの?」

「そ…あ、い、いいえ」

「じゃあ行きなよ」

「ハ、ハナさん…」

「じっちゃんの面倒見てあげてよ」

「…ハナさん…」

「頼んだかんね」

 そっぽを向いたままハナが言うと、ガウビはがっくりと項垂うなだれ、ハナに背を向けた。

「オヤシロサマ。このガウビ、どこまでもおともいたします」

「結構。では早速、各地に散らばった仲間を集めながら最適の地を探す旅に出るかのぉ」

 ハナはそっとヒカルの手を押しのけると国境のラインに向かって一歩足を進めた。

「ハナ…」

「ヒカルちゃん、タマちゃんも…。二人ともじっちゃんと一緒に行って。こっからはほら、なんつーか、あたしの勝手で行く旅っつーか、ね?」

 ハナが言うのを聞いたヒカルとタマは目を見合わせるとニヤリと笑い、二人 そろってハナの隣に並んだ。

「あたしがいなきゃ、だれがハナの面倒を見るんだよ?」

「ヒカルちゃん…」

「私達三人 そろってシキでしょ?」

「タマちゃん…」

 二人の笑顔に見つめられたハナの顔にも笑顔があふれた。

「お嬢、俺も行くぜ」

 そう言ったのはラプスだった。

「オヤシロサマには申し訳ねえが、こんな所でやめられねえのは俺も同じだ。我らオオグチの一族はお嬢に従う!」

「こりゃ心強いや」

 タマが茶化ちゃかしたように言う。

「大将、我らは?」

 成り行きを見ていたオウオソのジンナイが口を開こうとしないモリガノの顔を見て聞いた。モリガノはジンナイの質問を無視するようにハナに声を掛けた。

「ハナ様…」

「ん?なぁに?」

「一つ確認しておきたい。この先、我らは何者と戦うのでしょうか?」

「へ?そりゃあ、だって。ANTIQUEでしょう?」

「できますか?ハナ様と共にステージで踊った娘達、地球から来たと言う土の能力者…。彼らを相手にハナ様は最後まで確信を持って戦い抜く事ができますか?」

 ハナの脳裏にココロの笑顔が浮かぶ。


(私達、友達になれるはずでしょう?)


 そう言ったココロの声も同時に思い出された。

「いかがでしょう?」

 モリガノが重ねて聞いた途端とたん、ハナは怒った声で言い返してきた。

「もう!お前はいっつもそうやって難しい事ばかり聞くんだから!だからモリガノ嫌いよ!」

「それは構いませんが、お覚悟だけはお聞きかせ願いたい」

「わかんないよ!わかりません!わかんないよ~だ!」

「お、お嬢?」

 ラプスも戸惑とまどった声を出す。

「ANTIQUE?シュベル?それともアテイル?誰でもいいよ、もお!結局あたしが楽しいのを邪魔しようとした奴が敵!それだけ!」

 モリガノが静かに笑った。

「どうだゲンシキ!このお方は誰であろうと目の前に立ちふさがる者こそが敵とおっしゃっておられる」

 モリガノに名指しされたゲンシキは迷う事なく即答した。

「とにかく目の前に現れた奴を叩き切る!非常に気に入りましたぁ!」

「テン!ジンナイ!ゲンシキ!ハクザサ!アカツキ!ウンリュウ!クロキリ!コウガ!ミドリマル!サトリ!」

 名を呼ばれたオウオソ十人は、素早くモリガノの近くへ集まった。それを確認したモリガノはハナを振り返ると言った。

「我らオウオソの民 精鋭せいえい十一騎…。まだ、闘い足りぬ。おともいたす」

「はいはい、お好きにどーぞ」

 ハナは、ぷいっとモリガノに背を向けた。そんなハナの仕草にヒカルとタマがクスリと笑う。本当はうれしいくせに、口には出さなくとも二人の笑顔がそう言っていた。

「しかし大将、他の者共はどうしたら…」

 テンが指名されなかった他のオウオソ達の事を心配して聞いてきた。

「テン、お前はクウダンとガウビの二人だけにオヤシロサマを守れとでも言うつもりか?」

「あ!ああ、これは私とした事が…、考えがいたりませんでした。よし、大将に名前を呼ばれた者以外はガウビ殿、モリガノ殿と共にオヤシロサマをお守りし共に参れ!」

 テンの指令にオウオソ達が一斉に頭を下げ、承知の意を示した。

「よし、じゃあ行こう。私達は私達の手で自分達の居場所を見つけ出してみせようじゃない!」

 そう言うとハナははるか闇に沈む地平を見つめた。その両隣には同じく決意の表情で前方を見据みすえるヒカルとタマがいた。

 こうして三種の魔族の一つ、フェズヴェティノスの一族は少数のANTIQUE追撃隊を残し、この闘いから身を退く決意をした。

 しかし、少数と言えどその布陣ふじんは強力であった。その利を活かし密やかに襲い来るとすれば、ココロ達能力者にとって何よりの脅威きょういとなり得る一団であった。










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