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ANTIQUE  作者: OOK&YOK
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総力戦

●登場人物

ANTIQUE

・ココロ…始まりの存在のバディに選ばれた少女。全てのANTIQUEを集める事ができる唯一の存在。

・吉田大地…土の能力を手に入れた地球の少年。戦いは不慣れだが持ち前の情熱と知識で魔族と戦う。

・シルバー…鋼の能力者。戦いの場にあっては常にリーダーシップを発揮する頼れる存在。

・キイタ…火の能力者。体の小さな少女で戦闘経験は少ないが、最も強力な火のANTIQUEを操る。

・ガイ…雷の能力者。お調子者だが戦闘経験が豊富。義手である左腕から電撃を繰り出し敵を打ち倒す。

・アクー…水の能力者。驚異的な身体能力と弓の腕を持つ。そのうえ大地にも負けない知性派の戦士。


フェズヴェティノス

・ハナ…フェズヴェティノスの長であるオヤシロサマの孫娘。フェズヴェティノスの次期首領。

・タマ…オヤシロサマに仕える白の巫女。普段は色白黒髪の妹キャラで通っている。

・ヒカル…同じく黄色の巫女。美しい見た目に反し、いつも気怠そうにくわえたばこを吹かしている。

・クウダン…預言の得意なフェズヴェティノス。怪力の持ち主。

・ラプス…凶暴なオオグチ一族を束ねる長。

・モリガノ…戦闘集団オウオソの民の大将。



●前回までのあらすじ

 ココロが助け出そうとしたハナの正体はフェズヴェティノスの長オヤシロサマの孫娘、宿敵フェズヴェティノスの次期首領であった。

 その現実にショックを受けながらも始まってしまったフェズヴェティノスとの戦闘にココロはキイタと共に馬をり、夜の森を走り抜けた。

 大地、シルバー、ガイ、アクーの四人も始まりの存在のバディであるココロを守ろうと必死にそれぞれの能力を活かしフェズヴェティノスに立ち向かっていく。








 アクーに助けられたココロとキイタはただひたすらに馬をっていた。そんな二人の前に、美しい髪をなびかせてたたずむ一人の少女が現れた。シキの一人、黄色の巫女と名乗っていたヒカルだ。

「キイタ!」

 ココロに呼ばれたキイタもヒカルの存在に気が付いた。

「フェルディ!」

 キイタの声に応えるように彼女の右耳についたイヤリングが赤く光を放ち始める。同時にその右手にメラメラと炎が燃え上がった。

「まったく…。面倒めんどうったらありゃしない」

 気怠けだるそうにつぶやいたヒカルはくわえていたタバコを地面に吐き捨てると、迫りくるココロ達に体を向けた。その途端とたん、ガイの放つ電光にも似た金色の光が彼女の体を包み込んだ。



 ココロ達を追って走り続ける大地とシルバーの目に、地をう一頭の巨大な獣の背中が見えてきた。その前方に、そいつから逃げるように走るアクーの姿も見える。

「アクーゥ!」

 大地が叫んだ。その声にアクーとアクーを追っていたタマが同時に振り向いた。見れば大地の乗る馬はもう目の前まで迫っていた。

 アクーはすぐさま地をると、見事に疾走しっそうする馬の背に乗った。大地のる馬は速度を落とす事なくタマの脇をすり抜けていく。

「化け猫、って訳か」

 追い抜かす刹那せつな、獣人化したタマの姿を目にした大地はそんなをつぶやきをこぼし、なぜかニヤリと笑みを浮かべた。

 自分を抜き去って走る馬に目をうばわれていたタマに後方からシルバーが襲い掛かる。大きく振るわれた鋼の剣を巨大な爪で受け止めたものの、その一撃でタマの体は大きくね飛ばされ地をすべるように転がった。攻撃を仕掛けたシルバーはそのままとどめも刺さずにけ抜けて行く。

「痛ぁ~~~~~い」

 地面に座り込んだタマは体中にできたり傷をめ始めた。

「もう!タマちゃん何やってんの!」

 オウオソに抱えられたハナが上空から大声で叫ぶ。

「だってぇ~~~」

 しかられたタマは泣きべそをかいている。上空から戦況せんきょうを見下ろしていたハナはANTIQUE達の動きを目で追った。

 先頭を行くココロとキイタの前には今ヒカルが立ちふさがっている。その後ろには先程地面を叩き割った、恐らくは土の能力者。それと一緒にいるのはアクーと名乗る水の能力者だ。そのすぐ後ろにタマを吹き飛ばした銀髪の男がついている。

 やや後方に、金色の髪をなびかせ走りくるのは雷の能力者だ。最も遅れていたこの男も間もなく左翼からココロ達に追いつこうとしているのがわかる。

 もう一度ココロ達に目を向けたハナは光を放っているヒカルの後方の地面に長く横たわる一本の亀裂きれつを見た。

「何だろ、あれ?」

 奇妙な亀裂きれつを不思議に思ったハナであったが、その時益ますます々強くなりだしたヒカルの発する光に目を伏せた。



「何て事…」

「これが、ヒカルちゃんの正体?」

 ココロとキイタは目の前に立ち上がったものを見上げ愕然がくぜんとした。目を射るようなまばゆい光が消えた後、そこには一匹の巨大な蛇が鎌首かまくびを持ち上げていた。

 その体は美しいまでに黄金色こがねいろの輝きを発しており、長い舌を忙し気に出したり引っ込めたりしながら二人を見下ろしている。首なのか、胸なのか、二人に見せた体の裏側がうねうねと気味悪くうごめいいている。

 やがて巨大な黄金の蛇は、大きく口を開くと二人を馬ごと一飲みにしようとするかのように少し身を引いた。

「ヒカルちゃん、危ない!」

 上空からその様子ようすを見ていたハナが叫んだが、遅かった。後方から飛んできた一本の矢が大蛇の喉元のどもとに深々と突き刺さった。大蛇の体が一瞬ぐらりと大きくれる。

「ココロ!走れぇ―!」

 馬をあやつる大地が叫びながら突っ込んで来る。その背後でれる馬の背に立ったアクーが次の矢を構えていた。

 一瞬そちらを見たココロは意を決したように大蛇の脇をすり抜け更に前に向かって走り始めた。大地もその後に続く。大きく頭を振った大蛇に向け、アクーが二本目の矢を射た。

 痛みと怒りに大蛇が大きな口を開ける。そこへシルバーの剣が振るわれた。体を刻まれる痛みに大蛇が振り向く。銀色の髪を乱し挑みかかる男を見つけた大蛇は、大きく口を開けて威嚇いかくの声を発した。

 その途端とたん、大蛇の体は再びまばゆい光を発し始めた。それに応えるように周囲の地面が割れ、巨大な岩が宙に浮き上がり始める。

「これは…!」

 どうやらヒカルには念動力の能力が備わっているようであった。突如とつじょ発動されたその能力をの当たりにしたシルバーが驚きに思わず馬の足を止める。

 浮き上がった岩石は狙いを定めてシルバーに襲い掛かった。迫る岩の一つが、今まさにシルバーの体を押しつぶそうとしたその時、大きな叫び声と共に剣を抜いたガイがシルバーに体当たりをした。

 ウナジュウの宿る鋼鉄の左腕で大岩を受けたガイは馬ごと地に倒されたがすぐさま起き上がると、一人巨大な蛇に向かい剣を振り上げた。

 その体は目の前の大蛇に負けず全身を金色の光に包み込んでいた。大蛇はもたげた鎌首かまくびを今度こそ目の前の男に向け振り下ろした。

 ガイは横に飛びながら頭上から迫る巨大な牙をかわした。地面をんだ大蛇はそのまま頭から地にもぐり姿を消す。

「シルバー!行け!早くココロ様を!」

「しかし!」

「いいから早く!」

「すぐに追いつけ!命令だ!」

 そう言うとシルバーはガイを残し馬を走らせた。

「いつまでそうやって隠れてる気だ、出て来いこの野郎!」

 ガイが叫ぶとその足元が大きく割れ、地面の下から大蛇が飛び出してきた。

「あ!」

 一瞬のすきを突かれたガイに、巨大な蛇があっという間に巻き付いた。

「ヒカルちゃんナ――――イス!」

 その闘いを見ていたハナが叫ぶが、彼女を抱え飛ぶオウオソがつぶやいた。

「あれは、まずいな…」

「え?」

 大蛇にからめとられたガイの体は地面を離れ宙に浮いた。強力にめ付ける力に体中の骨がくだかれる音が聞こえてくる。

「ぐふっ!」

 思わず出たき込むような声と共にガイの口から鮮血が飛び散った。完全にガイを捕らえたヒカルは、ゆっくりと口を開けると頭からガイを丸飲みにしようと近づいてきた。

 蒼白そうはくな顔で近づいてくる大蛇の口を見上げながら、ガイは不敵な笑いを浮かべていた。

「あんた、黄色い巫女さんだよな?しいなあ、断然、俺様の好みだったのによぉ」

 言うなりガイは全力で生み出した電流を相手の体内に流し込んだ。周囲の闇を一掃いっそうする強烈な光があふれ出し、その輝きの中でガイの体を巻き込んだ大蛇が黒々としたシルエットとなって浮かび上がる。

 大蛇の姿となったヒカルは苦しみにのたうち、体を震わせ暴れ狂ったがガイは電流を流すのをやめなかった。

 オオグチとクウダンとの闘いの中で電流への耐性たいせいがその体の大きさに比例する事は学んだ。だがそれ以前に苦しむヒカルがガイの体を離そうとしなかった。いや、それどころかガイの体をめ付ける力は更に強くなっていた。

 やがてガイの意識は急激に薄れていった。呼吸ができず、四肢ししの感覚がまたたく間に失われていくのがわかる。

 ガイが消えかかる意識の中で今度こそ死を覚悟した時、不意に体をめ付けるヒカルの力がゆるんだ。

 巨大な音を立てて地にくずれ落ちた大蛇の体は、薄い光を放ちながら元の美しい娘へと姿を変えていく。ほんの一瞬、意識を失っていたヒカルがハッとして顔を上げると、目の前に剣を支えに立ち上がっている雷の能力者が自分を見下ろしていた。

 このままではられる、そう思ったが体はまったく動かなかった。ヒカルはここでANTIQUEの軍門に下る事を覚悟した。

 その時、雷の能力者の口から、ふっと息を吐くような笑いがれた。

「まったく、美人だなぁ…。そんな顔されちゃ、切る事も、できやしねえ…」

 口の周りを自らの血で真っ赤に染めたガイはそんな不敵な台詞せりふを吐いたが、正直立っているのがやっとの状態であった。やがて悔しそうに自分を見上げるヒカルから目をらし、フラフラと歩み始めた。

「め、命令だからな…、行かなきゃ…」

 まっすぐ歩いているつもりでも視界が右へ左へと大きくらぐ。そんなガイの目に、自分を待つように静かにたたずむ一頭の馬の姿が映った。ガイは力を振り絞って馬に向かって歩いた。

 ようやく馬のくつわつかむと、優しく下方にそれを引き馬を座らせた。ガイはい上がるように馬の背にまたがると、渾身こんしんの力を込めてシルバーの後を追い始めた。

「待て…待て!このような屈辱くつじょくを…、受けたままで、いられる、ものか…」

 去っていくガイの背中をにらみつけたままヒカルは必死に立ち上がろうとした。足が冗談のようにガクガクと震え、かろうじて身を起こしてもまたすぐに倒れこんでしまう。

 何度目か地面に手をつきかけた時、ヒカルの体がふっと浮き上がった。後方から突進してきたクウダンが軽々とその体を腕の中に抱き込んでいた。

「ク、クウダン…」

 ヒカルを片腕に抱きかかえたままクウダンは先を行くANTIQUEの能力者達を追い走り続けた。

「追いつけば、まだ戦う力は残っているか?」

 前をにらみつけたままクウダンがたずねる。

「当たり前だ…。雷のANTIQUE…。奴だけは、許さん!」

「いい根性だ!」

 共にガイに痛めつけられた者同士、ここで追跡をやめる気はないようであった。ヒカルを抱え走るクウダンの横にタマが追いついてくる。

「奴らは我らの獲物えもの!」

 更にラプスを先頭に十数匹のオオグチ達がその列に加わる。

「早く追いついて!」

「お任せを!」

 ハナの命令に、彼女を抱き飛翔するオウオソが答える。ココロ、キイタを先頭に大地とアクー、やや遅れてその後を追うシルバーが後ろを振り返る。

 馬の背で前屈まえかがみに体を折ったガイがついてくる。しかし意識があるのかないのか、顔を上げる事もせず、ただかろうじて右手だけは手綱たづなにぎっていた。

「ガイ…!」

 しかし、そんなガイを救出に向かう事は不可能であった。弱々しく馬の背にられるガイの後ろ、地面と空の両方から無数のフェズヴェティノスが追いかけてくるのが見えたからだ。

 追いかけるフェズヴェティノスも必死の形相ぎょうそうをしていた。能力者に対し辛酸しんさんめ続けた彼らなりに、ここでANTIQUEを滅ぼそうと総力をかたむけている事がわかる。

 あまりに多勢たぜい無勢ぶぜい。シルバーはこの場においてガイ、あるいは自分をも含め一人、二人程度の脱落はやむを得ないのではないかと覚悟さえした。

 仮にそうなったとしても、その被害は最小限にとどめなくてはならない。そして何より、例え誰が倒れようとも始まりの存在たるココロだけは何としてもこの窮地きゅうちから脱してもらわなくてはならなかった。

「あ…」

 上空から能力者達を追跡するハナが声を上げる。逃げる能力者達の先頭を行くココロ、そのすぐ後ろについた大地の馬が今、先程見えた横に走る亀裂をまたいだのだ。

 しかし、だからと言って状況が変わる訳ではない。イーダスタから隣国へつながる果ての見えない岩盤でできた平地が続いている事に違いはなかった。

 夜はまだ明けない。星の輝く空を渡りいま少しで能力者に追いつく、そんな確信を得たハナは自らも戦う覚悟を決めた。

 やがて銀色の髪をした能力者が亀裂をまたぐ。ヒカルの攻撃を受け、ぐったりとした雷の能力者を乗せた馬も、それよりだいぶ遅れて今その亀裂を渡った。

「雷の能力者が遅れている!あいつを捕らえて!」

 ガイの背中を指さしながらハナが指示を出す。せめて一人だけでも息の根を止めなくては。このままおめおめと能力者全員を逃がす訳にはいかなかった。

「うおっ!」

 その時、ハナを抱え飛ぶオウオソが突然大きな声を出した。それと同時に急制動きゅうせいどうがかかり、彼の腕の中でハナの体は前のめりに吹っ飛びそうになった。

「きゃあっ!?」

 ハナは悲鳴を上げ必死にオウオソの腕にしがみつく。オウオソが驚いたのも無理はない、彼の行く手をはばむように突如とつじょ光の壁が立ち上がったのだ。

 方々で一緒に飛んでいたオウオソ達が同じように声を上げ制止したのがわかる。眼下では地を走っていた仲間達も次々と足を止めている。全員が戸惑とまどっているのがわかった。

 その光の壁は、天に輝くオーロラのようにゆらゆらと光りながられていた。しかしその色は黒い布を向こうが透けて見える程に引き延ばしたようで、決して美しいものではなかった。

「降りて」

 ハナが空中で制止したままのオウオソに命じた。

「はっ」

 ハナを抱いたオウオソが静かに地に降り立つと、同じく空中にいた他のオウオソ達も次々と降下をはじめ、ハナの周りへと着地した。

 クウダンがそっとヒカルを地面に降ろす。まだ自力で立ち上がれないヒカルはそのまま地に座り込んだ。タマは四ついのままれる光の壁の前をうなり声を上げながら右へ左へウロウロと行きつ戻りつをり返している。

 ラプス達オオグチ一族も突然現れた正体不明の壁に戸惑とまどい、ただそれを見つめていた。

「これは…、一体?」

 オウオソの手から離れたハナはゆっくりと光の壁に近づくと、そっと右手を伸ばした。

「お嬢!」

「ハナ様!」

 ハナの行動に、ラプスとモリガノが同時に警告の声を発する。その声にハナはびくっと肩を揺らし、一度手を引いた。

「大丈夫」

 自分に言い聞かせるようにつぶやいたハナは、気を取り直すともう一度その壁に向かって手を伸ばした。伸ばされたハナの指先があとほんの数ミリで壁に触れようとした時、その壁は現れた時と同じく一瞬にして弾けるように消え失せた。

 驚いたハナが慌てて手を引っ込める。ラプスとタマがその体をかばうように支えた。二人に肩をつかまれ身を退いたハナは、足元に横たわる深い亀裂を見た。さっきの壁はここから天に向かって噴出ふんしゅつしたものと思えた。

 自分の両肩をつかむラプスの手を外したハナは、その線に向かって一歩踏み出しかけた。

「おっと、その線を越えちゃぁダメだよお嬢さん」

 前方からハナに向かってそんな言葉が投げかけられた。その場にたたずむ全てのフェズヴェティノスが顔を上げ、声の方を見た。

「お前は!」

 ラプスが怒りをふくんだ声を上げる。そこに立っていたのはアテイルの参謀さんぼう、ダキルダであった。














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