第一話 妖精まっちー
ここはとあるアパートの一室。
汪真君と妖精のまっちーが仲良く暮らしていました。
ところが、汪真君は小説を書くことにハマり始め、二人だけの時間が少なくなってしまいました。
「ちっ、また小説ですか」
「妖精が、ちっ、とか言うなよ」
愛し合う時間(暴言を吐く)が減り、まっちーはストレスを溜めていました。
何か他のうさ晴らしはないか? そう考えていると、テレビのCMが目に飛び込んで来ました。
「ソードワードオンライン、βテスト開始! プレーヤー募集!」
それは、ソードワードオンラインと呼ばれる、VR機器を利用したオンラインゲームでした。
VR元年から10年。
ゲームは大幅に進化し、プレーヤーは自分がゲームの中で動きまわれるようになりました。
まっちーは興味が無さそうに(興味深々で)、テレビを見つめています。
「早速、応募するのです☆」
しかし、見事に抽選から外れました。
ソードワードオンラインは、先着1000人までしか体験することができません。
ところがある日、汪真君の家にVR機器が送られてきました。
「宅配でーす」
汪真君が身に覚えのない荷物を受け取ります。
「kiritoさん宛だ。 これ、間違って届けられてるよ」
しかし、まっちーは見逃しませんでした。
荷物の表面に、「VR機器在中」と書かれた札が張ってあったのです。
「汪真君、これは天からの啓示です☆ 受け取るのです」
「だっ、ダメだろ!」
ガン、と何かが汪真君の頭に命中しました。
それは、まっちーが乗せた(投げ付けた)電子レンジでした。
「……大丈夫っすか?」
しかし、汪真君はピクリとも動きません。
「大丈夫です☆ サインはここで平気ですね」
まっちーは、身の丈ほどもあるボールペンを担ぎ、伝票にサインしました。
荷物を中に運んでもらい、セットもしてもらいます。
まっちーは、父親のエッチな本を盗み見するようなスリルを味わいながら、ゲームを起動しました。