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貴女の存在がかわいくて、私はただただ見とれてます。  作者: あんもち
必然デスティーノ
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始まりの出会いⅣ

 時間の流れははやく気がつけば五月となっていた。桜が散った木には緑色の葉が生い茂っている。けれども、少しだけ桜の花が残っている。その花も、風によって飛ばされていく。

 鈴ちゃんが私の家に住むようになってから一ヶ月が過ぎようとしていた。何事もなく過ごせるわけはなく、毎日忙しい日々を過ごしていた。

 例えば…

 こうして私のベットに入り込んでいたり…


「鈴ちゃん…また入ってきて…」


  これで通算二十日も入ってきている。さすがに私も疲れる。


「んん…あと五分…」


  あと五分も待てば、遅刻する。

  私はため息をつき、鈴ちゃんの鼻を指でつまむ。「ふぁ」とやる気のない声が聞こえる。

  私は鈴ちゃんをまたいでベットから出て、パジャマを脱いだ。白色が基本のパジャマで、所々に黒色の点々がある。

  私は下着姿でパジャマを畳み、床に置く。そして、制服をクローゼットから取りだし、白のワイシャツを着る。

  ボタンを止めていると私の後ろから鈴ちゃんが抱きついてきた。

 

「わぁぁ!!」


 という鈴ちゃんに対して


「ひゃぁ!!」


 と返事をする私。


「鈴ちゃん。早く着替えないと遅刻するよ」


  私はワイシャツを止め終える。鈴ちゃんは「えへへぇ」と笑った。可愛いなぁとつくづく思うが…


「早くしないと二葉ちゃんたちに会えないよ」


  そう言うと鈴ちゃんはすぐに私から離れた。これも私が鈴ちゃんと過ごしていて知ったことだ。鈴ちゃんは学校が好きだ。

  私はスカートを履き急ぎ足で部屋から出た。そして、ほぼすぐそばにある階段を駆け降り、洗面所に入った。洗面台に置いてあるくしで髪を整える。ロングの私は鈴ちゃんと違って少しほど支度に時間がいる。

  私が髪を整えていると、ワイシャツだけを着た鈴ちゃんが洗面所に入ってくる。そして、私の横にやって来て、洗面台に置いてあるみかんの花のマークが付いてあるヘアゴムを二つ取り、髪を二つに束ねた。束ねる時間は三十秒ほどで二つともできる。


「琴美ぃ、早くしないと間に合わないよ?」


  鈴ちゃんが起きないからいけないんだよと言おうとしたが、その時間が勿体ないので私はしぶしぶ頷いた。

  鈴ちゃんは髪を束ね終え、パタパタと走っていく。私はその一分後に洗面所を出た。

  私はリビングに行き鞄を取る。テーブルには母親が作ってくれたお弁当が二つある。私のとは鈴ちゃんのだ。

  私はお弁当を二つ袋にいれ、早足で玄関に向かう。


「おはよぉぉ…」


 と階段の上から琴葉の声が聞こえる。


「琴葉。私たちは学校行くから、ちゃんと家の鍵を閉めて学校行くんだよ。」


  私は早口で言い、琴葉の返事を聞かないまま靴を履いて玄関を出た。玄関の外には鈴ちゃんが携帯をいじっていた。何故、私より起きるのが遅い鈴ちゃんが余裕なのか私は知りたい。

  私は小さめのため息をした。まぁ、いつも通りの時間に家を出たので歩いて行っても間に合う。

  鈴ちゃんは携帯をポケットに入れ、私を見た。


「ほら、いくよ。」


  鈴ちゃんが言った台詞は基本的には私が言う台詞だ。

  私はちょっとだけイラッとしたので、鈴ちゃんの両頬を引っ張った。鈴ちゃんの頬はフニフニとしている。


「にゃに?でぃょぉしゅてゃぁにょぉ?」


  私はお構いなしに頬を引っ張り続け、その結果私は駅に着いたことに気づいていなかった。




  私と鈴ちゃんは教室のドアを開ける。私たちのクラスはAクラスだ。

 

「琴美、鈴、おはよう。」

「お、おはようございます。」


  そう私たちに挨拶するのは、二葉姉妹だ。

  姉の愛ちゃんと妹の舞ちゃんは双子の姉妹だ。顔立ちは一緒だが、姉の愛ちゃんは髪を右だけ束ねており、妹の舞ちゃんは左だけ束ねている。けれど、お互い同じ水色のヘアゴムで束ねている。

  また、姉の愛ちゃんはお調子者で妹の舞ちゃんは大人しい。性格は正反対なのだ。どちらかというと、愛ちゃんが妹で舞ちゃんが姉と言った方が合う。


「「おはよう、愛ちゃん、舞ちゃん。」」


  私と鈴ちゃんは同時に返事をする。まぁ、いつものことなのだが。

  私と鈴ちゃんはお互いの席につく。といっても私の席は鈴ちゃんの斜め左。

  私が席につくと、愛ちゃんと舞ちゃんが私の席にくる。舞ちゃんとは席が遠いけれど、愛ちゃんは私の後ろの席である。わざわざ来なくてもいいと思うけれど、私はその姉妹の優しさを受け止めておいた。

 

「なぁなぁ、琴美。昨日のドラマ見た?」


  愛ちゃんは私に尋ねる。


「あぁ、あのドラマ?昨日は時間がなかって見れなかったの。」


  昨日、ドラマが始まる時間の前に寝てしまったとは言えない。


「そうなの?昨日は良かったんだよ。ーんもう、最高だった!」


  愛ちゃんは興奮気味で私にそう話した。愛ちゃんは性格はあれなのだが、恋愛については多分私たちのグループ内では一番敏感だ。彼女の部屋には大量の少女漫画がある。

  ちなみに、舞ちゃんは恋愛もののドラマよりサスペンス系のドラマをよく見るらしい。その時の舞ちゃんはいつもの舞ちゃんではない…


「今日家に帰ってから見るから、明日また話そ」


  私がそう言うと愛ちゃんは笑顔で「おう」と返事をした。まぁ、おうと返事をするのはどうかと思うが…

  私と愛ちゃんが喋っているとき、舞ちゃんは黙っていたが、私が舞ちゃんを見ると彼女は笑顔を向けてくれた。その笑顔はまるで女神のような笑顔だ。


  …まぁ、鈴ちゃんの笑顔には負けるけどね。


  私の心の中でもそう言い聞かせた。

  そうこうしていると、ホームルームのチャイムが鳴り、私たちは自身の席につく。

  しばらくすると、担任の小坂唯先生が前のドアから教室に入ってきた。とほぼ同時に後ろのドアから二人が入ってきた。


「「ギリギリ間に合ったぁ!」」


  銀色の腰ぐらいまである髪で両目の色が違う少女と、茶色のゆるふわショートボブで赤色の眼鏡をかけた少女だ。


「こらっ!また貴方たちなの?」


  前のドアから入ってきた唯先生が二人を怒る。二人は息を切らしながら「すみません」と先生に謝罪した。

  銀色の髪の少女は言わずと知れた星城院アリスちゃん。私の理想がこの学校に通うと知ったのは、入学式の翌日の朝だった。あの時、私は心臓が潰れそうなほど嬉しかった。テレビで見ているが毎日生のアリスちゃんが見られることにこの学校に通って良かったとつくづく思う。

  ちなみに、「アリスちゃん」と呼んでいるのは癖ではなく、彼女自身が私に頼んできたからだ。


  まぁ、毎日アリス様と呼ばれるよりかいいのだろう。


  そして、その横にいるゆるふわショートボブの少女は、アリスちゃんがこの学校で初めて出来た友達の雅香奈ちゃんだ。身長は鈴ちゃんより高く、舞ちゃんより低い。見た目は大人しくていつも笑っているような子なのだが、実際は少し違う。いつも仏頂面であまり笑うことはない。ただ、お菓子のことになれば話しは別になる。

  二人は「すみません。」と言い席につく。アリスちゃんは私の右横の席で、香奈ちゃんは舞ちゃんの後ろの席である。

  アリスちゃんが席に座るとき小声で「おはよう」と私に挨拶をする。私はにこりと笑顔を返す。


  これが私が三年間過ごすクラスである。


 ******


  私たちの学校は、一年生の時のクラスが三年間過ごすクラスになる。つまり、クラス替えがないのだ。その点は私は残念だが、新しいクラスでの生活に慣れるまで時間がいるが、それが無いのは嬉しい。友達づくりが下手な私にとってはの話だが…

  ともかく、私、鈴ちゃん、愛ちゃん、舞ちゃん、アリスちゃん、香奈ちゃんの六人でこの三年間を過ごすこととなった。

  最初は、私は鈴ちゃん以外の子を知らないため、お互い他人行儀になってしまっていたが、鈴ちゃんに後押しされ少しずつその環境に慣れていった。その結果、皆と仲良くなれた。

  鈴ちゃんがいなければ、もしかしたら私は友達が出来なかったかもしれない。私は心のそこから鈴ちゃんに感謝している。

 

  けれど、何故鈴ちゃんが戻ってきたのか、私の母親も鈴ちゃん自身も話してくれない…


 ******


「お腹すいたぁ!」

 

  四時間目が終わるチャイムが鳴り終わり、鈴ちゃんかそう言いながら両手を挙げ伸びをする。

  確かに、五月に入り正式に授業が始まった。中学校よりも授業時間が増えている。


「確かに…私も仕事の疲れもあって、授業中に寝てしまったよ。」


  そう私の横でアリスちゃんがあくびをし、目を擦る。確かに寝起きのようだ。


「私も。ほんっと疲れたよ。」


  愛ちゃんがそう言う。確かに授業の大半発表すれば疲れるだろう。答えがわかったとしても、私はやらないと思う。


「た、確かに…わ、私も…少し…疲れました…」


  舞ちゃんが私たちの席にやってきてそう言うが、声が小さい。未だに舞ちゃんは私たちには敬語で話す。愛ちゃん曰く、平常運転らしい。


「私も疲れた…かも。」


  舞ちゃんの後ろでボソッと香奈ちゃんが呟く。目線は外を見ているが、チラチラと私たちの方を見る。

 

「んじゃぁ、早くお昼しようか。」


  私の一声で、皆の目が輝く。まぁ、私が言わなくても誰かが言うのだろうが…


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