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貴女の存在がかわいくて、私はただただ見とれてます。  作者: あんもち
必然デスティーノ
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始まりの出会いⅢ

「っんんんんんんんんんんんんんん!!!!!」


  私は彼女に唇を奪われた。彼女の唇は小さくて柔らかい。けれど、彼女は手慣れているのだろうか、積極的に舌を絡め合おうとしている。それをさせないように、彼女を力で押し戻そうとするが、少女一人と鞄二つを持つ力を持っている彼女に簡単に押し負ける。

 

  うっ…息が…


  私は息をしようとし少し油断してしまった。そのチャンスを狙ってたかのように、彼女は私の舌を探すように舌を私の口に差し込んできた。

  これには私も驚き肩をビクッとさせる。


「っんんんんんんんんん!!っんんんんんんんんんんんんんん!!!!」


  ジタバタと抵抗するも彼女はまだ続ける。本当に息が限界だ。あと数秒もすれば私は意識が飛ぶだろう。

  私は一歩後ろに退く。それにつれて彼女は私に少し体重をかける。その結果…

  ガタンという音がしたと思えば、私は椅子に足をぶつけた。後ろに椅子があることを完全に忘れていた。

  また、彼女が少し体重かけたせいでそのまま私は床に押し倒された。

  私が彼女に床に押し倒された、私は朝ぶつけた後頭部とほぼ同じ位置のところに頭がぶっかった。朝の怪我はまだ痛むのでかなり痛い。

  そして、彼女が私の上にのし掛かった。その時、私と彼女は額を思いっきりぶつけた。その衝撃で私と彼女の唇が離れた。


「っっっっぱぁ!!」


  私の唇が彼女の唇と離れ、やっと息ができる。息ができることに私は初めてありがたみを感じた。額を思いっきりぶつけたが…

  彼女の方が私よりダメージが大きかったのだろう。悶絶している。目からは少し涙が出ている。

  同情してしまった私は彼女の頭を撫でる。彼女の髪はさらさらとしている。見ただけでもわかるのだが、実際触れてみると想像以上のものであった。こうしていると妹の世話をしているみたいだ。

  その時、私の脳の片隅で何かを思い出した。それは小学生になる前に別れた彼女に別れるときにキスをする記憶だった。


「ま、まさか…」


  私は彼女を撫でる手を戻し、彼女に尋ねた。


「本当に…本当にそうなの?」


  信じられないことだが、その信じられないことが今起きている。

  私の目からは一筋の涙が出た。もう一生会うことができないと思っていた。私の数少ない友達の中で、私が親友と言える…


「り…り…」


  私はその名前を口から出そうとするが、涙のせいでその名前を言えない。涙を拭っても一つ、また一つと出てくる。

  彼女は私の上からのいて四つん這いの体勢で私と向かい合わせになった。そして、彼女は私の涙を指ですくってくれた。


「ただいま、琴美ぃ。」


  彼女は私に笑顔を向けてそう言った。昔と変わらない無垢な笑顔。私はその笑顔を見て私も彼女に笑顔を向けた。


「おかえり、鈴ちゃん。おかえり!」


  私は彼女にそう言ってから泣きじゃくった。私と彼女が再会した瞬間であった。


 ******


  多田鈴。私が小学生になる前に引っ越してしまった、私の数少ない友達の中の親友だ。それまでは毎日のように遊んでいた。晴れた日も、雨の日も、雪の日も…

  彼女は私と違い運動力がある。朝、私と鞄を運んだのは正直なところ、驚いている。昔は木に登りカブトムシを手づかみで捕まえたり、壁をロッククライミングしたりと私は絶対に出来ないことを彼女は成し遂げる。そのため、女子力が高い私とは正反対で、男子力が高い。

  自分で女子力が高いなんて言うのは私自身どうなのか…

  そのため、鈴は息子で私はお母さんと言われていた。けれど、彼女は不服だったのを覚えている。

  彼女が何故私と友達になったのか今となっては覚えていないが、彼女が私のことを大切にしていることは昔と変わらない。それがキスという形で私たちは二人の間に誓いを作った。お互いがお互いの関係を壊さないためにも、何かしらの形が必要だった。子供の頃はキスなんて普通にするものだと思っていたのだが…

 

  今となっては恥ずかしいばかりである。


 ******


  外は日も落ち、夜になっていた。私は妹の帰宅を心配するものの、今のこの状況を楽しんでいた。

  鈴ちゃんと私は晩御飯を作っている。今日は母親は仕事で帰ってこれないらしく、私と鈴ちゃんと妹の三人での食事だ。鈴ちゃんはご飯を食べたら家に帰宅すると思うと少し寂しい。

  今日はハンバーグにすることにした。理由としては、私は泣き続けたからだ。泣き止んでも、鈴ちゃんの顔を見るだけでまた涙が出てきたのだ。

  それが落ち着いたのは四十分後で、泣きつかれた私はそのまま寝てしまったのだ。


  そして、つい十分前に私は目を覚ました…


  私と鈴ちゃんはハンバーグの形作りをしていた。私はふと鈴ちゃんの方を見た。私のとは違い、形がいびつなもののほうが多い。丸くと言っているのだが…

  私はクスッと笑う。不器用なところは昔と変わらない。クッキーを作ったときは、黒焦げになっていた。けれど、鈴ちゃんが作ったものなので、私は嫌な顔一つせず食べた。


「何さぁ。私の方見て笑うなんて」


  鈴ちゃんは私の方を見て言う。頬を片方だけ膨らましている。


「フフっ。鈴ちゃんは昔と何も変わらないなぁってね」


  「それってどういうことなの?」と鈴ちゃんに尋ねられたが、私はフフっと笑い前を向いた。鈴ちゃんは「だから、なんだよぉ」と不満の声が聞こえるが、私は聞いていないフリをした。

  それからすぐに玄関から物音が聞こえた。そして、走ってくる音が…


「誰なの、琴美ぃ?走ってきてるのは?」

「心配しなくても私の妹だから」


  そして…

  カチャっという音がリビングのドアから鳴り、私の妹琴葉がゆっくりとドアを開けた。


「た、ただいま……」


  琴葉は弱々しく言った。多分、知らない靴が置いてあったので心配したのだろう。姉妹揃って心配性である。

  私の妹琴葉は中学二年生。性格は大人しいのだが、彼女は竹刀を持つと荒々しくなる二重人格者だ。部活動はもちろん剣道部である。ちなみに、新人戦は全国大会の一歩手前で負けてしまったのだが、琴葉の中学校では快挙らしい。

 

「おねぇちゃん…その横の人って…おかぁさんが言ってた…………の人?」


  声が小さくて最後の部分が聞き取ることが出来なかった。

  私は「もう一回お願い」とキッチンから言う。

  琴葉は大きな口を開けてもう一度言った。


「だから……その人がおかぁさんが言ってた…ど、ど…」

「ど?」


  私は尋ねる。


「ど、どう…」

  「どう?」


  琴葉が何を言いたいかさっぱりわからない。私は琴葉に竹刀を持たせようとキッチンを出ようとしたときだった。

  私より先に鈴ちゃんが琴葉のところに行き、琴葉の頭を撫でてあげていた。ミンチ肉を触った手はちゃんと洗っているようだ。

  鈴ちゃんは琴葉ににこりと笑った。


「そうだよぉ。私が今日からこの家に住むんだよ。」



  ………ん?



  一体鈴ちゃんは何を言っているのだろうか。


「鈴ちゃん?今なんて言ったの?」


  私は鈴ちゃんに尋ねる。鈴ちゃんは琴葉を撫でながら私の方を向いた。


「え?私、今日からこの家に住むんだよ?」


  んんんんんんんんんんんんんんん?????

 

「なに冗談を言ってるの?家に住むって……」


  すると、私の携帯が鳴った。私はポケットから携帯を出す。母親からの電話だ。

  私はボタンを押し、携帯を耳にあてる。


「もしもし?お母さん?」

「「あ、ことみん?良かった、反応して。」」


  設定を間違って、音量がすごく大きいなんて言えやしない。リビングでは音に驚いた二人が固まっている。


「あ、そうそう。昔、鈴ちゃんって子いたでしょ?あの子が戻ってきたと思ったら、私の家で半裸になっていて、さらに私の家で住むとか言っているんだけど…ホントなの?」

「「あぁ…そうよね。ことみんには何も言ってなかったわね。」」


  私の母親は何か漁っているのか、ガサガサと音が携帯越しに聞こえる。何を探しているのかがすごく気になる。


「「ことみん。冷静になって聞いて。」」


  母親が急に冷静な声になったので私は唾をのんだ。


「「実はね…住むって話しは本当なの。」」


  事実なんだ…と私は喜びと悲しみでため息がでる。悲しみとしては、キスされるのではないかと私は思っている。さすがに高校生にもなって女の子同士でキスなんて…


  なに考えてるの、私?別に鈴ちゃんとは友達なんだし。


  私は私自身に言い聞かせる。何を想像していたのだろうか、私は。


「「それでね、ことみん。それには深い…」」


  そこで電話が切れてしまった。私は耳から携帯を離し、画面を見る。いつの間にか画面は黒くなっている。電源ボタンをいくら押しても入らない。

  充電が無いことに気づいたのは、それから五分後のことだった。

  その後、私と鈴ちゃんと琴葉の三人でハンバーグを食べた。やはり、鈴ちゃんのハンバーグは形がいびつだ。私は一人、それを何事もなく食べた。焼いたのは私のは私、鈴ちゃんのは鈴ちゃん。そのため、形がいびつである鈴ちゃんのハンバーグは少し焦げた味がしたが、私は鈴ちゃんに笑顔を向けた。

  けれど、美味しいとは言えなかった。


  ******


  これだけは言える。

  私の高校生活はどうやら一筋縄ではいかないようだ。

  母親が何を言おうとしたかはわからないけど、私は鈴ちゃんと暮らしていく。


  それは私たちの高校生活の序章に過ぎなかった。

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