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貴女の存在がかわいくて、私はただただ見とれてます。  作者: あんもち
必然デスティーノ
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始まりの出会いⅡ

 桜咲高校。県内唯一の女子校であり、私が通うこととなった高校だ。偏差値は高くも低くもない、言わば普通の高校だ。 ここを推薦で入る人はあまりおらず、ほぼ入試に失敗した者が滑り止めとして通っている。

  現に私もである…


  しかし、県内で一、二を争うほどの整備が整っており、生活に困ることはない。お弁当や飲みを忘れても、午前八時から午後七時まで開いている売店にいけば問題はない。県内最大級の図書館を使用すれば、購入しなくとも発売日の翌日には本が並んである。電気は基本的には太陽光パネルで作っている。高校二年生になれば、免許さえあればバイクのレンタルができたり、売店用のポイントカードがもらえる。私が入試を受けた高校とは比べ物にならないぐらいの整備だ。

  けれど、やはり合格はしたかったのが本音である…





  午後二時をお知らせするアラームがイヤホンから鳴り、ラジオの音楽番組が始まった。いつもなら録画をして、下校時に聴いている。だが、現に私は下校しながらその番組を生で聴いているのだ。


  私は学校の保健室で目が覚めた。見たことがない風景で最初は戸惑ったが、横で椅子に座って本を読んでいる人を見てほっとした。高校のパンフレットに載っていた顔だったからだ。

  その人曰く、私はあの子に学校まで運ばれたらしい。ただ、木材を肩に担ぐように私を肩に置いて担いだらしい。私はそれを聞いて顔を真っ赤に染めた。

  そして、彼女はと言うと、すぐに体育館に向かって行ったので話しは何もしていないと言っていた。


  つまり、私は入学式に出席しなかったということだ。


  彼女と話しているとき他人行儀すぎたので、今度会ったら友達感覚でお礼を言おうと私は思った。

  そして、私は保健室に運ばれたあと、横で本を読んでいる人、つまりはこの高校の保健の先生によって、手当てされていたらしい。膝に付けていたひまわり模様の絆創膏が外されて、包帯を巻かれていた。最初に見たときは、私は少しだけしょんぼりとした。


  そして、私は入学式終了三時間後に目を覚まし、車で高校の最寄駅に連れてかれ、電車に乗り今に至るわけだ。


  ラジオから流れる音楽は、テレビで聴いているときよりもいい。電波が悪くなると「ザザっ」という音がたまに聴こえるからだ。これはテレビで聴いていれば絶対に鳴らない音だ。「ザザっ」という音が邪魔と言う人のほうが一般的には多いだろう。

  けれども、私はそこに引かれているのだ。


  「四月九日水曜日。今日も元気にやっていこうと思います!」


  曲の間奏に入り、私のお気に入りのラジオDJの声がイヤホンから聴こえる。ラジオの世界では知る人ぞ知るお方、倉本ハリスだ。ちなみに、ハリスという名前だが、彼は純日本人だ。

  私はイヤホンに集中しつつも、前をみる。電柱にぶつかるのはごめんだ。


「それでは今日のゲストを紹介しまーす。今日、高校生になった女優の星城院アリスさんでーす。」

「宜しくお願いします。」


  スタジオからは盛大な拍手が起こる。盛大すぎて少しうるさい。私は音量を少しだけ下げた。


  「今日からアリスさんは高校生ですが、入学式終わってからスタジオまで来たんですよね?」

「そうなんですよ。本当ギリギリだったんですよ。」


  アリスさんがどこの高校に通っているかは知らないけれど、同い年なところに少しばかり親近感を持っている。

  星城院アリス。私が理想としている女性像だ。父親はロシア、母親は日本でありハーフだ。髪の毛は銀色で、目は左目は黄色く右目は赤い。黄色いのは元からで、赤色は昔事故で血が黒目のところに付いたままかたまり、赤くなったとか。足はモデルのように細く、スタイルもいい。ドラマなどで着ている服はほぼ全て似合っている。

  私はラジオを聴きながら歩くと、目の前に私の自転車があった。どうやら捨てられてないらしい。


「よかったぁ…」


  私はハァとため息をついたあと、自転車の鍵を鞄から出そうとした。だが…

  いくら探しても、鞄の中からは鍵が出ない。制服のポケットを確認しても、出てくるのは生徒証明書とハンカチとティッシュのみ。


  …どこでなくしたの?


  私はその場で五分以上、鞄を漁ったりポケットを漁ったりとしていた。けれども、鍵は見つからず、諦めた私は、自転車の後輪を上げて前輪を使って自転車を運んだ。

  もちろん、周りの目は痛い…




  膝と頭の痛みのせいで意識が一瞬飛んだり、クラクラしたりして、家に着いたのは三時を回っていた。いつもなら歩いても二十分でつく距離なのだが…

  ラジオはとっくに番組が終わっており、ニュースが流れていた。

  私は家の車庫に自転車を持っていき止める。鍵のことは母親にでも言おう。

  私は車庫から出て家の鍵をだし、玄関に向かった。私の父親は単身赴任で、一年に一度帰ってくるかどうかである。ちなみに、職業は電化製品を作っている会社の人。何故、私の母親と父親が結婚したのかは不明である。

  私は玄関のドアに鍵をさし回した。だが、開いているらしくカチャという音はしない。妹が閉め忘れたのだろう。


「まさか…」


  心配性の私はゆっくりとドアを開ける。すると、玄関には見たことないローファーがあった。まさかだと思ったが、どうやら空き巣に入られたみたいだ。

  私はゆっくりとドアを閉め、靴を脱ぐ。そして私は、音をたてずゆっくりと廊下を歩く。

  私は玄関から真っ直ぐのところにあるリビングのドアノブを握る。中からは音が聴こえる。何をしている音かはわからないが、何かを盗んでいることは確かだろう。

  私は心臓の鼓動を落ち着かせるため、目を閉じる。鞄のなかには母親に護身用と言われ、買ってもらったスタンガンがある。闘える準備はできている。

  私は目を開きドアを勢いよく開ける。


「そこまでよ。盗もうとしたものを置いて、さっさと帰りな…」


  私は数歩程スタンガンを持って走ったがその光景に足が止まった。

  私がドアを開けてリビングで見たもの。それはスカートだけを履いており、上は何も着ていない半裸の状態の金髪の少女…朝助けてもらった彼女だ。

  私と彼女は数秒ほど、お互いを見たまま固まっていた。そして…

  彼女の顔がだんだんと赤くなる。それにつれて、二つに束ねている髪は逆立っていく。


「こ…」


  彼女はそう言った。私は「こ?」と尋ねる。


「こ…こ…」


  彼女はまだ「こ」と言う。私は訳がわからず首を傾げる。

  彼女は小さな口を大きく開き、目を思いっきりつぶった。


「…琴美の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


  彼女は家中に響き渡るぐらい大きな声でそう叫んだ。彼女との距離はあるものの耳がキーンっとする。


「馬鹿馬鹿ぁ!!琴美の馬鹿ぁぁ!!どうして着替えているときに帰ってくるのさぁ!!」


  そんなことを言われても、ここは私の家だ。逆に何故、彼女が私の家で着替えているのかが知りたい。

  そして、彼女はまた私の名前を言った。何故、私の名前を知っているのか知りたいし…知りたいことが山ほどある。けれど、泥棒ではないことにほっとする。

  私はスタンガンをスカートのポケットにいれ、とりあえず彼女を落ち着かせようとする。


「ちょっと貴女、落ち着いて。とりあえず深呼吸を…」

「落ち着いていられるわけないよぉ!!馬鹿琴美!!」


  もはや止めようがない。私はため息をつく。とりあえず、私を好きなだけ馬鹿と言わそうと私は考え、冷蔵庫に歩いていった。




  五分後、彼女はやっと落ち着き、私が座っているテーブルの正面に座った。そして、私が淹れておいたお茶を一気に飲む。


「っぷはぁ!」


  彼女は飲み干したコップをテーブルに置き、口元を拭った。そして、テーブルの上にあるお菓子が入っている箱に手をだした。他人の家だと感じていないのだろう。信号無視といい、彼女は本当に何者なのか知りたい。

  私はコップを置き、彼女を見た。


「少しお話があるんだけど?」


  彼女は私の言葉を聞いて、私を見る。お菓子をかなり詰めているらしく、ハムスターみたいに頬がパンパンである。


「気にせず、そのまま食べながら聞いて。」


  彼女は首を縦に振り、またお菓子に手を出す。まだ食べるのか、彼女は…

  私はため息をつき、本題に入った。


「け、今朝は本当にありがと…学校まで担いでくれたうえ、保健室まで連れていってくれて」


  私は他人行儀ではなく、すこし無理気味で友達らしく振る舞う。人と話すときは敬語になってしまう私にとってはタメ口で話すのはきつい。


「ほぅひぃたしぃましぃてぇ」


  彼女はどういたしましてっと言ったのだろう。口に食べ物を入れて話したので、私は少しムッとするが、今はそれどころではない。

  私は話しを続ける。


「それでなんだけど…貴女…」


  いや、ここは貴女ではなく君といった方がいいのだろうか。けれど、君というのはないか違う気がする…

 

「それで…貴女、名前は?」


  とりあえず、名前を聞くことにした。貴女も君もあまり彼女には合わない。どちらかというと後輩みたいな人物だからだ。


「えっ…」


  彼女は手に持っていたクッキーをテーブルに落とした。クッキーは綺麗に真っ二つに割れる。

  私はそのクッキーを取ろうとすると、目の前で彼女がテーブルを叩きつけ、どういう偶然かわからないけれど、クッキーを手で叩きつけた。クッキーは粉々である。私はつい目を見開く。


「…なの?」


  彼女は小声で何かを言っている。けれど、この位置だと聞き取りづらい。独り言だろう。

  私はテーブルのコップを取りお茶を飲んだ。


「…なんでなの?」


  やはり何かを言っている。けれど、今度は先程より聞き取りやすく、私に言っていることがわかる。


「…なんで…なんで琴美は私のことを忘れているのさぁ!私だよ、私!!」


  彼女は興奮して私に尋ねる。けれど、私には彼女が誰なのかさっぱりわからない。記憶の片隅にはあの少女の影しか彼女に当てはまらない。

  けれど、彼女とは小学校の前に別れている。今さら戻ってくる理由がない。

  私が悶々と考えていると、彼女は私の横にやって来た。


「なら、こうすればわかってくれる?」


  そう言って彼女は、私の制服の胸ぐらを掴み、彼女の方に引っ張られた。そして…


「っんんんんんんんんんん!!!!!」


  私は彼女に唇を奪われた。

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