プロローグ
高校の入学式の前日の夜、私こと柊琴美は自分の部屋のベットの上で仰向けの状態で携帯の設定をしていた。今日の昼間に高校生デビューということで母親に買ってもらったのだ。初めて触れる携帯は電子機器とは思えないほど軽いものだった。
最初は携帯を持ったことに感動していたが、今は違う。思えば私は機械を動かすのは苦手なのだ…
…わかんない
私は携帯を枕元に置き深くため息をついた。携帯を持って四時間ほど経ったが、未だ家族のメールアドレスすら登録できない。本当に電子機器は駄目だとつくづく思う。
私は起き上がりベットから出た。そして、部屋の電気を消し部屋のカーテンを開き、窓を開けた。ぶわっと冷たい風が部屋の中に入った。
…うぅ…寒い
もう春だというのに天気予報を聞いたら冬なみの気温らしい。私は寒いのは嫌いだから早く温かい日常を過ごしたいと思っている。
私の長い黒髪が風によって揺らいだ。本当ならこの髪も高校デビューとともにばっさり切る予定だったのだが、家族全員に否定され、結局切らなかった。私自身は絶対にショートヘアーのほうが似合っていると思う。
私は夜空を見る。星空は雲の影響で少々しか見えない。昼間、携帯を買いに行った時、雨が降っていたからだ。私は雨も嫌いだ。ジメジメしていると気持ちまで何か嫌な感じになる。
夜空を見ていると急に何かの音が部屋に鳴り響いた。私は驚いて窓を勢いよく閉め、部屋のなかを見渡した。すると、携帯のライトが光っていた。青色に光っているからメールを受信したのだろう。何故かとりあえずこれは覚えてある。メールアドレスを入れていないのに…
私はおそるおそる枕元の携帯を取り、画面を開いた。横にあるスイッチみたいなのを押せば電源が入るのも覚えている。
電源を入れるとメールが着ていた。メールアドレスを教えていないのにと思ったがメールは母親からだったので少し安心した。多分、携帯を買ったときにメールアドレスを入れていたのであろう。
「明日から高校生なんだからちゃんと起きるのよ」
言われなくてもわかっている。私はいつまでも子供ではない。まぁ、親にとっては私なんて永遠に子供なのだが…
私は返信をしようとしたが文字を打つのに相当時間がかかることを思いだし、携帯を充電器にさしてまた、ベットの上で仰向けになった。
「明日から高校生かぁ…」
そうぼそっと私は言った。
私自身、高校生になることに対しては緊張はないものの、やはり新しい環境でちゃんとできるかが心配であった。仲がよかった友達とも学校が違う…というより私が通う高校には、同じ中学校の友達は誰も通わないのだ。
本当なら私は県内で一番偏差値が高い高校にいくはずだった。だが、高校入試の時に名前の記入忘れという前代未聞の行為を犯し、不合格になってしまった。
その結果、滑り止めで受けていた女子校に私は通わなければならなくなった。今思っても私は自分自身に腹が立つが、もう終わったことだといつも考え心を落ち着かせる。
時刻は深夜一時。明日は9時に集合だから一時間前の電車には乗ろう考えている。
私は毛布の中で丸まり眠りへとついた…
そして、入学式の朝となった。