第1章 第9話
第1章。Nuclear armament
痛みを知る者が教えられるのは
強くなる心だけだ
(???)
第9話 怨恨
目覚めると手足は固定されていた。
銀色に染まる不気味な空間だった
撃たれた箇所が痛み力を出すこともできず死を覚悟しまた眠りについた。
物音が聞こえ目が覚め暗がりの向こうに目をこらす
暗がりのなか何者かがこちらに寄ってきた。
「おい 聞こえているか?意識はあるか?ここから出してやる」
男は2人いて 1人は腕につけられた機械をいじくり
もう1人は手足を固定している拘束具を外そうとしていた
「・・ 撃たれたんだ きっと走れない」
「肩と足だな 俺が力を貸す
助かるまで死ぬんじゃないぞ」
拘束具が外れ男に担がれた
細身の体なのにとてもたくましかった。
傷が痛み 意識が遠退いていきそうだった。
「シェイベ 気付かれたみたいだ
急がないと脱出できなくなる」
「さすがNAI だな 予想より早かったじゃないか」
2人は会話のやり取りの後別行動に移った。
「あんた達はいったい ぐっ・・」
「あまり喋るな 俺の名はシェイベ
そしてあいつはスモーク
特殊工作員だ
今回のチーム α チームβの強襲作戦は失敗に終わった
調査を依頼され 2人だけで潜入している」
「2人・・だけ?」
シェイベの肩に担がれながら建物の上に登っていく
屋上の扉を開くと眩しい陽が照りつけた。
肩から降ろされ シェイベは発煙する道具を使い 仲間に知らせた。
「おい さっきのスモークってやつはいいのか?」
「大丈夫だ ほらみろ!」
煙を見つけて二台のスカイライドがこちらに向かってくる
しかし何か様子がおかしい
「シェイベ!まずい!早く!」
スモークはとても慌てて言い放った。
もともと1人乗りのスカイライドは明らかに人数オーバーだったが 側面につけられたアタックウェポンを取り外しシェイベと共に乗り込んだ。
「いったいどうしたんだ?」
「早く遠くに離れないと!急げ!
数分して遠くから爆音が聞こえた
1つ 2つと巨大なロケットが空に突き進んでいく
その風発は容赦なく機体に押し当たり操縦は困難になった。
「 しっかりつかまっていろ!
口は開けるなよ 舌を噛むぞ!」
シェイベとスモークのスカイライドはフルスロットルになり超スピードで風発圏から離脱した。
気がつくと地面に仰向けに寝かされていた
雨が降っていてボロボロの体を濡らしていく
「冷たい・・・」
足音が聞こえ目を向けるとシェイベがいた。
「起きたか? 奴らめ とんでもない事をしてくれやがる」
「いったい何を?」
「お前も見ただろ あの巨大なロケットを 奴ら宇宙に向かったんだ
スモーク 上と連絡は取れたか?」
腕の機械をいじくるスモークは言葉をなくし目を丸くしていた。
「確認されたロケットは10機
月に向かっているようだ
今も航行を続けている」
「月だと? 目的は一体なんだ?」
「詳しくは帰ってから説明する
もうじき迎えがつく それまで待機だ」
数時間後 軍用ヘリが到着し本部に帰還した。
しかし毎日 毎日 寝る間もないほど質問をされ精神的に参ってしまった。
精鋭を集めた部隊が壊滅するとは予想外だったらしい。
α そして βチームの生き残りは俺1人だけだった。
強襲したNAIのポイント0付近
一帯は立ち入り禁止区域に指定された。
兵士の死体は1つ残らず無くなり敵のマシーンの姿もなくなっていた。
おそらくあの巨大なロケットに全て詰め込まれたのだろう。
数日後 尋問部屋でいつも通りの質問攻め中に思わぬ物が届いた
ポイント0に残されていたドルークを回収班が届けてくれたのだ。
「リダル 少し痩せたようだな」
ドルークはいつもと変わらない様子だった。
「怒っているか?」
「私を置き去りにしたからという意味でか?」
「そうだ 敵に回収される事を恐れていただろう」
「今はこうして戻ってきた
何も怒ってはいない」
ドルークとの会話の後
しばらくは空を拝むことさえできない日々が続いた。
1人だけ生還したこと
仲間を失ったこと
そして 信じていたロッドに裏切られたこと
考えれば考えるほど気持ちの整理はできず
暗い部屋の中で電光に当たる自分の影を見つめ続けた。
治らない怒りが憎しみに変わっていく。
第9話 完