第1章 第8話
第1章。Nuclear armament
人生は
片手に幸福の黄金の冠を持ち
片手には苦痛の鉄の冠を持っている。
人生に愛されたものは
この二つの冠を
同時に渡されるのだ。
(ケー・エレン)
第8話 闇
塔の中への突入が開始されたがNAIの姿はなかった。
隊員達にも動揺が生まれる
「各自 周囲を警戒しろ リダルと言ったか?お前は俺についてこい」
ベイカー隊長についていくと大きな広間に出た
まるで教会のような作りでどこか人間臭いものを感じた。
そして信じられない事だったが
薄暗い空間の向こうからロッドが歩いてきた。
「来てしまいましたね・・」
ロッドは悲しそうな顔でこちらを見つめていた。
「貴様!なぜここにいる!
武装解除をして跪け!」
ベイカー隊長の怒声が響き
今にもロッドを殺してしまいそうだった。
「もう少し静かに話せないんですか? 命が燃えていますよ?」
「なんだその口は!」
パーン!っと銃声がなり次の瞬間
ベイカー隊長の腕は撃ち抜かれていた。
「隊長!ロッドやめてくれ!
なんでお前が!いったいどうい う事だ!」
あまりにも衝撃的な出来事に体が震えだし 汗が頰を伝っていく。
「驚いたよ リダル・・ 君のソルジャーシステムは出撃前に細工をさせてもらった
君にはここに来てほしくなかったんだ」
ロッドは広間の奥に進んで行った
「待つんだ! 隊長 ロッドを連れ
戻してきます!ここにいてくだ さい!」
隊長の苦痛の表情から急所を撃たれたのは間違いなかった。
急がなければ命に関わる
その認識が油断の1つに繋がる
今一度 心を研ぎ澄ます事に専念した。
広間の奥に進んでいくと
細長い通路に出た
そこにはロッドの他に二体のマシーンがいた。
「・・では計画どうりに
はい 私も後から行きます」
小声で何を言っていたのか分からなかったが 先に二体のマシーンは歩いて行った。
「ロッドッ!! なぜ NAI共と話している!目的はなんだ!」
「話せる事はないよ 早く帰るんだ」
「馬鹿を言うな!俺たちはマシーンの殲滅に来たんだぞ!」
「敵はNAIなんかではない
何も見えていないんだなリダル」
「うるさい!お前を軍の上層部に渡して全て吐かせてやる!」
ドルークを構えた瞬間
左肩を撃ち抜かれた
「ぐっ・・なぜだ 反応できなかったぞ ドルーク!なぜだ」
「分からない システムが正常に働いていない 私はただの剣になり下がっている」
コツコツと足音が通路に響き
ロッドが近付いてくる
その顔は悲しみそのものだった。
「ステルスガン NAIが開発した最新の技術を使った銃だ
人間には見る事が出来ず
殺傷能力は高くないが反動が抑えられ精密な射撃ができる
私にぴったりの武器だ」
再び パンっ!と銃声がなり
今度は右足を撃たれた
「ウグゥハッッ!ガァッ!」
態勢を崩し床に倒れこんだ
目に見えない銃では弾丸の起動もタイミングもつかめない
ドルークは無力とかし
そして初めての痛さに心が潰されそうだった。
「残念だけど 今回の作戦はすでに
NAIに報告していた。
初めから失敗するシナリオだったんだよ」
「ハァ・・ハァ・・ さっき
俺に見えていないだの言ってくれたな 俺は勝利を確信している
俺と隊長が倒れてもまだ 生き残っているチームの奴らがお前と さっきのNAI共を殺すぞ!」
「それは 無理だよ チームは全滅したからね」
「なんだと!!」
「この塔の中にはいたるところにトラップが仕掛けられている外にいる 仲間さんを含めみんな死んだよ」
ロッドの言葉は嘘に聞こえなかった
おそらく本当に部隊は壊滅したのだろう
この短時間にそんなことができてしまう
その力と非常さに絶望した。
「 リダル 君さえよければ
仲間に加えてやる
一緒にこい 共に人間を」
「ふざけるな!俺は仲間と家族 そして たった今 絆すら・・
殺すなら殺せ!!」
少しの間 沈黙がその場を包み込み
ロッドは迷っているように見えたが 決断をしたようだった。
「 いや・・殺さない その代わり
その体を実験体にする」
「捕虜にするつもりか!」
ロッドはドルークを拾い上げ
喉元にあててきた。
「マシーンは・・いやNAIは平和を 真の平和を夢みている
その世界で ともに生きよう」
「・・・ バカ野郎」
次の瞬間 目の前が真っ暗に変わった
生きているのか死んでいるのか
長い長い漆黒の中に意識が落ちていくのを感じた
第8話 完