第2章 第3話
第2章。Invisible enemy
勇敢な人で
恐怖を感じたのを
認めない人はいなかった
(コーネリアス・ライアン)
第3話 死臭
先行してくる敵のNAIは機敏な動きと速さが特徴的で 片手に備え付けられたハンドキャノンで船団の前衛を破壊していく。
一体 一体でなら恐るものではないが
船の急所を的確に攻撃してくる
すでに破壊されているにもかかわらず追撃をやめない
まるで死んだ羊に群がるハエのようだった。
「前衛船団は完全に壊滅しました、脱出した救命ポットそれと新しい情報です」
アレックス・クルーガーは頬杖を解き耳を傾けた。
「月の裏側で膨大なエネルギー反応!」
「・・あのヒヨッコ何してやがる」
小声でアレックスは愚痴をこぼした。
「陣形をプラン4に変更しろ
NAIを一掃する!
同時に無人のスカイライドを展開しろ
これ以上死者を増やすなよ」
指示の通り 船団は陣形を変え無数のスカイライドマシーンが宇宙空間に解き放たれた。
敵のNAIは弾幕をすり抜け船に突入してくる
月面施設内
「結局 見つかったのは重力装置だけか」
リダルは刀を振るい装置を破壊していた。
「破壊する対象が違うだろうに
早くロッドを探そう そっちの方が先決のはずだ」
クラッシュドライバーは破壊できない
絶望するしかない状況だが
ロッドの口を割れば何か方法が見つかるかもしれなかった。
「月の表側に行くしかないか
そこに奴はいるはずだからな」
リダルはドルークを腰に戻し移動を開始した。
「ロッド 2年間だ・・2年も お前を殺すために俺は・・」
リダルは薄暗い通路を走っていく
月面表側 要塞内部
黒光りのコートを着た男がそこにいた。
NAIではなく 間違いなく人間だった。
「なぜここにいるか?なぜ仲間はお前を助けに来ない?
簡単な事だ 所詮
駒のような存在
そして煙のようにどんなとこにでも行き
目的を果たし また煙のように消える
スモーク 早く楽になりたいだろ?
愚かな人類は
船団を率いてこちらに向かってくる
はっ!忘れていたよ
まともに私の言葉は聞こえていないか
私が取ってしまったからな
すまない ほら ・・お返しするよ」
コートの男は拷問の末に虫の息のスモークの足元に削ぎ取られた耳を落した
「残るはお前だけだ 他の奴はみんな
宇宙に捨ててやったよ
風船のように ポンっ!と破裂させたがね」
ニヤニヤと笑いながら男は背を向けたり
「ロッド 片付けておけ
それと私は先に離脱する
合流場所は変わらない
急いで若いボーヤを勧誘してこい
しくじるなよ」
コートの男はその場から離れ
代わりにロッドがスモークに近付いていく
血だらけのスモークは力なき声でロッドに話しかける
「もうすぐだ 役目は分かっているな?俺を殺せ」
「怖くはありませんか?」
「怖いさ 死ぬんだからな」
ロッドは黙ったまま
ステルスガンを構え
スモークの頭を撃ち抜いた。
「あなたは勇敢な戦士だ
だが 等しく愚かなのかもしれませんね」
ロッドは悲しげな顔でスモークの死体を床に広げさらに銃弾を撃ち込んだ。
「・・・しぶといな」
そう言い放ち ロッドは部屋を出て行った。
「 2年ぶり・・どんなことがあっても
お前の最後は俺が見とどけよう」
ロッドは腕の装置のスイッチを押した。
「起動...」
第3話 完