下着泥棒の夜
うぐぅ・・・血が止まらねえ・・・ここで死ぬのか・・・まあ・・・いいか・・・こんなふざけた世界・・・なんの未練も・・・ない。
諦めるの?
誰だ・・・女の子?なんでこんな所に・・・
世界の上部構造への移行があなたの夢なのでしょう。
何を言ってるんだ?
愛を守って・・・それが夢に繋がる唯一の道よ。
へへ、支離滅裂だな。幻覚か・・・そういや体が軽くなってきた。もう痛みもねえ・・・それにしてもアンタ、女神のように美しいなぁ・・・冥土のいい土産にならあ・・・
~都内某所~
「聖マリアンナ女学院のマドンナ、咲山美希のパンティだぜ。」
「ありがとうございます!何と御礼を言っていいか!これは報酬です。」
新宿池袋の端にあるBAR「pantiesーstocking」の地下で取り引きが行われていた。
「それにしても驚いたぜ。お客さんがまさか中学生とはな。しかも報酬の10万をよく集められたもんだ。」
「今は中学生でもパソコンを使えばお金を稼ぐことが出来ますから。」
「すごい時代になったもんだな。俺の頃は新聞配達で5千円稼ぐのがやっとだったが。」
「あ、あの・・・この事は・・・」
「わかってるよ。顧客情報を絶対に漏らさないのがこの業界の掟だ。お前さんにも約束は守ってもらうぜ。」
「は、はい。絶対に本人に手を出すことはしません。」
「わかってりゃいい。まあ正々堂々面と向かって告白して付きあっちまえばナニしてもいいけどな。」
「ハハ、それが出来ればこんなことしませんよ。」
「ふふ、ちげえねえ。だが頑張ってりゃいつか願いは叶うもんだぜ。」
「有難うございます。それじゃ僕はこれで。」
「おう、気をつけて帰れよ。」
俺の名前はワタナベ。ごく普通の下着泥棒をやっている。今日も下着を求めて血にたぎった狩人にまた一つパンティーを捧げた。
「よう、景気はどうだい?」
気さくに話しかけてきた北大路欣也みたいなオッサンはこのBARのマスターだ。
「ここの売り上げよりは儲かってるぜ。」
「ったく憎まれ口だけは天下一品だな。」
マスター以外にもここにくれば色んな奴が声を掛けてくる。ここは下着泥棒達の情報場。表向きはBARだが下着泥棒達の隠れ蓑になっている。
「ようワタナベ調子はどうよ?」
「ザキさん!?いつこっちに帰ってきたのよ?」
サングラスを掛けて如何にも昭和の草臥れたリーマン然としたオッサンは山崎慎二。通称ザキさん。挺身報国という出版社の記者をやっている。
「さっきこっちに着いてな。帰ってきたらまずここに来ねえとな。」
「いや会社に戻れよ(笑)それよりヨーロッパの取材どうでした?たしかヨーロッパで今流行りのスイーツを取材に行ったんでしたっけ?」
「おう。やっぱヨーロッパの少女は素晴らしかったわ。お人形さんみたいな蒼い目に輝くブロンドの髪、そして白い肌。」
「ザキさんも相変わらずたなあ。捕まるなよ。」
このオッサンはいい歳して真性のロリコンおやじだ。特に北欧の少女が好きらしい。取材とかこつけて自分の趣味を堪能する悪徳記者だ。
「捕まるなはお互い様だろ。何か面白い情報が入ったら教えてやっから、また少女の下着を頼むぜ!」
まったく危ないオッサンだぜ。まあその趣味を理解出来ちまう俺も相当危ない奴だとちょっとした自己嫌悪に陥る。
「マスター、そろそろ帰るからお勘定。」
「おう。あ、そう言えば・・・お前田園調布のお嬢様の話知ってるか?」
「田園調布のお嬢様?いや知らねえな。そのお嬢様がどうかしたのか?」
「今下着泥棒の界隈でそのお嬢様が有名になっててな。女神のように美しい女の子らしいんだが誰も下着を盗み出せた奴がいねえんだとよ。その噂を聞き付けて日本中の下着泥棒が東京に集結してるらしい。」
「本当かよ。日本中からってのがすげえな。」
「おうよ。なんでもブラジャー遠野やガーターベルト騎士団、JK旅団にあの下着の清水の次郎長も動いてるみたいだ。」
「おいおい、あの下着の次郎長までが。こいつは面白いことになりそうだな。情報ありがとよ!」
「ああ、また来いよ。」
マスターが言っていた下着泥棒たちは日本の各地域を代表する有名な奴らだ。ブラジャー遠野は東北を中心に活動する下着泥棒だ。ブラジャーを中心に盗み、神出鬼没と電光石火の早業は遠野伝説の妖怪を彷彿させることからブラジャー遠野と呼ばれている。ガーターベルト騎士団・JK旅団は日本全域で活動する下着泥棒組織だ。ガーターベルト騎士団は主にOLを、JK旅団は女子高生をターゲットにしている。下着の次郎長は静岡県を拠点にする大物下着泥棒だ。82人の屈強な下着泥棒を子分に持ち、地元では絶大な権力を誇る。
「なんでこれだけの大物が動いてんだ?もしかして、田園調布のお嬢様ってのはあの時の女神・・・」