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衝突〔1〕

 「アラーム設定の時刻になりました。ピピッピピッ ピピッピピッ」


 

「_起床の確認が取れないため_電撃起床プログラムを実行します_」


「いっっっってぇぇえ!」

左手首のデバイスから流れる電流。即座に跳ね起きデバイスの操作を行い。止める。

 青年は昨日の夜にアラームを仕掛けた自分に対して怒り。

 しかし、その一方で起こしてくれたことに感謝念も抱いていた。

「ったく、寝起きの心臓には悪いな」

大きなあくびをしつつ

「_マルス起動」


「おはようございます。良汰様」

「ああ。おはよう」

 会話は成立している。だが、部屋には良汰以外は誰もいない。

 マルス...machine learn smart。『シルバー7社』のどこにでもある家庭用人工知能システムだ。

 家に普及したのは4年ほど前、僕が高校1年の時だ。父は既に他界し。その上、母は海外で宇宙開発の研究とやらで家を空けることになり。当時中学1年であった妹と残されることに。その際、母が僕たちを想って__と言っても監視のためなのだが__導入してくれた。

 左手首のデバイスも『シルバー7社』の製品だ。万能。たいていのことはこれ一つでこなせる。しかし、世の中にはケイタイ?トケイ?リモコン?なんてものを消した破壊者だ。なんてわけのわからないことを言うやつもいる。まあ、そんなことより…。


「いつもの」

「かしこまりました。__7月24日の天候は晴れ。気温24℃ 湿度68% 朝食はサンドイッチ。お飲み物はコーヒーとオレンジジュースをご用意しております。どちらになさいますか?」

「コーヒーで頼むよ」

と、一見ひとりごとにしか見えない会話をしながら。2階にある寝室から1階のリビングに降りる。


 リビングでは胸元ほどの高さの装飾のない白い機械がキッチンでコーヒーをそそいでいる。

 僕は机を回り込むように動きキッチンを左手に背に庭、前は入口。という形で座る。

 いつもの定位置だ。


 右手側、机から少し離れた台に置かれた手のひらサイズの白いインテリア。

 デバイスを操作しニュースをかけると、それの上部に映像が浮かびあがる。

「…されています。…続いては、まなみちゃんの行ってみようのコーナー! 今日は。全自動車の100%普及から30年がたち、その間の事故数なんと0件という快挙を成し遂げた全自動車開発会社。三富田社に行ってもらいまし…」__ドンッ!


 2階で__何か落ちるような__大きな物音。起きた……か。

 全く。いい加減静かに起きれないのか。


「どうぞ」

店員のようで、どこか他人行儀ではある。

故に悪い気にはならない…使用人に近い形で家庭に定着している。

「ありがとう」

マルスはコーヒーを持ってくると、すぐにオレンジジュースを注ぎ始める。


 「おはよう」

頭をさすり、半目であくび。ぶかぶかのパジャマ。朝は何ともだらしない妹。

「おはy……」

「どうも! 妹の、飛騨里美です! 歳は16! 山延高校2年! 」

小学生低学年の挨拶を凌駕するほどの声量。そして背筋を伸ばし敬礼。

「…ど、どうしたんだ。いきなり自己紹介なんてして。どうせベットから落ちたんだろうが、そろそろ頭でも打っておかしくなったか?」

「なんとなく! やらなきゃいけない 気がした の!」

僕は頭を抱えつつ問う

「また。いつもの勘か?」

「そういうこと!」

里美は、僕と違い『無脳力者』だ。

しかし……勘だけは鋭い。もはや脳力と言っていいほどに。

まあ、今回のは頭を強くぶつけたのが原因だろう。


「里美様。お食事ができました」

「あ! ありがとう」

と言うと向かいに座る。


 サンドウィッチをいくつか頬張っていると唐突にアラーム音が鳴る。

「良汰様、瑞希様からの連絡のようです」

口に含むものを、お互いに飲み物で流し込む。

「つないでくれ」

 先ほどからかかっていたニュースを一旦消し、つなぐ。

「おはよう。2人とも」

 短い黒髪で髪は違えど、里美とよく顔立ちが似ている。とくに目。くっきり二重のあたりだ。

「ちゃんと朝ご飯はたべた?」

「うん。今日は、マルスが用意してくれたの」

「そうよかったわね。来週には、そっちに帰るから。料理対決。楽しみね? 」

「もっちろん! 今度は負けないから!」

「部屋のかたずけも忘れちゃだめよ?」

 里美は苦笑いでごまかそうとしている。ごまかせてないが。


 「それと、良汰。今日から大変だと思うけど、頑張って。あなたは、お父さんに似て人一倍正義感は強い。だけど、他人をかばって死んでしまう……なんてところまでは似ないでね」

「わかってるよ。自分も助けてこその正義だからな」

 父は他界いている。殉職だ。人をかばってケンジュウってので撃たれたのだ。


「そっか~お兄ちゃん今日から警察官か~」

しんみりとした空気を打破するためか。はたまた単に忘れていたのか。里美は話題を変える。

「まぁな」

 そう。僕は今日から。警察官だ。


 大学の2年進級時。恒例の脳力についてや、脳の許容量などの検査を受けた。

 7月1日。警察の……いや国の お偉いさんから直通のメールが届く。

 内容は『魔法課一係に配属を命ずる』という何とも意味不明なものだった。


 だが、もともと警察志望で、なれるなら早くなりたいという思いもあり。

 母も渋々了承してくれていたので断ることはなく。

 そこからの手続きは速かった。


 大学で秋に行われる『覇牙祭』の役員もすぐに代役がたち。

 友人にも報告をすませ、お祝いもうけた。

 また服装のスーツに至っては支給された。

 ただ……魔法課なんて聞いたことがない。

 それにまだ大学2年。ある程度の知識を得ていても、完璧ではない。無理がある。

 それなのに、指名してきた。


 どんな意図があるのか。


 果たして俺が役に立つのか。

 

 疑問点について改めて考え込んでいると。

 「良汰様。そろそろお時間ではないですか?」

 マルスは既に皿の片づけに、はいっていた。

 「おっと。まずい」

 考え込んでしまうのは悪い癖だ。


 とにかく行ってみないことには、わからないか。

 颯爽と身支度を済ませ家を出る。


 里美も準備を済ませ家から出てきた。

 制服を着ることで余計に幼さが増している。


 「あ。そうだ里美。今日の夕食の当番。兄ちゃんできるか分からないから。よろしくな」

 片足立ちで、くつにかかとを入れる動作をしながら

 「大丈夫! 大丈夫! 余裕で作れるから! 行ってきます!」

 小走りで学校に向かって行った。

 行き先は方向的に逆なので、ここで分かれる。


 不安を感じる一方で。謎が多い点に好奇心も抱きつつ。


 …妹の閉め忘れた玄関の鍵を閉めた。

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