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一話



 性転換薬を飲まされて、完全に変化しきる三日間、俺はおおよそ人類が到達したことが無いであろう未知の領域をこの身で味わったのだった。


 キュンキュンでドキドキな鼓動が全身をポカポカさせ、トロトロでふわふわな感覚にじわじわと飲み込まれ、ヌルヌルでグチョグチョの快感にビクビク痙攣しながら、最後はくぱぁしてぷしゃーして女の子になった。




 貧弱な十歳の身体には刺激が強すぎでは無かろうかというくらいに超気持ちがよかった。

 多分人生二周目のメンタルじゃなかったら頭が馬鹿になって廃人になってたんじゃなかろうか。

 なにがそうならないように特注品にした、だ、めちゃくちゃヤバかったぞ。

 という訳で俺、改め私は、女の子になりました。


 いやあ、もう女でいいよもう。

 あんな素敵人生改竄攻撃を喰らって『俺は男だー!』って言い続ける気には起きないもん。

 前世も今世も童貞だったけど、何かそんなんどうでもよくなったわ。脳みそ上書きされましたわ。


 卒業式を迎える前に入学式が来てしまった。

 今日からアヘアへの女の子一年生である。




◇◇◇


「あー……、朝だー……」

 

 カーテンの隙間から漏れだす朝日に、心地良さを感じながら私は呟いた。


 今日から私の、輝かしい女の子生活が始まっちゃうのダ☆


 病弱で貧弱な男だった時代とはおさらばして、ハイパーでキューティーなミラクルお嬢様になっちゃうの☆


 この世の令嬢達を皆蹴散らして、スペシャルゴージャス王子様を絶対ゲットしてやるんだから☆


 ……


 …………




「はあ……、なんてアホくさ……」


 今、私の脳内にもの凄いヘンテコな思考が過った。

 恐らく性転換した余波なのだろう。

 そして凄いナチュラルに、一人称『私』になっちゃってる。むしろ自分のこと俺って呼ぶのに違和感を感じるんですけど。

 そのことに関して別に恐怖とか悲しみとかという感情も湧かない。マジ恐るべき性転換攻撃。

 そんなとても危険な危険性転換薬を自分の子どもに飲ませるとか、マジ恐るべきマイファーザー。


 まあ、文句は後で言うとして、実際どれくらい変わったんだろうか。


「よっこいしょっと……。おおっ、身体がなんか軽い」


 以前はベッドの上から起き上がるのも一苦労だったのが、嘘のように軽やかに起き上がれた。

 そのままベッドから飛び出て身体を確認する。

 今の私が着ているのは兄が昔に着ていたシャツ一枚である。この三日、ありとあらゆる体液やらなにやらで私の身体はべっちょべちょに汚れ放題だったので、最終的にこの防御力を捨てきったスタイルになった。


「うひー……、何かべとべとするし脱ぐかな……」


 部屋に置いてあった鏡台を見つけ、その場所に移動しながらサイズの合わないシャツのボタンを外し、鏡の前に立って一気に脱いで仁王立ち。


 レッツ御開帳。


 病弱ロリータになった私のセクシータイム全開である。




「おおっ!? おおおおおおおおおっ! おおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!?」


 そこには きんぱつの ようじょが たっていた 


 ぜんしん うすよごれていて

 のびきったかみは ぼさぼさで

 からだつきも がりがりだが

 まちがいなく きんぱつの ようじょが におうだちしていた


「おおおおおおっ! おまおまおまおま……! おままままままあああああっ!? おまんまままあああっ!」


 わたしが したをむくと そこには きんぱつようじょの それがあった


 ぜんせの にーとじだいにも なれしたしんで

 しんで てんせいしてからも このじゅうねん むだに ぷらぷらはえていた

 たいきばんせいがたの ぽーくびっつは きれいさっぱり なくなっていた


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ぜんせをくわえて さんじゅうと すうねん

 のぞんでも けっして ほんものを みることが できなかったそれが

 いままさに じぶんの おまたに かわいらしく きざまれている


「おかあああああああああああさああああああああああああああんっ!」


 これが いっぽんすじのとおった

 しゃしんや えなんかじゃない

 ほんものの おんなのこ というやつなのだな

 おんなのこ ばんざい




「あわわわ……おまっ、おま……」


「何事ですか! お坊ちゃま!」


 バンっと勢い良く部屋の扉が開くと、専属メイドのおばさんが数人ほどやって来た。

 びっくりした私は、言葉にならない声をあげながら首だけでメイドの方を向く。

 ヤバいもん見せてしまったとガクガク震えていると、メイド達は頬を緩め、何故か優しい表情を浮かべて私を見つめる。




「お坊ちゃま……、ああいえ、これからはお嬢様ですね。そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。初めのうちは戸惑ってしまうかもしれませんが、これからゆっくり私どもが一つずつお嬢様に教えていきますから」


「え……? し、叱らないの……?」


「何故私がお嬢様を叱るのです? 寧ろ叱られるのは私どものほうです。着替えの用意が間に合わず、お嬢様に恥ずかしい思いをさせてしまい大変申し訳ありません」


 そう言ってメイドのおばさんは持って来た布を、あられもない格好をおおっぴろげていた私に被せてきた。

 叱らないのならロリータ鑑賞会を続けたかったのに。と思っていたら、突然抱きかかえられ部屋の外に運ばれる。


「ええっ!? あ、あのっ! ちょっと!?」


「さあお嬢様、私どもも全力でケアしてきましたが、三日もあの状態でしたから流石に不潔で不快でしょう。今から花も恥じらう乙女の入浴の仕方をレクチャー致しますね」


「ふへっ!? 入浴ぅ!? ま、まって、ひっ、一人でできるよっ!」


「何をおっしゃいますか、病弱だったお嬢様がお身体を清潔になされる時は、今まで私どもが補助して来たではありませんか」


「そっ、そうだけど! なんか嬉しそうじゃないか!? ニヤついてるぞぉ! おいっ!?」


「そうですか? 恥ずかしいのはわかりますが、病み上がりですし、それにお一人ではどう洗えば良いのかわかりませんでしょう?」


「女の子の身体は非常にデリケートなのですよ? お嬢様の身に万が一何かが起きないようにするのも私どもの役目ですので」


「ぬわーっ!」




 熟練のメイド達にそう言われ、なす術も無く風呂場に運搬された後、浴槽にドボン。

 もみくちゃにされながら、ピカピカになるまで身体中をくまなく洗われた。

 髪をやたらトリートメントされ、石鹸がまるまる一個無くなり、お湯も四回程交換した。

 風呂から出た後はガウンみたいなのを羽織らされ、髪の毛を優しく乾かされ、その後念入りにブラッシング。


 何なのだ、お嬢様とはこれ程までに丁寧に扱われるのか。

 今までの男時代は、数日に一度身体を拭いて終わり。だったじゃないか。




◇◇◇


「申し訳ありませんお嬢様。私どもも初めてのお嬢様でしたし、あまりにも汚れていたので、つい気合いが入りすぎてしまいました」


「そ……そうなのか、てっきりこれから毎日ああなるのかと……」


 年甲斐もなく、きゃあきゃあ浮かれてたメイド達は少しして落ち着きを取り戻して私に謝って来た。

 なんだ、そうだったのか。毎日あんなことされたらふやけて溶けて出汁がでてスープが売られ行列が出来る幼女屋になってしまう。


「ですが、これからは身体が不調な時以外は、毎日入浴してもらいますからね」 


「ああ……やっ、やっぱりそうなるの……」


「いわゆる乙女の嗜みの一つというものでございますお嬢様。それにご覧下さい今のお嬢様のお姿を」


「んん……? んなっ! ほぉ……ほあああぁ……っ!」




 メイドに連れられ部屋の鏡台の前に立つ。


 そこには綺麗に手入れされたお風呂上がりの金髪の幼女が立っていた。

 優しく梳かされた髪はふわふわで柔らく、とてもきらめいている。

 頬は少し痩けて顔色も少し良く無いが、それでも病弱だった頃よりかなりマシに見える。

 前髪が邪魔でよく見えなかった目は、ぱっちりとしていて子猫のように愛らしい。




「だれこれ」


 私はそんなことしか言えなかった。

 おそるおそる顔に手を当てると、鏡に映った幼女も手を当てている。


「正真正銘、今のお嬢様で御座いますよ」


 私の後ろにいるメイドが鏡に映った私を、にっこりと優しく微笑みながら見つめてくる。


「うっそだあっ! 男の頃の私はもっと地味だったじゃないかっ!」


 死にかけてて、辛うじて生きていた頃とは断然大違いじゃないかこれ。

 特に目なんか一五〇%くらい大きくなってんじゃん。

 おっかないオッサンの父親ともぜんぜん似てないしなにこれ。


「お嬢様は、亡くなられた奥様に似ておりましたから、性別が変わってそれがより顕著になったのでは?」


 そういうものなのだろうか。確かにそういえば今の顔は、私が五歳くらいの時に死んだお母様に良く似ているような。

 病弱だった私にもとても優しくて、死んでしまった時は凄い悲しかったなぁ。三日くらい泣いてその後一週間寝込んだっけ。

 前世の両親はピンピンしてたから、人生二周目で初めて親の死を見てしまい、凄い悲しかった。

 私と今世の母親で違うのは目つきくらいだろうか。若干つり上がった目つきなのは父親の遺伝子なのだろう。




「さあお嬢様、そのままだと風邪を引いてしまいますよ? 着替えの用意が出来ております」


 予想以上に可愛くなった現実に頭が追いつけないでいると、他のメイドに声をかけられる。

 メイドは手に、何やら小さく丸まった白い布を持っていた。


 丸められていたそれを広げると、上の方に小さいリボンが可愛くあしらわれたあまり派手では無い、穴が三つ開いたしわしわの三角形になった。

 上に大きな穴が一つ、下に小さな穴が二つあり、後ろの方が布の面積が大きく、前の方は全くゆとりが無い。

 二つの穴の間の布地には二重に布が取りつけられていて、しっかりとした作りになっており大変丈夫そうである。


「初めてですので、まずは色々と慣れる為に肌に優しく出来るだけ派手では無い物を用意致しました」


 メイドは優しく語る。そして微笑んでいる。

 羽織っていたガウンみたいなものを脱がされ、再度すっぽんぽんになる。

 そして、他のメイドに丁寧に右足を持ち上げられ、そこに綿一〇〇%であろう純白の三角形を通される。

 通した方の足を降ろされ、今度は左足を持ち上げてまた三角形を通され、足を降ろされた後それはくいっとお尻の部分まで持ち上げられた。


「どうですかお嬢様? キツくありませんか?」


「お……おぅ……」


 お尻からお股をぴったりと包み込み、余裕は無いのに窮屈でない、それの不思議な超常現象は大変誠に奇妙であるが心地が良い。

 なるほど、世の女性方はこうなのだな。とても勉強になる。

 鏡を見ると、真っ赤な顔をした幼女が真っ白なおぱんつを穿いていた。


 紅白で目出たいな。全力で愛でたいな。

 ああこれ自分だった。




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