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音
冷めきった、部屋に一人うずくまる。
全てを失った悲しみと、自分しか残らなかった悔し
さ。
その二つが自分自身を追い込む。
頬を流れる水は、最初は少しだけ暖かかったのに、空気に触れた瞬間、凄く冷たいものとなった。
物音がなにも聞こえない、この部屋で、もう何日過ごしたろう。
一人きりになるのが怖くて、静かな部屋に音楽を流
す。
妹の好きな歌が流れた。
明るい歌なはずなのに、自然と涙が溢れる。
妹の声が聞こえた気がした。一生懸命歌ってる。
でも、ここにはいない。
外からは、ボールがバウンドする音が聞こえた。
跳ね方が、音が、弟のバスケットボールに聞こえた。
カーテンを開けて外を見たら、近所の子だった。
家の目の前の道路でバスケットボールをドリブルしていた。
弟も、よく、あの道路からこの部屋までボールを投げ込んできていた。
何もする気が起きない。
だから、静かに眠りにつく。
今だけは、全てを忘れてたい。
あの子達と会えるその日まで、自分が自分で居られるように。