プロローグ
人間はどうして争うのだろうか。争いからは悲劇しか生まないことなど知っているはずなのに。
「そう、このような争いなど無駄なことだとなぜ気づかない!!どうして、やめようとしない!!」
「うるせぇ!!お前を倒さないと試験が終わらないんだよ!!」
「ですよねぇー…」
辺りを木に囲まれた森の奥。そこに、学校の制服を着た俺と、それを取り囲むように数人の少年少女が立っていた。一見すると社会的に良くないことが行われている光景だが、これはれっきとした学校の試験なのである。
「ふっ、数の暴力など恥ずかしいことだとは思わんか」
「これも作戦だ。お前のチームは早く潰しておくことに越したことはない。あと、その言い方腹立つ」
俺の言葉を、彼らは聞く耳を持たない。
「全く、つまらない奴らだ」
そう呟く俺の脇汗はひどいことになっていた。絶対絶命とはこういうことを言うんだろうな。
数分前まで、彼らと鬼ごっこというよりも狩りに近い攻防戦を繰り広げていた。俺は逃げてただけで、いじめに近かったけど。結局、逃げ道を防がれて今の状態になった。
このままでは殺されてしまう。でも俺は―――
「俺はハーレム築くまで死ねないんだよ!!」」
「…別に殺さないけど」
「あ…そうっすか」
いや、殺されないことはわかってたけど。場の雰囲気で言ってみたくなったんだよ。真面目に返されてちょっと恥ずかしい。
「いいから早くペンダントを寄こせ」
モブキャラが俺に手を差し出す。こいつらの目的は俺が持っているペンダント、それを壊すことである。
確かにペンダントを大人しく渡せば何もしてこないだろう。だが、これを渡せば“あいつ”が黙っていない。いや、本当に殺される可能性すらある。
この学校に入学したこと間違ってたかな…。自然とため息が漏れる。そして、一週間前のことを思い出した。




