幸せに暮らそう
よく分からないが口論になっているみたいに見える。おじいさんと顔を見合わせ二人の様子を伺う。
澪はもう謝ってもらったし話すこともないので帰ってもらってもいいのだがと、嫌な胸の内をしまった。
しばらくして悟が澪を呼んだ。
「どうしたの?もうお店始まる時間なのに」
悟と里中二人に見つめられて澪は目を瞬かせた。
重い口を開いたのは悟だった。
「澪」
今まで「みお」と、呼ばれてなかったのに急に名を呼ばれる。
どうしたのかと澪は身構えた。
「もう俺後悔したくない。やっぱりずっと澪が好きだった。俺と付き合ってくれないか」
突然の告白に澪は目を丸くした。
ここ最近、悟に想いを伝えるということを悟の方から言ってもらえた。
澪自身、悟からの告白がこんなに嬉しいものだとは予想よりはるかに超えていて、言葉を返せなかった。その変わり目から涙がどんどん溢れてくるのだ。
「どうしたんだ?」とおろおろと狼狽える悟も新鮮に映る。
澪は掠れるような声で「嬉しい。ありがとう」と答えたのだった。
それから二人はすぐに付き合い始めた。
親友の有希の結婚式に悟と二人呼ばれたり、芽衣子さんの子供を抱かせてもらったりと、喫茶店の仕事の他にも幸せなことが続いて澪は心が満たされていた。
悟はとても優しくしてくれる。甘やかしすぎじゃないかと思うときもあるが。
三年後。
おじいちゃんの喫茶店を改装して本を貸し借りできるような店舗にした。
新しく生まれ変わったこの店で二人は式を挙げた。
本当に親しい人だけを集めて。