表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/26

最強のゴブリンと最弱なドラゴンさん ※異世界冒険物

ゴブリンの一団が目の前を通り過ぎるのを息を殺してじっと待つ。


この世界でのゴブリンは最強の存在の一角だ。


世界での4強


スライム・ゴブリン・コボルト・オーク


この4種の生物に逆らって生き残ることが出来た者を私は知らない。


私の様に最弱に位置するドラゴンでは精々、人間に擬態して逃げ回るしかないのだ。


ゴブリンの一団が通り過ぎたのを確認すると、溜息を吐いて隠れていた草むらから顔を出す。


「ばあっ」


「ひいっ」


ゴブリンに気づかれたっ・・・・・・では無い。


隣に隠れていた人間にして、私の友ユーキが驚かしてきたのだ。


「おっ、驚いた拍子に変化がとけてしまったでは無いか。」


「わーりぃわりぃ、ドラがあまりにも驚いてくれるからついな。」


「しかし、ゴブリンがこんな所にまで来るとは予想外だったな。」


「だな、あいつらは自分の土地から出ることが無いから安心していたんだが、遊びにでも来たのか。」


「参ったものだな、われ等のような最弱な存在は目をつけられでもすればすぐに滅んでしまうわ。」


「あっはっはっは、お前ら竜は図体はでかいのに最弱だからな。」


「それを知ってて友と呼ぶお主も大概だと思うがな。」


「それはしょうがない。俺達幼馴染だからな。」


「これ、叩くでない、かなり痛いのじゃぞ。」


「んまぁ、戻ってこないうちに早く人間に変化しておきな。」


「分かっておる。急かすでは無いわ。」


魔力を練り、力を込める。


竜の肉体が人の肉体へと変換される。


最後にアイテムボックスに移動されていた衣服を身に着ける。


「終わったか?」


「うむ、終わったのでこっちを向いても良いぞ。」


「ったく、なんで変化する度に全裸になるのかね。」


「うるさいっ、私かてこんな所で全裸をさらしたくないわ。」


「まぁいい、さっさと村に戻るぞ。」


「うぅ・・・」


ユーキにつれられて村に戻ると、そこは焼け焦げた村と、人っこ1人居なくなった村だった。


「まさか・・・」


先ほどのゴブリンの歩いてきた方角・・・


私たちの向かってきた方角・・・


「ユー・・・キ?」


蒼白となった顔でユーキを見上げる。


「ドラ・・・

 生き残りを探すぞ、手伝ってくれ。」


「・・・うん」


私とユーキは日が暮れるまで生き残っている人達を探した。


焼け落ちた家屋の中。


地下室のある家。


町外れの洞穴。


ありとあらゆる箇所を探したが、誰一人見つかることが出来なかった。


「ユーキ、やっぱり・・・」


「それ以上言うなっ」


「・・・・・・・・・」


「ドラ・・・」


「なんだい?」


「とりあえず、俺の家は無事だった。

 今日は・・・休もう。」


「うん・・・」




その日私は変な夢を見た。



「ーい、聞こえるっスか?」


聞こえない。私は今はただ深く眠りたい・・・


「なんだ、聞こえてるんじゃないっスか。」


お願い、今はそっとして置いて欲しい。


「困ったっスね。この調子じゃ今言ってもしょうがなさそうっスね。」


うん、ほっといて。


「せっかく良い事を教えようと思ったんスけどねぇ。」


良い事なんていらない。

村の皆がいれば、他には何もいらない。


「そっスか~。それじゃしょうがないっスね。」


せっかく声かけてくれたのにごめんね。


「いえいえ、でもいつもの角ばったしゃべりもいいけど、今の自分をさらけ出したしゃべり方も似合ってるっスよ。」


そう。ありがとう。


「んじゃ、気が晴れた頃にまたくるっスね。」


ばいばい・・・




という変な夢だ。


「なんだそりゃ、変な夢だな~。」


「うむ、ユーキもそう思うか。」


「でも、その声みたいに素のしゃべりの方が可愛いのにもったいない。」


「なっ・・・ユーキよ、そうからかうでない。」


「いやいや、からかってる訳じゃないんだけど・・・

 でも少しは元気が出たみたいでよかったよ。」


「うむ、いつまでもふさぎ込んでおるわけにはいかぬからな。」


「なら、さっさと出発するか。」


「何処に行くのじゃ。」


「ん~、叔父さんが街の方に移り住んでいるから、その伝手を頼ってみようかとおもってな。」


「街じゃとっ、我には無理じゃ。」


「大丈夫大丈夫、叔父さんも分かってくれるよ。」


「じゃが・・・」


私たちのような最弱な竜種は、街ではどのように扱われるか分かったものじゃない。


この村の人達は私の両親も村の一員として扱ってくれ、私自身も普通の子達と一緒に扱ってくれた。


両親はこんな村は初めてといっていた。


だったら、街はどんな恐ろしい所なのか・・・


今や竜種は極わずかになっている。


元々の個体数が少ないのに加え、最弱の存在であるが故、逆に手厚く保護されるか、見世物となってしまうのである。


「お前をおじさんに預けたら、俺は旅にでるけどな。」


「それって・・・」


「おそらくあのゴブリンの群れだろう?

 なんとしてでも助け出そうと思ってな。」


「そんなの死ににいくと言っているようなものよっ、ユーキまで失ってしまったら、私はっ・・・」


「だが・・・」


「お願い・・・ゴブリンなんて、前に立つだけで何も出来なくなる恐怖の存在なの、人間が立ち向かう事なんてただの自殺よ。」


ユーキは黙って私の髪をなで続ける。




ピカッ




私とユーキの前に光が現れる。


そして光が収まると、そこには一匹のウサギが居た。


「ウサギ・・・か?」


「ウサギ・・・ね?」


ウサギはゆったりと私達の方へ歩いてくると、


「落ち着いたみたいなんで話に来たっス。」


「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ」


「うっ・・・ウサギがしゃべったっ」


「慌てないで欲しいっス。

 昨日そこの少女の夢に現れたウサギっスよ。」


え・・え・・私の夢?


「じゃっ、じゃぁ、ドラが言ってた夢って・・・」


「そうそう、この因幡のことっスよ。」


あれって本当の事・・・だったの?


「昨日は話ができる雰囲気じゃなかったからとおもったんスけど、そこの少年と一緒なら落ち着いているし、今ならちょうど降臨できると思って来て見たんスよ。」


降臨?降臨って、神様とか天使様とかのあれ?


「降臨って、あんた神様かい?」


「いやいや、因幡はただの天使っスよ。」


「ええと、因幡さんって言うのか?」


「そうっス。」


「んで、因幡さんが何を話しに来たんだい?」


「その前にそこの少女が落ち着くのを待って欲しいっス。」


あ・・あら、かなり動揺していたみたいでした。恥ずかしい・・・


「失礼、ちょっと混乱しておった。」


「落ち着いた見たいっスね。なら話ができるっス。

 実はこの世界の事で重要な事を知らせないといけないっス。」


「重要って何だ?」


「実はこの世界、強さと実際の実力って反対なんスよ。」


「反対?」


「そそ、実はかなり昔に、4つの種族が滅亡に瀕して、神様に助けを求めたっス。」


「その4つが最強種 スライム ゴブリン コボルト オークじゃな?」


「その通りっス。

 んで、種族の改造はこの星の生命自体を食いつぶす事になりかねないので、一計を案じたんスよ。」


「どんな事をしたんだ?」


「実力の無い種族ほど、威圧があり、実力の高い種族ほど怯え易くなるようにしたんスよ。」


「えっ・・・と?」


「つまり、4種族は目の前に立つだけで恐怖に身がすくむっスけど、実はめちゃくちゃ弱いんス。」


「マジ・・・かよ・・・」


「そうっス。

 逆にこの世界では最弱といわれている竜種はビビリなんスけど、最強なんスよ。」


「え・・・・・えええぇぇぇぇぇっっ」


「お、驚いたっスか。

 こういうサプライズっていつ言っても楽しいっスね。」


「ちょっ、どういうことだ。」


「実はですね、4種族があまりにも調子に乗って好き勝手してるので、とうとう神様がぶち切れたっスよ。

 んで、残り20頭となった竜種に事実を伝え、4種族をちっと懲らしめて来いって言われたんス。」


「それって・・・」


「ただ、今の竜種はビビリっスから、手伝ってくれるパートナーが必要なんスよ。

 その点、人間のパートナーが居るアンタはラクショーっスね。」


「「パートナー・・・」」


声が被って、お互い見合わせてしまう。


「人族はビビリだけど、それを克服しやすい種族なんスよ。

 だから、異世界の中では人族が一番勇者を輩出しやすいっス。」


「勇者・・・」


「異世界の中には、人と竜が力を合わせた『ドラゴンライダー』という職種があるっス。

 2人でその職種になり、4つの種族を懲らしめて欲しいんスよ。

 あぁ、でも可愛そうだから懲らしめすぎは駄目っスよ?」


「中には優しい種族も居るもんな。」


「うむ、スライム種はかなり穏やかで、他の種族との協調を大切にすると聞く。」


「うん、そのようにきちんと判断する事ができるから、2人には真っ先に声をかけて見たんス。」


「だが、俺の村を襲ったゴブリン達は許せねぇな・・・」


「私も同じ意見じゃ・・・」


「その辺は調子に乗り過ぎた方が悪いっスね。

 それじゃ、因幡はこの辺で失礼するっスよ。」


「ああ、いい事を教えてくれてありがとうな。」


「恐怖を乗り越えられるよう頑張ってみるのじゃ。」


「あ、そうそう。」


「「?」」


「あんたらの村の人たちは、因幡が先に警告を送ったんで、街に避難してるっスよ。

 ゴブリンは誰も居ないのに怒って火をつけていったみたいっスね。

 それじゃ、ばいば~い」




「「・・・・・っ先に言えーーーーーーーーーーーーーーー!!」」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ