表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/26

召喚勇者とハーピーさん ※異世界召喚コメディー物

「どうしてこうなったのですか・・・」


つぶらな瞳、愛くるしい唇、透き通ったように綺麗な肌、さらさらの髪。


しなやかな体躯、大平原のように真っ平らな胸、羽毛の生えた手。


前半は許せよう、というか大いに結構だと思います。


でも後半が問題なのよ。


「あんのチャラ男、絶対ぶちのめす。」




私は大富豪に産まれ、望んで得られないものなど有りませんでした。


売れ切れなんてとんでもない、すぐに作って。


あのアイドルに会いたい。


あの漫才面白いから、連れてきて。


あいつむかつくから破産させちゃって。


あの人良い人ね、店員から店長にしてあげておいて。


etc・・・・


お父様に頼めば、叶わない事など無かったのですわ。


周りの皆も私にひれ伏して、何でも言う事を聞いてくれました。




でもあの男だけは違いました。


低脳なクラスの女共が、いつものように嫉妬からくる嫌がらせで私の靴を捨てようとした所を止めたからって、いい気になっていたり。


掃除なぞ、と。かしずく男共にやらせていたのを注意してきたり。


私が廊下で躓いた時に助けてくれたから、お礼に一千万の小切手を渡そうとしただけなのに、


「そんなんじゃないから。」と言って受け取らなかったり。


バレンタインで世話になっているからと、有名パティシエに特別に作らせた義理チョコを渡そうとしたら、


「こんな高そうなの、返せないし。」と突っ返したり。


何故、私になびかないのですか。




私はムキになってあの男の事を調べさせましたわ。


するとまぁ、なんと平凡な事でしょうか。


親子4人、母親とあの男と双子の妹。


母親のパートで生計を立てていて、あの男もバイトで家を助けている。


ふん、お金に困っているだけじゃないですか。


ですが、一千万の小切手は断りましたわよね。


他人からの施しは受けないと言う、貧乏人特有のプライドと言うものでしょう。


ならば、母親のパート先と、あの男のバイト先にでも裏から工作して給料を今の3倍に上げさせましょう。


それが私の手回しとわかれば、感謝して今までの無礼も謝ってくるに違いありませんわ。




・・・・・・・・・何と言う事でしょう。


あの男ってば、私を見たとたん、


「余計な事しないでくれよ。おかげでバイト先が傾きかけたんだからな。」と言ってくるではありませんか。


たかがバイト1人の給料を上げる程度で、傾きかける経営だったなど信じられません。


母親の方もどうなっているか調べさせてみましょう。



母親の会社は我々のグループ傘下だったようで、問題なく給料を上げることができているようです。


ならば、そちらのお礼を私に言うべきではありませんのでしょうか。


私がただ1人の人間に、ここまで関心を持つことなぞありませんのに・・・


最近お父様も、


「その、なんだ、気になる男性でもできたんじゃないのか。」


とあの男の事をほのめかしてくるではありませんか。


私はあの男が気に触ったので、2度とちょっかいを掛けて来ない様に、色々と手を尽くしているだけですわ。と答えました。




その後も、あの男のために手を尽くしては、逆に怒鳴り散らされる事ばかり。


私の好意を踏みにじってくるあの男は、絶対に許せませんわ。


必ず私の足元に土下座させて、


「身の程を知りました。今後はお嬢様のお側でお役に立たせていただきたいと思います。」


と言わせてやるのですわ。




そんなある日の事です。


あの男がいきなり学校に来なくなってしまいました。


最初は風邪か何かで倒れているのだろうと、この私がわざわざお見舞いに行ってあげたと言うのに、


「お嬢さん、ごめんね。ちょっと息子は今、人に会う事ができなくてね。」


とか言って追い返されたじゃありませんか。


これは学校にきたら、尋問してあげないといけませんわ。


ですが、そのまま1週間、2週間と過ぎたにもかかわらず、彼は登校して来ません。


さすがにその頃には、何か裏があると調べさせましたわ。


するとどういうことでしょう。


彼はあの日以来、ぷっつりと消息を立ったのではありませんか。


母親も双子の妹もほっぽり出して、何処を彷徨っているのでしょうか。


もちろん私はお父様にお願いして、あの男の居場所を捜していただきました。


ですが、何処にも居ないといってくるではありませんか。




どうした事でしょうか。あの男に会えない・・・そう思うと何故か涙が溢れ出してきたのです。


私はお父様にお願いして、あの男がいつ帰ってきても大丈夫なように、母親と双子の妹の事をお願いすると、家を飛び出してしまいました。



私はあの男を捜して彷徨っていると、妙なウサギがいました。


その口には、あの男の学生証が咥えられているではありませんか。


私はウサギを追いました。


何処をどう走ったのか判りませんが、見た事も無いような部屋にいました。


驚いた事にウサギは口を開きました。


「いや~、まさか彼にここまで固執している人が居るとは思って無かったっス。」


「何故、ウサギがしゃべりますの?」


「自己紹介が遅れたっス。

 名前は因幡っス。

 これでも天使してるっス。」


「まぁ・・・天使とは人に羽の生えた生物と相場が決まっております。

 ウサギ風情が嘘を付くんじゃありません。」


「いや、だからっスね」


「それよりも何故、彼の生徒手帳を持っているのですか。答えなさい。」


「手帳は預かり物っスよ。

 彼は異世界に旅だったっス。」


「異世界とは何ですか。

 彼を何処に連れて行ったのですか。」


「異世界とはあんたの住んでた世界とは別の断層にある次元の事っス。

 彼は勇者として、異世界『ゴルゴン』へと旅立って貰ったっス。」


「彼を拉致して何をたくらんでいるのですか。」


「企むとかとんでもないっス。

 彼の父親の世界を救って貰う為に、手を貸してもらったっス。」


「父親のですって?」


そういえば、彼の父親に関してだけは、どんなに調べても詳しい調査報告が上がってきませんでしたね。


「そうなんスよ。

 彼はゴルゴンの英雄と地球の女性の間に生まれたいわばハーフって奴なんスよ。」


「で、何故彼で無いといけないのですか。」


「彼の一族で無いと、勇者になれないと言う決まりがあるんスけど、彼の一族って他は滅んでいて実はいないんスよ。」


「で、彼をその『ゴリゴリ』でしたかしら?に誘拐したと。」


「『ゴルゴン』っス。世界を救って貰う為にお願いしたっス。」


「では、彼は『ゴスロリ』を救ったら帰ってきてくれるのですね。」


「えーと・・・・っスね。」


ウサギは顔を逸らす。


「私はか・え・っ・て・く・る・か・と聞いているのですが。」


「実は、神様のお願いで『ゴルゴン』で世界を救った後、勇者の種を残すよう頼まれているらしいっス。」


「く・わ・し・く、聞かせてもらえますわね。」


「ひ・・・ひぃぃ、判ったっス。

 すぐに神様を呼ぶので間ってほしいっス。」


ウサギは耳の穴からかしら?携帯を取り出しました。


「あ~、俺俺、俺だよ俺。

 そうそう、因幡っスよ。

 で、神様、この間の件でまた困った事が起きましてね。

 あ~、いやいや、そっちじゃないっス。

 彼女は魔王妃として、順調?に生きてるっス。

 そっちじゃなくて『ゴルゴン』の件っス。

 そうそう、それが現世で予想外のトラブルが起こったんスよ。

 おっけおっけ、すぐ来てくれっス。」


ウサギは携帯を仕舞うと、すぐ横にどうみてもチャラいお兄さんが現れたました。


「マッジー?因幡ー、トラブルってこのチャンネー?」


「そッス、キューピッドの野郎、すでに赤い糸を結んでいたみたいで。」


今、なんと言いました。赤い糸ですって。


「うっわ、マッジ?それヤバくない?」


「そうなんスよね~。彼にはあっちで子供バンバンこさえて貰わないといけないんっスよね。

 それが現世にキューピッドの悪戯が残っちゃって、困ってるんスよ。」


「そうネー。

 よし、チャンネー。

 今からチャンネーは『ゴルゴン』の住人ね。これケッテー。」


「ちょっ。」


「神様、それでいいんスか?」


「オッケオッケ、勇者にはあっちで子供こさえて貰わないとそのうち世界が崩壊するし、こっちのチャンネーは無事彼の後を追える。

 これチョー問題なくない~?」


「いいっスね~。」


黙って聞いていれば・・・、そんな事良い訳有りませんわ。

私は彼の後を追いたいのでなく、彼に跪かせたいのですわ。


「良くありません。」


「じゃ、チャンネー、後はシクヨロー。」


「がんばれっス~。」


3つの声が被ると、私の周りの景色がフェードアウトしていきました。


なんて自分勝手な人達なんでしょう。


本当に神様なのか、怪しいにも程がありますわ。


・・・・・・・でも、彼ともう一度会う事ができる。


しかも赤い糸で結ばれているですって・・・・・


どうしましょう。少しだけ顔が緩んでしまいますわ。






そして私の意識が戻った時、湖で姿を見た結果がこれだった。


「とりあえず、チャラ男とウサギは殺す事として、これからどうすればいいのかしら。

 それと私は本当に人間なのかしら。」


※一般的にハーピーと呼ばれる魔物です。


「とりあえず、彼を探すのが第一ね。

 この体に慣れつつ探しに行くのですわ。

 ・・・そして・・・・むふふ・・・」






※こうして、人間の勇者とハーピーの少女の種族を超えた愛の物語が・・・・・・すいません始まりません。

なんとなく気に入ってしまい、因幡さんとチャラ男さんはまた出てしまいました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ