表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/26

コロッケ魔王と転生した私 ※異世界恋愛物

茹でたじゃがいもを潰して、炒めたひき肉と玉ねぎをいれる。


グリンピースなんかも入れるといいかな。


塩コショウで味を調えた後、成型。


小麦粉とパン粉をまぶしてっと。


180℃に熱した油で揚げること5分。


これでコロッケの出来上がりっと。


「みんなー、ご飯出来たよー」


この孤児院でご飯を作るようになってから5年経とうとしています。


この世界に転生してから16年。


前世で読んだ異世界物だと、チート能力とか、勇者とかあったけど、私にはそんな能力は一切有りませんでした。


精々、前世の主婦としての経験が活かせるだけです。




私は、前世では20歳で結婚し、2人の子供をもうけました。


長女が10歳の頃、私は車道に飛び出した娘を助ける為代わりに交通事故にあう事となったのです。


消え行く意識の中、2人の子供と夫にお別れの言葉すら言えなかったのだけが悔やまれました。


でも、夫はしっかりした人だし、長女は私のお手伝いで良く家事をしてくれていました。


きっと戸惑う事は多いだろうけど、親子3人で仲良くくらしてくれているでしょう。



そんな事を考えていたら、意識の中に現れた、天使を名乗るウサギさんから、


「ごっめ~ん。

 うっかり、不幸の種を落としちゃってさ、回収の為にさくっと死んで貰ったっス。」


目が点になりました。


事情を聞いてみると、不幸の種という危険物質を運搬中、過って私達の世界に落としてしまったと言うではありませんか。


その不幸の種が、偶然私の魂に取り込まれてしまい、このままでは生きながら地獄のような生活を送らなくてはならない事を不憫に思い、いっそさくっと私の魂が天に召されるよう誘導したとの事です。


詳しく聞いてみると、なるほど死ぬより辛い生活を、私だけでなく子供達や夫に振りかからせるよりはその方がいいと理解は出来ます。


でも、理解と理性はまた別物です。


とりあえず、うさぎさんには笑顔で反省していただきました。


息も絶え絶えのうさぎさんは、


「いやいや、ほんと、申し訳ないと思っておりますよ。

 ・・・・・・・・ちょっと神様に連絡取らせてくださいね。」


そういうと何処から取り出したのか、うさぎさんが器用に携帯をいじっています。


「あー、神様。

 俺俺、俺だよ俺。

 そうそう、因幡っス。

 ちょっと困った事になってさー、・・・うん・・・そうそう。

 それでさー、ちょこっと彼女の事何とかしてくんない。」


そう言って携帯をしまうと、ちゃらいお兄さんがうさぎさんの隣に現れました。びっくりです。


「っか~、マッジヤバイッしょ~。

 コイツ因幡っちゅ~んだけど、良い奴なのよ~。

 でもちょびぃ~っとばかし、抜けてるところがあってね~。

 ジョーキョー?、ハアクするから待っといて。」


今度はちゃらいお兄さんが携帯をいじっています。

場合によってはお兄さんにも反省して貰わないといけないですね。


「マジ?マッジコレ?

 チョッ、ヤバスギっしょ~。」


「あ~、やっぱ神様もそう思う。」


「因幡~、ヤ・リ・ス・ギ☆

 チャンネー、ゴメンね~。

 これ、不幸の種取り出すにはチャンネーに消えて貰うしかないわ~。」


「どういうことですか♪」


笑顔で聞いてあげます。


「ヒイッ、かかかかか・・・・神様っ。

 このあっしの顔に免じて何とかなんないっスか?」


「そうネ~。

 今回の事は因幡のセキニン?って~のが強いからね。

 因幡~、超幸運の種持ってるっぺ?」


「1つだけなら残ってるっス。」


「なら、このチャンネーに融合させればオッケーっしょ。」


「ちょっ、神様マジっスか。」


「マジマジ、チョーマジー。」


「ご説明いただけますわよね♪」


因幡さんは何処からか光る種を取り出すと、


「これが超幸運の種っス。

 これを魂に取り込めば、不幸の種のせいで不幸な事が起こっても、超幸運で逆転できるっス。

 あとは、記憶を持たせたまま転生させてあげるっスから、運が避ければ家族とまた会えるっスよ。」


「あ~そうそう、家族がフコーになるの嫌って言ってたっショ。

 ちょこ~っと弄って、チョー美人のチョー金持ちのチョー優しいチャンネーとぶっとい縁ってーヤツ?

 作っといたから、後は安心してイイよ~。」


それだけ言うと2人の姿が消えていってしまいました。

まだ言いたい事がたくさんあったのですが・・・

それに最後何と言いました?これは反省して頂かなければなりませんのに、残念です。




そして目が覚めたら、私は2歳ぐらいの少女の姿でこの孤児院でお世話になっていました。


いきなり孤児ってハードル高すぎませんか。


だけど、この孤児院。後で聞いたのだけど、王様の私設孤児院で、王族のお側係を育成する孤児院でした。


その後も、私を中心に不幸が襲い掛かっては幸運に変わる事が何度も有りました。


私は施設始まって以来のトラブルメーカーとして名を広めてしまいました。


その為、私の家事技能はお側係として文句のつけようが無いとまで言われたけれど、何かが起こっては一大事とそのまま施設で幼い子達の面倒を見ることを仰せつかりました。



それから5年。


私は立派にこの施設の施設長補佐となり、食事の際には、前世で作った料理などを振舞っています。



ガシャーン


目の前のガラスが割れると、1人の男性が飛び込んできました。


見目麗しい出で立ちと甘いマスク。


一目で高貴な方という雰囲気が出ています。


但し、額の中央に角が生え、背中には漆黒の翼が生え揃っているではありませんか。


『魔族』


人間の天敵にして、捕食者。


そのような存在が何故この王都に居るのでしょうか。


「くっ、やはり王女を攫うのは一筋縄でいかないな。」


彼は立ち上がると、周りを見渡しました。


「ここは孤児院か。ふむ、ならば相手にする訳にはいかぬな。」


私は意を決すると、フライパンを手に彼の前に立ちふさがりました。


「貴方は何者ですか。」


「我か、我は魔王ぞっ」


施設長、どうしましょう。魔族でも大変だったのに魔王らしいです。


「その魔王さんがどのような用事で、我が施設へいらっしゃったのですか。」


「我もそろそろ妻を娶る時期と思ってな、魔王とは王族の姫を攫い、妃とするものであろう?」


「そのような事聞いたことございませんが・・・」


「ふむ、そうなのか。

 だが、魔族の女は皆野心が強くてのう。

 ほとほとうんざりなのだよ。」


「では、我が施設には関係の無いはずです。

 お引取りをお願いしたします。」


「うむ、我も人間とは言え、女子供に手を出すような無粋なマネはせぬ。

 女、そんなに構えなくとも良い。」


「では、お引取りを。」


「その前に良いか。」


「何でしょうか。」


「食事が用意してあるようだが、我も食して行って良いか。

 ちと小腹が減ってのう。」


あら、お腹が減っているのでしたら可愛そうですね。


子供達に危害を加える様子も無いようでしょうし・・・


施設長様を見ると、うなずいています。


「では、ご飯を食べたら出て行ってくださいね。」


「魔族は約束は必ず守る。安心したまえ。」


そして、子供達に混じって中央に魔王が、他の子達と同じように行儀良く座っています。


子供達も、魔王におびえるどころか、敵意が無いのを敏感に察しているのでしょう。


「その角って本物~?」


「ね~ね~、空飛べる?」


早くも打ち解けています。


「それでは、いただきます。」


「「「「「いただきます」」」」」


魔王は子供達に習ってパンをちぎり、スープに浸して食べています。


驚いている、驚いてる。


私の作った料理は、この世界では規格外の美味しさらしく、最初に食べた人は必ず驚きます。


魔王は誰よりも早く食べ終わると、皿を出してきました。


「お変わりを貰ってもいいかな。」


私はおかわりのスープとパンを手渡すと、また一心不乱に食べはじめました。


「なー、魔王、パンにねーちゃん手製のコロッケをはさむと更にうまいぞ。」


「コロッケとは何じゃ。」


「これこれ、美味いから食ってみな。」


言われた魔王はコロッケにかじりつきました。


凍り付いているのが判ります。どうしたのでしょうか。


「こっ・・・これはっ・・・」


すぐにコロッケを食べ終えると、他の子達に


「もう一個貰っても良いか。」


と聞いています。


相当気に入ったのでしょうか。


子供達も私の料理を気に入ったのが嬉しいのか、自分の食べかけのコロッケまで魔王に渡してます。


あらあら、いくらなんでも魔王と呼ばれる方が食べかけなど・・・・あら、食べましたね。


食べ終わった魔王はじっと机を見ています。


子供達は魔王に触ったり叩いたり、よじ登ったり。


一緒にご飯を食べたからでしょうか。凄く仲良しさんに見えます。


魔王はいきなり顔を上げると、子供達が怪我しないように優しく下ろして私の方へ向かってきました。


「娘、名を教えていただけないだろうか。」


えっと・・・、施設長様はうなずいていますね。


「ミーネと申しますわ。」


魔王は何度かうなずいた後、


「うん、ミーネか、良い名だ。

 私と結婚して欲しい。」


目が点になってしまいました。


施設長様を見ます。あの方も目が点です。


子供達は大はしゃぎです。


私はどう答えた物でしょうか。


「もちろんすぐでなくても良い、準備が出来次第わが国に来てくれれば良い。」


ええっと・・・・


あ、施設長様が私を見ました。凄く困っています。


「断ったからと言って、ここで暴れたりはせぬ。安心して欲しい。」


魔王って本当は優しい人のようにも見えますし、求められるのは女の華とも申します・・・


施設長様はあきらめた顔で手を振っています。好きにして良いみたいです。


ならば、私の答えは決まりました。






「では、お友達から始めましょう。」


×私設庁 ○施設長  間違っていたので訂正いたしました。

ご指摘ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ