表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/26

異世界召喚と勇者の武器 ※異世界召喚物(オチ有り)

1話目は異世界召喚ものとしてみました。


お楽しみいただければと思います。

診察室には、俺と先生と教師の3人が居る。


「網膜剥離の兆候が見受けられます。

 このままボクシングを続ければ間違いなく失明をするでしょう。」


俺と教師にPCを向けながら説明する。


俺の目の断面図がモニタ上に表示され、先生が症状の説明をしている。


「この部分に剥離の兆候が見られ、おそらく頭部への強い衝撃が~~~」


その説明を聞きながら、先ほどの1戦が思い浮かぶ。


俺はただ1度もパンチを受けていない。


常に相手を圧倒していたが、不意をついてクリンチから目にヘッドバットを受けた。

ただそれだけだったのだ。


教師は先生へ、


「次の試合はどうなんですか。

 明日はインターハイの決勝なんですよ。」


試合の方が大事と言う事か、公立の田舎高校がここまで来たんだ、もう少しと欲が出るのも仕方ないだろう。

この教師とは、どんなに大変な時も2人で乗り切ってきた。

それぐらい教師に付き合うのもいいだろう。


「こいつは・・・この子はこの日の為にずっと頑張ってきたんだ。

 公立の、施設もままならない学校で歯を食いしばり、2人で歩いてきたんだ。

 それをあんな反則のせいで・・・、終わってしまうなんてっ」


反省。

どうもさっきの試合のせいで暗い気分が抜けないようだ。


しかし、この教師がこんなに熱い人だったとはな。

どんな時もすましてやっていたから、冷静な人と思っていたが・・・


「1試合ならと思うかもしれません。

 ですが、その1試合で剥離する危険性が無いとはいえないのです。

 先生、貴方は彼のことを本当に思っているのがわかります。

 だからこそ、彼の為にも棄権すべきなのです!!」


教師は俺のほうを見ずにただ一言


「・・・・・すまん、俺はお前の方が大事なんだ。」


その一言を聞いた俺は、溜まっていたものが溢れ出し教師の肩に顔をうずめて何年か振りの嗚咽を吐き出した。





ボクサーとしての人生は高校と言う短い中で終わった。


将来を有望されていただけに、マスコミにも何度も取りざたされた。


周りも一時は腫れ物を触るように扱っていた。




季節が何度回っただろう。


今までボクシングに捧げた時間をもてあますように、勉強や遊びに溺れて行った。


勉強は常にトップクラスとなったが、ゲームやアニメと言った今まで見向きもしなかった文化にも染まった。

いわゆるオタクと言う所だろう。


今日も友人に新しいRPGゲームを借り、家路についている。


最弱のスライムにも手こずっていた勇者が経験を積み、最後には世界を脅かす敵を討ち果たすまでになる。


努力が必ず実を結ぶこの世界に、俺は没頭していった。


視界が見難くなる。


いつの間にか癖になっていた、左目を抑えるしぐさをしてしまったのだろう。


と思ったが、左手は間違いなくハンドルを握っている。


まさか網膜剥離が!?


あせってブレーキをかける。



動かなくなったからか、左目が見えてくる。


但し、いつもの道路じゃなく、見た事も無い風景。


いわばゲームの中の王城のような景色・・・



もう一度目をしっかりとつぶり、目を開く。


すると、今度は両目とも王城のような景色に切り替わっている。



壁には、ゲームで良く見る甲冑に身を包んだ騎士がずらりと並んでいる。


「勇者様よ、よく召喚に応じてくださった。」


右側から重圧の感じる声がかかり振り向くと、玉座に座った壮年の男性が俺を見ている。


「召喚師殿、ご苦労じゃった。

 召喚は成功したのじゃな。」


「は、間違いなく伝承どおりに儀式は終了いたしました。

 この方が勇者様に間違いないと確信しております。」


すぐ右側から女性の声がする。


さらに右を向くと、ローブを上からすっぽりと被った女性が俺に向かってかしずいている。


「勝手にお呼び立ていたしまして、誠に申し訳ございません。

 私は貴方様を招かせていただいた、ア・イウ・エーオと申します。

 どうぞご無礼を承知でお願いいたします。

 どうぞ、この世界をお救いください。」


ア・イウ・エーオ・・ね。

・・・・あいうえお・・・?

「ぶふうっっ」

いかん、噴出しかけた・・・・



エーオが更に深々と頭を下げる。


俺が怒ったと勘違いしたのか、王様が慌てて声をかけてくる。


「その先はワシから説明しよう。

 エーオよ、下がりなさい。」


「は」


召喚師が後ろに下がると、王様は改めて声をかけてくる。


「勇者殿にはまったく関係ない世界の頼みごとをしているのは、承知の上で聞いて欲しいがよろしいだろうか。


 この世界では勇者殿しか扱えない武器と、その武器でしか傷つける事のできない世界の脅威があってのう。

 その脅威をこの世界では『石版』と呼んでおる。


 石版は数十年に一度の頻度で世界に現れ、魔物を次々と生み出してくる存在であり、石版は大きさにあわせて呼び出す魔物の格が違い、最小の石版でもひとつの街を押しつぶすほどの脅威なのじゃ。


 ワシらも勇者に頼りきりにならんで良いよう、独自に石版に挑んだのじゃが、魔物を駆逐する事はできたが、石版にはどのような手段を用いようとも傷1つつけることが出来んかったのじゃ。


 そこで恥を忍んで勇者殿を及びさせていただいた。


 勇者殿よ、このとおりじゃ、どうか伝説の武器を用いて石版の駆逐をお願いしたい。」


王様が俺に対し頭を下げると、周りの人たちがざわつく。

中には、


「王様、そのように頭を下げないでください。

 代わりに私が・・・これこのようにお頼み申し上げる。」


と言って俺の前に頭を下げてくる。



RPGの世界・・・確かに憧れた部分もあるが、これは夢じゃない、現実の事なんだ。


つまり、魔物に襲われる人々も居るのが現実。


そして俺にはそれを手助けする力があるらしい。


「もちろん、こちらからの一方的なお願いじゃ、出来うる限りの援助と成功時の褒賞は思いのままじゃ。

 ワシの王座が欲しいのであれば、王座を譲る心構えも出来ておる。」


それにこの王様なら、信用してもいいかもしれない。


「分かりました。

 俺の力で出来うる限りの範囲ではありますが、お力にならせてください。」


周りがその言葉に沸き立つ。


「本当にありがたい。

 エーオよ、伝説の武器をここに」


先ほどの召喚師さんが俺の前に箱を捧げ持ってくる。


「これが伝説の武器じゃ。」


俺は箱を開き、中の武器を覗き込む。




手のひらにおさまる様な形状と、そこに開いた4つの穴。

色が銀色でおそらく鉄製のようにも見える。


そう、『メリケンサック』だ・・・



「様々な使用方法の模索や、魔力を流すなど、出来うる限りの事はしたのじゃが反応をまったく見せんかった。

 間違いなく先代勇者様の使った武器なのじゃが、どうしてもただのおもちゃのようにしか見えんでのう。

 勇者殿なら使用方法を分かるのではないと思ったのじゃが、分かるかのう。」


そりゃぁ、分からないだろう。

喧嘩をする時に拳を守る為の装備で、とてもじゃないが剣や魔法の世界で扱う武器ではない。


「どうじゃ、勇者殿。

 いけそうかの。」


俺は勇気を振り絞って答える。


「・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり無かった事で。」

※この話は続くわけではございません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ