提案
俺が目を覚ますと医務室ような場所にいた。のそりと立ち上がり窓を覗くと映る景色からどうやらあの研究所の一室にいるようだ。振り返ると隣のベッドにレビィがまだ寝ていた。
「こいつも黙ってればいい女なのになあ……」
俺はレビィの顔を見ながら思う。スタイルも身長が低いことを除けば特に悪いところなんてない。
ちょうどそのとき部屋のドアが開いた。入ってきたのはピエールさんだった。
「あらー?あらあらあらあらー?もう意識が回復したの!?すごいわね、あなた!まだ1時間くらいしかたってないっていうのもう意識が回復してる……おかしいわね、少なくとも真正面から喰らえば少なくとも丸一日位は寝込むはずなのに……まあいいわ!あなたもう動けるわよね?」
俺はピエールさんの言葉に驚く。いろいろな意味で。丸一日寝込むほどの魔法を人で試すってどんな神経してんだ、この人……。
「あ、はい動けます」
「あらそう!じゃあさっそく残りの魔法も受けてもらおうかしら!うれしいわーあなたがこんなに早く意識を回復してくれたおかげで予定がはかどるわ!!さっ、また中庭まで行きましょ!」
「ちょちょちょ!残りの魔法ってあといくつあるんだ!?もしかして全部さっきの魔法みたいに激しい魔法なのか!?」
俺は少しばかり焦りながら聞く。
「大丈夫よ!残り1つしかないわ!それに激しくはないわ!安心して。さあ、行きましょう」
俺はピエールさんの言葉をそのまま丸のみにすることができなかった。まあ、当然だが……。
「この魔法は複数の火の玉を飛ばす魔法よ!あなたにはその魔法をできれば避け続けてほしいの!いいわね?それじゃいくわよ!3、2、1、ドン!」
俺はすでに諦めをつけ戦闘モードになる。やはり魔法はピエールさんのドンという合図よりもはやくやってきた。火の玉の数は確認したところ5つ。正面に3つと左右に1つずつがかなり速い速度でこちらに向かってくる。俺は急いでバックステップをとり少しでも距離をとる。ちょうど正面の3つの火の玉が1つに合わさった。それは狙ってやったことではないが棚ぼただ。しかしそのおかげで火の玉はかなり大きくなっていた。合計3つの火の玉がやってくる。俺はバックステップをやめて。すでに十分な助走距離は稼いだ。俺は火の玉のほうに直進する。俺と火の玉の距離がぐんぐんと縮まっていきあたる寸前に俺は火の玉を飛び越える。正直かなりぎりぎりまで引きつけたせいで少し髪がこげてしまった。
「おお!?やるわね!さあ、どんどん速くするわよー!!」
なっ!これ以上速くするのか!
俺は焦りながらも冷静に対処する。すぐさま後ろを向き、火の玉の位置を確認する。火の玉はグルッと旋回するように再び向かってきた。
この場所は研究所の中庭なので周りがすべて壁で覆われている。俺はパルクールサークルで学んだ経験と技術をもって壁に蹴りあがった。火の玉はそのまま壁にぶつかりそうになるほど近づき、すぐに上昇を始めた。そうなることはわかっていたので俺は壁を蹴り反対側の壁まで跳ぶ。強化された身体能力のおかげで左右の壁の間、およそ30メートルを楽々とまたぐ。火の玉は再び地面と水平になる軌道でこちらに受かってきた。そこで俺は再び壁を蹴り火の玉とすれ違う形で火の玉の横をすり抜ける。火の玉がまたこっちに来たとき俺はまた先ほどと同じような軌道でこちらにやってきた。再度俺は火の玉とすれ違う形で避ける。このようにして俺は火の玉をパターンに当てはめることができた。少し余裕ができたところでピエールさんに話しかける。
「ハッ!……ピエールさん!もういいんじゃないですか……ハッ!……そろそろ、無意味なことが理解できたでしょう?……フッ!」
俺は左右の壁を行ったり来たりしながらそう問う。
「……ええ、まさか私の魔法にこんな欠点があったとは思わなかったわ……ということは同じ経路が何度か続いたら自然と第二の経路を通るように調整すればあるいは……」
ピエールさんはぶつぶつ言いながら考え込む。
「ちょ!ピエールさん、終わったなら魔法を消してくださいよ!」
「……うん、これなら大丈夫な気がするわ、あとは魔力の消費量を調整して……あら、ごめんなさい、少し考えてしまったは!魔法を消すことなんてできるわけないじゃない。一度世界が具現化させた魔法は消せないことなんて誰でもしってるでしょ?あなたがその魔法にあたるくらいかしら、消す方法と言ったら」
「……な、なんてこった……はあ、こうなったら打ち消すしかないか」
俺は決意し再び火の玉に向き直った。そのまま先ほどまでと同じように俺と火の玉がお互いに近づく。当たる瞬間俺は今までのように避けるなんてことはせずに思いっきり拳を前に突き出す。俺の拳と火の玉が衝突し火の玉のほうが形を崩して爆散した。俺はその勢いに飲み込まれて地面にたたきつけられる。
「グハッ!!……いってえー、はあ、もうこりごりだ……」
俺はそのまま半分にちぎれた張り紙にサインを書いてもらった。
「ありがとうねー!あなたのおかげで魔法の改良点が見つかったわ!次もお願いするときはお願いね!!」
「あはは、まあ、ほどほどにお願いする……割とまじで」
俺は最後をボソッと言う。
「報酬金は二人でやったけど半分にするのがいいと思うけど、あなたは二つの魔法を受けてもらったからそうね報酬金を250000ギドにしとくからあなたは150000ギドもらいなさい!もう一人の女の子は意識を取り戻すまで私のほうで寝かせておくわ、それじゃ、またね!」
そう言ってピエールさんは研究所に戻っていた。
「結構激しい依頼だったけどおかげで大量のお金が手に入ったぜ!何に使おうかなー」
俺はホクホクした気分でギルドへ向かった。
「はい、サインを確認しました。報酬金の150000ギドです」
受付のお姉さんに報酬金をもらう。
「そういえば、猛火の使い手さんと一緒に行ったと思いますがなにかあったんですか?」
「あーあいつはまだ気絶してるからたぶん明日くらいに受け取りにくるんじゃないか」
俺はたんまりと金貨が詰まった袋を見ながら答える。
「……そうですか、いささか心配ではありますがこれであなたは依頼を達成しました。Eランクの依頼をあと4回、Dランクの依頼をあと1回達成すればあなたのギルドランクはDランクに上がります。それではよい冒険者ライフを」
お決まりの文句を聞き流しながら俺はギルドを出る。
どうやら自分と同ランクを5回もしくは一つ上のランクの依頼を2回達成すればランクがアップするらしいな、まあ地道にがんばるか。
そんなことを考えながら帰路についた。
俺は現在スマートフォンをつつきながら調べものをしていた。調べものとは大人数でやることができるゲームについてだ。
というのも俺はとある依頼を受けていた。その依頼というのがこの街の長が今年で56歳を迎えるらしい。それで一週間後に誕生日パーティという街全体で行う祭りがあるのだがそこでの催しものを誰か考えてくれというものだった。それで報酬金が1000000ギドという高額なものだったため俺はすぐさまその依頼を受けた。今現在はどんあ催しものにするか検索中ということだ。どうやらその祭りは街に住んでいるもの全員で行うためかなりの人数が集まるらしい。さらに冒険者なども参加するためできるだけ派手な企画がいいらしい。
「さてっと、とりあえず思いつく限りのことは調べたかな」
フルーツバスケット
1.椅子を内側に向け円状に配置して座る。椅子の数は参加者の総数よりも1つ少なくする。鬼はその円の中に立つ。
2.座っている参加者に、数種類の果物の名前をつけておく。(リンゴ、みかん、ぶどうなど、チームわけをする要領で)
3.鬼が特定の果物の名前を呼ぶと、その果物の名前がついている人と鬼は、立ち上がって、他の椅子に座る。
4.鬼が「フルーツバスケット!」と言った場合は、全員が立ち上がって、他の椅子に座り替えなくてはならない。
5.鬼が、立ち上がった人の椅子に座ると、椅子の数の関係で、他の子が椅子に座れなくなり、鬼が交代する。
6.椅子の数を減らしていき、最後まで椅子に残った人の勝ち。
又は
1.椅子の数は変えず、かわりに3回や5回など鬼になっても良い回数を決めておく。
2.上と同じ様に遊び、最初に決めた回数以上鬼になった人は罰ゲームをやらなければならない。(勝敗は無い事もある)
しばしば椅子とり争いが過熱し、椅子に座っている人をムリヤリ引き摺り下ろす事態も発生する。
ケイどろ(どろけい)
警察による泥棒の全員逮捕を目的とする。警察は、泥棒をタッチする(触る)ことで「捕まえた」ことになる(牢屋まで連行しないと捕まったことにならないルールもある)。
捕まえた泥棒を集めておく場所を、「牢屋」などと呼ぶ。
牢屋は、後述する性質上、周りが壁に囲まれているような場所なら警察側に有利に、逆に周りが完全にひらけていたり、見通しが悪いと泥棒側に有利に働く。牢屋決めは双方のチームの最初の駆け引きと言っても過言ではない。
泥棒は、仲間に助けられる(仲間が既に捕まっている者にタッチする)と再度逃げることができる(もっとも、警察の隙を見て、タッチされていないのに逃げる者もいる)。
泥棒が再度逃げることができるようになるためには2つのパターンがある。
牢屋外での再逃亡
警察が泥棒にタッチすると捕まったことになるのは前述したが、牢屋へ連行している間に泥棒の仲間が捕まった泥棒にタッチすることによって再度復活することができる。それを防ぐために警察は捕まえた泥棒の服や手を握ったまま連行するなど、考慮が必要となる。
牢屋内での再逃亡
捕まった泥棒はあらかじめ設定された牢屋まで連行され、そこでゲームの終了まで待機することになる。
だが、捕まった泥棒にもまだチャンスが与えられている。仲間の、まだ捕まっていない泥棒のタッチをもらうことによって再逃亡が可能になるのだ。これは助ける側、助けてもらう側ともに高度なテクニックを必要とする。この時に、前述した牢屋の仕様(場所や広さ、形)が重要になってくる[1]。
一定の逃走許可範囲を設定しておく。これを怠ると、泥棒側が圧倒的有利になってしまい警察側は全員を捕まえることが大変難しくなってしまう。通常は、ある範囲を囲むようにして大きな道路、フェンス、壁などで設定する。小・中学生なら半径1キロほどが限度であろうが(ステージとする場所の高低差、住宅の有無、建物の密集具合などで変動はある)、高校生や大人が行う場合は町・街をステージとすることもしばしばある。
適当な人数は、その逃走許可範囲によって変動する。半径が1キロほどまでなら1チーム3~6人ほどで充分であるが、それ以上・街などがステージとなる場合は1チーム10~以上は必要だろう。
時間設定も重要である。小規模なケイドロならば、1ゲームが20分~1時間ほどで自然に終了すると思われる。だが、泥棒側が相当な強者を有していたりする場合がある。その場合、何時間経っても泥棒を捕まえられないという事態が発生することになる。何時間逃げつづけても構わないのだが、徐々に双方の士気が下がることは明白なので、ゲームを始める前に時間を設定しておくべきだろう。その設定時間以上泥棒が逃げ切ると泥棒側の勝利となる。
泥棒全員が捕まえられたら、泥棒の負けでゲームは終了となる。
などなどいろいろなゲームがある。腕相撲大会などもいいだろう。男しか盛り上がらないだろうが……。
とりあえずこれらの案を一度長に伝えよう。俺は街の長が住む屋敷に向かう。
「……とまあこんなかんじのゲームがありますがどうしましょうか」
俺の言葉に長は白く立派なあごひげをなでながら答える。
「そうですなあ、このフルーツバスケットというのは子供たちにやらせるとおもしろそうですなあ。しかし大人たちがやるには少しばかり熱中する要素が足りないようですなあ」
「……でしたらケイどろを大人たちにやってもらい、自分の冒険者ランクを紙に書きそれを胸からぶら下げる。自分より高ランクのものを捕まえることができたら賞金が手に入るというのは、今の時点で高ランクのものはそうですね、たとえば足のはやい冒険者をある程度集めてその人たちをとらえたものには好きなものを一つというかんじで褒美をだしたら大人たちも食いつくでしょう」
「ふむ、わかりました。その案でいきましょう。子供たちにはフルーツバスケットというものを、大人たちにはケイどろというものをやってもらいましょう。そこであなたには足のはやい冒険者として逃げてもらってもよろしいですか。聞いたところによるとあなたはかなり身軽らしいですね、ピエールが言っていましたよ」
「……それほどでもないですよ」
ピエールさんめ、いらないこと言ったな。
「まあまあ、ここはあなたにも参加してもらいましょう。そうだ、司会もあなたにやってもらいます、なにしろそのゲームのルールを私たちはあまり理解していませんからね」
「……わかりました」
俺は威圧するような長の視線からそっと目をそらしながら答える。
「おい、聞いたか?今回の祭りではゲームをやるらしいぞ」
「ああ、俺も聞いたぜ。どうやら鬼ごっこみたいなかんじのゲームらしい。賞金もでるらしいぜ!」
「ああ、今回の祭りにはあの竜巻の軌跡とか雷神も参加するらしいぜ!」
「おいおい、まじかよそれだけでもわくわくするぜ!そういえばギルド長のバールさんも彼女の指輪を買うために参加するらしいぜ!やっべえ、今からわくわくしてきたぜ」
なんていう会話が外を歩けばどこからでも聞こえている。どうやら俺が思った以上にこの祭りのゲームは噂になっているらしい。
祭りまであと2日。俺は毎日筋トレをして少しでも筋肉をつけていた。あまり意味はなさそうだが……。司会の準備もしている。すでに何回もシミュレーションしたあいさつなどを再び頭に叩き込む。
なんとしてもこの依頼を達成しなければ……。
処女作です。何分文を書くということはこれが初めてなので文体、文法、誤字、脱字などでおかしい点あればご指摘よろしくおねがいします。
また、参考にしたいので評価、できれば感想を書いていってくだされば今後に活かすことができますので、その点もよろしくおねがいします。




