依頼
旅亭のごはんはおいしかった。何の魚かわからなかったが魚の煮込みをメインにしろごはんが出され、汁物もほどよい辛味が効いており後味はさっぱりとしていた。いずれの料理の材料は何かわからないが……。
ごはんを食べた俺はそのまま街を探索する。大通りを真っ直ぐ行くと城にあたる。堂々とそびえているその城をぐるっと囲むように背の高い建物が立っていた。パルクールサークルに入っていた俺からすると非常に跳びたい衝動が掻き起される建物群だった。その背の高い建物をさらに覆うように豪華な造りの屋敷が建っている。おそらくあれらが貴族のものなのだろう。そして俺が泊っている旅亭、つまり出店や旅館などが続き、平民の住まいの順になっている。城に近づけば近づくほど位が高いという構造になっていた。街の北は俺がいた森に覆われており南に城が建っている。つまり南に住んでいる者ほどお金持ちということだ。街全体の広さはまだわからない。しかしこの分だとかなり広いように思える。
俺は出ている店の位置をチェックしながら探索を続ける。大通りを少しはずれたところに一軒の武器屋が建っていた。
「そういえばギルドで働くにしても俺は武器を持っていないなあ、少し覗いてみるか」
少し錆びている扉を音を立てながら開ける。店には不用心なことに誰もいなかった。俺はかまわず壁に立てかけられている武器を拝見していく。どうやら入って右側が短剣の部類で左側が長剣の部類らしい。右側の短剣の部類のところにはジャマダハルやソードブレイカー、ダガー、マインゴーシュにスティレット、一般的なククリにトレンチナイフ、クリス、ジャンビーヤなどがある。どれも見たことがないような形状をしている。なぜ俺がこんなに剣に詳しいかというとすべてスマートフォンを使って調べているからだ。長剣にはエストック、グラディウス、代表的なクレイモア、グレートソード、ショートソードにショーテル、スクラマサクス、小説などにもよく出てくるツーハンデッドソードやバスタードソード、パタ、ファルシオン、フランベルジェ、ブロードソード、レイピア、エペ、エスパダ・ロペラ、ロングソードなどなど。調べている俺が言うのもなんだがよくもまあこんだけ集めたものだ。おっと心惹かれる剣もいくつかあったがどれも俺の今のこころもとない手持ちで買えるはずがなく名残惜しい思いでいつか手に入れてやると心に誓う。どうやら俺が一番欲しかった銃剣はないようだ。やはりこの世界には銃がないらしい。その分魔法という珍妙なものが発展したのだろう。魔法といえば俺も使えるのだろうか。もし使えるのならば是が非でも使ってみたい。なにせ夢にまでみた魔法だ。空を飛んだり呪文一つで火の玉を飛ばす。悪を砕き善を救う。なんてすばらしい力だろう。使えるとは限らないが……。
俺はそんなことを考えながら店を出る。再びボッーとしながら街をぶらつく。
路地裏などを頻繁に入っているが小説などによくある暴漢に襲われる美女にであうなんていうイベントはもちろん起きない。路地裏で見かけるものといったら誰のものかわからない衣服などに、大量に捨てられている生ごみ、渇ききって白く変色している吐瀉物ぐらいだ。街の北に近づけば近づくほど浮浪児も多くなっていく。俺の姿は見た目だけなら貴族並なのだろう。なにしろ現代科学を使って作られた生地だからな。繊細さにおいてはこの世界にあるどの服よりも優れているのではないだろうか。そのおかげか嬉しくないことに物乞いが俺にお金を乞うてくる。持っているお金といったら旅亭でもらったおつりの2500ギドしかなかった。もちろんこのお金を渡してしまえば俺は一文無しになってしまうが髪をぼさぼさにして顔は黒く薄汚れている少年少女たちにつぶらな瞳で見られては拒めないだろう。俺は手持ちのお金をすべて子供たちに分け与えた。子供たちは俺のお金を競うようにして奪い合い、そのまますぐに路地裏に戻っていく。偽善でしかない行為だとわかっているため魚の小骨が喉につまったようにちくりちくりと心が痛む。
「日本ではありえない光景だもんなあ……」
なぜか無性に疲れてしまった俺はそのまま旅亭に戻る。すぐに自分の部屋にはいり布団をかぶり無理やり眠りについた。
朝、おかみさんの罵声で目が覚める。どうやら一部屋一部屋起こして回っているらしい。そのまままだ寝たい人は眠り、朝ご飯を食べる人は下りて朝食ということらしい。
俺はしばらくボッーとしていたがおなかの主張が始まったので下の階に下りた。今日のメニューは肉をメインに野菜と汁物だった。これもおいしくいただくことができた。
朝食を無事に終えた俺はギルドにカードを取りに向かう。
今日もギルドはがやがやと賑わっていた。昨日受付をしてくれたお姉さんがいたので再びその窓口に行く。
「ギルドカードを取りに来た。もうできてるかな?」
「お名前をどうぞ」
「渡瀬藍だ、昨日登録をした」
「はい、ちゃんと覚えてますよ。形式的なことなので気にしないでください。どうぞこれから冒険者として頑張ってきてくださいね。依頼はあそこの入り口近くにある張り紙から好きなのを選んでください。依頼が決まったらそのまま張り紙を剥がし依頼を達成してください。依頼を達成したら依頼主からはんこまたは直筆のサインを書いてもらって再び受付まで戻ってきてください。ここで報酬金をお渡しします。なお依頼主がギルドや国のなんらかの機関だった場合は依頼を受ける前に窓口まで来てください。ワタセ様の冒険者ランクはEなので一つ上のDランクまでの依頼なら受けることができます。それでは今日もよい一日を」
そう言って綺麗なお礼をしたお姉さん。俺も礼を述べてから掲示板を見る。
ギルドランク:D以上
報酬金:10000ギド
依頼主:マルクス通りに面している服屋の主人であるポール
依頼内容:とある魔物の皮が必要になった。皮3枚を集めてください。魔物の種類はゴールデンレバー種ならなんでもいいです。
ギルドランク:D以上
報酬金:5000ギド
依頼主:マルクス通り蜂の巣路地の通りから3件目の家主であるビエラ
依頼内容:最近肩が凝ってしょうがない。誰か肩もみをしてくだされ。しかし私は岩鎧族なので普通の揉み方ではちっとも満足せんわい。力のある若者よ来て下され。
ギルドランク:E以上
報酬金:3000ギド
依頼主:街はずれにある孤児院の院長であるスワットニー
依頼内容:ちょっとした用事で二日ほど孤児院を留守にします。その間の子供たちの面倒を見てくれる心優しい方待ってます。できれば家事、掃除ができる人がいいです。
などなど魔物を倒せというものからペットの散歩まで多種多様な依頼があった。
しかしどうやらこの掲示板には高ランクの依頼は張られていないのか一番高くてもCランク以上が対象だった。俺はDランクまで受けることが可能なので今はこの掲示板がちょうどいいな。さて、問題は依頼をどれにするかだ……。武器がないから魔物退治はあんまりしたくないなー。初めての仕事だし比較的簡単なやつにするか。そう思った俺は一つの依頼に目をつけた。
ギルドランク:D以上
報酬金:200000ギド
依頼主:魔法研究会会長ピエール
依頼内容:誰か私の魔法の実験台になってくれないか!ランクは問わない。聞きたいこともない。ただ私が新しく開発した魔法のマウスになってくれ!大丈夫、命の心配はせんでよい!誰かきてくれたもう!
恐ろしく高額な依頼を見つけた。どうやら魔法の実験台になればいいらしい。俺の体は強化されてるからちょっとやそっとじゃ傷なんてつかないだろう。変な感染症になることもないし、この依頼受けてみるか。
「……よし、この依頼受けてみよっと!」
そう言って俺はその張り紙を剥がそうとした。すると張り紙を掴む二つの手。
片方は男性らしくごつごつとした手、これは俺の手だ。もう一つは女性らしい白くていかにもすべすべしている手。……手?誰のだ。
俺は顔を横に向ける。そこには同じようにこちらを見る女性の姿が。
「あーすまんがこの依頼は俺が受けるんだ、悪いが手を放してくれないか」
ダメ元でそう頼む。もちろん女性はハイそうですかと言って引くはずもなかった。というより俺が予想しているよりもはるかに強烈な性格の女性だったらしい。
「ハ?私の方が先に目つけてたんだけど、あんたこそ男ならここは女である私に譲りなさいよ、てかなによ偉そうにあんた見たところ新米冒険者ってところね、装備もろくにしていないし道具袋も持っていない。そんなんじゃだめよ。この依頼は私が受けるわ、あんたは横のペットの散歩の方が似合ってるわよ」
まるでマシンガンのように言葉を吐き続ける女性。俺はここで諦めてなるものかと張り紙を先ほどよりも強く引っ張る。
「おいおい、冗談言ってんじゃねえよ、お嬢ちゃん。一流の冒険者ってのは装備に頼らないんだよ、己の体と知恵のみを信じて戦いぬくのさ。装備に拘ってるうちはまだまだ2流さ。その点では嬢ちゃん、がっちがっちに装備してて恥ずかしくないのかい。ププッおっと失礼あまりに滑稽だったので笑ってしまったよ。それに女なら体を大事にしな。俺は聞いたんだぜこの依頼主はかなり危ないことやってるらしいぜ、そんなやつが出す依頼だ。下手したら死ぬぜ。さ、おとなしく手を離しな」
と、まあこんなかんじに冒険者初めて2日目の俺が適当に冒険者について語る。もちろん俺は装備には拘るしなにより依頼主とはなんの面識もない。しかしここで引いては男が廃る思いでなんとか説得を試みる。
俺がさらに力を入れて張り紙を引っ張るすでに限界ギリギリまで張り紙は伸びきっている。
しかし女性も負けてはいなかった。
「あんたいい加減にしなよ、私が誰か知ってんの?冒険者ランクもといギルドランクBの猛火の使い手ことレビィ・アーマルドよ、火傷したくないなら手を離しなさい。これが最後通達よ!」
「ギルドランクB?猛火の使い手?ッハ、全く聞いたことねえぜ。火傷もなにもお嬢ちゃんの火じゃタバコもつけらんねえぜ、いいから手を離すんだ。いい加減に俺も怒るぞ!」
どんどんとヒートアップしていく俺たち、互いに睨みあいギリギリと張り紙を引っ張り続ける。もともと限界まで引っ張られている張り紙にさらに力が加わったことで誰でも想像できるとおり左右に破けた。
「「あっ!!」」
「おい、嬢ちゃんのせいで破けたじゃねえか、どうすんだこの野郎」
「なによあたしはそんなに力入れてないわよ、あんたのほうこそ引っ張りすぎなのよバカ!」
「なにをー!」
「なによー!!」
「お二人ともどちらが悪いとかどうでもいいので張り紙を破った罰としてお二人で依頼を達成してきてください」
額に青筋を浮かべた受付のお姉さん相手に太刀打ちできるはずなく謝る。
「「……はい、わかりました」」
俺とレビィは今二人で依頼主がいる魔法研究所へ向かっている。
「ったく、なんでこんなやつと二人で依頼を受けないといけないのよ……」
「俺だって嬢ちゃんみたいなおてんば娘と受けたくなんかなかったさ」
「あのねーさっきからお嬢ちゃんお嬢ちゃん言ってるけどそれやめて!!私はもう21よ!」
「……は?いやいやいやいやいやいや嘘おっしゃいどう見ても16かそこらだろ。あんまり大人をからかっちゃいけません」
「……もう怒った。あんたそこになおれ!私じきじきに焼いてあげるわ」
額をピクピクと動かしながらレビィが言う。
「ッハ、かかってきな。俺にお前ごときの技がきくかってんだ」
俺は指をくいくい曲げながら言葉を放つ。
「上等よ!やってやろーじゃない!!いまさら謝っても遅いんだからね!喰らえ、炎虎!」
そう言うとレビィのこちらに向けた指から炎でできた虎が飛び出した。そのままの勢いで俺にぶち当たる。見た目よりも熱があるのかじゅーじゅーと空気中の水分が渇いていく音がする。
「……あっ!やっちゃった、ついカッとしちゃって炎虎を生身の人間に放っちゃった、おーいあんた大丈夫……?」
レビィは不安そうに尋ねてきた。
「……おい、びっくりしたじゃねえかこの野郎。俺じゃなかったら死んでたぞおい!仕返しだ!」俺はすばやくレビィの背後を取る。レビィは身長が150センチほどしかなく俺は簡単にレビィの脇に手を入れ持ち上げることができた。そしてそのまま脇をくすぐった。
「うそっ、あんたなんで大丈……あひゃひゃひゃひゃやめてよ変態!くすっぐたあひゃひゃひゃひゃひゃ」
俺はレビィをくすぐり続けながら問う。
「さあ、今謝ったら許してやらんこともないぞ!どうだ、参ったか!!」
強情にもレビィは降伏をしなかった。俺はさらにくすぐりを激しくする。
「わ、わかった!私の負けよあひゃひゃひゃ、やめてやめて、謝ったじゃない!やめなさい!!」
レビィが負けを認めたのでおとなしく降ろしてやる。
「……あんた、悪魔ね……」
笑い疲れたのかぐったりとしたままレビィが言う。
「いつか、いつか覚えてなさいよ……」
「ま、覚えてたらなはっはっは」
俺は余裕をぶっこきながら高笑いをする。
そうこうしているうちに研究所に辿り着いた。早速扉をノックする。
「すいませーん、依頼の実験体になりにきたんですけど!」
しばらくまっていると扉が開いた。
「ハーイ!あなたたちが私の新魔法の実験体になってくれるのね!!さあ、早速やってもらうわ!!中庭にきて、さあさあ。……あ、私の名前はピエールよ!まあ、知ってると思うけどね、この魔法が完成したら私の名前はさらに広まるわ!まあ、そんなことはいいの。さあ、ついてきてちょうだい!!」
俺とレビィは少しというかかなり引きながらピエールさんの後をついていく。
ピエールさんの身長はおよそ170センチほど、女性にしては珍しく背が高い。
髪の色は白色で来ている白衣と似合っていた。
ちなみにレビィの髪の色は赤色だ、あの性格の割に顔は整っており黙っていれば異性にもてること間違いなしだろう。まあ、あいつが黙ることはなにと思うが……。
くだらないことを考えているうちに中庭についた。
「さあ、あなたたちに受けてもらう魔法はこれよ!!」
そう言ってピエールさんは藁でできた人形に人差し指を向ける。瞬間視界いっぱいを光が覆い尽くした。遅れてとんでもない轟音が耳を貫く。
ピエールさんが得意げに何か話しているが突然の大きな音に俺の耳はしばらく使い物にならなかった。
「……し、……しもーし!聞こえてる!?」
「あ、はい聞こえてます。まだ若干遠いですが」
「ごめんねー先に言っとけばよかったね!まあ、過ぎたことは忘れなさい!それでさっき見せた魔法をあなたに受けてもらうの!名付けて敵の視界を奪い、なおかつ聴力も奪うという極悪非道なレイ!どう、この名前は?すばらしいでしょ!?すばらしいわよね!じゃあ、早速受けてもらおうかしら!さあ二人ともそこに立ってちょうだい!!」
その言葉に俺とレビィは顔を合わせる。
やがてあきらめたように俺たちは同時にため息をつく。
「じゃあ、行くわよ!!準備はいいわね!3、2、1ドン!!!」
ピエールさんがドンと言う前にすでに魔法は放たれていた。俺は視界が効かなくなった後ぼんやりと思う。
「音って、衝撃波になるんだな……」
そのまま俺は気を失った。
処女作です。何分文を書くということはこれが初めてなので文体、文法、誤字、脱字などでおかしい点あればご指摘よろしくおねがいします。
また、参考にしたいので評価、できれば感想を書いていってくだされば今後に活かすことができますので、その点もよろしくおねがいします。




