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第20話 戻ってきた日常

「お前さ、といっても昔の俺なんだけど。パラレルスフィアを短期間で使いすぎなんだよ。だから、ショートしちまったり世界がおかしくなったりするんだよ」

「どういうことなんだ? お前は最初から全部わかってたっていうのかよ」

「ああ、痛いくらいにわかってたね。なんせ、俺は未来のお前だからな」

 男はそう吐き捨てた後に近くの物陰から鞄を取り出す。

 鞄の中をごそごそと漁り、取り出した。パラレルスフィアを。

「はっ!? なんで、お前がパラレルスフィアを持っているんだよ」

「そりゃあ、お前。持っててもおかしくないだろ、未来のお前だぜ」

 未来の俺と名乗る男はニヤリと笑う。

 怪しい笑みだけど、こいつ本当に未来の俺なのか?

 でも、顔はどうみても老けた俺だし。

「しずか、あいつのことどう思う」

「どうもなにも未来のご主人様としかわたくしには思えません」

「だよなぁ」

 でも、未来の俺がこんな性格になるなんて。

「そこ、ため息つかない。おっさん、傷つくってーの」

「未来の俺はもっとかっこいいもんだと思ってたぜ」

「誰だって、一度はそういう幻想を抱く。でも、色々あって捻くれてこうなっちまうのさ」

「まるでわかったように語るんだな」

「わかるとも。俺だもの。それより、この事態をなんとかしてほしいんじゃないのか?」

 ハッと気付かされる。

 そうだった、今はなによりもこの事態をなんとかしないと。

「でも、どうすればいいんだ。パラレルスフィアは動かないし」

「俺のパラレルスフィアを使えばいいんだよ」

 未来の俺はそう言って、呪文を唱える。

『ル・クシェンテ』

 パラレルスフィアから玉が浮かび上がり、白い光に世界が包まれる。

 暴力的なくらいの真っ白い光が世界を包んでいく。

 光が消えると空に浮かんでいた巨大な黒い穴が消えていた。

 空には元の青空が広がっていた。

 あっという間に消しちまいやがった。

「お前にパラレルスフィアのルールを教えてやるよ」

「そうだ、記憶は……」

「ルール1。パラレルスフィアの所有者としずかは記憶改変の影響を受けない」

 横を見てみるとしずかはいつも通りの無表情だ。

「しずか、記憶はあるか」

「ありますよ、ご主人様。それはもうちゃんと」

「ルール2。パラレルスフィアで過度に世界改変を行うとこんな風になっちまう。身に染みてわかっただろ」

「もしかして、お前が今まで止めなかったのって……」

「人は過ちを犯してこそ、絶対にやっちゃいけないということを覚える生き物だからな」

 くそっ、じゃあこいつは全部わかったうえで黙っていたっていうのかよ。

 俺にパラレルスフィアの危険性を教えるために。

「なんでこんなことをって思うだろ。でもよぉ、これを誰かよく知りもしない相手に渡されるよりかはパラレルスフィアのことをよーく知ってる自分が管理する方が一番いいからな」

「ああ。世界を改変する重みっていうやつが嫌ってほどわかったよ。もう二度と使いはしない」

「いいや、お前はまた何度でもこれを使うハメになるさ。だって、俺がそうやって覚えてきたんだもの」

「どういうことだよ」

「今の俺に言える事はだ。あまり、パラレルスフィアを使いすぎるなよってことだけだ」

 未来の俺はそう言って、ビルから飛び降りた。

 ちょ、ここは高層階だぞ。

 慌てて駆け寄ると未来の俺はなにかに乗って現れた。

 形状はコスモロイドに似ている。

 中央には巨大なカメラ。機械の脚や砲台はない。

 あるのは左右につけられたプロペラだけ。

 未来の俺はハッチからソレに乗り込み、備え付けられていた拡声器で話し始める。

「まあ、あんまり未来に絶望すんな。楽しみが一つ増えた程度に思っておけ。未来の俺はこういったタイムマシンも持ってるんだからよ」

「タイムマシンだって!? どうやって、手に入れるんだ!」

 プロペラの音でかき消されないよう大声をあげる。

「いずれ、わかる。じゃあな、過去の俺よ」

 拡声器から言い放たれた瞬間、マシンはいずこかへと消えていった。

「嵐のような人でしたね。未来のご主人様は」

「ああ、まったく言いたいことだけ言いやがって」

 でも、未来に希望は少しは持てたかな。

 未来の俺はきっとパラレルスフィアを使いこなして、タイムマシンに乗って、誰もしたことのない冒険を繰り広げているのかもしれない。

 そう思うと心がワクワクした。

 この五月末の一週間の冒険が終わったのを俺はこの時になってようやく実感したんだ。



 月曜日。澄み渡る快晴の中、俺は真っ先に教室へと向かい自分の席に着いた。

 そこには志保がいて、HRが始まるまでの間、前髪をいじっていた。

 なんて声をかけようかと今更ながらに緊張し、

「そういえば雪ってさ。降ったか?」

 と馬鹿みたいな質問をしてしまう。

「雪なんて降るわけないじゃん。もう六月に入っているのに」

「そうだよな」

 改めて、先週の異常気象はパラレルスフィアが原因だったことに気付く。

 まっ、普通は雪なんて降るわけないしな。

「用はそれだけ?」

「いや、まだ用はあるんだ。俺と一緒に出掛けないか、志保」

 途端に志保が頬を真っ赤に染める。

「な、な、なにを急に、なんでアキラがあたしにデートの誘いをするわけ!?」

「大事だったものに気付けたからかな」

「ふ、ふーん、それでどこに行くの?」

「映画でも観に行こうぜ。ゾンビファイター4って映画がすげえ面白いんだよ」

「なにそのタイトル一発でわかるB級映画」

 前髪をくるくると回しながら、一呼吸置いて

「まっ、アキラとならどんな映画でも観に行ってもいいけどね」

 二人で放課後に映画デートをする約束を取り付けた。

 この先、どんなことがあるのか知らないけど、とりあえずは目の前の幼馴染を大事にしようと思う。

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