救いようのない悪魔
あくまで悪魔ですから。
人の心など有りませんよ。ケケ。
人攫いを命じられた悪魔は囁く
この世は平等なんかじゃない
ブスやブサイクに人権なんてない
世の中金が全てで信じられる人など居ない
唆された数多の魂
褒美を数える悪魔
弱くて脆い心を持つ人で溢れた地獄
そこに産まれたのは、創作だった
ある者は詩を書き
ある者は歌を奏で
ある者は踊った
その度に魔王は頷いた
人の痛みや苦しみが美しい創作を産み出した
次第に魂に輝きが満ち溢れ
地獄は天国に近い場所と成った
悪魔は魂しか狩ることが出来ない
連れてきた魂達は次第に様々な個性を持った
悪魔も歌いたくなった
初めて歌詞を書いた
【人はバカばかり。騙し騙されすべて失う。大切な物は金。それが全てなのに。ケケ】
ある者は悪魔の詩を笑った
勝者の様な目だった
横で見ていた詩人が付け加える
【人はバカばかり。悪魔に身を委ねた我々の、なんと浅はかなことか。騙し騙されすべて失う。本当に救いない世界であったのか、友に訊かなかった我にはわからぬ。大切な物は金。されど、あの頃はかえらぬ。ケケ。と悪魔が笑うも愛しき世界に想いを馳せ、地獄を生きるや】
詩人の詩は亡者達の魂を揺さぶった
愛しき世界
かえりたい、と
想いが募るほど聖女が介入し
亡者達は天使達に連れて行かれた
魔王は肩を落とす
陽気に悪魔が歌う
【落ち込んでも、もとには戻らない。感情なんて要らない。魔王様はお強い。だから人の創作なんかに現を抜かされないで。弱くなっちゃうよ】
魔王は悪魔の歌を酷く嫌った
【魔族には解らぬ『心』を学びたかった。悪魔には人の心は無いのか!】
悪魔は笑顔で嬉しそうに頷いた。
「はい、悪魔ですから!」
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