席替えの時間
続きです!読んでください!
その日の昼休み。俺は再びあの時の四人で飯を食べていた。もちろん場所は中庭で。
「許せん……!有栖ちゃんとスタマに行った男がこの世にいることが許せん!」
めちゃくちゃピンチだ。古川がストーリーを見てブチギレている。
「本当に男なの?」
柴田は興味なさそうに尋ねる。
「あれは男だ!そうだろ藤本!」
「あれは男だね」
「へぇ……」
俺は知らないふりをする。普通にしていれば俺が疑われることなんてない。
「浅倉は誰だと思う?」
古川が何気なく尋ねてくる。
「え……?だ、誰だろうね。木南とデート出来るくらいだから相当なイケメンじゃないかな……」
「やっぱりお前もそう思うか……」
納得してくれてる……!よかった。
「彼氏なのかな?」
藤本が呟いた。
「それだけは言うな……!」
古川が自分の耳を塞く。
「彼氏か……」
俺です……!
「もう鈴香ちゃんしかいないじゃん」
柴田が弁当を口に運びながらそう呟くと、古川は真顔で言い返した。
「桜ちゃんがいる」
「俺が許さねえよ……!」
柴田は形相を変えた。あんなに興味なさそうだったのに妹が出れば別だな。
「あーあ……ショックだな。有栖ちゃんに彼氏か……」
空を見上げ、萎えてる古川を見て俺は呟く。
「まだ確定したわけじゃないから……」
「なんか知ってんのか?」
やば。余計なこと言わなきゃよかった。
「いや……なんも?」
「なんか怪しいなぁ……」
古川は俺の顔をまじまじと見つめた。
「浅倉はなんもねぇだろ。莉子ちゃんが好きなんだから」
柴田が横から古川の肩を叩いた。
「あ、そっか。そうだったわ。物好きの浅倉だったか」
「だから物好きなんかじゃ……!」
「あ、話をすれば」
藤本が声を上げる。
「え?」
するとそこに莉子ちゃんが通りがかるのがが見えた。俺たちの会話は聞こえないくらいの距離だが、間違いなく莉子ちゃん。遠くからでもかわいい。
「ほらちゃんと見ろ!めっちゃかわいいだろ!」
「いやかわいいのは分かってるよ。でもあの二人がいるのにって感じじゃね?」
「とことん失礼なやつだな……」
「確かにそう言われるとかわいいな」
柴田が納得したかのように声を上げた。
「だろ!?」
俺は柴田の肩を掴んでブンブン揺らした。
「でも狙うなよ!?」
やばいやばい。柴田がライバルになるとやばい。
「あははっ。どーしよっかな」
「冗談じゃねえぞ……」
「あっ。桜ちゃん」
藤本がまた声を上げた。
「桜ちゃん!?どこどこ!?」
古川が声色変えて飛び跳ねる。
「あそこ」
指を刺した先では姫と騎士長が楽しそうに二人で歩いていた。
古川は立ち上がるや否や弁当箱を放り出して全速力で駆け出した。
「ほんとだ!桜ちゃーんっ!!」
その声は中庭中に響き渡った。昼休みのざわめきが一瞬だけ止まる。
「おい咲斗!待て!」
柴田が慌てて立ち上がり、追いかける。
「妹に近づくなぁぁ!」
その声がまた一段と響き、周囲の注目を集めた。
「やれやれ。手がかかるなぁ」
藤本も半笑いで弁当を片手に立ち上がり、二人の後を追いかける。
そして、俺だけが中庭のベンチに取り残された。
「……はぁ」
ため息が自然とこぼれる。
空はやけに青く校舎の窓に反射した光が眩しかった。
みんながバカみたいに桜ちゃん目掛けて騒いでるその向こうで、莉子ちゃんが廊下を歩いていくのが見える。
一瞬、彼女がこっちを見た気がした。でもたぶん気のせいだ。
「……一緒に昼飯とか食いたいなぁ」
小声で呟きながら、残っていた唐揚げをつまむ。
「浅倉も来てくれよ〜!」
藤本の声が遠くから響いた。古川が転び柴田に捕まって引きずられているのが見える。
「……行くか」
俺は立ち上がってゆっくりと三人の方へ歩き出した。
⭐︎
チャイムが鳴る少し前、俺たちはようやく教室へ戻った。
昼休みの熱気がまだ残る空気の中、ボロボロの四人組が教室へ戻る姿はまるで長い旅から帰ってきた勇者一行の様だ。
「……お前ら何やってたんだよ」
クラスの男子たちに笑われながら席に着く。
古川の制服には草と土がつきまくってるし、柴田は本気すぎてセットしてきた髪がボサボサになっている。藤本はその横で笑いすぎて腹を押さえて、俺は恥ずかしくて俯いている。莉子ちゃんがこっちを見てたから。
「マジで疲れた……」
古川が机に突っ伏した。
「でも桜ちゃんはマジで天使だった……」
「俺の妹を天使呼ばわりすんな!」
また言い合いが始まり、教室に笑い声が広がる。その喧騒の中で俺はそっと自分の席に戻った。
「おかえり〜。四人で何してたの?」
席に座ると、隣の木南が早速声をかけてきた。
「まぁ……ちょっといろいろあって」
「何それ〜。なんか楽しそう」
木南は頬杖をつきながら普通に話しかけてくる。
「そんな生ぬるいもんじゃないよ。戦争」
「そーなんだぁ〜」
適当に返す木南。
「浅倉くんたち中庭にいたよね?」
莉子ちゃんが振り返って話しかけてきた。
「あっ……うん!いたいた!」
「だよね〜。なんか遠くからでも目立ってたよ」
莉子ちゃんが笑う。その笑顔に心臓が一瞬止まった。
「……目立ってた」
俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。いい目立ち方をしてなさそうだったから。
ガラガラ。
そこで先生が入ってきて莉子ちゃんは前を向いた。木南も姿勢を正してクラス中の空気も落ち着いた。
今からは担任の砂田先生の国語の授業だ。
「はーい。じゃあ挨拶」
先生の呼びかけで挨拶をする。一斉に礼をして席に着くと、先生は教卓に手をついて言った。
「国語の授業はしない!今から席替えをするぞ!」
先生がそう言い放つとクラス中の男子が盛り上がった。理由は簡単。
「有栖ちゃんの隣は俺のものだ!」
「じゃあ俺は鈴香ちゃん!」
このクラスにはこの二人がいるからだ。
「……早いって」
でも俺は違った。目の前に莉子ちゃんがいるこの席を離れたくなかった。授業中、ずっと莉子ちゃんが視界に入っている。プリントを回す時、たまに莉子ちゃんと目が合う。そんな幸せが今日、終わってしまう可能性があるなんて。しかも他のやつがそれを味わうかもしれないのか!?
考えれば考えるほど席替えをしたくなくなってくる。
隣や後ろの席になれれば神席だが……どこか遠くの席となるともう学校へのモチベを失ってしまう。
「はーい。じゃあくじ引きな〜引きたいやつから引いていいぞ〜」
先生の合図で男たちがどんどんくじの周りに集う。
「結構この席気に入ってたんだけどな〜。莉子も近いし」
「私も隅でよかったかな……」
莉子ちゃんと木南も声を漏らす。本当にこの席でいいよ!
「よし……!」
でも席替えをすると言うのなら仕方ない。莉子ちゃんの隣を引けばいい。ただそれだけだろ。
「誰の隣狙うの〜?」
木南が立ち上がった俺に尋ねる。
「……一番後ろ狙うよ」
つまんない返しをして俺はくじを引きに行く。男の大半をくじを引いていたが、まだ半分以上は残っていた。俺は天に祈ってからくじの中に手を突っ込む。
莉子ちゃんの近く。莉子ちゃんの近く……!
「これだ!」
俺はくじを引いて番号を見る。
「七番!」
俺はくじを開いて先生に見せた。
「おっ。浅倉いい席引いたなぁ。窓側の一番後ろだ」
「……よし!!」
隣にまだ男が埋まっていないことを確認してから喜ぶ。第一段階突破!
「よかったね。狙い通りじゃん」
席に戻った俺に木南が声をかけてくる。
「実力」
「ドヤ顔ムカつく〜」
木南が笑うと、莉子ちゃんも笑っているのが見えた。
莉子ちゃん俺の隣引いてね〜……
そう願いながら俺は席に座るのだった。
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